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2章 学園生活
48話 入寮(2)
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「あのセイット、その方は?」
「ああ、まだ紹介していませんでしたね。
ずっと僕に仕えてくれているマンゼーデです」
「マンゼーデさん?
よろしくお願いいたします」
「呼び捨てで構いません、ウェルカ様。
よろしくお願い致します」
マンゼーデは座った状態のまま一礼をしてくれる。確か商業区に行った時も一緒にいたはずだけど、今まで聞いたことがなかったんだよね。
特に話すこともないまま馬車は学園へと向かっていく。ちなみにお兄様は屋敷から通うようだ。今は社交シーズンでお母様方もこちらにいるけれど、それが終わればあそこにはお兄様とお父様、おじい様という男ばかりが残るようだ。
馬車は今回は校門では止まらずにそのまま寮の方へと入ってくれる。荷物があることを想定しての対応なんだそう。
校門から走って数分、大きな寮の前で馬車は停止した。ちなみに寮は女子棟も男子棟も入り口は一つだ。入り口、管理室、食堂、談話室など男女共用で使うものはこの中央棟に集まっている。
「お待ちしておりました、セイット・ゼリベ・チェルビース様、ウェルカ・ゼリベ・チェルビース様ですね?」
「はい」
「寮監長のミンククルと申します。
なにか困ったことがあったらご相談ください」
「よろしくお願いします」
「ではこの後は女子棟、男子棟に分かれて説明いたします。
ウェルカ様はあちらの女性、セイット様はあちらの男性の方にどうぞ」
言われて示された方を見ると少しふくよかな女性が女子棟の入り口で手を振ってくれていた。
「ウェルカ、今日の夕飯は一緒に食べましょう。
食堂で待ち合わせで」
「ええ、わかったわ」
またあとで、とセイットと別れると私はさっそくそちらの方へと向かった。
「よく来ましたね、ウェルカ様。
これからよろしくお願い致します。
私は女子棟の寮監をしているベナンタと申します」
「ベナンタ様、よろしくお願い致します」
「では、まずはお部屋にご案内いたしますね。
荷物もそちらの方に運び込んでおりますので」
ベナンタ様についていくつかの階段を上ると私の部屋と言われるところについた。寮の最上階にある部屋でこの階には王族、公爵家の令嬢が部屋をもらうそうだ。
中に入ると、お客様の応接もするリビング、寝室、書室、ウォークインクローゼット、侍女用の部屋、それと水回りが揃っている。うん、さすが豪華。規模は違うけれど基本的にはここには上位貴族の子息令嬢が入学してくるからどこも似た作りになっているそうだ。
「本日は昼食を取られましたら、寮内を案内いたします。
こちらに伺います」
それだけ言うと、ベナンタ様は礼をして部屋を出ていった。と言っても昼まではまだ時間があるし、ひとまず部屋内の整理かな。
「ああ、まだ紹介していませんでしたね。
ずっと僕に仕えてくれているマンゼーデです」
「マンゼーデさん?
よろしくお願いいたします」
「呼び捨てで構いません、ウェルカ様。
よろしくお願い致します」
マンゼーデは座った状態のまま一礼をしてくれる。確か商業区に行った時も一緒にいたはずだけど、今まで聞いたことがなかったんだよね。
特に話すこともないまま馬車は学園へと向かっていく。ちなみにお兄様は屋敷から通うようだ。今は社交シーズンでお母様方もこちらにいるけれど、それが終わればあそこにはお兄様とお父様、おじい様という男ばかりが残るようだ。
馬車は今回は校門では止まらずにそのまま寮の方へと入ってくれる。荷物があることを想定しての対応なんだそう。
校門から走って数分、大きな寮の前で馬車は停止した。ちなみに寮は女子棟も男子棟も入り口は一つだ。入り口、管理室、食堂、談話室など男女共用で使うものはこの中央棟に集まっている。
「お待ちしておりました、セイット・ゼリベ・チェルビース様、ウェルカ・ゼリベ・チェルビース様ですね?」
「はい」
「寮監長のミンククルと申します。
なにか困ったことがあったらご相談ください」
「よろしくお願いします」
「ではこの後は女子棟、男子棟に分かれて説明いたします。
ウェルカ様はあちらの女性、セイット様はあちらの男性の方にどうぞ」
言われて示された方を見ると少しふくよかな女性が女子棟の入り口で手を振ってくれていた。
「ウェルカ、今日の夕飯は一緒に食べましょう。
食堂で待ち合わせで」
「ええ、わかったわ」
またあとで、とセイットと別れると私はさっそくそちらの方へと向かった。
「よく来ましたね、ウェルカ様。
これからよろしくお願い致します。
私は女子棟の寮監をしているベナンタと申します」
「ベナンタ様、よろしくお願い致します」
「では、まずはお部屋にご案内いたしますね。
荷物もそちらの方に運び込んでおりますので」
ベナンタ様についていくつかの階段を上ると私の部屋と言われるところについた。寮の最上階にある部屋でこの階には王族、公爵家の令嬢が部屋をもらうそうだ。
中に入ると、お客様の応接もするリビング、寝室、書室、ウォークインクローゼット、侍女用の部屋、それと水回りが揃っている。うん、さすが豪華。規模は違うけれど基本的にはここには上位貴族の子息令嬢が入学してくるからどこも似た作りになっているそうだ。
「本日は昼食を取られましたら、寮内を案内いたします。
こちらに伺います」
それだけ言うと、ベナンタ様は礼をして部屋を出ていった。と言っても昼まではまだ時間があるし、ひとまず部屋内の整理かな。
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