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5章 ダンジョン
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充分に体を動かし、必要なことも伝え終った。念のため皇都に残ってもらうことを念押ししたあと、汗を流すために自室に向かった。
「ああ、スーハル皇子。
ちょうどよかった。
今あなたを探しに行くところだったんです」
途中、忙しそうにしているリヒトと眼が合うとリヒトはすぐにこちらにやってきた。きょろきょろしていると思ったら、俺のことを探していたみたい。
「どうかした?」
「詳しい話は歩きながらで。
ひとまず皇子には着替えていただかなければ」
ますます意味が分からない。でも、ひとまずリヒトに続いて歩きながら話を聞くことになった。いわく、今まさに先ほどシャリラントが言っていた件について会議をしているらしい。ダンジョンが出現した際の対応への予算、までは良かったらしい。問題はそのあと。本当に神島にいる神剣の持ち主に助けを求めるのか、という点だった。今まで皇国は神のもとには下らないという意思のもと、精霊に力を借りられないことから目をそらしてきた。でも、そんな中で神殿と繋がりを持つということは、その問題に触れることになる。
クーデターを終えたばかりでまだ不安定なこの国にそんな大きな変化をもたらしていいのだろうかという意見、逆にそんな今だからこそ一気に改変を推し進めてしまうべきだという意見。それぞれ正当性のある意見が出て全く会議が進まないらしい。
それでなぜか俺に意見を求めることになったと。意味が分からない。
「ひとまず、他の貴族の前に出られる格好に着替えて、至急会議に参加していただきたのです。
衣装は先ほどの仕立て屋から購入した既存のものがあるでしょう?」
「まあ、あるけれど……」
あの、皇子然とした服を着なくてはいけないのか。正直気は進まないが仕方がない、よね。
部屋に着くと手早く汗を拭きとり、先ほど言われた服に着替える。するとすぐに会議をやっているという部屋に案内された。
入った瞬間、視線という視線がこちらに集まる。う、気まずい……。この国を引っ張っていく貴族たちが、初めて顔を合わせる皇子を見定めるように探るような目を向けてくる。俺自身は別に皇子という立場に興味はない。ただ、きっとこの人たちにとってはそうではないのだ。
「第7皇子をお連れしました」
リヒトに軽く背を押す。これは挨拶しろということだよな。
「初めまして、第7皇子のスーベルハーニ・アナベルクと申します」
ついつい頭を下げようとしてなんとか思いとどまる。どうもまともに皇子としての教育を受けてこなかったからか、俺の感覚は日本人のものが強い。だから、授業を受けているときもよくたしなめられていた。
「ああ、待っていた。
ぜひスーベルハーニの意見を聴きたいと思ってな」
「詳しくは、どのような?」
「まず、この国の民は神殿は介入してくることを受け入れると思うか?
皇国の民は精霊の恵みを受けられない、と言うのは有名な話だ。
これは私たちの祖先の罪。
神のもとに下ったとして、おそらくそれは変わらない。
それでも……」
精霊の恵みって、主にはあの魔法を使う際のブースト、みたいなものだよね。ここの人達はそれがずっと当たり前だったことを考えるとそれに関してはあまり問題がないようなきがする。それになにより。
「俺はあまりこの国のことを知りません。
そのことは留意しておいてください。
そのうえで、精霊の恵み、という点は恐らく他国と交流し、血が交わっていくなかで解決していくのではないでしょうか。
少なくとも俺は、陛下の言う精霊の恵みを受けることができます」
俺の発言に場が一気にどよめく。そういえば、言っていなかったっけ。でも、確か兄上はなかった気がするから、俺が特殊例なのかもしれないけれど。実際、一代では無理だとしても、代を重ねていくごとに全員がそうなる可能性は十分にあるはず。ただ少し心配だからシャリラントにも聞いてみるか。
『シャリラントはどう思う?』
『そうですね……。
神が、ミベラ神がそれをお赦しになったうえであそこを解放できれば……』
『あそこ?』
聞き返した俺にシャリラントは何も答えない。でも、つまりこれは血の濃さが問題なのではなく、神の心次第ってこと?
「それは本当なのか?」
「……ええ。
ただ、兄上は違っていたようなので確かなことは言えませんが」
おっと、シャリラントの言葉が気になってつい反応が遅れちゃった。俺の言葉にまた場は何とも言えない空気に包まれた。このまま一気に話を進めていくか。
「それに、精霊の恵みを別にしても。
民はすでに皇女様方のことを聖女、と呼んでいると耳にしました。
きっと多くのものは望んでいるのではないでしょうか?
教会と皇国の和解を。
今はシャリラントが協力してくれることもあり、それが叶えられる状況です。
もちろん、呼びかけたからと言ってきてもらえる確証もありません。
ですが、もし今後どこかで教会とつながりを望むのであれば、今が一番良い時なのではないでしょうか」
誰にも口を出されることなく言い切る。だけどそろそろ何か言ってもらえませんかね……? 一人いきってしゃべっている感じがして嫌だな。
「ああ、よくわかった。
貴重な意見をありがとう」
「いいえ、お役に立てたのならば幸いです」
「また声をかける。
ひとまず下がってくれていい」
陛下の言葉に一礼して部屋を出る。後はぜひお偉方で話し合ってください。ようやくこの服も脱げる、と自分の部屋まで戻る。って、そうだ。忘れないうちにイシューさんに連絡とってもらわないと。
『シャリラント、ファイガーラに連絡を頼めるか?』
『ああ、そうですね。
すぐにしてしまいましょう』
俺に答えた後、じっと黙るシャリラント。少しして、連絡しました。と返ってきた。連絡機器がないここでは一方通行だとしてもこうして連絡取れるの便利だよな。
「ああ、スーハル皇子。
ちょうどよかった。
今あなたを探しに行くところだったんです」
途中、忙しそうにしているリヒトと眼が合うとリヒトはすぐにこちらにやってきた。きょろきょろしていると思ったら、俺のことを探していたみたい。
「どうかした?」
「詳しい話は歩きながらで。
ひとまず皇子には着替えていただかなければ」
ますます意味が分からない。でも、ひとまずリヒトに続いて歩きながら話を聞くことになった。いわく、今まさに先ほどシャリラントが言っていた件について会議をしているらしい。ダンジョンが出現した際の対応への予算、までは良かったらしい。問題はそのあと。本当に神島にいる神剣の持ち主に助けを求めるのか、という点だった。今まで皇国は神のもとには下らないという意思のもと、精霊に力を借りられないことから目をそらしてきた。でも、そんな中で神殿と繋がりを持つということは、その問題に触れることになる。
クーデターを終えたばかりでまだ不安定なこの国にそんな大きな変化をもたらしていいのだろうかという意見、逆にそんな今だからこそ一気に改変を推し進めてしまうべきだという意見。それぞれ正当性のある意見が出て全く会議が進まないらしい。
それでなぜか俺に意見を求めることになったと。意味が分からない。
「ひとまず、他の貴族の前に出られる格好に着替えて、至急会議に参加していただきたのです。
衣装は先ほどの仕立て屋から購入した既存のものがあるでしょう?」
「まあ、あるけれど……」
あの、皇子然とした服を着なくてはいけないのか。正直気は進まないが仕方がない、よね。
部屋に着くと手早く汗を拭きとり、先ほど言われた服に着替える。するとすぐに会議をやっているという部屋に案内された。
入った瞬間、視線という視線がこちらに集まる。う、気まずい……。この国を引っ張っていく貴族たちが、初めて顔を合わせる皇子を見定めるように探るような目を向けてくる。俺自身は別に皇子という立場に興味はない。ただ、きっとこの人たちにとってはそうではないのだ。
「第7皇子をお連れしました」
リヒトに軽く背を押す。これは挨拶しろということだよな。
「初めまして、第7皇子のスーベルハーニ・アナベルクと申します」
ついつい頭を下げようとしてなんとか思いとどまる。どうもまともに皇子としての教育を受けてこなかったからか、俺の感覚は日本人のものが強い。だから、授業を受けているときもよくたしなめられていた。
「ああ、待っていた。
ぜひスーベルハーニの意見を聴きたいと思ってな」
「詳しくは、どのような?」
「まず、この国の民は神殿は介入してくることを受け入れると思うか?
皇国の民は精霊の恵みを受けられない、と言うのは有名な話だ。
これは私たちの祖先の罪。
神のもとに下ったとして、おそらくそれは変わらない。
それでも……」
精霊の恵みって、主にはあの魔法を使う際のブースト、みたいなものだよね。ここの人達はそれがずっと当たり前だったことを考えるとそれに関してはあまり問題がないようなきがする。それになにより。
「俺はあまりこの国のことを知りません。
そのことは留意しておいてください。
そのうえで、精霊の恵み、という点は恐らく他国と交流し、血が交わっていくなかで解決していくのではないでしょうか。
少なくとも俺は、陛下の言う精霊の恵みを受けることができます」
俺の発言に場が一気にどよめく。そういえば、言っていなかったっけ。でも、確か兄上はなかった気がするから、俺が特殊例なのかもしれないけれど。実際、一代では無理だとしても、代を重ねていくごとに全員がそうなる可能性は十分にあるはず。ただ少し心配だからシャリラントにも聞いてみるか。
『シャリラントはどう思う?』
『そうですね……。
神が、ミベラ神がそれをお赦しになったうえであそこを解放できれば……』
『あそこ?』
聞き返した俺にシャリラントは何も答えない。でも、つまりこれは血の濃さが問題なのではなく、神の心次第ってこと?
「それは本当なのか?」
「……ええ。
ただ、兄上は違っていたようなので確かなことは言えませんが」
おっと、シャリラントの言葉が気になってつい反応が遅れちゃった。俺の言葉にまた場は何とも言えない空気に包まれた。このまま一気に話を進めていくか。
「それに、精霊の恵みを別にしても。
民はすでに皇女様方のことを聖女、と呼んでいると耳にしました。
きっと多くのものは望んでいるのではないでしょうか?
教会と皇国の和解を。
今はシャリラントが協力してくれることもあり、それが叶えられる状況です。
もちろん、呼びかけたからと言ってきてもらえる確証もありません。
ですが、もし今後どこかで教会とつながりを望むのであれば、今が一番良い時なのではないでしょうか」
誰にも口を出されることなく言い切る。だけどそろそろ何か言ってもらえませんかね……? 一人いきってしゃべっている感じがして嫌だな。
「ああ、よくわかった。
貴重な意見をありがとう」
「いいえ、お役に立てたのならば幸いです」
「また声をかける。
ひとまず下がってくれていい」
陛下の言葉に一礼して部屋を出る。後はぜひお偉方で話し合ってください。ようやくこの服も脱げる、と自分の部屋まで戻る。って、そうだ。忘れないうちにイシューさんに連絡とってもらわないと。
『シャリラント、ファイガーラに連絡を頼めるか?』
『ああ、そうですね。
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