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4章 皇国
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夜が明けると、再度話し合いの席が持たれた。お互いの状況を整理する必要があるとのこと。それに、きっとルックアランの最期についても聞きたかったのだろう。
淡々と何があったのかを話していく。そこにはなるべく感情をのせないようにした。
「そうか……。
ルックアランは母と共に逝ったのか」
「申し訳ございません」
「いいや、それならそれで構わない……」
「一つ、聞いてもいいですか?」
昨日、部屋に戻って眠りに落ちるその直前。ふと頭をよぎった疑問があったのだ。俺の発言にキャバランシア皇子が先を促す。
「どうして、こうも簡単に制圧が終ったのですか?
皇子と勢力を別っていたにしてはあまりにもあっけない」
「それに関しては、事前の根回しと幸運も手伝ったのだろう」
「幸運、ですか?」
「ああ。
そもそも狙った時間帯としても手薄であったし、あの時皇后側にいた騎士は忠誠心の薄いものばかりであった。
手ごわい相手となりそうな将軍どもはモンラース率いる軍が引き受けてくれたしな」
モンラース皇子が……。そう言えば、以前俺が変化をもたらしたとか言っていたような?
「だが、一番は幸運だったのだ。
いくら下準備をしたとしても当日は何が起こるのかわからないからな」
ルックアランのように、そう言葉を付け加える。あの人は、本当はどういう人だろうか。まさか、俺の正体がわかっていたとは思わなかった。そのうえで俺が有利になるように、と行動していたとは。何もかも、思っていたこととは違っていた。
「さて、これでようやく改革を進めることができる。
先にシングレ王国の件を片付けなければ」
「策はあるのですか?」
「まずは麻薬を送り返す。
こちらは気が付いていると、そう示した後はあちらの出方次第だろう。
まあ、何か仕掛けてくる前にまずは国内を整えなければいけないがな」
「新陛下の御心のままに」
恭しく膝をついたのはカンペテルシア皇子。それに従うように俺も見よう見まねで膝をついた。皇族としての教育などろくに受けていない。これが間違っていたって別にいいだろう。
そこからは慌ただしい日々を送ることになった。キャバランシア皇子の即位が国に伝わるとともに、俺は第七皇子としての立場を取り戻すことになったからだ。この立場に思うところはないが、それがもとからの条件でもあったから異論はない。
そして、あのとき落とした首。あの殺し方は初めから指定されたものであった。その首は多くの民の目に留まる広場に掲げられている。それは新しい時代の幕開けを知らせるものになる。
普通なら目にもいれたくないものを、国民はこぞって見に行ったらしい。自分たちを苦しめ続けた元凶の顔を。そして、同時に新しく皇帝位に就くキャバランシア皇子のことを民は予想以上に喜んで称えた。皇帝の実子であり、皇子であったキャバランシア皇子の即位に関して一定数は拒絶を示すかと思われていたが、そうはならなかった。それはこの人たちとは異なる方法で国を導くと約束したキャバランシア皇子への、そして生活の側で支えてきた双子の皇女への期待でもあったのだろう。
本来なら一定期間喪に服したのち、新陛下は即位することとなる。だが、今回はクーデター。喪に服すこともなくキャバランシア皇子は皇帝となった。残る皇子たちもキャバランシア皇帝への忠誠を即位式で誓うこととなる。
そして、粛清対象となったものたちの処刑は速やかに行われていった。民の長年苦しめられたうっ憤を晴らさせるかのような方法で。使えるものはすべて余すことなく使ってでも国を掌握せねば、そうキャバランシア皇帝は言っていた。その対象には宰相もいたらしく、新しい宰相にはカンペテルシア皇子が就くようだ。それと同時に新しい公爵位を持って臣下に下ることとなる。てっきりリヒトが就くのかと思っていたが、断固拒否されたらしい。
モンラース皇子はそのまま騎士団長へと着任した。確実に、キャバランシア皇帝の手のもので皇宮内は支配されていった。それでも手は足りない。まずはこれを機に皇国を攻めようと考えないように手を打つ必要があった。
とはいえ、ほぼ部外者として育ってきた俺はやれることがほぼない。まあ、シャリラントをもって神剣の持ち主が皇子にいると示すくらいか。ひとまずマナーを身に付けろ、となぜか俺はこんな中でマナー講座を受けさせられていた。
淡々と何があったのかを話していく。そこにはなるべく感情をのせないようにした。
「そうか……。
ルックアランは母と共に逝ったのか」
「申し訳ございません」
「いいや、それならそれで構わない……」
「一つ、聞いてもいいですか?」
昨日、部屋に戻って眠りに落ちるその直前。ふと頭をよぎった疑問があったのだ。俺の発言にキャバランシア皇子が先を促す。
「どうして、こうも簡単に制圧が終ったのですか?
皇子と勢力を別っていたにしてはあまりにもあっけない」
「それに関しては、事前の根回しと幸運も手伝ったのだろう」
「幸運、ですか?」
「ああ。
そもそも狙った時間帯としても手薄であったし、あの時皇后側にいた騎士は忠誠心の薄いものばかりであった。
手ごわい相手となりそうな将軍どもはモンラース率いる軍が引き受けてくれたしな」
モンラース皇子が……。そう言えば、以前俺が変化をもたらしたとか言っていたような?
「だが、一番は幸運だったのだ。
いくら下準備をしたとしても当日は何が起こるのかわからないからな」
ルックアランのように、そう言葉を付け加える。あの人は、本当はどういう人だろうか。まさか、俺の正体がわかっていたとは思わなかった。そのうえで俺が有利になるように、と行動していたとは。何もかも、思っていたこととは違っていた。
「さて、これでようやく改革を進めることができる。
先にシングレ王国の件を片付けなければ」
「策はあるのですか?」
「まずは麻薬を送り返す。
こちらは気が付いていると、そう示した後はあちらの出方次第だろう。
まあ、何か仕掛けてくる前にまずは国内を整えなければいけないがな」
「新陛下の御心のままに」
恭しく膝をついたのはカンペテルシア皇子。それに従うように俺も見よう見まねで膝をついた。皇族としての教育などろくに受けていない。これが間違っていたって別にいいだろう。
そこからは慌ただしい日々を送ることになった。キャバランシア皇子の即位が国に伝わるとともに、俺は第七皇子としての立場を取り戻すことになったからだ。この立場に思うところはないが、それがもとからの条件でもあったから異論はない。
そして、あのとき落とした首。あの殺し方は初めから指定されたものであった。その首は多くの民の目に留まる広場に掲げられている。それは新しい時代の幕開けを知らせるものになる。
普通なら目にもいれたくないものを、国民はこぞって見に行ったらしい。自分たちを苦しめ続けた元凶の顔を。そして、同時に新しく皇帝位に就くキャバランシア皇子のことを民は予想以上に喜んで称えた。皇帝の実子であり、皇子であったキャバランシア皇子の即位に関して一定数は拒絶を示すかと思われていたが、そうはならなかった。それはこの人たちとは異なる方法で国を導くと約束したキャバランシア皇子への、そして生活の側で支えてきた双子の皇女への期待でもあったのだろう。
本来なら一定期間喪に服したのち、新陛下は即位することとなる。だが、今回はクーデター。喪に服すこともなくキャバランシア皇子は皇帝となった。残る皇子たちもキャバランシア皇帝への忠誠を即位式で誓うこととなる。
そして、粛清対象となったものたちの処刑は速やかに行われていった。民の長年苦しめられたうっ憤を晴らさせるかのような方法で。使えるものはすべて余すことなく使ってでも国を掌握せねば、そうキャバランシア皇帝は言っていた。その対象には宰相もいたらしく、新しい宰相にはカンペテルシア皇子が就くようだ。それと同時に新しい公爵位を持って臣下に下ることとなる。てっきりリヒトが就くのかと思っていたが、断固拒否されたらしい。
モンラース皇子はそのまま騎士団長へと着任した。確実に、キャバランシア皇帝の手のもので皇宮内は支配されていった。それでも手は足りない。まずはこれを機に皇国を攻めようと考えないように手を打つ必要があった。
とはいえ、ほぼ部外者として育ってきた俺はやれることがほぼない。まあ、シャリラントをもって神剣の持ち主が皇子にいると示すくらいか。ひとまずマナーを身に付けろ、となぜか俺はこんな中でマナー講座を受けさせられていた。
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