姉に代わって立派に息子を育てます! 

mio

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1章 日常になっていく日々

3話

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「それで、今日の様子はどうだった?」

「今日も変わらなかったよ。
 クルトラ子爵夫人に絵本を読んでもらったり、お昼寝したり。
 せわしなく表情が動いていて……。
 子供は元気だね」

「そうね」

 自室に戻り、イルナに紅茶を入れてもらう。こうしてお茶を楽しみながらヴァークと会話をするのも毎日の楽しみだったりする。こうして傍にいてくれるヴァークにはすでに安心感を抱いてしまっているのだ。

 そのまま夕食も食べることにする。私は一緒に暮らさせてもらう上で、いくつかの決め事をした。レンの母親代わりとして育児にかかわる、けれどあくまで本来の自分の立ち位置を忘れない、ということもそのうちの一つだ。王族の外戚である、という立場の私は食事を共にすることはない。だからこうして自室で食べるのだけれど、ヴァークもよく付き合ってくれるのだ。一人の食事は少し寂しいから正直助かるかも。

「もうすぐ、即位式ですね」

 不意にヴァークの言葉からこぼれた言葉。

「そうですね。
 やっと、という気もしますが」

 やっと、やっとベルク殿下が即位する。主に妻がいないことが問題視されていた殿下は、後継者が産まれた後もすぐには即位することができなかったのだ。新たに妻をめとればよかったし、実際それを求める人も立候補する人もたくさんいたのだけれど、ベルク殿下は一向に首を縦に振らなかった。もう妻は娶らない、そう決めている、ただそれだけを言って。
 結果、即位がここまでずれてしまった。結論は現在の王妃様、つまり王太后様となる方が引き続き王妃の役割を担うこととなったのだ。うん、これにももちろん批判が殺到したわけだ。特に若い女性がいる家は、自分の娘を売り込むチャンスだと息巻いていたから余計に批判してきていたのだろう。そんな人がレンの母親になるとか絶対に嫌だったから、殿下にはひそかに感謝しています。

「君の実家も少し荒れそうだね」

「それを言わないでくださいよ……。
 申し訳ないと思っているのですから。
 だから、私は私にできる範囲で自分で権利を勝ち取ろうとしているのですし」

「うん、わかっているよ。
 ウェルカがいつも必死にやっていることは。
 それにしても、君に守りの陣を求めてくるくせにこの立場にいることは否定してくるってどれだけ面の皮が厚いのか……」

「ふふ、本当に。
 ばれてないとでも思っているのでしょうかね?」

 全部筒抜けなのにな、とヴァークが笑う。もしも、彼があの時私の傍から離れる選択をしていたのなら。私はこうした気が抜ける時間すら取れなかったのだろう。そう思うとぞっとするし、同時に彼に深く感謝をする。
 ……、たとえ婚約者としての本来の役割を果たすことができていなくても必死に目をそらしているのだ。

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