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6章 再会と神島
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しおりを挟む今日、船での旅を終えて神島へと足を踏み入れることになる。ここまで本当に長かった。俺の旅は急ぐことが多くて、こうしてゆっくりと旅をしたことが初めてだった。今までもきっと通ったことがある道だってあったのに、何もかもが新しく見えた。楽しかったけれど、疲れもした。接待とかもあったしね。それがとうとう目的地へとつくのだ。
つくとすぐに教皇にあいさつをするというので、今日は正装だ。アナベルク皇国で急ぎ仕立てた初めて着る服。これまでも何度か正装するべき機会はあったのだが、非公式のものだったのですべて略装で終わったのだ。
「うーん、これなんか変じゃない?」
めったに着ないキラキラとした皇子様衣装。なんだか服に着せられている感じがするんだが……。まだ黒を基調とした服だから着れるけどさ……。
「いいえ!
とってもよくお似合いですよ!」
ねえ、と隣のメイドに話しかけるとその人もええ! と勢いよくうなずく。いや、これ言わせてますね。すみません。
「スーベルハーニ皇子の御髪はきれいな銀ですから、白い服もとてもお似合いそうですね」
「いや、白は……」
これ以上まぶしくならないでほしい。それにしてもきれいな銀、ね。白髪だと思っているけれど、そういう風に捉えられているのか。そもそも銀髪と白髪どう違うのかよくわからないけれど。艶とか?
どのみちこの衣装からは逃れられないか、とため息をついているとノックの音が聞こえてきた。こちらを見てきたメイドにうなずくとすぐに扉が開かれる。そこにはリーンスタさんがいた。
「もうすぐ着くけれど、準備は大丈夫かい?」
「はい」
「ふふ、よく似合っているね」
「似合っていますか?
違和感しかない……」
「似合ってるよ。
さあ、エントランスに行こう」
迎えに来てくれたリーンスタさんも今日は正装だ。と言ってもゆったりとした線を描いていて俺のとは全然違うデザインだけれど。リーンスタさんに続いてエントランスに向かうとほかの人も俺よりはリーンスタさん寄りのデザインだったから、神島ではそちらのほうが一般的なのかもしれない。
「到着いたしました」
船員の報告にありがとう、と答えたティアナ様を先頭に船を降りていく。ああ、なんだか見覚えがある景色……。ここにもたくさんの人が並び立っていた。ひきつり気味の笑顔で何とか馬車までの道を歩く。ここが神島か、と感慨を持つ暇もなく馬車に乗り込んでいった。
馬車に乗り込んでからも人々の歓声は続いていく。無事でよかった、という声も聞こえてくる。そうだよな。この島の住民にとって大切な人たちがようやく帰還したのだ。安心するだろう。
島自体あまり大きいものではないものの、さすがに一周するとなると数日はかかるらしい。ただ、教皇が住まう本神殿は港から飛ばして数時間の位置にあるらしい。もっと奥まったところじゃなくていいのかとも思うけれど、これは例の始まりのダンジョンの位置をもとに決まったそうだから動かせないそうだ。
沿道には人が集まってはいたけれど、さすが神島というべきか、人々が馬車の邪魔をすることはなく、それなりの速度で飛ばしていく。これには魔法の補助もあるらしいけれど。そうして順調に馬車は民家よりも高い位置にある本神殿へと向かっていった。
本神殿の門をくぐっても馬車は止まらない。これはよくある門から屋敷までが馬車の距離ってやつですね。まあ、皇宮もそうなわけですが。少しするとようやく馬車が止まった。扉が開かれて出てみると、すぐそばに白亜の城があった。これが本神殿……。もっと質素なのかと思っていたけれど、意外と豪勢だ。これ、実は悪徳で豪華好きとか?
そして降りた先には白い服を着た数人が頭を下げて待ち構えていた。
「お待ちしておりました。
猊下はすでにお待ちです」
「ええ、少し遅くなってしまいましたね。
教皇猊下のもとに急ぎましょうか」
そういうとティアナ様は待っていた人たちを置いて歩きだしてしまった。え、案内人おいていった⁉
「え、ちょっと待ってください!?
あの方たちは⁉」
慌てた俺の言葉に、横にいたリーンスタさんだけでなく先頭のティアナ様もきょとんとこちらを見てきた。そして少しの間が空いた後にティアナ様がくすくすと笑いだした。
「ここは私たちにとって我が家も同じ。
今更案内人など必要ありませんよ」
……、あ、そうだった。うん、そうだよね。俺も皇宮だったら案内人なんてつけずに歩く。皇帝に会いに行くとしても自分で案内してしまうかも。
「すみませんでした……」
は、恥ずかしい。思わずうつむきながらおとなしく後ろからついていきました……。
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