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6章 再会と神島
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しおりを挟む「あの、話とは……?」
「まずは座ってください。
長い、話になりますから」
そう言ってほほ笑むと、ティアナ様はお茶を入れてくれた。お、恐れ多い……。ひとまず勧められた席に座り、お茶を口にした。
「島に行く前にスーベルハーニ様に聞いていただきたい話がございます。
これは、島に住むものならば誰でも知っている話と数人しか知らない話です」
「え……。
そんな前半はまだしも、数人しか知らない話を外に住む俺が聞いていいのですか?」
「ええ。
あなたは誰よりもこの話を聞く権利があります。
シャリラント様の主であるあなたには。
……これは、この世界ができたころの話。
神殿の興りと現在に至るまで唯一大聖女と呼ばれるとある女性、そして世界で初めて発生した始まりのダンジョンについての話です」
始まりのダンジョン。シャリラントが言っていたダンジョンのことだろう。ティアナ様の真剣な表情を見ながら、俺も気を引き締めた。
―――――――――――――――――――――――
むかしむかし。世界はとても荒れていたそうです。大洪水、大地震、大噴火、起きた自然災害は数知れず、そのたびに大地が形を変えました。それはとても生物が生きていける環境ではなかったと。
そのような世界を整えるため、ミベラ神が創り出したものが7体の神使でした。初めに生まれたシャリラント様はミベラ神の分身とも言える多様な力を持ち、そののちに生まれた6体の神使はシャリラント様が持つ中から特に重要な要素を託されました。
そうして創られた神使様方はそれぞれの力に沿った剣を依り代に、荒れた大地へと降りてまいりました。世界を安定させるために。
そうして、地上へと降り立ったシャリラント様の初めの主となったのはとある少女でした。その方の名はリンカ様。ミベラ神との親和性が高く、そのお方はミベラ神の目や耳となることができたそうです。また、地上にいながらミベラ神と会話をすることができる稀有なお方でもありました。
リンカ様はとても素晴らしいお方だったといいます。力に溺れることなく、いつもこの地を憂いていたと。心根が優しく、常に他人のために尽くし、他人を貶めることもしない、太陽のようなお方だったと。
そのようなリンカ様にミベラ神がされたお願いがありました。それが、各地に神殿を作ること。そして、神殿をもとにミベラ神の存在を広く民に知らしめ、認め、慕う。その信仰がミベラ神の力になるから、と。そして世界の安定にもつながると。
それを聞いたリンカ様はにこやかに請け負うと、シャリラント様の力を借りながら神殿づくりに奔走されました。その結果、各地に神殿が広まり、確かに世界は安定しました。そしてそのころから、ミベラ神と話すことができて民を導いてくださるリンカ様を聖女、と呼ぶ人が出てまいりました。
ミベラ神に祈ると災害が減る。そのことを身をもって知った民たちは『ミベラ教』と名を付け、さらにミベラ神を慕うようになります。そのころには教皇を頂点として、国のようにまとまっていました。聖女たるリンカ様はもちろん教皇として推されましたが、本人が強く否定したため、教皇には別のものが付きました。
そうして、大きな力を得るようになった『ミベラ教』は次第に、安定し始めた地で国を持っていた王たちにとって容認しがたいものとなっていきました。いくらこの世界の安定に必要なものだと話しても聞き入れることはありません。
そうして肩身が狭くなった神殿の者たちを、ミベラ神はまだ誰も住んでいない島へと導きました。それが現在神島と呼ばれているあの島です。その当時、神殿が持つ権力を厭う者たちによる圧力以外にもリンカ様にとって困ることが起きていました。
それがアナベルク国の王たるものによる執拗な干渉です。かの王はリンカ様を手に入れることにより、さらなる力を得ようとしたのです。そのような干渉から逃れる意味でも、ミベラ神が導いてくださった島は神殿に身を寄せる方たちにとって心の拠り所となりました。
そこから定期的に各地の神殿へと人を送ることで、世界は平和といえる生活を手にすることができたのです。
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