『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

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1.5章 逃走

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 こうして、僕の旅は再び始まった。サーグリア商団は、移動しながらの販売を主としているらしい。出会った当初の、店舗を構えているのはかなり珍しいこと、と。

 そして、移動中は商品を載せる馬車一台、そして人移動用の馬車一台の2台で動いているらしい。そして商品を載せる馬車には必ず一人以上の男性が中に乗る。

 もう移動するところだった、ということで店舗を片付けるといざ出発だ。

「ハールはサーグリア商団に入るのかしら?」

「え、え?
 いえ、一応オースラン王国まで、と」

「えー、ずっと一緒にいようよ」

「こら、わがまま言うんじゃありません。
 でも、そうなのね。
 オースラン王国、か」

「あ、あの、オースラン王国がどうかしたんですか?」

「いいえ。
 あのね、私はもともとオースラン王国で暮らしていたのよ。
 それが両親が亡くなって、兄と困っているところで助けてくれたのがお義父さんなの。
 だから、私はお義父さんがあなたを連れてきたこと、運命だと思うわ」

 うん、めい? どうして急にこんな話を? それにミグナさんとグルバークさんはもともと孤児だった?

「だから、あなたがここにいることに罪悪感なんて、おぼえなくていいの。
 っと、話がずれてしまったわね。
 そう、オースラン王国ね。
 だから、なんだか懐かしいなって」

 罪悪感……。でも、罪悪感覚えるに決まっている。だって、僕なんの役にも立てていないのに、こんな風によくしてもらって……。でも、僕が返せるものは何もないんだよ。

「……、あのさ、どうしてハールはいつもフードかぶってるの?
 熱いでしょう?」

「あ、こ、これは……」

「こら、ケリー。
 意地悪言わないの。
 お前はこっちを手伝って」

 えー、と言いながらもミグナさんについていくケリー。なんだかんだ、ケリーは母親のことが大切なのだろう。それにしても、本当にすっかり癖になってしまった。

「おーい、俺ちょっとギルド行ってくる」

「ああ、頼んだ」

 ギルド? いま、ギルドっていった? もしかして、それって冒険者ギルドかな。

「お? 
 珍しい、ハールから出てくるなんて。
 どうした?」

「あ、あの、ギルドって、冒険者ギルド……?」

「ん?
 ああ、そうだぞ。
 やっぱりハールも男の子だな! 
 一緒に行くか?」

 一緒に。行ってみたい、けれど、やっぱり……。ぎゅっと服の裾を握っていると、無理するな、と頭をなでてくれる。うう、本当に情けない。でも……。

 行ってくる、というシラジェさんの後ろ姿を見送ることしかできない自分が、ひどく恨めしかった。本当は、ここの人の優しさに甘えてしまいたい。自分の弱さを全部さらして、そうして生きられたらどんなに楽だろうか。
 
 でも、僕はできない、よ。怖い、また失うのが。これも全部神様のせいだ。全部、全部全部、神様が悪い!
 ……大丈夫、『ハール』の心は、きっと守ってみせるから。


「おーい、ただいま。
 Dランクだが、なんとか護衛してくれるパーティを探してこれた」

「ああ、よかったわ。
 これで少しは安全に行けるわよね」

「……安全に?」

「あ、ハール。
 そうなの。
 この先の道がね、野盗が出ているみたいで」

 野盗……。

「あ、そんなに心配しないでいいのよ? 
 そのためにパーティを雇ったのだもの」

 そっか、そうだよね。他のみんなはけろっとしているもの。僕だけ過剰に反応しちゃった。また、なにか、があるかと思っちゃった。


「よし、じゃあ明日には次の町に移動するぞ!」

「わかりました!」

「さあさ、ここの商品が買えるのは今日まで!
 ほら、そこのお兄さん、一個いかが?」

 すごい、売り込みの追い上げに入った。ここで売っている商品はほかの町の特産品を仕入れたもの、それと手作り品だ。これらの商品はブラサさんの手によるものが多く、質がいいと人気なのだ。

 いなくなってしまうんなら、予備にも買っておこうかね。
 気になっていたし、買ってしまおうから。

 そんなことを口にしながらあっという間にお客様が並んでいく。はー、本当にすごいな。っと、僕は僕にできることをしよう。店に出ることはできないけれど、きれいに磨いたり、袋に包んだり。そんなことはできるから。

「いやー、売れた売れた。
 ありがとな、ハール。 
 せっせと手伝ってくれて」

「父さん!
 俺も手伝ったぞ!」

「ああ、そうだな。
 たくさんお客さん呼んでくれてありがとうな、ケリー」

「えへへ」

 よかった、少しでも役に立てたみたいで。少しずつ、本当にすこしずつだけれど、僕も成長していたい。そのあとは明日ははやいから、とそうそうに眠りにつくことに。

「こんにちはー、依頼されてきました、グルースです!」

「ああ、お待ちしておりました。
 もう少しお待ちください」

「はいはい、大丈夫ですよ」

 ! たぶん今来たのが冒険者、だよね? 少し興味がある。というか、憧れが……。ちょっと、ちょっとだけ覗いて……。

「ハール?
 何しているの?」

「うわぁ!
 び、びっくりさせないでよ、ケリー……」

「えー、だって、ハールが何だかこそこそしているんだもの。
 気になるじゃん」

 そ、そうかもだけど。でも、本当に心臓ぎゅってなった。

「あはは、それにしてもハールのおっきい声初めて聴いた!
 そんな声も出せるんだね」

「そう、かな?」

 うんうん、とうなずくケリー。あんまり意識していなかったけれど、そっか。そういえば、ずっと大きい声なんて出していなかったかも。自分の存在が少しでも印象に残らないようにって、そればかり考えていたから。

「お、そこにいるのはもしかして、依頼主の子供たちですか?」

「おい、勝手に話しかけるなって」

「いいじゃんいいじゃん」

「こんにちは!
 ケリーです」

「おお、ちゃんと挨拶できていい子だね。
 俺らはグルースっていうんだ」

「グルー、ス?」

「そう!
 っと、そっちの子は?」

 あ、やっぱり気づかれていた。うう、冒険者なんていろんなところ回っているからな。万が一、皇国のことも知っていたら、って思うと……。

「ハ「ゆ、幽霊!
幽霊だから、気にしないで」

 っは! 何を言っているんだ、自分。これはさすがにない。でも、どういえばいいかわからなかったんだ。

「はは、君面白いね、幽霊君。
 うん、わかった」

 の、のっかってくれた。ありがたい。ケリーはまだ少し変な顔しているけれど、いいんだ。なんとなく、名前も知られたくない。

「それじゃあ、出発だ!
 護衛、よろしくね」

「はい」
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