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4章 皇国
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しおりを挟む皇宮に戻るともう晩御飯の時間。買ってきた茶葉を置いてくるから待っていてくれと言われたので素直に待っています。さっきも食べてしまったけれど、そんなに大きいものではないからお腹がすいてしまった。
「お待たせ、行こうか。
食事の場所は厨房のすぐ近く、俺たちが会ったところだ。
朝昼晩、時間は決まっていてメニューは一種類。
たまに選べることもあるな」
説明を聞きながら進んでいく。もう人が集まっているようでにぎやかな声が聞こえてきた。苦手なものがないというのはこういう時は本当に便利だ。メニューが一種類って好き嫌い激しいと食べれない日も多そう。そんなことを考えていると食堂についた。
「セットになっているのがこうやって置いてあるから、適当に一つとればいい。
水が飲みたければ自分でついでくれ」
いいながらも今回はグルーさんが一緒についでくれる。メニューは一種類でも量が違うタイプが二つ用意されていた。その場で盛らない代わりに初めから量を多少は調節できるようになっているよう。ここは男性も女性も一緒に食事をとっているから、さすがに同じ量とはいかないのだろう。
「あ、食事は残すなよ。
どうしてもっていう事情があるなら別だが、残すと怖いからな」
ちらっと視線を向けた先には恰幅のいいおばちゃんたちが。おそらくここの食事を作っている人だろう。た、確かに怒らせると怖そう……。
「おい、グルー!
こっちこいよ」
どこに座ろう、ときょろきょろとしていると一角から声が上がった。どうやらグルーさんの知り合いらしく、気軽な様子でそちらへと合流することになった。
「そいつが噂の新人か?」
興味津々と言った様子でこちらを見てくる人たち。グルーさんはああ、とだけ答えてこちらの方を見る。これは自分で挨拶しろということだろう。ひとまずご飯を机に置くと挨拶をすることにした。
「初めまして、ハールといいます」
「おう、よろしくな!」
にこやかに返してくれつつもその目には好奇心がうかがえる。えっと?
「なあ、聞いていいか?」
「は、はい、どうぞ」
一体何を聞かれるんだ、と思わず身構えてしまうほどの真剣な顔にひとまずうなずき返す。
「ハールは皇族に縁があるのか?」
その瞳、と眼を示す。ああ、やっぱり聞かれるか。あまりにもグルーさんが自然に接してくれるからついつい意識していなかったけれど、もともとこの瞳はこの国では目立つのは知っていた。皇族以外ではあまり生まれない色だからな。なのでもちろん言い訳も考えていましたとも。
「先祖に皇族に連なる人が居たみたいです。
俺は先祖返りみたいな感じで、たまたまこんな色に」
「へー。
蒼の瞳って結構皇族の血が濃くないと出ないって聞くけど。
そういうこともあるのか」
「公爵家の人からの紹介だって聞いてたから一体どんな人が来るんだって噂になっていたが、なるほどな。
それにしてもよかったな、うまく皇宮に紹介してもらえて。
今この国で一番安定している職だぞ、たぶん」
「ああ、本当に。
ここには人も食も集まるからな。
くいっぱぐれることはない」
給料の支払いはわからないがな、とからからと笑う。そ、それにどう答えろと……。でもそれが今の国の現状なのだろう。
「ま、なんにせよこれからよろしくな」
「よろしくお願いします」
ほら飯が冷めるから、という言葉に慌ててご飯を口に運ぶ。あ、おいしい。高級品店とかの味とは違う、家庭的なおいしさだ。なんだか安心できるおいしさ。それにしても思っていたよりも暖かく迎えてもらえて安心した。
さて、翌日から何をしたかというと、端的に言えば真面目に仕事に取り組んだ。どうすればいいのかわからないなら、ひとまずここの仕事に慣れることに注力しなければと思ったのだ。リヒトが指名しただけあって、グルーさんはとても分かりやすい。
「ここはいろんな人が通るからそれだけ汚れも頻繁にたまる。
ほら、こういう影のところまで気を付けて掃除をしないと後で文句を言われるからな」
掃除用具を俺の分も用意してくれ、基本的なやり方からコツまで幅広く教えてくれる。掃除なんて孤児院でしていたくらいだから、結構適当な方法しか知らないんだよな。こうして改めて教えてもらうと建物のきれいさはこういう努力で支えられているんだとわかる。
「さて、お昼を食べたら俺たちもお茶会の準備だ。
運ぶものばかりで体力勝負になるぞ」
「え、っと、またですか?」
「ああ、まただ。
準備は初めてだよな?」
「はい。
こんなに頻繁に開くなら、いっそ出しっぱなしにしておけば手間が省けるのに」
「毎回違うところでやっているからな。
それにずっと外に置いておいたら痛みも激しくなる」
「まあ、そうですけど」
お茶会の準備も大切な仕事の一つだとは思うけれど、こんな頻繁だとさすがにな。だが、グルーさんに言っても仕方ないのは知っているし、これ以上文句を言うわけにもいかないし。結局は自分の仕事をするしかないのだ。
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