『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

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3章 冒険者養成校

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 まず、魔獣の量がおかしい。倒しても次から次へとやってくる。しかも強い!

 確実に弱点を狙って、そんなことを考えている余裕すらない。というか、弱点なんてわからないのが多い。魔獣を認識する。炎、氷、風、そして土。その時ぱっと思いついたものをすぐに口にする。そして動きが鈍ったところで剣でとどめを刺す。ああ、血が噴き出す。これは確かに返り血を浴びるかも。

 3人とも魔法以外の言葉を口にしようとしない。先生たちは基本監視体制らしい。とにかく無言でひたすら倒していく。そしてけがをしたらフェリラに治してもらう。その繰り返し。

 時折フェリラが射っているいるらしい矢が横を飛んでは天井や床にいる魔獣、とにかく何かしらにあたっていく。はたしてこれはフェリラのコントロール力のおかげなのか、それほど魔獣がいるという証なのか。

 そしてそうしていると奥の方からうなり声が聞こえてきた。それだけで空気が揺れる。今までのやつらとは違う……。もしかしてあの時の中長、みたいなやつか?

「ミノタウロス?」

 つぶやいたのはリキート。ミノタウロス。聞いたことはある。じりじりとほかの魔獣を相手にしつつ、中長の様子を伺う。今までは奥で座っていたミノタウロスが不意に立ち上がった。来るか?

 ああ、見つかったな。こちらを見ている。そしてうめき声、いや、雄たけびを上げる。

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

「うぐっ!」

「っ!」

 なんだ、これは。声だけで周りにいた魔獣がバタバタと倒れていく。俺もいまだにびりびりとしびれている。そしてそいつがにやりと笑った。

「ぐっ!」

 ガキン! と火花が散る。いつの間に! ほぼ目では見えていない。条件反射で何とかしのいだようなものだ。このまま脳天ぶち抜きたいが、無理。

「ハール!」

「リキー、ト」

 こっちはいいから、自分のこと考えろよ! そう思っていても口に出せる状況じゃない。だめだ、力で勝てるわけがない。

『ハール』

(うん、お願い)

 言った瞬間、先ほどよりも力が出る。そしてぱきっ、という音がした。角が割れた? するとミノタウロスが身を引く。と思ったら、今度はリキートの方に行った。大丈夫か!?

「くそっ!」

 おお、避けた。そして剣で挑むのではなく、魔法でミノタウロスに攻撃していく。初回のダンジョンの時、決して魔法を使わなかったが何か心境の変化があったらしい。今日は魔法を使っている。

 っと、感心している間はない。

「フェリラ、少し離れていろ」

 さすがに魔法をまとわせてもいない矢はおそらくあいつには効かない。下手に手出しされるくらいなら何もしないでほしい。

 さて、どうやって倒すか。

(シャリラント、こいつの弱点は?)

『そうですね……。
 首を狙うのが一番かと』

 首か。あんなにがっしりしてそうなのに、あそこが一番いいのか。まあ、シャリラントがそういうならそうなのだろう。首か……。

「土の刃よ、ミノタウロスの首を貫け」

 床に手をつき、そう唱える。だが、さすがに無理があったようだ。土は途中まで盛り上がるも、首まで届かずに終わる。だが、予想外の収穫があった。

 俺が思っていたのとは違ったが作り出した土の刃は、そのままミノタウロスの足を貫いてくれた。動きが止まる。その隙を見逃さずリキートが剣を突き立てた。だが場所が悪い。シャリラントが手助けする中、走りよる。そして首をめがけて剣を振りかぶる。ずしり、と剣を持つ手に重みがかかる。これは俺一人の力では掻き切れない。だが、剣は途中で止まることなくミノタウロスの首を刎ねた。シャリラントが力をかしてくれたのだ。



「いやー、まさか本当にこいつに勝っちゃうとは」

「いや、笑い事じゃないんですけれど」

「でも、本当に君たちは期待以上だ。
 さあ、上に行こう」

 上? あ、確かにあいつがいたところの後ろになんだか階段が見える。これ、階が上がったらどうなるんだ……?

 こっちは恐る恐る上っているのに先生たちはまったく気にしていない。って、なんだが魔獣たちが皆倒されている……?

 途中でたまに出てくる魔獣を先生たちが倒しながらも無言のままとにかく登っていく。一体どのくらい登っただろうか。不意に明らかにやばそうな扉が現れた。大きく、豪華な扉。絶対長だろ……。

「行きますよ」

 行きますよって……。さっきからとにかく説明が足りなすぎる。従うしかないからちゃんと従うが。そして、重そうな扉がゆっくりと開かれた。


 中で誰かが戦っている? そんな音が絶えず聞こえてくる。俺の中でダンジョンの長と言えば、フェリラの村のやつだ。だからきっと真っ白な、そんなものを想像していた。だがこの部屋にいた長は濃い灰色、といった色合いで、ぎょろぎょろと目を動かしていた。気持ち悪い……。そして足が、動かない。
 しかも何か黒い靄が覆っている。見間違えではない、よな? それの圧力がすさまじいのか、収まっていた冷や汗がまた噴き出してきていた。

 恐らくダンジョンに入ったときに感じていたものは、これだ。大切なものを失うといった恐怖とは違う、本物の命の恐怖。手負いの獣が放つ殺意はすさまじいものがある。

 そして謎の男と戦っていたそいつは不意にこちらに狙いを定めた。

「え……?」

 来る、そう思った瞬間には長は倒れこんだ。そして苦し気なうめき声を上げ始める。これだけで空気が震えている……。

『クルシイ……、イタイ……、ナンデ……』

 ……え? 今のは、一体? 疑問に思っている間に長の体は消えていく。誰も、なにも反応しない。聞こえていない……?そしてそのあとに残ったものを謎の男は手に取った。

「はー、やっと終わった」

「お疲れ様です」

 そう息をついた、謎の男。あの顔って……。

「イシュー、さん?」

 サーグリア商会と旅をしていた時、一度一人で外を歩いた時がある。その時に声をかけてくれた男性。なぜか今まで忘れることはなかった。なんでここに?

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