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4章 皇国
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しおりを挟むなんだか優しい目を向けられている気がすることは意識しない、うん。フェリラとリキートの反応は真反対。リキートは平然としているのに、フェリラはだいぶきょどきょどしている。うん、フェリラ見ていると安心できるわ。
「さあ、こちらへ。
まずは湯あみをいたしましょう。
そのあとは……」
どうやら休めるのはしばらく後になりそうだ。
言葉の通りにまずは浴場へと案内される。フェリラは別のところに案内されたところを見ると、浴場も二つあるんですね……。そして上がった後はリキートとも別れることに。
端的に行ってしまうとただ突っ立っていただけ。だけどその間によくわからないマッサージにはじまり、服装もだいぶ豪華なものだ。袖を通すだけでこれが高級なものだろうとわかるくらい。仕上げに髪もセットされてしまう。この後は食事のはずなんだが……。
「スーハル皇子、準備ができましたか?」
一通りの準備が終わったタイミングで、リヒトが部屋へとやってきた。屋敷に入る前に別れたきりだったのだが、なんかその時よりも疲れている……?
「ああ、ずいぶんとあの方に似てきましたね」
あの方、そう懐かしそうに眼を細めて言うリヒト。きっと兄上のことなのだろう。兄上に、似てきたのだろうか。どう返したらいいかわからなくて、つい視線を下げる。そんな俺にどう思ったのか、すみません、と小さく謝られてしまった。
違うんだ、そう口にしそうになったけれど、何が違うのか俺にもわからない。兄上に似てきた。それは純粋に嬉しい言葉だ。でも、兄上には憧れとか、申し訳なさとか、未だにいろんな感情が入り乱れる。母上にもだけれど。だから、すぐに反応できないんだ、たぶん。
「あの、大変申し訳ないのですが……」
「リヒト?」
一体何が申し訳ないのか。何となく嫌な予感がする。恐る恐るリヒトの方を見るが、どことなく顔色悪いよね。
「今からここに第一皇子がいらっしゃいます」
「……え?」
「いろいろと面倒なので、本当は避けたかったのですがごり押しされました。
すみません。
あなたと私の二人と殿下の3人で夕食になります」
え、それは嫌だ。そう言いたかったけれど、こんな短時間で疲れた顔になったリヒトを見ているとさすがに言い出せませんでした。うう、嫌だな……。
憂鬱な気持ちになりながらもリヒトの後ろに続いていく。それにしてもなんで第一皇子がここまで来てしまったのか。おとなしく皇宮にいてくれればよかったのに。
「なにがあっても私が助けますので、ご安心ください」
思わずため息が出てしまうくらい暗い気持ちになっていると、リヒトがそんなことを言う。それは本当に俺に対して言ったのか、独り言だったのかわからないくらいの声量。でも、固い言葉で言われたそれにリヒトの覚悟を感じた。
そのあとはひたすら進んでいく。いや、やっぱり広いわ。家の中をこんなに移動したことあるだろうか。最初に暮らしていたところは確か広かった気がするけれど、使っていた部屋が限定的すぎて移動は狭かったから。そんなことを考えていると、ついにリヒトの足が止まった。
「リヒベルティア様。
キャバランシア皇子はすでに中にてお待ちです」
「わかった」
リヒトに声をかけた後、侍従が扉を開ける。実は会ったことがない第一皇子。なんだか第六皇子が世話になったからと、文具をもらったことがあるくらいしか接点がなかった気がする。一度深呼吸した後、俺は中へと入っていった。
「お待たせいたしました」
「ああ、こちらが急に来てしまったのだ。
気にしないでくれ」
どっちが家主だ、と聞きたくなるような態度で俺たちに席を勧める皇子。この人が……。
「そちらのものが?」
「はい。
第七皇子、スーベルハーニ・アナベルク皇子です」
「確認は?」
「行いました」
ちらりと俺の胸元を見て、第一皇子にそう伝える。そんなリヒトに皇子は一つうなずいた。
「まずは食事にしましょう。
お話は食事後に」
「ああ、そうしようか。
せっかくの食事は楽しまないとな」
そうして始まった食事。楽しんで、といいました? え、この状況でどうやって楽しんで食事するんだ? ものを口に入れる、噛む、飲み込む。ひたすらこの動作だけを繰り返す。おいしい、のだろう。でも正直緊張しすぎてあまり味がしなかった。
「オースランへの旅はどうだった?」
「そうですね、久しぶりに国を出ましたが、やはりたまには足を運ばないとだめですね。
何がどう変わっているのかわからなくなりますね。
今回もスーベルハーニ皇子を迎えに行くことが目的だったため、ゆっくり見ることができませんでしたし。
今度、ゆっくり行きたいですね」
「はは、それは一体いつの話だい?
今君にいなくなられると困るのだけれど」
「皇子が入れば大丈夫でしょう」
なんだか妙に火花が散っている気がする。うん、これは気のせいだよね。ということで、俺は食事に集中しましょう。
「えーっと、スーベルハーニ、だよね。
おいしいかい?」
「え、あ、おいしいです」
急に話を振らないでよ……。しかもそれを聞くのはリヒトじゃなくてあなたなんですね。まあ、もう突っ込まないけれど。味もよくわからないけれど、ひとまずそう返しておいた。
結局そのあとはもくもくとご飯を食べることになりました。
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