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3章 冒険者養成校
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しおりを挟むリキートのおかげで聴取もスムーズに進み、思っていたよりも早々に解放されることとなった。そして、グルバークさんに誘われるまま、そのままサーグリア商会に行くことに。久しぶりの再会、ということもあって、二人には先に寮に帰ってもらうことにした。
「会頭の驚いた顔をみられるぞ~」
「会頭、ってバーレンさんですか?」
「ああ、いや。
今はシラジェさんが引き継いでいる。
でもあのじいさん、もう70歳になるってのにまだ元気なんだよな」
ああ、よかった。俺を拾ってくれた恩人はいまだに元気らしい。でも、シラジェさんにもう店は引き継いだのか。そっか……。俺がいない間にいろんなことが変わっていったんだね。
「さあ、ついたぞ!」
え、ここが……? 俺が想像できるサーグリア商会は馬車2台、そして地域の人にいろんな場を借りながら経営していた。それが……。
「大きい……」
「だろ?
ハールのおかげだよ、ここまで大きくなったのは」
「え!?
いや、何もしていないけど」
「いやいや。
ハールに帳簿頼んで、助言くれるようになってから飛躍的に売り上げ上がったし、ハールが提案してくれた新商品もどれだけ売れたか……」
うーん? 俺、素人だし大した助言できていないと思うんだけど。まあ、確かに喜んでもらえて、ほめてもらえて、どれだけ……。
「ハール?
そんなところで突っ立っていないで、中、入ろうぜ」
「え!?
あ、うん」
本当に会いに行っていいのかな? でも、こうして再会できたんだ。きっと、会いに行けって言われているん、だよね。よし!
グルバークさんが前を進んでいくのをひたすらついていく。途中すれ違う店員さんに、誰? という目で見られるの地味につらい。まあ、耐えるけどさ。それにしてもどこに向かっているんだ?
しばらくして立ち止まる。扉には会頭室、と書いてあった。もしかして、シラジェさんがここに?
「会頭、クギリア服飾店の件、片着きましたよ」
「ああ、ご苦労だった」
ああ、懐かしい。やっぱりシラジェさんだ……。
「それと、あなたにお客さんが来ているんです」
「客……?
約束はなかったはずだ。
それに今手が離せないんだが」
「じゃあ、帰ってもらうってことでいいんですか?」
あ、グルバークさん、すごく楽しそうな顔している。この方も結構年上なのに、こういういたずら心というか、少年心というか、そういうのを忘れていないところも好きだった。いつも楽しませようとしてくれるのだ。
「また、約束をしたうえで来てもらってくれ」
「えー、本当にいいんですか?
後悔しますよ?」
「なんなんだ。
一体誰が来ているって?」
「あ、あの。
急に来て迷惑でしょうし、また後日来ますよ?」
「ほらー、帰ってしまうって」
「え!?
そこにいるのか?
ずっと会話を聞いていたと?」
ああ、うんそうだよね。明らかに別のところにいると思って話進めてたよね。本当に急に来てしまったから、俺としては気にしないけれど。
「聞いていましたね」
「ああ!
もう、誰なんだ!
入ってもらえ」
今さら口調等を変えることはできなかったらしい。半ばやけになりながら、入れ、というシラジェさん。なかなか苦労しているようだ。
「はいはい、っと」
「全く、それで客とは一体誰なんだ?」
ああ、シラジェさんだ。確かに少し老けてしまったが、あの時一人になってしまった俺を、温かく迎えてくれた人。本当に懐かしい。この人たち親子には感謝してもしきれない。
「……?」
「お、お久しぶり、です、シラジェさん。
お元気そうで何よりです」
「え、え……?
いや、でも……」
見事に混乱している。隣のグルバークさんはずっと爆笑しているし。本当はすぐに名乗ったらいいのだろうけれど、何となくこの様子をもう少し見ていたかった。
って、これいつまで続くんだ? さすがにそろそろ名乗っていい、よな?
「あの、ハール、です」
「やっぱりか!
は、ハール……。
え、いや、でもなんで急に?」
「クギリア服飾店に突入したら中にいたんです。
連れてきちゃいました」
「で、でかした、グルバーク!」
いや、でかしたって。別に避けたことはないぞ?
「ああ、ああ……。
……フード、とっても平気になったんだな」
フード。あの時は常にフードをかぶっていた。もうそれすらも少し懐かしい。うなずくとシラジェさんは嬉しそうにそうか、と答えた。そんなに喜んでもらえるとは。
「ああ、でも本当に会えてよかった。
それにずっとお礼を言いたかったんだ」
「お礼?」
「ああ!
ハールのおかげでこうして店を構えられたし、なんと!
王室御用達商会になったんだ」
王室御用達商会……。つまり王室が正式に質等を認め、利用されている商会!?
「すごい!」
「ありがとう。
そうだ、ハールは今何を?」
「今は、リキートとフェリラっていう子とパーティを組んで、冒険者養成校に入るところ」
「冒険者養成校?
ハールは冒険者になるのか?」
「うん」
「そうなのか。
そうか、なら何かダンジョン関連で売るものがあれば持ってきてくれ。
こちらで買い取ろう」
ダンジョン……!? え、買い取ってくれるのか?
「言っただろ、王室御用達商会だって。
ダンジョン品を買い取ることも許可されているんだ」
ま、まじか……。これ、もしかして養成校入らずにそのまま冒険者になったほうが早かったのでは? いや、でもリキートは自分の力で、といった話をしていたし、これでよかったのだろう。
「うん、売ることがあったらお願いするよ」
「ああ。
そうだ、時間はあるか?
皆会いたがっている、ケリーだって!
少し歩いたところに家があるんだ」
「あ、ありがとう。
でも今日は遠慮しておく。
二人に少し行ってくるっていっちゃったし」
「あ、そうか……。
じゃあ今度絶対に来てくれ」
「うん」
じゃあ、そろそろお暇しようか、そう思っているときに部屋の扉が勢いよく開いた。
「シラジェさーん!
ただいま皇国からもどりましたよ!」
こう、国? って、今入ってきたのフィーチャさんでは。あ、目が合った。そして固まった。
「おい、フィーチャ!
ノックしてから入れって、何度も」
今入ってきたのはハミルさん、か? うん、そうだ。ああ、懐かしいな。
「もしかして、ハールっすか?」
「ハール?
いや、何言ってるんだ、フィーチャ……。
ハールがこんなところいるわけが……」
「あー、それが、ハールなんです。
お久しぶりです」
はは、と笑う俺に驚き固まる二人。フィーチャさんの方が回復が早く、すぐに抱き着いてきた。本当に、みんな変わりなく元気そうでよかった。
「そういえば、今皇国って……」
口にした瞬間、空気が少し硬くなる。きっと聞いてはいけないことだったのだろう。でも、気になってしまった。俺にはもう関係がない場所、なのに。なのに、気になってしまうのはどうして?
「っ、ハール、もう帰るんだろう?
ぜひ、また来てくれ。
店頭に来てくれたら、こちらまで案内してもらうから」
「あ、はい。
わかりました。
それでは、また」
明らかに話題をそらしてきた。無理に聞き出すのも申し訳なくて、結局俺はそのまま領に戻ることにした。
『ハール、夜に少しいいですか?』
その帰り道。急に話しかけてきたシャリラント。急だし、なぜか真剣な声だし、一体何の用なのだろうか。少し緊張しながら、ひとまずうなずいた。
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