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5章 ダンジョン
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しおりを挟む話がまとまりかけたところで一つ、シャリラントが爆弾を落とした。え、それついでとして言っていい話題なのか……? 疑問に思いつつも、ひとまず口に出してみる。
「あの、シャリラントがついでにほかの、というかすべての神剣に声をかけてみるか、と」
俺の発言にたっぷり数秒沈黙が下りる。うん、そうなりますよね。
「……それは一体どういうことですか?」
一番初めに回復したのはリヒトだ。さすが、と褒める空気でもない。依然、この部屋の空気はかなり固い。俺の、シャリラントの意図を必死に読み解こうとしている。
「そのままの意味です。
今、すべての神剣には持ち主がいる、つまりすべての神剣が起きているので」
「そこまで、強大なダンジョンなのですか……?」
「それもあります。
ただダンジョン自体は恐らく俺とイシューさんがいればどうにかなるかもしれない。
それ以上の意味は……、皇国と神殿の関わりです」
「な、それは!」
今度こそ、声が上がった。この声はカンペテルシア殿か。今まで、この皇国は過去の件より神に嫌われた国とまで言われるようになった。その証に精霊が力を貸してくれない。それを、覆す。どよめかないわけがない。
「神剣の持ち主は現在、俺とイシューさん以外は神島にいます。
神殿の総本山である神島に」
神島。神殿の総本山であるそこは住民が皆ミベラ教の信者だ。だからこそ、神島は、その住民は皇国とは関わることはなかった。俺の母を除いて。
「少し、考える時間をくれ。
皇国が大きく変わる選択だ。
ここだけで決めるわけにはいかない」
それもその通りだろう。うなずきかけて、シャリラントにせっつかれる。
「急がないと機を逃す、とシャリラントが言っています」
その言葉に陛下が深いため息をつく。
「ひとまず、イシューさんには連絡します」
「ああ、そうしてくれ」
シャリラントの話だとイシューさんがいないとおそらく、2つのダンジョンを攻略できない。他の神剣に連絡をするのはどちらかというとダンジョン攻略のためではなく、神殿と皇国をつなぐため。最悪、ダンジョン攻略の後に駆けつけてもいい、と。
「承知しました」
陛下の承諾が取れたところでシャリラントにお願いしてファイガーラ殿に連絡を取ってもらう。どうやらファイガーラ殿からシャリラントへ連絡を取るのは難しいらしいので、後は実際に来てもらえるか待つしかない、と。
かなり話は脱線したが、一旦ここでの話し合いは終わった。で、じゃあ休むなり訓練するなりしようと思っていたところでリヒトに声をかけられた。
「スーハル皇子、服を作りますよ」
え、迎えに行かないのに結局? そう返すと、パーティーには参加するので当たり前です、と強く返されてしまった。
面倒な……。文句を言いつつもリヒトが呼んだ仕立て屋に多くの服を注文することになった。サイズを測って、デザインや色を聞かれる。正直どうでもいい……。なんだか目を輝かせて、超特急で作ります! と宣言されてしまった。
でも、そうして打ち合わせをしている間にいいことを聞くことができた。どうやらこの仕立て屋さんは代々皇族の服を仕立ててきたらしい。その皇族の中には兄上もいたのだ。兄上の服を仕立てた記録も残っていたようで、持ってきてくれたのだ。
一部、流行に合わせて変更しつつもそれを基にした服も用意してくれることに。これだけは嬉しかった。
そのあとに久々にダンジョンに入るなら体を動かした方がいい、と騎士団に足を向けた。
「あれ、ここにいたんだ」
そこに着くと、リキートたちがいた。どうやら同じように体を動かしに来たのだ。フェリラも俺のように大量の服を用意する羽目になったようで、相当気力を使ったみたいだ。話を聞いていると、自分は男でよかったと思ってしまった。
そうだ、2人が居るんならちょうどいい。リキートが領に行ってしまう前に引き留めないと。
「え、近々ダンジョンが出現するの!?
……わかった、それまではここに留まるよ」
「それにしても、よくそんなことがわかるね」
「俺にもよくわからないけれど、シャリラントが言うならきっと本当だろう」
私もそう思う、とフェリラが言う。ひとまず、イシューさんが来てくれるなら片方のダンジョンは頼めるし、リキートたちが残ってくれるならかなり心強い。本当にオースラン王国の王太子がこの国に来るならば、その前にこの件は片を付けないと。いつどこにダンジョンが出現するか詳細はわからないから、それが可能かどうかわからないけれど……。
そのまま、場所だけ借りて久しぶりにリキートと手合わせをする。最近は授業や執務など部屋にこもっていろいろとやるばかりだったから、かなり体がなまっている。以前は俺が勝つことばかりだったのに、今回は負けてしまった。とはいえ本当にぎりぎりだけど!
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