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1章 変わる日常

1話 姉の婚約

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「アゼリア、お前には近々王都行ってもらう。
 ベルク殿下がお前をお望みだ」

 冷たくそう言い放つ父だったが、その顔はどこか嬉しそうだ。その理由はお姉様もなぜか一緒に呼ばれた私にもわかりきっている。

「そうですか。
 謹んでお受けいたしますわ」

 そんな父に応戦するようにお姉様も硬い声で返事を返す。父は少しむっとしたがこの際気にしてはいられないのだろう。我が家と王家との繋がりを持てるのならばこのくらいは我慢してやろうということだろうか。しかも相手はベルク王太子殿下である。これは父にとってなんとしてでもモノにしなければいけない話であった。

「そこで、だ。
 ウェルカ、お前もアゼリアについて行ってもらう。
 先方にはすでに承認いただいているが、アゼリアの侍女としてお前をよこす」

 そうして話は以上だ、と切り上げた父に私もお姉様も開いた口がふさがらない。今この人はなんといった? 私も王都についていく、それはいい。だが、お姉様の侍女として? ふざけるのもたいがいにしてもらいたいものだ。

「お父様?
 一体何をおっしゃっていますの。
 ウェルカはこのバーセリク侯爵家の次女で、来年には学園に入る年です。
 それなのに、今私の侍女として王都へ? 
 このようなお話、冗談でもたちが悪いですわ」

 衝撃的なことに何も言えないでいる私に代わって、お姉様が言いたいことを言ってくださった。心の中でお姉様に感謝をしつつ、父の方を見るとあからさまに不機嫌な様子を醸し出していた。

「私に口答えをするな。
 出ていけ」

 ああこれは話を聞く気が一切ないという態度。これ以上は話しても無駄だという意思表示のためにお姉様のドレスを軽く引っ張ると、お姉様は大げさにため息をついた。

「失礼致しました」

「失礼いたしました」

 お姉様、これはそうとう怒っていらっしゃいますね。でも私もこれでも怒って、というよりも怒りを通り越して呆れています。あれがわが父だなんて認めたくないくらいには。

「ウェルカ、私の部屋で少々お話をしない?」

「喜んで、お姉様」

 ため息をつきそうなお姉様は、それをこらえて笑顔でそう誘ってくる。それを断る理由は特になかった。

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