9 / 10
1章 日常になっていく日々
9話
しおりを挟む「さて、今夜はこれでごちそうを作ってもらおう」
せっせと魔獣を解体し、何かを切り出しているな、とは思っていたけれど、魔獣の肉って食べられるの? え、なんかいやだ。普通の家畜に似たものもあるけれど、なかなかグロテスクな形態をしている魔獣も中にはいるのだ。副団長が回収した中にも。
「魔獣は一般的に食べられているのですか……?」
恐る恐る聞いてみる。するとあっさりとうなずかれてしまった。あ、そうですか。
「魔獣はつまり、魔の力を持っているからね。
それに一般の家畜よりも栄養価が高く、味もおいしいので人気だよ」
それに人気なんですね。私の感覚がおかしいのでしょうか。話している間にも作業は終わったようで、副団長が立ち上がる。そして周りを見渡すと、そろそろ帰りましょうか、と口にした。確かにもうだいぶ日が傾き始めている。なんだかいろいろと疲れたけれどあっという間の一日だったかな。
「それにしても、ちゃんと自分で魔獣を狩れていたね」
帰り道。行きと同じように副団長に前に乗せてもらって馬に乗っていると不意にそんなことを言われる。そう言えば、副団長に教えてもらいながら必死に弱点について考えていたからか、いつの間にか恐怖心は薄らいでいた。
「そう、ですね。
よかったです」
これで、何か魔獣に対峙することがあっても対処できる。それがひどく安心できた。やっぱり、弱点は少ない方がいい。いろいろな面から狙われる要素がある今はよりそう思う。
「ええ。
技の多彩さも増していたし、ララが結界もとても安定していると言っていた」
確かに初めのころに比べると、任されることも増えてきた。それが信頼の証な気がしてうれしかったけれど、安定面も評価してくれていたならうれしい。
「……、君は今何を目指している?」
唐突に副団長から投げかけられた問い。自分が目指しているもの。それは一つだ。
「レンの、レベルナート様にとって支えと、後ろ盾となるものです。
そのために役職を目指したいと思っています」
そう言い切る。レンのことがなくても、もともとお姉様のために目指していたのだ。相手は変わったけれど、内容は変わらない。
「レベルナート殿下の……。
そうですか」
それきり、副団長は黙りこんでしまった。顔が見えないから確信はないけれど、たぶん考え込んでいる。そう言えば私の中ではこれが当たり前すぎて、改めて口に出すことは少なかったかもしれない。
そのまま城へと帰ると、本当に夜には狩ってきた魔獣で作ったという肉料理が出てきた。それを見たヴァークの嬉しそうな顔にやっぱり私の感覚がおかしいのか、と思いました。
4
あなたにおすすめの小説
【完結】島流しされた役立たず王女ですがサバイバルしている間に最強皇帝に溺愛されてました!
●やきいもほくほく●
恋愛
──目が覚めると海の上だった!?
「メイジー・ド・シールカイズ、あなたを国外に追放するわ!」
長年、虐げられてきた『役立たず王女』メイジーは異母姉妹であるジャシンスに嵌められて島流しにされている最中に前世の記憶を取り戻す。
前世でも家族に裏切られて死んだメイジーは諦めて死のうとするものの、最後まで足掻こうと決意する。
奮起したメイジーはなりふり構わず生き残るために行動をする。
そして……メイジーが辿り着いた島にいたのは島民に神様と祀られるガブリエーレだった。
この出会いがメイジーの運命を大きく変える!?
言葉が通じないため食われそうになり、生け贄にされそうになり、海に流されそうになり、死にかけながらもサバイバル生活を開始する。
ガブリエーレの世話をしつつ、メイジーは〝あるもの〟を見つけて成り上がりを決意。
ガブリエーレに振り回されつつ、彼の〝本来の姿〟を知ったメイジーは──。
これは気弱で争いに負けた王女が逞しく島で生き抜き、神様と運を味方につけて無双する爽快ストーリー!
【完結】拗ねていたら素直になるタイミングを完全に見失ったが、まあいっか
ムキムキゴリラ
恋愛
主人公はソフィア、26歳。魔法省の役人兼皇太子の側室だ。が、いろいろあって、側室の仕事をボイコット中。 (魔法省の方はちゃんとやっています)
「いやー、たしかに側室になった経緯は強引でめっちゃ怒って拗ねてたけれど、もうそれから5年だよ。でも、こっちからなんか言うのも違くない?」
と、開き直っている、そんなソフィアの日々。
誤字脱字のお知らせをいただけると助かります。
感想もいただけると嬉しいです。
小説家になろうにも掲載しました。
『婚約破棄されましたが、孤児院を作ったら国が変わりました』
ふわふわ
恋愛
了解です。
では、アルファポリス掲載向け・最適化済みの内容紹介を書きます。
(本命タイトル①を前提にしていますが、他タイトルにも流用可能です)
---
内容紹介
婚約破棄を告げられたとき、
ノエリアは怒りもしなければ、悲しみもしなかった。
それは政略結婚。
家同士の都合で決まり、家同士の都合で終わる話。
貴族の娘として当然の義務が、一つ消えただけだった。
――だから、その後の人生は自由に生きることにした。
捨て猫を拾い、
行き倒れの孤児の少女を保護し、
「収容するだけではない」孤児院を作る。
教育を施し、働く力を与え、
やがて孤児たちは領地を支える人材へと育っていく。
しかしその制度は、
貴族社会の“当たり前”を静かに壊していった。
反発、批判、正論という名の圧力。
それでもノエリアは感情を振り回さず、
ただ淡々と線を引き、責任を果たし続ける。
ざまぁは叫ばれない。
断罪も復讐もない。
あるのは、
「選ばれなかった令嬢」が選び続けた生き方と、
彼女がいなくても回り続ける世界。
これは、
恋愛よりも生き方を選んだ一人の令嬢が、
静かに国を変えていく物語。
---
併せておすすめタグ(参考)
婚約破棄
女主人公
貴族令嬢
孤児院
内政
知的ヒロイン
スローざまぁ
日常系
猫
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
無能扱いされ、パーティーを追放されたOL、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
恋愛
かつて王都で働いていたOL・ミナ。
冒険者パーティーの後方支援として、管理と戦略を担当していた彼女は、仲間たちから「役立たず」「無能」と罵られ、あっけなく追放されてしまう。
居場所を失ったミナが辿り着いたのは、辺境の小さな村・フェルネ。
「もう、働かない」と決めた彼女は、静かな村で“何もしない暮らし”を始める。
けれど、彼女がほんの気まぐれに整理した倉庫が村の流通を変え、
適当に育てたハーブが市場で大人気になり、
「無能」だったはずのスキルが、いつの間にか村を豊かにしていく。
そんなある日、かつての仲間が訪ねてくる。
「戻ってきてくれ」――今さら何を言われても、もう遅い。
ミナは笑顔で答える。
「私はもう、ここで幸せなんです」
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される
さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。
慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。
だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。
「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」
そう言って真剣な瞳で求婚してきて!?
王妃も兄王子たちも立ちはだかる。
「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる