『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

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6章 再会と神島

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「すみません、お待たせしました」

「いいや。 
 行こうか」
  
 まだまだ慣れないふかふかな廊下。ってそういえば。

「どうしてリーンスタさん自ら迎えに来てくれたのですか?」

「神島に着く前に少し話がしたくてね。
 ハールの部屋に向かったらちょうど夕飯の準備が整ったと話があったから、ついでに私が伝えることになったんだ。
 夕飯を食べ終わったら少しいいかい?」

「あ、はい。
 もちろんです」

 話……。心当たりはない。

 席に着くともうほとんどの人は集まっていた。後はマリナグルースさんだけみたいだ。と思っていたらすぐにやってきた。

「え……?」

「どうしたの、そんな驚いた顔をして」

「いや、その恰好……」
 
 今までは黒一色で華美ではないものの、足全体が隠れるロングスカートのワンピースにローブを羽織っていた。そして髪もきれいに整えられていた。それなのに今は今世では見ない膝丈のスカートだし、髪もぼさっとしている。

「ああ、これ?
 もう人目を気にする必要もないし、いいでしょう。
 まあ島に着いたときはまたちゃんとするからさ」

「もう、マリナグルースは……。
 まあいいわ、早くいただきましょう」

「それよりも早く島に帰って、本格的に魔石の研究がしたい。
 少し力を貸して速度上げてもらおうかな」

「マリナグルース、余計なことはしないで。
 それに船の上では研究を進めないでね。
 爆発でもしたら大変だわ」

「対策については抜かりない」

「そういう問題ではないの」

 格好についてはいいんですね……。まだ旅の途中なのにこんなに気を抜いて。そういえばシャリラントも結構自由に動いている気がするし。爆発とかいう気になる単語も聞こえてきて、なんだか腑に落ちないままひとまず目の前の食事に集中することにした。

 これまでの旅の中で郷土料理もいろいろと口にする機会があった。そのどの料理とも違う味付け。濃い味に慣れてしまった今では薄味にも感じるのに、素材の味がしっかりと引き出されているから物足りなさはない。おいしい。これはどこの味になるんだろうか。

 食後のお茶をしていると、リーンスタさんがなんだか不思議そうな顔をしていたね、と話しかけてきてくれた。せっかく話を振ってくれたし聞いてしまおう。

「皆さん、かなり気を抜いているな、と思いまして。
 大勢の方の視線はないとはいえ、船のスタッフの方はいるのに」

 そんな俺の言葉にリーンスタさんは一瞬きょとんとした後に、ああ、とうなずいた。え、何か変なこと言った?

「船のスタッフはもう神島の人たちだからね。
 まだ旅の途中とはいえ、もう島に着いたみたいに気が抜けるのだろう。
 マリナグルースは島ではよくああいう格好をしているから、今更何か言う人はいないよ。
 外ではきちんとした格好をしてくれているし」

「あ、そうなんですね?」

 俺にとっては神島の人とはいえ知らない人たちだし気を抜くことはできないけれど、ほかの人たちにとっては皇国こそがアウェーでここはもう安心できる場なのだろう。それにしても気を抜いていい場になったとたんにああいう格好をしたところを見ると、マリナグルースさん、今まで相当我慢していたのだろう。

 どこか気楽な空気の中、食事は進んでいく。リーンスタさんは途中で俺の隣を離れると別の人に声をかけにいってしまった。まあいいか、と目の前にある食事を楽しんでいると、不意に隣から声をかけられた。

「ねえ、君はさ、どうやってシャリラント様の主になったの?
 出会いは?」

 お酒が回っているのか、ほんのりと顔を赤くしたシュリベさんが陽気に声をかけてくる。俺とシャリラントの出会い……。一体どの段階が出会ったというのだろうか。確か、俺がシャリラントと出会ったタイミングときちんと主になったタイミングは違ったはずだし。

「あれ、もう覚えてない?
 僕はね、もともと神子だったのー。
 それで今回のミーヤみたいに聖人になるために来たこの大陸でね、たまたまダンジョンに遭遇して。
 そこで出会ったのがアニルージ!
 長を倒した後に発見された部屋の床……岩? に突き刺さっていたんだ。
 ほかの人には抜けなかったけれど、僕にだけは抜けた。
 もうね、びっくりしちゃった。
 まさか僕が神剣の主になるなんて考えたこともなかったからさ」

「ダンジョンで出会ったんですか?」

「うん、そうー。
 あれ、君は違うの?
 神剣ってダンジョンでしか手に入らないはずだけど」

 あれ? と首をかしげるシュリベさん。ダンジョン……。俺は兄から託された身だから、兄がどこで手に入れたかは知らない。けれど、たびたびダンジョン攻略に行っていた兄なら十分あり得る。

「シャリラントは兄から渡されたんです。
 だからもともとどこで手に入れたのかはわからなくて」

「兄から……?
 え、でも神剣って資格ある人しか抜けないはずだけど。
 お兄さんもシャリラント様を手にする資格があったの?」

「さあ……?
 でもこれは兄のものではなく俺のものだって言ってました」

「ま、ますますわからない。
 まあシャリラント様だからね、ほかと違うことがあっても不思議ではないか」

 うんうん、となぜか納得してシュリベさんは去っていった。シャリラントの剣を渡されたとき、かなり切羽詰まった状況だったからか詳しい説明は何も聞けなかった。シャリラントに力を注げば何かおきると感じてはいたけれど、そうする気もずっと起きなかったし。もしも、兄がシャリラントを渡してくれたのがもっと前だったら。そうしてすぐにシャリラントと出会えていれば。もっと未来は、現在は違った道を歩けていたのではないか。いや、歩けていた、確実に。兄が今も横にいる現在だってあったはずだ。そんなこと、今更考えたって仕方ないけれど。

 兄がどうして俺にすぐに神剣を渡してくれなかったのか、それももう今は聞けない。

 もう、過去には戻れない。

 ああ、思考がどうしようもない方向に行っている。思い切り吸った後に深く息を吐きだす。なんとかそれで気持ちに区切りをつけよう。

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