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見えない形
まえのかたち
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褒められたら嬉しいし、自分の事が認められた気がして気持ちが高鳴る。だから僕は、色んな事をなるべく上手くやろうとした。
中学1年生になった僕は、小学校の頃から習っていたサッカーを続けようと思い、サッカー部に入った。周りのレベルが高くても、それを越えようと努力し続けていた。あの人に受けた一番最初の優しさは、入ったばかりの頃だった。
「早見、お前を1年のリーダーにする。」
入部してすぐのプレイを見て、早々に決めたんだと分かっていても僕はとても嬉しかった。
その後からどんどん練習は厳しくなって、勉強と部活が両立できずに辞めて行く人も多かった。僕の印象では、あの人に嫌気がさして辞めた人が多かったと思っている。それでも僕は、絶対的に信頼されていた。だから僕もあの人を、先生の全てを信じていた。先生に認められるような結果を、先生に怒られない為の練習を。どんなに頑張っても上手くできない時もあった。そんな時先生は僕だけを部室に残し散々怒鳴り散らして殴るのだった。
「なあ?!もっと考えろ、お前は俺のやってほしいプレイをやるんだよ!!…おい聞いてんのかあ?!泣いてんじゃねえよ。なあ、先生になんて言うんだ?お前には分かるだろ?何のために今年は担任になってやったと思ってんだ?!…なあ俺の言う事を聞け。いいか?!!休めると思うなよ?!俺に従って俺の言葉だけを信じろ!」
僕は泣いていた。毎週毎週呼び出されては泣いていた。いつか上手くいって褒めてもらうのを期待して。
2年生になってからの大会では準優勝する事ができた。最後の相手は強豪。僕達は元々あまり強くなかったので、準優勝と聞いてクラスの人にはすごく驚かれた。
___どうしよう。
僕は試合が終わったあとの先生の顔を怖くて見る事ができなかった。
期待を裏切った。
次の日の部活の終わりに僕は、使われてない部室の奥の部屋に連れて行かれた。
ガチャリッと、鍵を閉められる。8月の蒸し暑さで部屋が異常な気温なのが分かった。何秒か沈黙して汗が滴る。そして、僕は思い切り腹の部分を殴られた。
「お前は今まで何を聞いてたんだぁ?あ?!!!てめえは俺の言う通りやりますって言ったよなあ?!お前は俺を裏切ったんだな?ふざけてんじゃねえぞ!!!」
先生は僕の両肩を持って床に叩きつける。
「うう!!、おえっ、ぅぅ…ぐっ、ゲホゲホッああああああ、ごっごめんなさい…」
僕が先生に背を向いて倒れる。すると首を思い切り噛まれて、体がビクリと跳ね上がる。
「ああぁっ、ぐぅ、ぁ、せんせえ……ごっ、ごめんなさい。ごめ、なさい。あっ、あっぁぁ、いっ!ごめんなさいごめんさないごめんなさい!!!!」
僕は身体中を蹴られたかと思えば馬乗りにされ強く首を絞められた。
し、死んでしまう。
___そう、思っていたのに、先生は首を絞める力を緩めた。
「なあ…早見、分かってるんだろ?先生のこと大好きだもんな。嫌われたくなくて仕方ないもんなあ。じゃあやる事は分かってるよな。」
そう言うと先生は、乱暴に僕の制服を脱がせて、ネクタイを口にねじ込んだ。
僕はこんな事をされても、先生に嫌われたくない一心だった。抵抗をしなかった。これからどうなるのか想像しようとして意識が途切れかける。誰かが扉を開けて先生を取り押さえてるところを見て、僕は完全に意識を失った。
結局、それが先生と話した最後の日になった。
病院で目を覚ましたら仕事で忙しかったはずの両親がいた。とても心配してくれたが、僕の容体が大丈夫だと分かると仕事をしに帰ってしまった。先生は児童に暴行したと言う事で捕まり、ニュースにもなった。
僕はぼんやりとそのニュースを見てあの光景を思い出す。独占的な強い力で握り締められ、殴られて噛まれて蹴られて…あれ。
自分の気持ちに違和感を感じる。いや本当はもっと早く分かっていたのかもしれない。
でもおかしい。と、そんなはずない。だって僕は普通だ!と、思いきかせた。
こんな事があってからはあまり学校には行けず、高校受験も苦労したが何とか乗り越える事ができた。
その間で僕は自分の性格が大きく変形していた事に気付いた。、
周りの人間に気に入られようとしてしまうこと。
もうあの人はいない事は分かっているそれでもあの時の出来事は呪いのようにまとわりついてぼくを翻弄する。
きっと先生との接した時間がそれほど強烈で、僕は少しおかしくなったんだとも思う。頭のおかしい考えをたまにしてしまう。自分からは怖くて出来ない。でも、無理やり__
こんな考えも時間が経てば風化するだろうとしんじていた。しんじていたけど。
僕は高校初日に、偶然にも出会ってしまった。
「私、風波アイカ。あなたの顧問だった風波タカヒロの娘。ごめん。話したい事があるの。」
僕はまたあの感覚を思い出す。
中学1年生になった僕は、小学校の頃から習っていたサッカーを続けようと思い、サッカー部に入った。周りのレベルが高くても、それを越えようと努力し続けていた。あの人に受けた一番最初の優しさは、入ったばかりの頃だった。
「早見、お前を1年のリーダーにする。」
入部してすぐのプレイを見て、早々に決めたんだと分かっていても僕はとても嬉しかった。
その後からどんどん練習は厳しくなって、勉強と部活が両立できずに辞めて行く人も多かった。僕の印象では、あの人に嫌気がさして辞めた人が多かったと思っている。それでも僕は、絶対的に信頼されていた。だから僕もあの人を、先生の全てを信じていた。先生に認められるような結果を、先生に怒られない為の練習を。どんなに頑張っても上手くできない時もあった。そんな時先生は僕だけを部室に残し散々怒鳴り散らして殴るのだった。
「なあ?!もっと考えろ、お前は俺のやってほしいプレイをやるんだよ!!…おい聞いてんのかあ?!泣いてんじゃねえよ。なあ、先生になんて言うんだ?お前には分かるだろ?何のために今年は担任になってやったと思ってんだ?!…なあ俺の言う事を聞け。いいか?!!休めると思うなよ?!俺に従って俺の言葉だけを信じろ!」
僕は泣いていた。毎週毎週呼び出されては泣いていた。いつか上手くいって褒めてもらうのを期待して。
2年生になってからの大会では準優勝する事ができた。最後の相手は強豪。僕達は元々あまり強くなかったので、準優勝と聞いてクラスの人にはすごく驚かれた。
___どうしよう。
僕は試合が終わったあとの先生の顔を怖くて見る事ができなかった。
期待を裏切った。
次の日の部活の終わりに僕は、使われてない部室の奥の部屋に連れて行かれた。
ガチャリッと、鍵を閉められる。8月の蒸し暑さで部屋が異常な気温なのが分かった。何秒か沈黙して汗が滴る。そして、僕は思い切り腹の部分を殴られた。
「お前は今まで何を聞いてたんだぁ?あ?!!!てめえは俺の言う通りやりますって言ったよなあ?!お前は俺を裏切ったんだな?ふざけてんじゃねえぞ!!!」
先生は僕の両肩を持って床に叩きつける。
「うう!!、おえっ、ぅぅ…ぐっ、ゲホゲホッああああああ、ごっごめんなさい…」
僕が先生に背を向いて倒れる。すると首を思い切り噛まれて、体がビクリと跳ね上がる。
「ああぁっ、ぐぅ、ぁ、せんせえ……ごっ、ごめんなさい。ごめ、なさい。あっ、あっぁぁ、いっ!ごめんなさいごめんさないごめんなさい!!!!」
僕は身体中を蹴られたかと思えば馬乗りにされ強く首を絞められた。
し、死んでしまう。
___そう、思っていたのに、先生は首を絞める力を緩めた。
「なあ…早見、分かってるんだろ?先生のこと大好きだもんな。嫌われたくなくて仕方ないもんなあ。じゃあやる事は分かってるよな。」
そう言うと先生は、乱暴に僕の制服を脱がせて、ネクタイを口にねじ込んだ。
僕はこんな事をされても、先生に嫌われたくない一心だった。抵抗をしなかった。これからどうなるのか想像しようとして意識が途切れかける。誰かが扉を開けて先生を取り押さえてるところを見て、僕は完全に意識を失った。
結局、それが先生と話した最後の日になった。
病院で目を覚ましたら仕事で忙しかったはずの両親がいた。とても心配してくれたが、僕の容体が大丈夫だと分かると仕事をしに帰ってしまった。先生は児童に暴行したと言う事で捕まり、ニュースにもなった。
僕はぼんやりとそのニュースを見てあの光景を思い出す。独占的な強い力で握り締められ、殴られて噛まれて蹴られて…あれ。
自分の気持ちに違和感を感じる。いや本当はもっと早く分かっていたのかもしれない。
でもおかしい。と、そんなはずない。だって僕は普通だ!と、思いきかせた。
こんな事があってからはあまり学校には行けず、高校受験も苦労したが何とか乗り越える事ができた。
その間で僕は自分の性格が大きく変形していた事に気付いた。、
周りの人間に気に入られようとしてしまうこと。
もうあの人はいない事は分かっているそれでもあの時の出来事は呪いのようにまとわりついてぼくを翻弄する。
きっと先生との接した時間がそれほど強烈で、僕は少しおかしくなったんだとも思う。頭のおかしい考えをたまにしてしまう。自分からは怖くて出来ない。でも、無理やり__
こんな考えも時間が経てば風化するだろうとしんじていた。しんじていたけど。
僕は高校初日に、偶然にも出会ってしまった。
「私、風波アイカ。あなたの顧問だった風波タカヒロの娘。ごめん。話したい事があるの。」
僕はまたあの感覚を思い出す。
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