『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio

文字の大きさ
105 / 178
5章 ダンジョン

2

しおりを挟む

 話がまとまりかけたところで一つ、シャリラントが爆弾を落とした。え、それついでとして言っていい話題なのか……? 疑問に思いつつも、ひとまず口に出してみる。

「あの、シャリラントがついでにほかの、というかすべての神剣に声をかけてみるか、と」

 俺の発言にたっぷり数秒沈黙が下りる。うん、そうなりますよね。

「……それは一体どういうことですか?」

 一番初めに回復したのはリヒトだ。さすが、と褒める空気でもない。依然、この部屋の空気はかなり固い。俺の、シャリラントの意図を必死に読み解こうとしている。

「そのままの意味です。
 今、すべての神剣には持ち主がいる、つまりすべての神剣が起きているので」

「そこまで、強大なダンジョンなのですか……?」

「それもあります。
 ただダンジョン自体は恐らく俺とイシューさんがいればどうにかなるかもしれない。
 それ以上の意味は……、皇国と神殿の関わりです」

「な、それは!」

 今度こそ、声が上がった。この声はカンペテルシア殿か。今まで、この皇国は過去の件より神に嫌われた国とまで言われるようになった。その証に精霊が力を貸してくれない。それを、覆す。どよめかないわけがない。

「神剣の持ち主は現在、俺とイシューさん以外は神島にいます。
 神殿の総本山である神島に」

 神島。神殿の総本山であるそこは住民が皆ミベラ教の信者だ。だからこそ、神島は、その住民は皇国とは関わることはなかった。俺の母を除いて。

「少し、考える時間をくれ。
 皇国が大きく変わる選択だ。
 ここだけで決めるわけにはいかない」

 それもその通りだろう。うなずきかけて、シャリラントにせっつかれる。

「急がないと機を逃す、とシャリラントが言っています」

 その言葉に陛下が深いため息をつく。

「ひとまず、イシューさんには連絡します」

「ああ、そうしてくれ」

 シャリラントの話だとイシューさんがいないとおそらく、2つのダンジョンを攻略できない。他の神剣に連絡をするのはどちらかというとダンジョン攻略のためではなく、神殿と皇国をつなぐため。最悪、ダンジョン攻略の後に駆けつけてもいい、と。

「承知しました」

 陛下の承諾が取れたところでシャリラントにお願いしてファイガーラ殿に連絡を取ってもらう。どうやらファイガーラ殿からシャリラントへ連絡を取るのは難しいらしいので、後は実際に来てもらえるか待つしかない、と。

 かなり話は脱線したが、一旦ここでの話し合いは終わった。で、じゃあ休むなり訓練するなりしようと思っていたところでリヒトに声をかけられた。

「スーハル皇子、服を作りますよ」

 え、迎えに行かないのに結局? そう返すと、パーティーには参加するので当たり前です、と強く返されてしまった。

 面倒な……。文句を言いつつもリヒトが呼んだ仕立て屋に多くの服を注文することになった。サイズを測って、デザインや色を聞かれる。正直どうでもいい……。なんだか目を輝かせて、超特急で作ります! と宣言されてしまった。

 でも、そうして打ち合わせをしている間にいいことを聞くことができた。どうやらこの仕立て屋さんは代々皇族の服を仕立ててきたらしい。その皇族の中には兄上もいたのだ。兄上の服を仕立てた記録も残っていたようで、持ってきてくれたのだ。

 一部、流行に合わせて変更しつつもそれを基にした服も用意してくれることに。これだけは嬉しかった。

 そのあとに久々にダンジョンに入るなら体を動かした方がいい、と騎士団に足を向けた。


「あれ、ここにいたんだ」

 そこに着くと、リキートたちがいた。どうやら同じように体を動かしに来たのだ。フェリラも俺のように大量の服を用意する羽目になったようで、相当気力を使ったみたいだ。話を聞いていると、自分は男でよかったと思ってしまった。

 そうだ、2人が居るんならちょうどいい。リキートが領に行ってしまう前に引き留めないと。

「え、近々ダンジョンが出現するの!?
 ……わかった、それまではここに留まるよ」

「それにしても、よくそんなことがわかるね」

「俺にもよくわからないけれど、シャリラントが言うならきっと本当だろう」

 私もそう思う、とフェリラが言う。ひとまず、イシューさんが来てくれるなら片方のダンジョンは頼めるし、リキートたちが残ってくれるならかなり心強い。本当にオースラン王国の王太子がこの国に来るならば、その前にこの件は片を付けないと。いつどこにダンジョンが出現するか詳細はわからないから、それが可能かどうかわからないけれど……。

 そのまま、場所だけ借りて久しぶりにリキートと手合わせをする。最近は授業や執務など部屋にこもっていろいろとやるばかりだったから、かなり体がなまっている。以前は俺が勝つことばかりだったのに、今回は負けてしまった。とはいえ本当にぎりぎりだけど!
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

処理中です...