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5章 ダンジョン
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しおりを挟むまた飲もうという約束をして、部屋へと戻る。若干足元がおぼつかないけれど、結構飲める方かもしれない。結局三人で一瓶開けていたし。
軽く体を拭いて、寝台にもぐるとすぐに眠気がやってそのまま寝てしまった。
こんこん、と小さくノックの音がする。んん、眠い……。もう少し寝たい。無視して寝ている間にもノックの音はやまない。いや、本当に何? もしかして寝すぎた?
寝ぼけ眼をこすりながら、手櫛で髪を整える。そして扉を開けると、そこには侍従の服を着た見覚えのない人が立っていた。
「あの……?」
「お休みのところ、大変申し訳ございません。
本日皇女様方とお会いする予定だったかと思うのですが……」
ああ、昨日言っていたやつか。うなずくと、その人はかなり気まずそうにその……と言葉をつづけた。
「皇女様方がまちきれない、とすでにお待ちなのです」
「え……?
昨日の深夜の話ですよね?
俺、そんなに寝ていました?」
「はい。
昨日の夜に決定したため、本日お目覚めになった際に侍女がお伝えしました。
まだ朝の時間帯ですので、決して寝すぎていらっしゃったわけではありません」
「……わかりました。
準備が整い次第向かいます。
後で案内をお願いしても?」
「もちろんです」
申し訳ございません、と言われるけれど、この人も立派な被害者な気がする。一度部屋を出てもらって、さっさと支度することにする。元から一人で支度をすることが常だったから、ここでも基本的には一人で支度をしている。着ずらい服を着るときや式典の時などは手伝ってもらうことになるけれど。
よし、こんなもんか。部屋を出ると先ほどの侍従が背筋をピンと伸ばして待っていた。これは急いで正解だったな。そのまま皇女が待っているというサロンまで案内してもらった。まさか朝からこんなにバタバタする羽目になるとは……。
「スーベルハーニ皇子をお連れいたしました」
「入っていいわ」
どうぞ、と言われて部屋の中に入る。中には鏡合わせのようにそっくりな二人の女性がいた。この方たちが、聖女と言われた皇女様。双子なだけあって本当にそっくりだ。
「「はじめまして」」
「あなたがスーベルハーニね」
「ずっとお会いしたかったわ」
「は、はじめまして。
こちらこそ、お二方にお会いできて光栄です」
「まあ!
私たちは姉弟なのだから、そんなに固くならないで」
「そうよ。
それに私たちの方こそあなたに会えて光栄よ」
姉弟、ね。確かに陛下とカンペテルシア殿、そしてこの2人は兄妹だ。だけど、それ以外の人たちは本当に姉弟と言っていいのか微妙だろう。
「そうだ、まだ自己紹介をしていなかったわね」
「まあ、私としたことが」
「改めまして。
私はサラジシア・アナベルクと申します」
「私はララベシア・アナベルクと申します」
「「どうぞ、よろしくお願いいたします」」
そして、揃ってカーテシーをする。それは皇女なだけあって見ほれるほどきれいな礼で。一拍遅れて俺は慌てて挨拶を返した。
「寝ていたのに呼び出してごめんなさいね」
「ようやく会っていいとお兄様に許可をいただけたから、すぐに会いたくなってしまって」
「朝食を用意したの。
ぜひ食べてちょうだい」
「ありがとうございます。
いただきます」
かわるがわる話しかけられて正直目が回りそうだ。それでも何とか会話を続けていく。とてもかわいらしい見た目をしている二人の皇女様はかなり友好的な方みたいだ。ずっと俺に話しかけては興味津々にこちらの話を聞きだそうとする。
今まであまり出会ったことのないタイプに、一体どうしたらいいのか困りながらもなんとか返事をしていた。
「失礼します。
カンペテルシア皇子がいらしているようです」
止まらない会話にはぁ、と返事ともいえないものをしているとそっと話しかけてきた侍女がカンペテルシア殿の来訪を告げた。それを聞くと、あら、と眼を瞬かせた後に入ってちょうだい、と返した。
「姉上がた!
あまりスーベルハーニに困らせないでください」
「あら、いいじゃない。
ずっと話してみたかったんだもの」
「そうよ。
カンペテルシア達ばかりずるいわ」
ずるいとかではないのですよ……、と頭を抱えだしたカンペテルシア殿。その様子を楽しそうに双子の皇女方は見守る。
「最近はお兄様もカンペテルシアも忙しそうでしょう?
これでも邪魔をしてはだめよねってララと我慢していたのよ」
「それはありがとうございます。
これからもぜひそうしていてください」
「まあ!
姉に向かってその言い方はないでしょう?」
標的がカンペテルシア殿になってくれたおかげで、ようやくゆっくりとご飯が食べられる。本当に助かりました……。その後カンペテルシア殿と侍女がなだめてくれたおかげでようやく皇女様方から解放されました。朝からどっと疲れてしまった。
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