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元夫の苦難 11
母上にレティシアのことを相談すると苦笑している。
「うちで外交官をしている方が楽よ。武門貴族に文官一族の婿入りは大変よ。強さを生涯求め続ける家に本気で婿に行きたいの?」
「はい。レティシアを傍で支えたい。マールの夜会は一緒に帰ってきますよ。まぁ俺がいなくてもマールは問題ないでしょ」
「カナト達もしっかりしてるけど・・。婿入りは認めないって言ったらどうするの?」
「家を出てビアード家門に行きます。平民も大歓迎って言ってましたし、入団試験も受かる自信はあります」
「リオが思うよりもビアードに婿入りして生きるのは大変、いいえ。無駄よね。旦那様とそっくりだわ。ビアード公爵夫人はレティシアと恋の話がしたいのに公爵令嬢として自覚を持ってからは全く恋に興味を示さなくなったって嘆いていたわ。ビアードのことばかりで誇らしいけど寂しいみたいよ。お茶会の作法でも覚える?」
父上は嫡男なのにターナーに婿入りするから結婚してほしいと何度も母上に迫ったんだよな。
叔母上がいつまでも父上に押し掛けられても迷惑だから、観念してほしいと母上の背中を押したらしい。
レティシアに恋の話は想像がつかない。ビアード公爵夫人には気に入られたいし、試すような視線を向ける母上の言葉に頷く。
「ご指導お願いします。俺はビアード公爵夫人の話にいくらでも付き合える自信があります」
「必死ね」
「はい。卒業までに武術大会で優勝したいんですけど、力を貸してください」
「ローゼの訓練だけだと足りないからお父様に頼もうかしら。騎士になるなら訓練量も力も足りない。毎日基礎鍛錬と体力作りと長期休みはターナー伯爵家に行ってらっしゃい。来年は優勝できるといいわね」
すでに今年は諦めろと言われている。
「エイベル様とビアード公爵にはまだまだ遠い。重ねた時間の差は歴然」
「いずれ勝てるようになります」
「リオが本気なら将来の義娘も鍛えましょう」
「は?」
「孫が産まれたら優秀な外交官になるか騎士になるか楽しみね」
楽しそうに笑う母上にお茶会の作法を教わる。
ビアードに婿入りするなら強さは必須だから学園に戻り戦闘狂が揃うロベルト先生の研究室にいれてもらうことにした。それから早朝にロベルト先生や研究生と一緒に鍛錬し放課後は生徒会で過ごす日々が始まった。
***
毎日ロベルト先生の指導のもと早朝の訓練に参加している。
俺は叔母上のように自由自在に空を飛びまわれない。
風使いは魔法で作る風ではなく、自然の風を味方につけろとターナー伯爵である叔父上に教わった。
魔法で空に上がると、ありえない場所にありえない人物を見つけた。
妄想だろうか・・・。見間違いと思うことにして下から向かってくる攻撃から避けることに専念する。
「リオ、集中できないようだな。降りてこい」
空から降りるとロベルト先生に睨まれている。
「すみません」
「どうせ、ビアードを見つけたんだろう」
「え?」
「ビアードはよく木の上で寝ている。あいつに見られているくらいで集中が乱れるならビアード公爵には勝てない」
「精進します」
妄想でも見間違いでもなかった。
レティシアが木の上にいるのは研究生には珍しい話しではないらしい。
令嬢が木登りはまずいが、誰も口に出さない。
ここにいるのは武門貴族の生徒ばかり。武門貴族は家門に関係なくレティシアを好意的に見ていて、俺がレティシアを好きなことも知っているから、嫌な態度をとる奴もいるけど気にしない。
訓練を終えて、制服に着替えてレティシアを見つけた木に急ぐ。
木を見上げているとレティシアが落ちているので慌てて風魔法で包みこむ。
地面にゆっくりと降ろしたレティシアは不思議そうな顔で頭をさげた。
「おはようございます」
「大丈夫か?」
顔をあげた彼女が上品な笑顔を浮かべた。
「飛び降りたので。ご心配おかけしました」
「危ないだろう」
「このくらいの高さなら華麗に着地できますわ。マール様も散歩ですか?」
「見えたから」
「はい?」
不思議そうな顔をするレティシアの手を取り歩き出す。
二人でゆっくり過ごしたいけど教室まで距離があるので、このままだと遅刻する。
手を繋いでも振り払われないことに口元が緩む。なぜかお菓子を渡されたのでありがたく受け取った。レティシアにもらえる物はなんでも嬉しいから。
早朝の訓練でレティシアを探すのは習慣になった。
時々、木の上で猫と戯れているレティシアは可愛いく、顔が緩んでしまい集中しないといけないのに乱れてしまう。まだまだ強くなるには道は遠い。
ただレティシアの姿を他の奴らに見られるのは不服だから、風使いの生徒は空から落とす。
レティシアは高い木の上に座っているので、ある程度飛ばないと見えない位置にいる。あの高さから飛び降りるのはやめてほしい。
注意したくてもいつも訓練が終わる前にいなくなってしまう。
ビアードに相談するとレティシアが木の上で眠っていることも飛び降りることも野生児だから仕方がないと言っている。
やはりビアード兄妹の感覚はズレている気がする・・。
ビアードを頼りにしているレティシアはやはり駄目なんじゃないか・・・?
「うちで外交官をしている方が楽よ。武門貴族に文官一族の婿入りは大変よ。強さを生涯求め続ける家に本気で婿に行きたいの?」
「はい。レティシアを傍で支えたい。マールの夜会は一緒に帰ってきますよ。まぁ俺がいなくてもマールは問題ないでしょ」
「カナト達もしっかりしてるけど・・。婿入りは認めないって言ったらどうするの?」
「家を出てビアード家門に行きます。平民も大歓迎って言ってましたし、入団試験も受かる自信はあります」
「リオが思うよりもビアードに婿入りして生きるのは大変、いいえ。無駄よね。旦那様とそっくりだわ。ビアード公爵夫人はレティシアと恋の話がしたいのに公爵令嬢として自覚を持ってからは全く恋に興味を示さなくなったって嘆いていたわ。ビアードのことばかりで誇らしいけど寂しいみたいよ。お茶会の作法でも覚える?」
父上は嫡男なのにターナーに婿入りするから結婚してほしいと何度も母上に迫ったんだよな。
叔母上がいつまでも父上に押し掛けられても迷惑だから、観念してほしいと母上の背中を押したらしい。
レティシアに恋の話は想像がつかない。ビアード公爵夫人には気に入られたいし、試すような視線を向ける母上の言葉に頷く。
「ご指導お願いします。俺はビアード公爵夫人の話にいくらでも付き合える自信があります」
「必死ね」
「はい。卒業までに武術大会で優勝したいんですけど、力を貸してください」
「ローゼの訓練だけだと足りないからお父様に頼もうかしら。騎士になるなら訓練量も力も足りない。毎日基礎鍛錬と体力作りと長期休みはターナー伯爵家に行ってらっしゃい。来年は優勝できるといいわね」
すでに今年は諦めろと言われている。
「エイベル様とビアード公爵にはまだまだ遠い。重ねた時間の差は歴然」
「いずれ勝てるようになります」
「リオが本気なら将来の義娘も鍛えましょう」
「は?」
「孫が産まれたら優秀な外交官になるか騎士になるか楽しみね」
楽しそうに笑う母上にお茶会の作法を教わる。
ビアードに婿入りするなら強さは必須だから学園に戻り戦闘狂が揃うロベルト先生の研究室にいれてもらうことにした。それから早朝にロベルト先生や研究生と一緒に鍛錬し放課後は生徒会で過ごす日々が始まった。
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毎日ロベルト先生の指導のもと早朝の訓練に参加している。
俺は叔母上のように自由自在に空を飛びまわれない。
風使いは魔法で作る風ではなく、自然の風を味方につけろとターナー伯爵である叔父上に教わった。
魔法で空に上がると、ありえない場所にありえない人物を見つけた。
妄想だろうか・・・。見間違いと思うことにして下から向かってくる攻撃から避けることに専念する。
「リオ、集中できないようだな。降りてこい」
空から降りるとロベルト先生に睨まれている。
「すみません」
「どうせ、ビアードを見つけたんだろう」
「え?」
「ビアードはよく木の上で寝ている。あいつに見られているくらいで集中が乱れるならビアード公爵には勝てない」
「精進します」
妄想でも見間違いでもなかった。
レティシアが木の上にいるのは研究生には珍しい話しではないらしい。
令嬢が木登りはまずいが、誰も口に出さない。
ここにいるのは武門貴族の生徒ばかり。武門貴族は家門に関係なくレティシアを好意的に見ていて、俺がレティシアを好きなことも知っているから、嫌な態度をとる奴もいるけど気にしない。
訓練を終えて、制服に着替えてレティシアを見つけた木に急ぐ。
木を見上げているとレティシアが落ちているので慌てて風魔法で包みこむ。
地面にゆっくりと降ろしたレティシアは不思議そうな顔で頭をさげた。
「おはようございます」
「大丈夫か?」
顔をあげた彼女が上品な笑顔を浮かべた。
「飛び降りたので。ご心配おかけしました」
「危ないだろう」
「このくらいの高さなら華麗に着地できますわ。マール様も散歩ですか?」
「見えたから」
「はい?」
不思議そうな顔をするレティシアの手を取り歩き出す。
二人でゆっくり過ごしたいけど教室まで距離があるので、このままだと遅刻する。
手を繋いでも振り払われないことに口元が緩む。なぜかお菓子を渡されたのでありがたく受け取った。レティシアにもらえる物はなんでも嬉しいから。
早朝の訓練でレティシアを探すのは習慣になった。
時々、木の上で猫と戯れているレティシアは可愛いく、顔が緩んでしまい集中しないといけないのに乱れてしまう。まだまだ強くなるには道は遠い。
ただレティシアの姿を他の奴らに見られるのは不服だから、風使いの生徒は空から落とす。
レティシアは高い木の上に座っているので、ある程度飛ばないと見えない位置にいる。あの高さから飛び降りるのはやめてほしい。
注意したくてもいつも訓練が終わる前にいなくなってしまう。
ビアードに相談するとレティシアが木の上で眠っていることも飛び降りることも野生児だから仕方がないと言っている。
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