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4章 皇国
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さて、男性陣がやるのはもちろん力仕事。だがその前に一帯の掃き掃除から始まる。今回は中ではなく、季節の花が咲き乱れる庭の中でやるので花びらや葉っぱが多く落ちているのだ。やり方を教わりつつ丁寧に掃き掃除をすると次は荷物の運びだしに移っていく。
倉庫からテーブルを運び出し、椅子を運びだし……。それだけだったら簡単なのだが、他にも華やかにするためのものをいろいろと。やっと運び終わったと思ったら、今度は厳しい微調整が入る。やっと用品の設置が終った……。うすうす思ってはいたが、これやっぱり面倒だよ。
「さ、次は掃除だな。
まずはテーブル、椅子を拭かないと飾り付けができない」
「また掃除なんですね……」
「テーブルとかも使うものが違えば埃もかぶってしまうからな。
さすがに汚れがあるものでお客人を迎えるわけにはいかない」
「確かにそうですね」
そのあとは無駄口をたたくことなく、何とか汚れ一つないように磨き上げるとようやく終わっていいと許可をもらうことができた。
次は女性陣による飾りつけが始まる。テーブルクロスをかけ花を飾りとあわただしく動いている。それを特に何か考えるでもなく見ていると、俺たちにそっと近づいてくる人が居た。
「な、ハールも片づけいるんだよな?」
「あ、はい」
「じゃあ、やっと御馳走食べれるな」
ニヤニヤと笑うように俺たちに話しかけてきたのは同僚であるマーシェという男性だった。人当たりがいい人でとても話しやすい彼は下働きの中でも目立つ存在だった。それにしてもごちそう……。正直興味がある。食堂のご飯もおいしいけど、やっぱり食べてみたい。デザートとかこっち来てから全然食べれてないし。
でもグルーさんはそう言うの嫌がりそうなんだよな……。どうだろう、とちらりとグルーさんのほうを見る。その視線に気が付いたようでグルーさんがこちらの方を見た。どうしよう、直接残りもの食べていいですかなんて聞くのもおかしな話だし。
「別に、俺は何も見ないぞ。
禁止されているわけでもないし」
「あ、ありがとうございます」
よかったな、と声をかけてくれるマーシェ。うん、素直に楽しみだ。準備や片づけは面倒だけれどこれは支度を担当した人たちの特権だそうだ。それでも余るとほかの人に回ると。
会場設営が終ったら次は荷物運びとやることは尽きない。会場に関してはもう俺たちにやることはない。今日はまだ泊まる人が全然いないだけまだ準備が楽みたいだけれど。
「つ、疲れた……」
「お疲れさま。
慣れないと大変だろうけど、何回かやっていたらなれるよ」
「慣れたいような、慣れたくないような……」
慣れるほど重ねるのは避けたい気がする。そんな気持ちからぽつりと言うと思い切り笑われてしまった。いや、だってさ。
「ほら、早く飯食って風呂行こう。
今日は早めに休もうか」
「はい……」
うう、グルーさんが優しい……。
この皇宮勤めで驚いたこと、嬉しかったことは自由に入れる風呂があることだ。毎日入れるわけではないが、それでも入れる日が多い。初めはこんなのもあるよ、とグルーさんに誘ってもらったことだった。
俺が風呂好きだと知ってから、グルーさんはこうして風呂の日は誘ってくれるようになった。一人で入りに行く勇気はまだないから付き合ってくれるのはとてもありがたい。
今日もおいしい食事を堪能して、さっさとお風呂に。元日本人としてはお風呂は好きだが、気を遣うところでもある。魔力を使うようなことがなければいいのだが、万が一があったときには速攻でばれる。でも、ゆっくり浸かって体を癒したい。この葛藤がいつもある。何事も起こりませんように……。
「そういえば、今日は風呂に薬草を浮かべているらしい」
「薬草、ですか?」
「そう。
たまにあるんだよ。
連日茶会だ夜会だって忙しい俺たちを少しでも労わるためにって」
「なる、ほど?」
「ちなみにこれ、リヒベルティア様の発案な」
違うのはほかの人の影響なのにな、と苦笑い。そっか、リヒトが。それにしても薬草風呂って初めて入る。ちょっと楽しみかも。
「あれ、マーシェさん?
風呂に入るなんて珍しいですね」
脱衣所に行くと先ほどの準備でも一緒だったマーシェさんが。この人が風呂に来るなんて珍しい。
「いや、今日は薬草風呂って聞いてな。
最近どうもぼーっとすること多いし入っておくか、と思って」
「風呂が嫌いなわけではないんですね」
「いや、面倒だから入ってなかっただけ」
そんなものなのか? まあ、今は忙しいし癒されたくなるのもわかる。そう思うとリヒトはいいところをついている気がする。
倉庫からテーブルを運び出し、椅子を運びだし……。それだけだったら簡単なのだが、他にも華やかにするためのものをいろいろと。やっと運び終わったと思ったら、今度は厳しい微調整が入る。やっと用品の設置が終った……。うすうす思ってはいたが、これやっぱり面倒だよ。
「さ、次は掃除だな。
まずはテーブル、椅子を拭かないと飾り付けができない」
「また掃除なんですね……」
「テーブルとかも使うものが違えば埃もかぶってしまうからな。
さすがに汚れがあるものでお客人を迎えるわけにはいかない」
「確かにそうですね」
そのあとは無駄口をたたくことなく、何とか汚れ一つないように磨き上げるとようやく終わっていいと許可をもらうことができた。
次は女性陣による飾りつけが始まる。テーブルクロスをかけ花を飾りとあわただしく動いている。それを特に何か考えるでもなく見ていると、俺たちにそっと近づいてくる人が居た。
「な、ハールも片づけいるんだよな?」
「あ、はい」
「じゃあ、やっと御馳走食べれるな」
ニヤニヤと笑うように俺たちに話しかけてきたのは同僚であるマーシェという男性だった。人当たりがいい人でとても話しやすい彼は下働きの中でも目立つ存在だった。それにしてもごちそう……。正直興味がある。食堂のご飯もおいしいけど、やっぱり食べてみたい。デザートとかこっち来てから全然食べれてないし。
でもグルーさんはそう言うの嫌がりそうなんだよな……。どうだろう、とちらりとグルーさんのほうを見る。その視線に気が付いたようでグルーさんがこちらの方を見た。どうしよう、直接残りもの食べていいですかなんて聞くのもおかしな話だし。
「別に、俺は何も見ないぞ。
禁止されているわけでもないし」
「あ、ありがとうございます」
よかったな、と声をかけてくれるマーシェ。うん、素直に楽しみだ。準備や片づけは面倒だけれどこれは支度を担当した人たちの特権だそうだ。それでも余るとほかの人に回ると。
会場設営が終ったら次は荷物運びとやることは尽きない。会場に関してはもう俺たちにやることはない。今日はまだ泊まる人が全然いないだけまだ準備が楽みたいだけれど。
「つ、疲れた……」
「お疲れさま。
慣れないと大変だろうけど、何回かやっていたらなれるよ」
「慣れたいような、慣れたくないような……」
慣れるほど重ねるのは避けたい気がする。そんな気持ちからぽつりと言うと思い切り笑われてしまった。いや、だってさ。
「ほら、早く飯食って風呂行こう。
今日は早めに休もうか」
「はい……」
うう、グルーさんが優しい……。
この皇宮勤めで驚いたこと、嬉しかったことは自由に入れる風呂があることだ。毎日入れるわけではないが、それでも入れる日が多い。初めはこんなのもあるよ、とグルーさんに誘ってもらったことだった。
俺が風呂好きだと知ってから、グルーさんはこうして風呂の日は誘ってくれるようになった。一人で入りに行く勇気はまだないから付き合ってくれるのはとてもありがたい。
今日もおいしい食事を堪能して、さっさとお風呂に。元日本人としてはお風呂は好きだが、気を遣うところでもある。魔力を使うようなことがなければいいのだが、万が一があったときには速攻でばれる。でも、ゆっくり浸かって体を癒したい。この葛藤がいつもある。何事も起こりませんように……。
「そういえば、今日は風呂に薬草を浮かべているらしい」
「薬草、ですか?」
「そう。
たまにあるんだよ。
連日茶会だ夜会だって忙しい俺たちを少しでも労わるためにって」
「なる、ほど?」
「ちなみにこれ、リヒベルティア様の発案な」
違うのはほかの人の影響なのにな、と苦笑い。そっか、リヒトが。それにしても薬草風呂って初めて入る。ちょっと楽しみかも。
「あれ、マーシェさん?
風呂に入るなんて珍しいですね」
脱衣所に行くと先ほどの準備でも一緒だったマーシェさんが。この人が風呂に来るなんて珍しい。
「いや、今日は薬草風呂って聞いてな。
最近どうもぼーっとすること多いし入っておくか、と思って」
「風呂が嫌いなわけではないんですね」
「いや、面倒だから入ってなかっただけ」
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