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6章 再会と神島
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しおりを挟むしばらく歩いていてふと気が付いた。装飾物が少ない。廊下は吹き抜けになっていて、太陽の光が差し込む。例の船のように夕日を反射する柱や廊下は美しい。柱には細工も施されているから見ているだけでも楽しい。けれどそれ以上に飾りたてられているわけではない。強いて言えば、ところどころかわいらしい花が飾られているくらいだ。
これは勘違いを正さなければいけないかもしれない……。まあ、本神殿ということだからこっちのほうが正しいのかも。ここはあくまで城ではないしね。むしろこれで金色ビカビカだったらそっちのほうが嫌かもしんれない。
そんなことを考えているとようやく目的地に着いたようで、ティアナ様が歩みを止めた。扉の両端には鎧を着た騎士が立っていて、ティアナ様に一礼する。こちら今まで歩いてきた廊下になじむ質素な扉だった。
「では開けますよ」
今、俺のほうをみて確認したよね? 気を使わせているようだ。ひとまずうなずきを返すとティアナ様は扉を開けた。キィ、と小さく音がする。その音に一気に緊張感が増した。
いくら建物や廊下がシンプルとはいえ、きっと中は豪華絢爛な謁見室だと思っていた。外から来た人を迎える謁見室はその国の力を表すことになる。だからかなり豪華な部屋なのだろう、と。だが、扉の先の部屋はいたってシンプル。というか、これは謁見室ではない……?
明るいクリーム色の部屋の中はシンプルなデザインの家具で統一されている。部屋の中央には大きな文机があり、そこには白い服に身を包んだ長髪の男性が座っている。文机の前には座り心地がよさそうなソファが2つとその間に机がある。
ここは……? 教皇に会いに行くのではなかったのか?
「ああ、よく来たね。
無事に帰還したようで何よりだよ」
「ええ、ただいま戻りましたわ、教皇猊下」
「猊下なんて寂しいじゃないか。
前みたいに呼んでくれていいのに。
久しぶりに君たちの顔を見ることができたというのに」
「お客人の前です、猊下。
初めの予定よりも早く戻ってきたはずですわ」
この空気は一体? と固まっている間に美形の男性の目が瞬く。えっと、猊下って呼ばれていたよな。え、この人が教皇ですか? 思っていたよりもかなり若いんだが。
「それでもあまり島から出ないから、やっぱり寂しかったよ。
それと、えっと……。
君だね」
すくりと立ち上がった教皇はその美形に似合わない無邪気な笑みを浮かべて、まっすぐにこちらへとやってくる。え、え、どうしたら。
「スーベルハーニ・アナベルク、だよね?」
「は、はい」
何とかうなずきを返すと男性はやっぱり、と嬉しそうに言う。そしておもむろに片手で俺の手を取り、もう片手で俺のほほを優しくなで、た? それは一瞬のことですぐにその手は離れていく。軽く触れられたところがほのかに温かい。
「お帰りなさい、スーベルハーニ。
とても君に会いたかったよ。
僕の名はアークルセイ・ラクチェ。
ミベラ教の教皇だ」
「お帰り、なさい……?」
「ぜひ君とゆっくり話したいところだけれど、きっと疲れているだろう?
まずは休むといい。
歓迎の宴は後日……、ミラの民の用が終わったころに開催しようか。
その前にはぜひ時間をとってくれ」
「え、あの宴ですか?
それに話ならば別に今でも……」
「ああ、宴だよ。
だってようやくスーベルハーニが来てくれたんだもの。
さあ、部屋に案内させようか。
ぜひ本神殿に泊まっていってくれ」
「え、あの……?」
会話が! 成り立っていない! なんだ、この教皇。どうしたら、とリーンスタさんに助けを求めるも苦笑が返ってくる。えっと、ひとまずおとなしく部屋に行きましょうか。どのみち泊まるところはないし。
「ぜひ本神殿に泊まらせていただきたいです。
あの、滞在中よろしくお願いします」
「ああ、こちらこそ」
にこりと笑って教皇は人を呼ぶ。どうやらその人が部屋まで案内してくれるようだ。教皇はまだ仕事があるから、と俺たちのことを見送る。え、このためだけに正装着てたのか、俺。なんか無駄に気合入った人みたいで恥ずかしくないか……?
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