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2章 学園生活

78話 王妃のお茶会(5)

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 振り返るとそこにいたのはジェラミア様。話しかけられるなんて思っていなかったからつい固まってしまった。

「ねえ、あなたアゼリアの妹?」

「はい、そうですが……」

 相手の意図が分からなくて、ついいぶかしげな眼を向けてしまう。そして仮にも王太子妃様、そして隣国の王女にも関わらず人の会話に割り込んでくるのは礼儀としてどうかと思うんだけどな。

「そ、そんな目で見なくてもいいじゃない……」

 うっと言葉に詰まったようにそんな私を見てくるジェラミア様に、内心首をかしげてしまう。なんというか、予想とは違った反応だ。もっと偉そうにされるのだと身構えていたのだ。

「あなた、名前はなんていうの?
 えっと、私はジェラミア・アンセット・ヌーベルト・タリベアンよ」

「ウェルカ・ゼリベ・チェルビースと申します」

 内心戸惑いながらもそう返すと、そう、とそっぽを向いてしまう。自分で聞いておきながら、とも思うけれどその顔が赤いのがここからでも見えてしまうとイラつくこともできなくなってしまう。
 えっと、結局この方はどういう人なのだろう? 今日一日で印象がころころと変わってしまい、つかみどころがないというか……。噂や見た目をうのみにしてはいけないという気持ちになってくる。



「そういえば、今学園で何をやっているの?」

 それ以降何も話さないジェラミア様にいまだ困惑していると、先ほどよりも明るい声音でお姉様が再び声をかけてくださった。これ以上何か話すこともなさそうだし、もう大丈夫かな。

「今は一つずつ魔法適正を調べていっています。
 先生が光属性以外を扱える方だそうで、いつも例を見せてくださるのです」

「まあ、それはとても優秀な方なのですね」

「まだ若い方なのですが、なんでも魔法師団の副団長を務めているそうです」

「えっと、オクトパック副団長かしら……?」

「はい!
 ご存じだったのですね」

 まさかお姉様が先生の名前を知っているとは思わなかった。驚いた顔をしていると、とても優秀な方で将来魔法師団長になるとまで言われている方なの、と教えてくださった。でもあの年齢で副団長を務められるのならば確かに可能なのかもしれない。

 たまにちらちらとした視線を感じつつ、お姉様との会話を楽しんでいるとまたにわかに会場が騒がしくなる。でも、殿下方の時の浮足立ったような歓迎の様子とは違い、今回は不信感があるような、そんな空気を感じた。

 その声に誘われて入口の方を見ると、そこにいたのはバーセリク伯爵夫人元母親と、伯爵令嬢元妹だった。


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