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6章 再会と神島
最終話
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「とても素敵だ!」
久しぶり、という挨拶もすっ飛ばしてそんな言葉が口をついた。それだけ、久しぶりに会ったリキートの婚約式のための衣装はぴったりだったのだ。
「あ、ありがとう。
元気そうで何よりだ、ハール」
「ああ、リキートも。
領地は安定したか?」
「あー、まあぼちぼち。
ようやく早急に終わらせないといけない案件が終わったから、フェリラとこうして婚約式が挙げられる」
「お疲れ様」
「いや、ハールこそ。
神島まで大変だっただろう?
それになんだか大変なこともやり遂げたようで?」
「うーん、なんだか結果的に?」
「何それ」
久しぶりの気楽な仲に、話題は尽きない。だが侍従に時間です、と伝えられて俺は慌てて参加者席へと向かった。
リキートと一緒に出てきたフェリラは、見なかった間にますます綺麗になっていた。その服装と相まって輝いているようにすら見える。歩く姿勢やその所作、すべてが今までとは異なる。どれだけ必死に練習してきたかが、その姿からもよくわかる。
滞りなく式は進んでいく。俺は婚約式のことを全く理解していないから、周りの様子からの判断だが。知らなくてもすべて指示してもらえるから本当に助かる。
参加者は俺を含めて10人ほど。公爵の婚約式にしてはかなり小規模だろう。聞くところによると、腐敗しきっていた公爵家からそれに関与していた人をすべて追い出し、一から作り直したらしい。婚約式は基本親族とかなり親しい人しか呼ばないこともあり、これだけ少ないのだろう。
「それでは花冠の交換を」
最後、お互いの瞳の色の花で編まれた花冠を交換する。最後に会ったときはまだぎこちなかった2人だが、今はすっかりパートナーになっている。花冠の交換を終えると、2人は本当に幸せそうに微笑みあった。
おめでとう、という気持ちを込めて精一杯拍手を送る。ほかの参加者も同じように拍手を送っていた。温かい空気の中、リキートとフェリラの婚約式は終了した。
------------------------
その日の夜は言葉に甘えてアベニルス公爵邸で一泊することにした。夜は婚約を祝うための盛大な宴が開かれ、みな心地よい疲れを感じて部屋へと戻っていく。そんな中、俺は2人に呼び止められた。
「少し話す時間をとってもらってもいい?」
「もちろん。
でも、いいのか?
今日みたいな日に俺も一緒で」
「ハールなら大歓迎だよ。
久しぶりに会ったんだし」
そういう2人に誘われて、俺はプライベートルームへと入れてもらった。そこにはお酒とジュース、軽食が用意されていた。
「それにしても、本当に見違えたよ。
相当頑張ったんだな、フェリラ」
「うん、じゃなくて、ええ。
リキートの妻になるために頑張ると決めましたから」
「は、あはは!
俺の前では今まで通りでいいよ。
俺としてもなんだか笑っちゃう」
「うーん、まだ慣れないんだよね……。
でも、リキートとハールの前だったらいいかな」
「僕としてもその方がいいかな。
僕のためとはいえ、フェリラはフェリラらしくいられる方がうれしいし」
「そう言ってくれるなら……」
「えーっと、俺部屋に帰ってようか?」
「え、い、いや!
ここにいてよ」
えー、何この空気。なかなかやりずらいんだけれど。むぅ、とした顔をしているとごめんごめん、と謝ってくる。そのやり取りがなんだか妙におもしろくて、思わず笑ってしまう。結局3人そろって笑ってしまった。
「はー、こんな風に思い切り笑ったの久しぶり!」
「本当に。
最近辟易すること多かったしね」
「なんだかそっちも大変そうだね」
「もう、大変なんてものじゃなかったのよ!」
そう叫んだフェリラの愚痴が一通り終わった後、リキートがハールは? と聞いてきた。
「ハールは、この後どうするの?」
「俺?
俺はね……、外交官になることにしたよ。
この国と、ほかの国をつなぐ外交官に」
「外交官……?
ハールが、ほかの国と皇国をつなぐの?
……それってとても素敵!
すごいよ!」
「ま、まだどれほど役に立てるかわからないけれどね。
でも、皇国が誤解されたままなのは嫌だと思って」
「きっと、その仕事はハールにしかできないことだよ。
応援する。
僕も、公爵として」
「リキート……。
ありがとう」
「わ、私も!
応援するよ、もちろん」
「フェリラも、ありがとう」
実は自信はなかった。本当に俺にそんな大役ができるのか。でも、ずっと一緒にいた2人がそう言ってくれるのなら、少し自信が持てる気がした。
「じゃあ、戻ったらその仕事に?」
「うん。
もう陛下から許可はいただいているんだ。
戻ったらすぐにその仕事に取り掛かる。
少しでも早く国交を正常化させたいからね。
せっかく、精霊がこの国でも自由に飛び回れるようになったんだ。
人も、同じように自由に行き来できるようにしたい」
酔いが回っているのか、余計なこともついつい話してしまう。そんな俺にうんうんとうなずくリキートたちもきっと酔いが回っているのだろう。
「ふふ……。
私たちの未来に、皇国の未来が明るいものであることを祈って」
フェリラが急に手を組み、祈りをささげる。それを見て、俺たちも真似をすることにした。特にリキートには神に祈るという習慣はなかったはずだ。リキート、というか皇国全体に。今後はもしかしたらこういう姿は今後いたるところで見られるようになるのかもしれない。
ちなにみにこの日に深酔いしてしまったせいで、翌日皇宮へ帰るのがだいぶ遅くなってしまった。お酒はほどほどにしないとだめだと、外交に行く前に気が付いてよかったのかもしれないけれど……。
久しぶり、という挨拶もすっ飛ばしてそんな言葉が口をついた。それだけ、久しぶりに会ったリキートの婚約式のための衣装はぴったりだったのだ。
「あ、ありがとう。
元気そうで何よりだ、ハール」
「ああ、リキートも。
領地は安定したか?」
「あー、まあぼちぼち。
ようやく早急に終わらせないといけない案件が終わったから、フェリラとこうして婚約式が挙げられる」
「お疲れ様」
「いや、ハールこそ。
神島まで大変だっただろう?
それになんだか大変なこともやり遂げたようで?」
「うーん、なんだか結果的に?」
「何それ」
久しぶりの気楽な仲に、話題は尽きない。だが侍従に時間です、と伝えられて俺は慌てて参加者席へと向かった。
リキートと一緒に出てきたフェリラは、見なかった間にますます綺麗になっていた。その服装と相まって輝いているようにすら見える。歩く姿勢やその所作、すべてが今までとは異なる。どれだけ必死に練習してきたかが、その姿からもよくわかる。
滞りなく式は進んでいく。俺は婚約式のことを全く理解していないから、周りの様子からの判断だが。知らなくてもすべて指示してもらえるから本当に助かる。
参加者は俺を含めて10人ほど。公爵の婚約式にしてはかなり小規模だろう。聞くところによると、腐敗しきっていた公爵家からそれに関与していた人をすべて追い出し、一から作り直したらしい。婚約式は基本親族とかなり親しい人しか呼ばないこともあり、これだけ少ないのだろう。
「それでは花冠の交換を」
最後、お互いの瞳の色の花で編まれた花冠を交換する。最後に会ったときはまだぎこちなかった2人だが、今はすっかりパートナーになっている。花冠の交換を終えると、2人は本当に幸せそうに微笑みあった。
おめでとう、という気持ちを込めて精一杯拍手を送る。ほかの参加者も同じように拍手を送っていた。温かい空気の中、リキートとフェリラの婚約式は終了した。
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その日の夜は言葉に甘えてアベニルス公爵邸で一泊することにした。夜は婚約を祝うための盛大な宴が開かれ、みな心地よい疲れを感じて部屋へと戻っていく。そんな中、俺は2人に呼び止められた。
「少し話す時間をとってもらってもいい?」
「もちろん。
でも、いいのか?
今日みたいな日に俺も一緒で」
「ハールなら大歓迎だよ。
久しぶりに会ったんだし」
そういう2人に誘われて、俺はプライベートルームへと入れてもらった。そこにはお酒とジュース、軽食が用意されていた。
「それにしても、本当に見違えたよ。
相当頑張ったんだな、フェリラ」
「うん、じゃなくて、ええ。
リキートの妻になるために頑張ると決めましたから」
「は、あはは!
俺の前では今まで通りでいいよ。
俺としてもなんだか笑っちゃう」
「うーん、まだ慣れないんだよね……。
でも、リキートとハールの前だったらいいかな」
「僕としてもその方がいいかな。
僕のためとはいえ、フェリラはフェリラらしくいられる方がうれしいし」
「そう言ってくれるなら……」
「えーっと、俺部屋に帰ってようか?」
「え、い、いや!
ここにいてよ」
えー、何この空気。なかなかやりずらいんだけれど。むぅ、とした顔をしているとごめんごめん、と謝ってくる。そのやり取りがなんだか妙におもしろくて、思わず笑ってしまう。結局3人そろって笑ってしまった。
「はー、こんな風に思い切り笑ったの久しぶり!」
「本当に。
最近辟易すること多かったしね」
「なんだかそっちも大変そうだね」
「もう、大変なんてものじゃなかったのよ!」
そう叫んだフェリラの愚痴が一通り終わった後、リキートがハールは? と聞いてきた。
「ハールは、この後どうするの?」
「俺?
俺はね……、外交官になることにしたよ。
この国と、ほかの国をつなぐ外交官に」
「外交官……?
ハールが、ほかの国と皇国をつなぐの?
……それってとても素敵!
すごいよ!」
「ま、まだどれほど役に立てるかわからないけれどね。
でも、皇国が誤解されたままなのは嫌だと思って」
「きっと、その仕事はハールにしかできないことだよ。
応援する。
僕も、公爵として」
「リキート……。
ありがとう」
「わ、私も!
応援するよ、もちろん」
「フェリラも、ありがとう」
実は自信はなかった。本当に俺にそんな大役ができるのか。でも、ずっと一緒にいた2人がそう言ってくれるのなら、少し自信が持てる気がした。
「じゃあ、戻ったらその仕事に?」
「うん。
もう陛下から許可はいただいているんだ。
戻ったらすぐにその仕事に取り掛かる。
少しでも早く国交を正常化させたいからね。
せっかく、精霊がこの国でも自由に飛び回れるようになったんだ。
人も、同じように自由に行き来できるようにしたい」
酔いが回っているのか、余計なこともついつい話してしまう。そんな俺にうんうんとうなずくリキートたちもきっと酔いが回っているのだろう。
「ふふ……。
私たちの未来に、皇国の未来が明るいものであることを祈って」
フェリラが急に手を組み、祈りをささげる。それを見て、俺たちも真似をすることにした。特にリキートには神に祈るという習慣はなかったはずだ。リキート、というか皇国全体に。今後はもしかしたらこういう姿は今後いたるところで見られるようになるのかもしれない。
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