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ただいまの時間 1

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『この子は…どうしてかしら。なんだか木や海みたいな感じがするの。自然のイメージのような』

夢の中で、母さんの声が聞こえる。

『本当に綺麗でしょう? だから、きっと自然に好かれる名前がいいと思うのよね』

これは…? 初めて聞く声だ。
でも、知ってる。
明るくて、まるで音が跳ねるように楽しげで。

これは、死んだ母様の声だ。

『空、海、水、青、緑…うーん、どれもいいけどしっくりこないわね。さんずいや草冠という手も……』

『あら、丁度いいところに!あなた達水の精霊でしょう? どんな響きが好きかしら。あの人から私が名付けていいって言われたの』

会話は噛み合わないが、2人の母の悩む声がこだまする。
幾つもの名前の候補と、試行錯誤の繰り返しと、時々俺を撫でる手と。


『そうね……決めた、この子の名前は蒼澄よ。
〝蒼い〟に〝澄む〟と書いて蒼澄。草冠にさんずいに、自然がいっぱい。
いつか、自分だけの蒼くて澄んだ綺麗な場所を見つけられるように』


『分かった、トアスリティカにしましょう!こんな長い名前が好きでしょう?
この子は眠ってばかりだから、いい夢をみれますようにという想いと…いつか目を覚ましても自然がこの子を守ってくれますようにという意味を込めて。
それと、折角水の精霊達が手伝ってくれたんですもの!少しだけ水の意味も入れておくわ。

ーーだから、この子のこと、よろしくね』


(ぁ………)


2つの手が重なった大きな光の手が、優しく自分の頭を撫でてくれる。

ねぇ母さん、蒼澄ってそんな意味だったんだね。
母様。母様のおかげで素敵な精霊に出会えたよ。

2人の母が産んでくれた身体は、どっちも自分でどっちもかけがえのない人生で。
これから身体は1つになるけど、でも母さんや父さんは2人ずついる。凄いよ、人の2倍じゃん。俺ってついてる。

貰った名前も、ちゃんと大事にするから。
蒼澄と呼ばれる事は少なくなるけど、でもエルバが…俺の大切な精霊が呼んでくれるから。

だから、大丈夫だよ。


スゥ……とその手が消えていくと同時に、だんだん意識が浮上していく。

遠くから俺を呼んでくれている。低くて、大好きな音。


「トアスリティカ…トアスリティカ」


「ん、んん……エル、バ?」



「あぁ…トアスリティカ。 綺麗だ」



ベッドで眠る俺の上に、大きな水の玉が浮く。

そこに映る、自分は。


「わ、ぁ……っ」


青色から黒へグラデーションしている髪と、青と黒のオッドアイになった瞳。
トアスリティカだった頃よりも少し背の伸びた、蒼澄に似た背丈の

そんな自分が、いた。



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