ギフトに振り回されてきたので、今世はひそかに生きていきます

mio

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 なんだか、いろいろとまずいことを口にした気がする。でも、何を言ってしまったのかちゃんとは覚えていない……。

 ベランダで過ごした後、ユースルイベ殿下と会ったことは覚えている。だけれど、そのあとの記憶がない。いつの間にかベッドに入っていて、目を覚ますと心配そうなアンナの顔が目に入った。どうやって、ベッドに?

 いや、まさかね?

 そこからは今日一日の休養が命じられました。張りきった事務官の人も途中でやってきて、今日視たことを話した。思えば、彼らにとってはこれが記録係の初仕事なのか。王室の記録に残る、『神の目』を持つものの記録ノート。その一ページ目に記されることが盛大な即位式なのはかなり縁起がいいのでは、なんて。

―――――――――――――

体調が回復した翌日、王妃様に指導いただく時間にお茶会の提案をしようかなと考えながら準備をしていると、見慣れた王妃様専属の侍女がやってきた。アンナがその対応に出てくれる。話はすぐに終わったようでこちらへと戻ってくる。

「どうしたの?」

「今日の指導は難しいようです。
 何やら急用が入ったようでして」

「あら……。
 それは仕方ないわよね」

 いつもよりも意気込んでいたこともあって、残念ではある。けれど、王妃様もお忙しい身。こういうこともあるだろう。でも予定が無くなってしまったな……。


 部屋で過ごしてもいいのだけれど、それは昨日一日で堪能した。今日はさすがに外に行きたい気持ち。せっかくならお散歩するのもいいかもしれない。

 アンナに庭の花を見に行きたいことを伝えると、すぐに準備をしてくれた。この王城に来てから、王族の庭園の一つには何度も行ったけれど、行けていない庭園もある。その中には仕事などを理由に王宮を訪れている人たちが行ける庭園がある。うん、今日はその庭園を見てみたい。

 アンナに目的地を伝えると、庭園の案内を請け負ってくれた。アンナ自身も花が好きで、よくその庭園を訪れているよう。張りきっているアンナにこちらも嬉しくなってしまう。

 フェルベルトはプライベートエリアの外に行くという話を聞いて、休憩を切り上げて早々に戻ってきてくれた。別に今護衛についてくれている人達だけでいいのでは? と思ったけれど、外の人に接触する可能性があるのならフェルベルトも一緒の方がいい、というのがみんなの意見。『聖騎士』を従えているというのはそれだけで周りの牽制になるというけれど、あまりいい気持ちになる言葉ではない……。

 少しもやもやとした気持ちもありつつ、庭園へと向かっていく。王城に来てからというもの、プライベートエリアから出るのは顔見せの日以来。少しだけ緊張してその境目の扉を超えた。

 やっぱりじろじろと見てくる目線が痛い。その目線のうちに好意がこもったものもあれば、敵意がこもったものもある。それは果たして、『神の目』のギフトに向けたものなのか、突如現れた王太子の婚約者に向けたものなのか。おそらく後者だけれど。

 途中、さりげなく嫌な視線から遮ってもらいつつ、無事に庭園へとたどり着いた。

「ここの庭の花は摘んでもよいことになっているのです。
 もちろん、限度はございますが。
 それでも景観を損なわないように、工夫がされているのですよ」

「摘んでもいいの⁉」

 公用エリアとはいえ、ここの庭園も王城の一部。例えば一部が摘まれきって咲いている花がない、という状態は許されない。すごい……。アンナに教えてもらいながら庭園を歩いていく。

「そろそろお花を摘みましょうか?
 どんなものにするのですか」

 どんなもの……。摘めると聞いて嬉しくなっていたけれど、特に目的はない。悩んでいると、アンナが口を開いた。

「どなたかにお渡しするのもよいのではないでしょうか」

 アンナの顔を見ると優しく微笑んでいる。誰かに渡す……。花束が似合う人。最初に思い浮かんだのは、王城に来てから会っていないマリアンナ殿下の顔だった。

「そうね、お渡しするのもよいかもしれないわ」

そう言うと、アンナは嬉しそうにうなずいた。マリアンナ殿下にはどんな花が似合うだろう。大輪の花も小花もすべて似合いそう。目移りしながら眺めていると、前から人が歩いてきた。

 少し警戒していると、あっと隣から小さな声が上がった。

「クリート!」

「あれ、アンナ?」

 どうやらアンナの知り合いらしい。若い男の人は、こちらに小走りに近づいてくると、途中でピタリと動きを止めた。そんな男性にクリート? とアンナが声をかける。

「え、あ、え?
 あの?
 そ、そちらの方は……?」

「こちらの方はフリージア・シュベルティー様。
 王太子殿下の婚約者であり、『神の目』を持つ方です。
 フリージア様、こちらは庭師のクリートです」

「まあ、よろしくね、クリート」

 なるほど、庭師。納得の恰好。ツナギに軍手、それらには土がついている。日に焼けた顔は健康そう。にこりとほほ笑んで挨拶をすること数秒。ようやく固まっていたクリートが動いた。

「ふ、ふ、フリージア様⁉
 殿下の婚約者⁉
 そ、え、そんな方がなぜ……?」

 困惑しているのがよくわかる声を上げる。申し訳ないけれど、その様子が少しおかしくてくすくすと笑ってしまう。そうだよね、ここで会うとは思わないよね。

「クリート、そろそろ戻ってきて。
 そうだ、今時間があるのなら、フリージア様に庭を案内してくれないかしら。
 今、花束をつくっていらっしゃるの」

「……っは!
 し、失礼しました。
 庭師のクリートと言います。
 あ、その、どのような花束を?」

 ようやく立て直したクリートにイメージを伝えながら、一緒に花束をつくっていく。自分一人でつくるよりもかなりいいものができそうだし、若いながらも博識なクリートのおかげでいろいろなことを知れたし、とても楽しい時間を過ごすことができた。

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