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しおりを挟むそんなタイミングで唐突にドアが開き、ドサッと投げ入れられたのは蓑虫の如く簀巻にされたカレアドだった。王妃は驚愕を露わにソファーを蹴倒す勢いで席を立つ。
「カレアド!貴様ら、私の息子に何を!!」
「不法侵入、しかも緊急時にのみ許されるルートを使うという悪質性。取り敢えず叔父として躾けを少々しただけです」
ゼリュート様は美しく微笑むだけ。対する王妃はカレアドの傍らに駆け寄り、振り向きつつゼリュート様を睨む。
ビチビチと跳ねるカレアドは気味が悪い。カレアドは王妃を無視してリーセルを睨み付けた。
「リーセル!お前は叔父上に、その男に騙されてるんだ!!」
「…は?」
何を言い出すのかとリーセルは呆気にとられた。隣でダントン氏がブハッと盛大に吹き出し、カレアドに指差されたゼリュート様は大きく目を見開く。
「この俺がお前を愛してやるから戻って来い、リーセル!!」
「ぜっっったい嫌だッ!!!!!」
不敬を考える余地すらなく、リーセルは全力で叫んでいた。
「何故だ!?俺はお前を抱きたいのに!!」
ガタンッと大きな物音を立ててゼリュート様は立ち上がる。その眼光は鋭く、害虫を見るかのような表情でカレアドを見下ろす。
「───殺ス」
「ゼリュート様!」
リーセルは慌ててゼリュート様に抱きつく。彼が本気で殺人を犯すとは考えたくないし、戦場に出た事もないリーセルにはゼリュート様がどのくらい本気なのかなんて分からない。分からないが、本能が危険を察知して、彼を離してはいけないと訴えている。
その隙にダントン氏が人を呼び、股間を濡らしたカレアドを部屋から運び出す。王妃はそんなカレアドの後を追い掛けて行く。気づいた時には壁際に控えていたはずの執事達も退室済み。様子のおかしいゼリュート様と二人きりにされてしまったらしい。
標的に逃げられたことで諦めがついたらしく、ゼリュート様の身体から力が抜けた。それを合図にリーセルは胸を撫で下ろし、ゼリュート様に抱き着く腕の力を緩めていく。
「ぜ、ゼリュート様…?」
「リーセル」
痛いほどの力で顎を掴まれ、引き寄せられる。強引に重ねられた唇は呼吸すら咎めるように荒々しい。リーセルの全身の筋肉が悦びに震え、胎内に埋め込まれた張型を締め付ける。下着の中、根本を戒められている陰茎はファールカップ内で窮屈さに情けなく体液を滲ませており、張り詰めて痛い。痛いのに、ゼリュート様に支配されているのだという愉悦を与えてくる。最早立っていられない。
「あ…ッ」
崩れる身体の重さに負けて唇が離れてしまった。床に情けなく座り込んで立てない。謝りたいのに呼吸が整わず言葉が出ない。
「リーセルは僕のモノだ」
その言葉の重みを、ようやく思い知る。何度も繰り返されたセリフなのに、そこに今までの甘さや柔らかさはない。棘のついた重厚な鎖のようにリーセルを絡め取り、縛り上げる言葉だ。身震いした。シャツの下で乳首が固くなり、浅く呼吸をする度に先端が擦れて気持ちいい。
「もちろんです、ゼリュートさま」
この人の剣を収める鞘になりたい。怒れる剣を鎮めることができるような唯一の鞘になりたい。
「んあ!ひ、ひぁ、ぅあ…っ」
カレアドから求愛されたリーセルに対して独占欲を剥き出しにしたゼリュート様の怒張を後ろから捩じ込まれる。手綱を引くように両腕を後ろに引かれて逃げられない。
目の前には応接ソファー。更にその向こうには庭園。穏やかな昼下がりなのに、窓硝子に反射して見える自身の姿は赤く腫れた乳首を主張させ、涎を垂らしながら男に貫かれて悦んでいる。羞恥からリーセルは窓から目を逸らした。それが現実から逃れようとしているように見えたのか、舌打ちと共に慎重さを見失った剛直が、暴力的な勢いで狭い狭い胎内を押し開いて突き進もうとする。気持ちよさは二の次で、今はただひたすら全てを収めることに集中しているらしい。
不思議と痛みはあまり感じない。張型で慣らされた成果なのか、違和感がある程度。穿たれている場所よりも、後ろに引かれている腕や肩の方が痛いくらいだ。力を抜いて全てを受け入れようと、意識的に深い呼吸をゆっくり繰り返す。燃えるように熱い塊が腫れ上がった前立腺を掠めると呼吸を乱されて締め付けてしまい、下腹部が苦しくなる。
「ぐッ」
苦痛に満ちた色っぽい声がリーセルの首筋を撫でる。その近さに、生々しさに、「ひっ」と声を漏らして身悶えた。
「───あぁ、溜まらないな」
「んぐ、やぁ───ッ」
リーセルが目を覚ますと、夕暮れが室内を照らしていた。全身に甘い熱が篭り、怠い。全身のあらゆるところが悲鳴を上げており、指一本動かしたくなかった。
いつの間にベッドまで運ばれたのだろう。見覚えのある天井。恐らくゼリュート様の寝室だと気づき、部屋の主を探す。ゼリュート様は簡易的な書き物机にて万年筆を走らせている。裸体にバスローブを軽く羽織っただけの姿は芸術的な絵画のような美しさがあり見惚れてしまう。
「そんなに見つめられると、真顔を貫くのも流石に難しいな」
「邪魔をしてしまい、申し訳ありません」
喉に違和感を覚えて声が掠れた。振り向いたゼリュート様は優しい笑みを零す。
「ごめんね、あんな場所で、暴走してしまった。自分がこんなにも嫉妬深いだなんて思わなかったんだ」
あんな場所───応接室で、昼間から、何を。思い出してしまい、全身から火を吹くかのような熱さを覚えて思考を振り払う。
「俺は、その、嬉しかったです」
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