『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

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3章 冒険者養成校

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 朝、だ。結局全く眠れなかった……。シャリラントに言われた言葉が、頭のなかをぐるぐると回ってしまったのだ。

「ハール、だいぶ眠そうだけど大丈夫?」

「ん。
 もう準備しないとだよな」

 眠い。正直ものすごく眠い。今日が何もない日だったら、迷いなく二度寝する。でも今日は奇しくも養成校初日だ。起きなくては。

 食堂でご飯を食べた後は、普通の学校みたいにひとまず教室に集合とのこと。この学校、なんと食堂も無料。きれいな寮にご飯も提供してもらえる。こんなに至れり尽くせりだと、むしろなぜ? と思ってしまう。

「やあ、みんな揃っているね。
 おそらくほとんどの人が始めまして、ではないだろう。
 Aランク冒険者のキリクという。
 これからこの養成校の説明をしていく。
 この養成校の教師で一番若くて、社交的な僕が説明をするのはいつものことなんだけどさ……。
 と、それは置いておいて、ちゃんと聞くように」

 そう前置きをして始まった説明。それは主にこの養成校はオースラン王国、そしてギルド本部の支援によって成り立っている、というものだった。養成校の教師として、高ランク冒険者や王室所属の人が来てくれるらしい。

 そして、どうして寮やご飯が無償で提供されるのか、というのもここで判明した。ここに在学中に何度かダンジョンに行くのだが、そこで取れた素材は基本的には養成校が回収するらしい。それを売ったお金で生活費を賄う、と。ただ、回収額は決まっているから、それ以上に稼いだ場合はもらえるらしい。ふむふむ。

「そして、一年後の卒業時、王立学園と合同で剣闘大会、魔法大会が行われる。
 それにはオースランの王族も参加される。
 活躍できれば、その場でスカウト、ということもあるからぜひ頑張ってくれ」

 王族にスカウト。俺のような孤児、それじゃなくてもここに来ざるをえなかった人たちにとっては夢のようなことだ。実際、その話を真剣な目つきで聞いている人が多数。って、リキートもその一人か。

「それじゃあ、時間が惜しい。
 今日から始めていくよ。
 えーっと、魔力があると判定された5人はここに残り、他は外へ」

 はい、といういい返事の後、キリクさん含めほとんどの人が教室から出ていく。そのあとをリキートが追いかけて行った。あれ、リキートはこっちでは?

「あ、えっと、君たちも魔力持ちなんだよね。
 あれ、4人?」

「今一人行っちゃった」

「え、なんで?」

 さあ、と答えるしかない。残ったのは女二人に男二人。もう一人の女子はもうフェリラと知り合いらしく、楽しそうに会話している。

「フェリラ、知り合いか?」

「あ、うん!
 寮で同室なの。
 アルっていうんだ」

「あ、もしかして同じパーティの人?」

「うん。
 ハールだよ。
 あれ、リキートは?」

「なんかどこか行っちゃった」

 あ、戻ってきた。一体何だったんだろう。

「あ、リキート!
 この子ね、寮で同室の子!
 アルっていうんだ」

「あ、よろしくね。
 僕はリキート」

「うん、よろしく!」

「あ、あの。
 僕もいれてもらっていいかなぁ」

 わ、びっくりした! なんでそんな泣きそうな顔をしているの、この人。

「あ、えっと、君は?」

「僕はジラだ。
 なに、君たちもうパーティ組んでいるの?」

「うん!
 あたしはハールとリキートに入れてもらっただけだけど」

 ふーん、という反応のジラ。一体何が言いたいのか。そうこうしているうちに、誰かが教室に入ってきた。

「こんにちは。
 あなたたちが今年の魔力持ちね。
 ……5人なんて初めて見た」

「あの、あなたは?」

「私はマリーアベルト・ジェルク。
 王宮魔法師団に所属しています。
 あなた方に魔法について教えるため、来ました」

 早速王宮からの使者ですか。そこからは結局魔法について学ぶことになった。以前聞いたことがあって知っていたこともあれば初めて聞いてこともある。

「そういえば……。
 これ、私が口にしたこと、他で言わないでほしいのですけれど。
 皆さんは皇国が『呪われた国』と呼ばれることがあるのはご存じですか?」

 呪われた国? 聞いたことがあるような、ないような。首をかしげていると、ジェルク先生がささやくように言った。

「あの国ははるか昔、神様に見捨てられた国なのです。
 ゆえに、あの国では魔法を行使するときの言葉は、意味を持ちません。
 神様に、そしているのではと言われている精霊に、自分が行使したい内容を伝え、手伝ってもらうのが言葉です。
 神への、精霊への言葉が意味をなさない。 
 そこから、呪われた国といわれるのです。
 とはいえ、もともとの魔力量が多いためそれがなくとも魔法は行使できるようですが」

 あれは、そういう意味だったのか。小さい時の、あの皇子の言葉を思い出す。どうして、言葉を使うのか、と。意味がないから、あの皇室では使っていなかったのだ。

「さて、では実際にその違いを体感してみましょう」

 そういうと、今度は外に出ることに。先に出ていた魔力ない組はすでに外で剣等の練習をしていた。

「僕も剣の訓練をしたかったよ」

「そうなの?」

「うん。
 だから、魔法じゃなくってこっちの訓練に参加させてくださいって言いに行ったら、断られちゃった……」

 落ち込んだ様子のリキート。そういえば、リキートが家を出た理由って魔法がうまく使えなくて、弟や周りの人に馬鹿にされたからだっけ。確かに練習しても上達しないってわかっているものより、練習するほど上達する方に時間を割きたくなる。

「まあ、ひとまず頑張ろうぜ」

「うん……」

 う、こういう時どういう風に声をかければいいのかわからない……。

「さて、あそこに的が並んでいるのが見えますか? 
 まずはどんな風にあそこに当てるのか、想像してください。
 そして、自分の属性の魔法を放つのです。
 そうですね、イメージとしては火属性は炎、水属性は水球、土属性は土団子を、風属性は突風を、といった感じでしょうか」

「あ、あの、私はどうしたら?」

 先生の説明にフェリラが声を上げる。今の説明に入っていない、光属性のみ持っているからな。フェリラの発言にジェルク先生はきょとんとした後、手元の資料をぱらぱらとめくる。そして、はぁ!? と叫ぶジェルク先生。一体何事!?

「基本属性一切なしで、特殊属性だけ?
 いや、あり得るけれど……。
 こほん!
 あなたはひとまず見学で」

「わ、わかりました」

 これ、絶対に事前に確認していなかっただろ……。皆に疑いの目を向けられていることに気が付いたのか、ジェルク先生が慌てたように練習を始めるように言ってきた。この先生、大丈夫か?

 まずは言葉をなしで。何の属性を使おうか。先ほどジェルク先生の言葉を思い出し、一番違和感なく使えるのは炎か? イメージした後に実際に炎を的に飛ばす。ああ、確かになんかやりずらい。想像していたよりもだいぶ威力がない。

「炎よ、的を射ろ」

 おお! 比べてみるとすごくわかる! こんなにも違うのか。隣ではリキートが同じように魔法を放つ。リキートも同じ炎だ。そして、次は言葉とともに炎を放つ。やっぱり後半の方が威力が増した。……なんか、リキートの顔色が悪い?

 とにかく、こうして俺らの学園生活が始まった。
 
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