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27 瀕死の聖獣様
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苦しい。目を開けたいのにどうしても開かない。身体が重くて地面にのめり込んでるのではないかと思うくらいだ。
重力が辛い。
ここはどこなのか。
怖い。自分はどうなってたのか。
助けを求めようにもうめき声しか出ない。
「…………から…………ね」
必死でもがこうとする警固の耳に柔らかく触れてくる感触と、話し声が聞こえてきた。
そして浮遊感。どこかに運ばれているのか。抵抗したくとも指先ひとつピクリとも動かすことができない。
諦めて、慧吾は眠気に抗うのをやめた。急にズシリと重くなった身体を抱え、その人はどこかへ向かった。
「あ! うごいたよ!」
慧吾は何かの気配に身じろぎをした。それを見たのか、子供の声がする。
ゆっくり目を開けてみた。布の上に寝かされている、己の白い手が最初に目に入った。
(白い……もふもふ……)
シスイになっている。しかもいつもよりちょっと小さい。頭を持ちあげてみると少しだけ持ちあがった。いくらかは楽になったようだ。すぐに頭はおろしてしまったけれど、周りは見えた。
(あああ……、やっぱり。絶対日本じゃない……どこだろう)
胸のあたりのほんのりとした熱は、レヴィンの生命を感じさせてくれる。シスイはうれしくてたまらず、すぐにでも飛んで会いに行きたいくらいだったが、どうにも無理そうだ。身体のなかに、魔力をほとんど感じることができない。自由に動けないのが悔しくて涙が出そうだ。
「だいじょうぶ?」
いきなり小さな丸顔の女の子のアップが目の前にせまってきた。驚いて思わず目をつぶり、耳までペタンとなる。
「怖がってるだろ」
後ろからもうちょっと大きな男の子が女の子を叱っている。
(びっくりしただけなんです。すみません)
「だってえ、シロちゃん、こわくないよね?」
「この犬の名前はシロじゃないってば。ここにシスイって書いてるって教えただろ」
男の子はシスイの首を指さした。シスイは男の子に目で訴えた。
(あ、ハイそうです。ぼっちゃん。でも俺は犬ではありませんよ~……)
女の子は顔を赤くして地団駄を踏んだ。
「わたしがみつけたんだもん! だからわたしのいぬなの! だからわたしがおなまえつけるの!」
男の子は女の子に言いかえそうとして口を開けたがそのまま閉じた。やれやれという顔で女の子の頭を撫でる。
「ナナ、この犬には飼い主がいるんだ。良くなったら返そう。見つからなくても飼えないんだよ。わかってるよね?」
「おにいちゃんのばか! いじわる!」
ナナと呼ばれた女の子はべそをかき始めた。この二人はどうやら兄妹らしい。何か事情がありそうだ。
「うちには動物を飼う余裕なんかないんだぞ。わがまま言ったらダメだ」
「だっでええー!!」
とうとうナナは大声をあげて泣きだしてしまった。
自分のせいで女の子が泣いていることが申し訳なくてシスイはおろおろした。ただ、まだそれ以上動くことができない。そろそろ起きていることさえ限界がきていた。
どうしよう、どうしようと思っているのに何もできない。ナナの泣き声をBGMに、シスイはそのまま再び眠りに落ちていった。
次に目を覚ますと、今度は大人の男性がいた。子どもたちの父親だろう。
子どもたちは食事中らしく、父親がシスイのところにもミルク粥のようなものを持ってきて置いた。
(ありがとうございます。いただきます)
それから父親はもうひとつ食事を載せたトレイを持って、奥の部屋に消えていった。子どもたちは不安げにそれを見送って、またもくもくと食事を続けた。
しばらくすると父親が戻ってきた。
「今日は調子が良いようだ。全部食べられた」
父親の言葉に、ナナがパッと明るい笑顔になった。
「おかあさんなおるの? よくなったらシロかってもいい!?」
父親は難しい顔になった。ナナと目を合わせて、真剣に話をする。
「すっかり治るのは難しいだろうな。すまない、ナナ」
ナナの目にみるみる涙が溜まったが、ナナは泣くのをぐっと我慢した。
「偉いぞナナ。もう少ししたらシロも良くなるから、俺と飼い主を探そう」
「ヨラン、頼むな」
父親に頼まれたヨランはうれしそうに目を細めた。そして名前はしっかりシロになったらしい。
食事中の会話をまとめると、この家は四人家族、妹はナナ、兄はヨラン。母親は病気らしい。
身体が治ったら、恩返しに母親にヒールをかけてみよう。そのためにも頑張って治そう。そう決心してシスイは目を閉じた。
二、三日も食べて養生すると、シスイは力が湧いてきたのを感じた。ひょっとしたら魔力が少なくなったせいであんなにだるかったのかもしれない。
こんなことは初めてだ。こちらに転移してくるときもいつもなんともないのにいったいなぜなのか、考えても答えは出ない。
さらに数日たつと体力もかなり戻り、身体の大きさももとどおりになって一家を驚かせた。ほんとは魔獣じゃないのかと父親にちょっと疑われてしまったのは困った。元気になっても穏やかな性質だったので、魔獣でもなんでも良いということで家族会議で決議し、シスイは胸をなでおろした。
初めて家の外に出たシスイは驚いた。ものすごい田舎だったのだ。見渡す限りの畑、畑、畑。後ろを見れば高い山。家族以外の話し声がしないと思ったらこういうことだったのだ。
どうやら父親は農業で生計を立てているらしい。ガタイがいいはずだ。父親は土魔法と水魔法を持っているようで、広い畑でもなんとかやっていけているようだ。
兄のほうも妹の面倒を見ながら簡単なお手伝いをしているようで、その途中でシスイを拾ったのだ。ほんとうにありがたい。
母親の薬代が非常に高価らしく、余裕もないのに拾って看病してくれたのだ。レヴィンのところには数度も転移すれば帰れるだろうが、少しくらい遅れてもいいだろう。
夜になってシスイは母親のところに行こうとした。しかし動物の毛が身体に良くないらしく、部屋の入り口で止められてしまった。
シスイは悩んだが、子どもたちが寝室に行くのを待って、彼にだけは打ちあけることにした。
「わわん」
「どうした? シロ」
不意打ちになって申し訳ないと思いながらシスイは人化した。ちゃんと慧吾に戻れたようだ。突然部屋の中が真っ白になり、父親は家族を心配して慌てふためいた。
「はじめまして。お父さん」
お父さんと心の中で呼んでいたらお父さんとうっかり呼んでしまった。
「はじめまして、私はシロです」
コホンと咳払いして言いなおす。この際シロでもいい。
父親はお父さんなどと急に現れた知らない男に言われ、慧吾を警戒心しながら睨んでいる。
「シロ!? なぜ人に!?」
「正確にはシスイといいます。アングレア王国で暮らしていました。えっと、聖獣なので人にもなれるんです」
内容が呆然としている父親の頭に染みこむのを待って、慧吾は続けた。
「まずは助けていただいてありがとうございました」
慧吾は誠意を込めて頭を下げた。父親は(自称だが)聖獣が頭を下げたので焦って自分も頭を下げた。
「私もなぜあんなところで倒れていたのかわからなくて。助けていただけなかったら死んでいたかもしれません。それでお礼にですね、『ヒール』を奥様にかけてみたいのです」
「えっ、なんですって?」
「ああそうか」
慧吾はポンと手を打った。
「急に奥様にって嫌ですよね。どこか小さなお怪我はされてませんか?」
「あ、ああ……。腕を少し擦りむいてるが」
「『ヒール』をかけてみていいです?」
ごくりと唾を呑んで、父親はこわごわ腕を差しだした。
『ヒール!』
見る間に傷が塞がっていく。父親は目を瞠った。
「こ、これは……」
カタカタ震えながら慧吾を見つめる。
「ほ、本物の聖獣様なの……か」
「そうらしいです。それで奥様のところに」
畏敬の念にうたれ、動けなくなった父親を急かして慧吾は母親のところへ行った。
ドアを開けると女性がベッドに寝ていた。こちらを見て、不審そうな顔をしている。夜も遅いし不審がられるのは仕方がない。
「ベイリー? その方は……?」
「その……」
「医者です」
慧吾をどう紹介するか迷う父親に、慧吾が助け舟をだした。やっとわかった父親の名はベイリーというらしい。
「そう、お医者様だよ、ローナ。忙しい方で、やっと来れたんだよ」
こんな時間に来た理由を、ベイリーはそう説明した。
「そうなの……でもあの……」
「お代は心配ありません。この病気の研究をしているのでぜひ診察させていただきたいのです」
ローナは見るからにほっとした。しかし、「でも」とベイリーにすがるような視線をよこす。今まで治らなかった病気の治療が不安なのだろう。ベイリーはローナの手を両手で握った。
「大丈夫、今度はきっと治るよ」
慧吾も大きく頷いた。
「痛くありませんから、目を閉じていてくださいね」
「は、はいわかりました」
ローナはぎゅっと目をつぶった。慧吾はベイリーに目くばせをし、『ヒール』と唱えた。
重力が辛い。
ここはどこなのか。
怖い。自分はどうなってたのか。
助けを求めようにもうめき声しか出ない。
「…………から…………ね」
必死でもがこうとする警固の耳に柔らかく触れてくる感触と、話し声が聞こえてきた。
そして浮遊感。どこかに運ばれているのか。抵抗したくとも指先ひとつピクリとも動かすことができない。
諦めて、慧吾は眠気に抗うのをやめた。急にズシリと重くなった身体を抱え、その人はどこかへ向かった。
「あ! うごいたよ!」
慧吾は何かの気配に身じろぎをした。それを見たのか、子供の声がする。
ゆっくり目を開けてみた。布の上に寝かされている、己の白い手が最初に目に入った。
(白い……もふもふ……)
シスイになっている。しかもいつもよりちょっと小さい。頭を持ちあげてみると少しだけ持ちあがった。いくらかは楽になったようだ。すぐに頭はおろしてしまったけれど、周りは見えた。
(あああ……、やっぱり。絶対日本じゃない……どこだろう)
胸のあたりのほんのりとした熱は、レヴィンの生命を感じさせてくれる。シスイはうれしくてたまらず、すぐにでも飛んで会いに行きたいくらいだったが、どうにも無理そうだ。身体のなかに、魔力をほとんど感じることができない。自由に動けないのが悔しくて涙が出そうだ。
「だいじょうぶ?」
いきなり小さな丸顔の女の子のアップが目の前にせまってきた。驚いて思わず目をつぶり、耳までペタンとなる。
「怖がってるだろ」
後ろからもうちょっと大きな男の子が女の子を叱っている。
(びっくりしただけなんです。すみません)
「だってえ、シロちゃん、こわくないよね?」
「この犬の名前はシロじゃないってば。ここにシスイって書いてるって教えただろ」
男の子はシスイの首を指さした。シスイは男の子に目で訴えた。
(あ、ハイそうです。ぼっちゃん。でも俺は犬ではありませんよ~……)
女の子は顔を赤くして地団駄を踏んだ。
「わたしがみつけたんだもん! だからわたしのいぬなの! だからわたしがおなまえつけるの!」
男の子は女の子に言いかえそうとして口を開けたがそのまま閉じた。やれやれという顔で女の子の頭を撫でる。
「ナナ、この犬には飼い主がいるんだ。良くなったら返そう。見つからなくても飼えないんだよ。わかってるよね?」
「おにいちゃんのばか! いじわる!」
ナナと呼ばれた女の子はべそをかき始めた。この二人はどうやら兄妹らしい。何か事情がありそうだ。
「うちには動物を飼う余裕なんかないんだぞ。わがまま言ったらダメだ」
「だっでええー!!」
とうとうナナは大声をあげて泣きだしてしまった。
自分のせいで女の子が泣いていることが申し訳なくてシスイはおろおろした。ただ、まだそれ以上動くことができない。そろそろ起きていることさえ限界がきていた。
どうしよう、どうしようと思っているのに何もできない。ナナの泣き声をBGMに、シスイはそのまま再び眠りに落ちていった。
次に目を覚ますと、今度は大人の男性がいた。子どもたちの父親だろう。
子どもたちは食事中らしく、父親がシスイのところにもミルク粥のようなものを持ってきて置いた。
(ありがとうございます。いただきます)
それから父親はもうひとつ食事を載せたトレイを持って、奥の部屋に消えていった。子どもたちは不安げにそれを見送って、またもくもくと食事を続けた。
しばらくすると父親が戻ってきた。
「今日は調子が良いようだ。全部食べられた」
父親の言葉に、ナナがパッと明るい笑顔になった。
「おかあさんなおるの? よくなったらシロかってもいい!?」
父親は難しい顔になった。ナナと目を合わせて、真剣に話をする。
「すっかり治るのは難しいだろうな。すまない、ナナ」
ナナの目にみるみる涙が溜まったが、ナナは泣くのをぐっと我慢した。
「偉いぞナナ。もう少ししたらシロも良くなるから、俺と飼い主を探そう」
「ヨラン、頼むな」
父親に頼まれたヨランはうれしそうに目を細めた。そして名前はしっかりシロになったらしい。
食事中の会話をまとめると、この家は四人家族、妹はナナ、兄はヨラン。母親は病気らしい。
身体が治ったら、恩返しに母親にヒールをかけてみよう。そのためにも頑張って治そう。そう決心してシスイは目を閉じた。
二、三日も食べて養生すると、シスイは力が湧いてきたのを感じた。ひょっとしたら魔力が少なくなったせいであんなにだるかったのかもしれない。
こんなことは初めてだ。こちらに転移してくるときもいつもなんともないのにいったいなぜなのか、考えても答えは出ない。
さらに数日たつと体力もかなり戻り、身体の大きさももとどおりになって一家を驚かせた。ほんとは魔獣じゃないのかと父親にちょっと疑われてしまったのは困った。元気になっても穏やかな性質だったので、魔獣でもなんでも良いということで家族会議で決議し、シスイは胸をなでおろした。
初めて家の外に出たシスイは驚いた。ものすごい田舎だったのだ。見渡す限りの畑、畑、畑。後ろを見れば高い山。家族以外の話し声がしないと思ったらこういうことだったのだ。
どうやら父親は農業で生計を立てているらしい。ガタイがいいはずだ。父親は土魔法と水魔法を持っているようで、広い畑でもなんとかやっていけているようだ。
兄のほうも妹の面倒を見ながら簡単なお手伝いをしているようで、その途中でシスイを拾ったのだ。ほんとうにありがたい。
母親の薬代が非常に高価らしく、余裕もないのに拾って看病してくれたのだ。レヴィンのところには数度も転移すれば帰れるだろうが、少しくらい遅れてもいいだろう。
夜になってシスイは母親のところに行こうとした。しかし動物の毛が身体に良くないらしく、部屋の入り口で止められてしまった。
シスイは悩んだが、子どもたちが寝室に行くのを待って、彼にだけは打ちあけることにした。
「わわん」
「どうした? シロ」
不意打ちになって申し訳ないと思いながらシスイは人化した。ちゃんと慧吾に戻れたようだ。突然部屋の中が真っ白になり、父親は家族を心配して慌てふためいた。
「はじめまして。お父さん」
お父さんと心の中で呼んでいたらお父さんとうっかり呼んでしまった。
「はじめまして、私はシロです」
コホンと咳払いして言いなおす。この際シロでもいい。
父親はお父さんなどと急に現れた知らない男に言われ、慧吾を警戒心しながら睨んでいる。
「シロ!? なぜ人に!?」
「正確にはシスイといいます。アングレア王国で暮らしていました。えっと、聖獣なので人にもなれるんです」
内容が呆然としている父親の頭に染みこむのを待って、慧吾は続けた。
「まずは助けていただいてありがとうございました」
慧吾は誠意を込めて頭を下げた。父親は(自称だが)聖獣が頭を下げたので焦って自分も頭を下げた。
「私もなぜあんなところで倒れていたのかわからなくて。助けていただけなかったら死んでいたかもしれません。それでお礼にですね、『ヒール』を奥様にかけてみたいのです」
「えっ、なんですって?」
「ああそうか」
慧吾はポンと手を打った。
「急に奥様にって嫌ですよね。どこか小さなお怪我はされてませんか?」
「あ、ああ……。腕を少し擦りむいてるが」
「『ヒール』をかけてみていいです?」
ごくりと唾を呑んで、父親はこわごわ腕を差しだした。
『ヒール!』
見る間に傷が塞がっていく。父親は目を瞠った。
「こ、これは……」
カタカタ震えながら慧吾を見つめる。
「ほ、本物の聖獣様なの……か」
「そうらしいです。それで奥様のところに」
畏敬の念にうたれ、動けなくなった父親を急かして慧吾は母親のところへ行った。
ドアを開けると女性がベッドに寝ていた。こちらを見て、不審そうな顔をしている。夜も遅いし不審がられるのは仕方がない。
「ベイリー? その方は……?」
「その……」
「医者です」
慧吾をどう紹介するか迷う父親に、慧吾が助け舟をだした。やっとわかった父親の名はベイリーというらしい。
「そう、お医者様だよ、ローナ。忙しい方で、やっと来れたんだよ」
こんな時間に来た理由を、ベイリーはそう説明した。
「そうなの……でもあの……」
「お代は心配ありません。この病気の研究をしているのでぜひ診察させていただきたいのです」
ローナは見るからにほっとした。しかし、「でも」とベイリーにすがるような視線をよこす。今まで治らなかった病気の治療が不安なのだろう。ベイリーはローナの手を両手で握った。
「大丈夫、今度はきっと治るよ」
慧吾も大きく頷いた。
「痛くありませんから、目を閉じていてくださいね」
「は、はいわかりました」
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