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3章 冒険者養成校
閑話
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プロローグから数えて、この話で50話目を迎えることができました! いつも閲覧、お気に入り登録、感想等本当にありがとうございます!励みになります。
できるだけ本編を進めることにしているので、2章からはあまり別視点での話を書いていないのですが、このような節目の話や、各章の間にでも閑話を書いていけたらいいな、と思っています。
初の閑話はハールと別れてからのミーヤの話になります。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。これからもぜひこの「『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?」を応援していただけますと嬉しいです。
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『彼』が現れたのは本当に突然だった。まあ、ここにくる子は皆突然現れるものだけれど。でも、他のこと明らかに違う『彼』は、私にとってどうしても視線を向けてしまう相手だった。
初めのうちはいっつもフードを被っていて、だからつい見てしまうんだって思っていた。でも、それが違うんだって気が付いたのはいつだったっけ?
「ミーヤねーちゃん!
なんでねーちゃんも出て行っちゃうの?」
「ごめんね……」
ここを出て神島に行くと決めたのは自分。でも、こんな風に号泣している弟や妹を見ていると、少しだけ心が痛むな。司教様が心配げにこちらを見ているけれど、私は行かないと。そうじゃないと、ハールには追いつけないから……。
「そろそろ行きましょうか?」
「はい」
「ミーヤ、元気でね」
「お世話になりました」
幼い時にこの孤児院にやってきた。その前の記憶はほとんど残っていないから、本当は少しだけ怖い……。でも、ハールはもっと何もわからない状態でここを出て行ったんだよね。だから、私も頑張らないと。
「ひとまず、このまま神島に向かいましょう」
「あの、よろしくお願いいたします、司教様」
「ああ、司教は私だけではないのです。
名前を付けて呼んでいただけると助かります」
「えっと、べ、べべ……」
「ベベグリア、です。
我ながら覚えずらい名前で申し訳ない」
「い、いいえ!
ベベグリア司教様、ですね」
ちゃんと名前を憶えなくちゃ! 私をあそこから連れ出してくれた人だもの。ずっとあそこにいれば、私はきっとすぐにハールにおいて行かれちゃったから。少しでも隣に並べる可能性をくれたんだもの、本当に感謝しなくちゃ。
「そんなに気負われなくても大丈夫ですよ。
あなたは、あなたのままでいいのですから」
「私のままで……?」
「はい。
他の方と違った感覚を持っているというのは、それだけで重荷になります。
自分が異質に感じてしまう。
神島出身でしたら、そんなことはないのですがね。
でも、私も実はこの大陸の出身なのです。
この力があまりわからなかったときは、苦労しました」
特別だからこその苦労。その言葉はあまり、私には当てはまらないな。そういう意味ではあそこはとてもいい場所だったのかもしれない。皆、私を受け入れてくれた。皆が、世間からは受け入れてもらえなかったあぶれもの、だったから。身を寄せ合い、お互いを守りあうことしかできなかったから。
「でも、あなたはまっすぐなままです。
少しまぶしいくらい、あなたの色は真っ白だ」
「そんなこと、ないです」
「そうですか?
そうだ、あなたはミベラ教についてどのくらい知っていますか?
やはり少しくらいは知っておいた方がいいでしょう」
「実は、あまり……」
怒られてしまうかな、そう思って見上げると、意外にも司教様はやさしい顔をしていた。そして、丁寧に説明をしてくれる。それはミベラ教とは何か、といったことから始まり、教皇のお話、神島での生活、いろんなことを話してくださった。
まだあまり想像ができないけれど、でも頑張るって決めたんだ。ハールが言ってくれたように、多くの人にとって救いになるように、頑張るって。
少し愉快な司教様との旅は順調に進んでいった。たまに孤児院などに寄りつつ、神島に渡るためにタクチェ王国へと向かう。そして、そこからは船旅だ。船……、初めて乗る。そもそも海というものを見たのが初めてだ。
「……うっ」
「大丈夫ですか?」
ううう、気持ち悪い。なんでこんなに揺れるの? そう思っていたら、司教様がゆっくりと背中をなでてくれた。すると、不思議と気持ち悪さがなくなってくる。一体何を?
「少しばかり魔力を使ったのですよ。
もう楽になりましたか?」
「はい、ありがとうございます」
魔力。こんな使い方もできるんだ。存在は知っていたけれど、今まで身近ではなかったから知らなかったな。優しい司教様。こうして孤児の私にもとっても優しくしてくれる。ここまでの旅の途中でも、いろんな人を笑顔にしていた。だから。だから、きっと、ハールをあそこから追い出したのは何かわけがあったんだよね? 私にはまだそれはわからないけれど、いつかはきっとわかるようになりたい。
気持ち悪さがどうにかなってからは、船旅もなかなか楽しい。この船の行先は神島だから、変なお客さんもいないみたい。甲板にでて、海風を感じていると、誰かが同様に甲板に出てくるのを感じた。何となく気になってそちらを見てみると、その男性は海を眺めながら、懐中時計を取り出した。その横顔はどこか寂し気。
……あの、時計。同じものでは決してない。パッと見ただけでも色が違う。でも、よく似ている、ハールが持っていたあの時計に。
「あ、あの!
その時計!」
ねえ、ハール。あなたは一体何者なの? 何者だってかまわない。でも、どうしても気になってしまうよ。
できるだけ本編を進めることにしているので、2章からはあまり別視点での話を書いていないのですが、このような節目の話や、各章の間にでも閑話を書いていけたらいいな、と思っています。
初の閑話はハールと別れてからのミーヤの話になります。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。これからもぜひこの「『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?」を応援していただけますと嬉しいです。
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『彼』が現れたのは本当に突然だった。まあ、ここにくる子は皆突然現れるものだけれど。でも、他のこと明らかに違う『彼』は、私にとってどうしても視線を向けてしまう相手だった。
初めのうちはいっつもフードを被っていて、だからつい見てしまうんだって思っていた。でも、それが違うんだって気が付いたのはいつだったっけ?
「ミーヤねーちゃん!
なんでねーちゃんも出て行っちゃうの?」
「ごめんね……」
ここを出て神島に行くと決めたのは自分。でも、こんな風に号泣している弟や妹を見ていると、少しだけ心が痛むな。司教様が心配げにこちらを見ているけれど、私は行かないと。そうじゃないと、ハールには追いつけないから……。
「そろそろ行きましょうか?」
「はい」
「ミーヤ、元気でね」
「お世話になりました」
幼い時にこの孤児院にやってきた。その前の記憶はほとんど残っていないから、本当は少しだけ怖い……。でも、ハールはもっと何もわからない状態でここを出て行ったんだよね。だから、私も頑張らないと。
「ひとまず、このまま神島に向かいましょう」
「あの、よろしくお願いいたします、司教様」
「ああ、司教は私だけではないのです。
名前を付けて呼んでいただけると助かります」
「えっと、べ、べべ……」
「ベベグリア、です。
我ながら覚えずらい名前で申し訳ない」
「い、いいえ!
ベベグリア司教様、ですね」
ちゃんと名前を憶えなくちゃ! 私をあそこから連れ出してくれた人だもの。ずっとあそこにいれば、私はきっとすぐにハールにおいて行かれちゃったから。少しでも隣に並べる可能性をくれたんだもの、本当に感謝しなくちゃ。
「そんなに気負われなくても大丈夫ですよ。
あなたは、あなたのままでいいのですから」
「私のままで……?」
「はい。
他の方と違った感覚を持っているというのは、それだけで重荷になります。
自分が異質に感じてしまう。
神島出身でしたら、そんなことはないのですがね。
でも、私も実はこの大陸の出身なのです。
この力があまりわからなかったときは、苦労しました」
特別だからこその苦労。その言葉はあまり、私には当てはまらないな。そういう意味ではあそこはとてもいい場所だったのかもしれない。皆、私を受け入れてくれた。皆が、世間からは受け入れてもらえなかったあぶれもの、だったから。身を寄せ合い、お互いを守りあうことしかできなかったから。
「でも、あなたはまっすぐなままです。
少しまぶしいくらい、あなたの色は真っ白だ」
「そんなこと、ないです」
「そうですか?
そうだ、あなたはミベラ教についてどのくらい知っていますか?
やはり少しくらいは知っておいた方がいいでしょう」
「実は、あまり……」
怒られてしまうかな、そう思って見上げると、意外にも司教様はやさしい顔をしていた。そして、丁寧に説明をしてくれる。それはミベラ教とは何か、といったことから始まり、教皇のお話、神島での生活、いろんなことを話してくださった。
まだあまり想像ができないけれど、でも頑張るって決めたんだ。ハールが言ってくれたように、多くの人にとって救いになるように、頑張るって。
少し愉快な司教様との旅は順調に進んでいった。たまに孤児院などに寄りつつ、神島に渡るためにタクチェ王国へと向かう。そして、そこからは船旅だ。船……、初めて乗る。そもそも海というものを見たのが初めてだ。
「……うっ」
「大丈夫ですか?」
ううう、気持ち悪い。なんでこんなに揺れるの? そう思っていたら、司教様がゆっくりと背中をなでてくれた。すると、不思議と気持ち悪さがなくなってくる。一体何を?
「少しばかり魔力を使ったのですよ。
もう楽になりましたか?」
「はい、ありがとうございます」
魔力。こんな使い方もできるんだ。存在は知っていたけれど、今まで身近ではなかったから知らなかったな。優しい司教様。こうして孤児の私にもとっても優しくしてくれる。ここまでの旅の途中でも、いろんな人を笑顔にしていた。だから。だから、きっと、ハールをあそこから追い出したのは何かわけがあったんだよね? 私にはまだそれはわからないけれど、いつかはきっとわかるようになりたい。
気持ち悪さがどうにかなってからは、船旅もなかなか楽しい。この船の行先は神島だから、変なお客さんもいないみたい。甲板にでて、海風を感じていると、誰かが同様に甲板に出てくるのを感じた。何となく気になってそちらを見てみると、その男性は海を眺めながら、懐中時計を取り出した。その横顔はどこか寂し気。
……あの、時計。同じものでは決してない。パッと見ただけでも色が違う。でも、よく似ている、ハールが持っていたあの時計に。
「あ、あの!
その時計!」
ねえ、ハール。あなたは一体何者なの? 何者だってかまわない。でも、どうしても気になってしまうよ。
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