『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio

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5章 ダンジョン

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 即位式に向けた準備を進めていく中、俺はキャバランシア皇帝に呼び出された。目が回る忙しさだろうに珍しい。指定された時間に執務室の扉を叩くと中には疲れた様子のキャバランシア皇帝、そしてカンペテルシア皇子、リヒトたちがいた。

「お呼びと聞きましたが」

「これはどういうことだ?」

 これ……? ばさりとおかれた紙を見る。見るからに上質な紙を使われたそれは手紙のようだ。促されるままに中身を見る。

「……どういうことですか?」

 その手紙にはオースラン王国国王の玉璽が押されている。オースラン王国からの親書だ。そこにはオースラン王国は新しい皇帝を戴くアナベルク皇国を支持すること、その証として友好の条約を結ぶための特使を派遣すること。そこには王太子がいること。そして、なぜか条約締結際に俺、スーベルハーニを同席させること、と言ったことがかかれていた。
 また、それに加えて締結の折には即位式にも参列する、ということも添えられている。

 待て待て。最初から最後までわからない。今のアナベルク皇国にとって、オースラン王国との友好関係は喉から手が出るほど欲しいものだ。オースラン王国は特に、冒険者ギルドの大元があるなどの理由で他国から一目置かれており、ここが皇国と条約を結ぶのならばと他が続いてくれる可能性すらある。

だが、急に上げますと言われても戸惑ってしまう。それにどうして俺の名が?

「そうか、スーベルハーニにもわからないか」

 はぁ、と重いため息をついて眉間をもみほぐす陛下。ここ数日は多少やつれた気はするが、それも仕方ないことだろう。

「まあ、いい。
 ここに記されている内容を読む限り、こちらとしてはもろ手を挙げて歓迎したい出来事だ。
 ひとまず万全の準備をして特使を迎えよう」

「はい」

「そうだな、早馬に歓迎の意を記した親書を託す。
 詳しい日程はまた伝えるから、国境まで特使を迎えに行ってくれ」

「わかりました。
 大体何日後でしょうか?」

「今日、手紙を出すからな……。
 おそらく出立の準備はもう整えてあるだろうし、万が一にも遅れてはまずい……。
 よし、5日後に出立してくれ」

「わかりました」

 5日後。意外と余裕があるみたいだ。と、思っていたら、隣にいたリヒトがぎょっとしたようにこちらを見た。

「5日後、ですか!?
 準備が間に合うかどうか」

「そんなに準備することある?」

「あたりまえです!
 あなたは礼服など持っていないでしょう?
 今まで作れるタイミングもありませんでしたし。
 ああ、すぐに仕立て屋を呼びましょう」

 うぐ、仕立て屋とか。面倒な予感しかない。でも、陛下もそうしてくれ、とうなずかれたから頑張るしかなさそうだ。今度は俺がため息をつきそうになっていると、待ってください、とシャリラントの声が脳内に聞こえてきた。

『どうした?』

『5日後、あなたはこの皇都にいた方がいい。
 リキートたちもです』

『なにか、あるのか?』

『ダンジョンが二つ、出現します。
 それも今まで煮ないほど大規模のものが』

「えっ!?」

 驚きで声を実際に出してしまった俺に、一気に視線が集まる。しまった。

『それ、本当なの?』

『高確率で出現します』

 それはまずいな。今この国でダンジョンにまともに対応できる人はどれくらいいるのか。普通なら冒険者ギルドに応援を要請するが、この国はまだ冒険者ギルドと提携していない。まあ、ダンジョンが出現しただけなら外にはそこまで影響はない、はず。それまでにオースラン王国と同盟を結んで、そのまま冒険者ギルドと繋いでもらうか……?

「スーハル皇子?
 急に考え込んでどうしたんですか?」

「あ、すみません。
 今、シャリラントに国境に行かない方がいいと言われまして」

「それはどうして?」

「近いうちに皇都にダンジョンが出現そうです。
 それも、強大なダンジョンが」

 俺の言葉に周りが一斉に息をのむ。この人たちはダンジョンに行ったことはない。でも、その名も、危険性も知っているのだ。だからこその表情。

「それは、この国だけで対応できるものなのか?」

『どうなんだ、シャリラント』

『そうですね……。
 あなた方が前線に立ったうえで、1つずつだったら……。
 ですが、出現するダンジョンは2つ。
 できれば、早急に対応する必要があるので、ファイガーラの持ち主にも協力してもらった方がいいでしょう』

『イシューさんか……』

『必要であれば私がファイガーラに呼びかけましょう』

『そんなことができるのか?』

『私から呼びかけることは可能です』

 本当にシャリラントって……。

「対応ができないわけではないようですが、かなり厳しいみたいです。
 ダンジョンは2つ出現するようなので」

「2つ……。
 はぁ、まだオースラン王国と手を結んだ後だったらやれることもあるが。
 それは放置するわけにはいかないのか」

 その質問に、シャリラントはすぐに俺に返事をした。

「おすすめはしない、だそうです。
 シャリラントが、戦いの神剣ファイガーラに応援を頼むか聞いています」

「そんなことが、可能なのか?」

 信じられない、とこちらを見る陛下にうなずく。シャリラントができると言うならきっとできるのだろう。そこで、陛下はもう一度何かを考えこむようにした。

「この国は未だ不安定だ。
 そんな中、この近くに強大なダンジョンを抱えたままはよくない。 
 だが、他国に、他国のものに力を借りるのもまた、危険なことだ」

 状況を整理するように、陛下がつぶやく。なるほど……。でも。

「ファイガーラの持ち主であるイシューさんはいい人です。
 おそらく、皇国の現状に付け込むことはしないでしょう。
 そのうえで、もしイシューさんの力を借りることができるなら、皇国は俺という神剣持ちの皇子、それに加えてほかに神剣の持ち主が協力するに値する国に生まれ変わったというアピールになるのではないでしょうか」

 イシューさんの人となりを知っているから言える言葉。まあ、たぶん神剣に選ばれる人はそもそも悪人ではないと思うが。

 俺の言葉を受けてさらに考え込むようにする陛下。やがて、1つうなずいた。

「シャリラント殿、どうかファイガーラ殿、その持ち主に応援を依頼していただけないだろうか。
 改めて報酬を用意することはできないが、ダンジョンで得たものはすべてその方のもので構わない。
 また、オースラン王国の特使の迎えはカンペテルシアが行ってくれ」

「承知しました」
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