108 / 286
元夫の苦難 11
しおりを挟む
母上にレティシアのことを相談すると苦笑している。
「うちで外交官をしている方が楽よ。武門貴族に文官一族の婿入りは大変よ。強さを生涯求め続ける家に本気で婿に行きたいの?」
「はい。レティシアを傍で支えたい。マールの夜会は一緒に帰ってきますよ。まぁ俺がいなくてもマールは問題ないでしょ」
「カナト達もしっかりしてるけど・・。婿入りは認めないって言ったらどうするの?」
「家を出てビアード家門に行きます。平民も大歓迎って言ってましたし、入団試験も受かる自信はあります」
「リオが思うよりもビアードに婿入りして生きるのは大変、いいえ。無駄よね。旦那様とそっくりだわ。ビアード公爵夫人はレティシアと恋の話がしたいのに公爵令嬢として自覚を持ってからは全く恋に興味を示さなくなったって嘆いていたわ。ビアードのことばかりで誇らしいけど寂しいみたいよ。お茶会の作法でも覚える?」
父上は嫡男なのにターナーに婿入りするから結婚してほしいと何度も母上に迫ったんだよな。
叔母上がいつまでも父上に押し掛けられても迷惑だから、観念してほしいと母上の背中を押したらしい。
レティシアに恋の話は想像がつかない。ビアード公爵夫人には気に入られたいし、試すような視線を向ける母上の言葉に頷く。
「ご指導お願いします。俺はビアード公爵夫人の話にいくらでも付き合える自信があります」
「必死ね」
「はい。卒業までに武術大会で優勝したいんですけど、力を貸してください」
「ローゼの訓練だけだと足りないからお父様に頼もうかしら。騎士になるなら訓練量も力も足りない。毎日基礎鍛錬と体力作りと長期休みはターナー伯爵家に行ってらっしゃい。来年は優勝できるといいわね」
すでに今年は諦めろと言われている。
「エイベル様とビアード公爵にはまだまだ遠い。重ねた時間の差は歴然」
「いずれ勝てるようになります」
「リオが本気なら将来の義娘も鍛えましょう」
「は?」
「孫が産まれたら優秀な外交官になるか騎士になるか楽しみね」
楽しそうに笑う母上にお茶会の作法を教わる。
ビアードに婿入りするなら強さは必須だから学園に戻り戦闘狂が揃うロベルト先生の研究室にいれてもらうことにした。それから早朝にロベルト先生や研究生と一緒に鍛錬し放課後は生徒会で過ごす日々が始まった。
***
毎日ロベルト先生の指導のもと早朝の訓練に参加している。
俺は叔母上のように自由自在に空を飛びまわれない。
風使いは魔法で作る風ではなく、自然の風を味方につけろとターナー伯爵である叔父上に教わった。
魔法で空に上がると、ありえない場所にありえない人物を見つけた。
妄想だろうか・・・。見間違いと思うことにして下から向かってくる攻撃から避けることに専念する。
「リオ、集中できないようだな。降りてこい」
空から降りるとロベルト先生に睨まれている。
「すみません」
「どうせ、ビアードを見つけたんだろう」
「え?」
「ビアードはよく木の上で寝ている。あいつに見られているくらいで集中が乱れるならビアード公爵には勝てない」
「精進します」
妄想でも見間違いでもなかった。
レティシアが木の上にいるのは研究生には珍しい話しではないらしい。
令嬢が木登りはまずいが、誰も口に出さない。
ここにいるのは武門貴族の生徒ばかり。武門貴族は家門に関係なくレティシアを好意的に見ていて、俺がレティシアを好きなことも知っているから、嫌な態度をとる奴もいるけど気にしない。
訓練を終えて、制服に着替えてレティシアを見つけた木に急ぐ。
木を見上げているとレティシアが落ちているので慌てて風魔法で包みこむ。
地面にゆっくりと降ろしたレティシアは不思議そうな顔で頭をさげた。
「おはようございます」
「大丈夫か?」
顔をあげた彼女が上品な笑顔を浮かべた。
「飛び降りたので。ご心配おかけしました」
「危ないだろう」
「このくらいの高さなら華麗に着地できますわ。マール様も散歩ですか?」
「見えたから」
「はい?」
不思議そうな顔をするレティシアの手を取り歩き出す。
二人でゆっくり過ごしたいけど教室まで距離があるので、このままだと遅刻する。
手を繋いでも振り払われないことに口元が緩む。なぜかお菓子を渡されたのでありがたく受け取った。レティシアにもらえる物はなんでも嬉しいから。
早朝の訓練でレティシアを探すのは習慣になった。
時々、木の上で猫と戯れているレティシアは可愛いく、顔が緩んでしまい集中しないといけないのに乱れてしまう。まだまだ強くなるには道は遠い。
ただレティシアの姿を他の奴らに見られるのは不服だから、風使いの生徒は空から落とす。
レティシアは高い木の上に座っているので、ある程度飛ばないと見えない位置にいる。あの高さから飛び降りるのはやめてほしい。
注意したくてもいつも訓練が終わる前にいなくなってしまう。
ビアードに相談するとレティシアが木の上で眠っていることも飛び降りることも野生児だから仕方がないと言っている。
やはりビアード兄妹の感覚はズレている気がする・・。
ビアードを頼りにしているレティシアはやはり駄目なんじゃないか・・・?
「うちで外交官をしている方が楽よ。武門貴族に文官一族の婿入りは大変よ。強さを生涯求め続ける家に本気で婿に行きたいの?」
「はい。レティシアを傍で支えたい。マールの夜会は一緒に帰ってきますよ。まぁ俺がいなくてもマールは問題ないでしょ」
「カナト達もしっかりしてるけど・・。婿入りは認めないって言ったらどうするの?」
「家を出てビアード家門に行きます。平民も大歓迎って言ってましたし、入団試験も受かる自信はあります」
「リオが思うよりもビアードに婿入りして生きるのは大変、いいえ。無駄よね。旦那様とそっくりだわ。ビアード公爵夫人はレティシアと恋の話がしたいのに公爵令嬢として自覚を持ってからは全く恋に興味を示さなくなったって嘆いていたわ。ビアードのことばかりで誇らしいけど寂しいみたいよ。お茶会の作法でも覚える?」
父上は嫡男なのにターナーに婿入りするから結婚してほしいと何度も母上に迫ったんだよな。
叔母上がいつまでも父上に押し掛けられても迷惑だから、観念してほしいと母上の背中を押したらしい。
レティシアに恋の話は想像がつかない。ビアード公爵夫人には気に入られたいし、試すような視線を向ける母上の言葉に頷く。
「ご指導お願いします。俺はビアード公爵夫人の話にいくらでも付き合える自信があります」
「必死ね」
「はい。卒業までに武術大会で優勝したいんですけど、力を貸してください」
「ローゼの訓練だけだと足りないからお父様に頼もうかしら。騎士になるなら訓練量も力も足りない。毎日基礎鍛錬と体力作りと長期休みはターナー伯爵家に行ってらっしゃい。来年は優勝できるといいわね」
すでに今年は諦めろと言われている。
「エイベル様とビアード公爵にはまだまだ遠い。重ねた時間の差は歴然」
「いずれ勝てるようになります」
「リオが本気なら将来の義娘も鍛えましょう」
「は?」
「孫が産まれたら優秀な外交官になるか騎士になるか楽しみね」
楽しそうに笑う母上にお茶会の作法を教わる。
ビアードに婿入りするなら強さは必須だから学園に戻り戦闘狂が揃うロベルト先生の研究室にいれてもらうことにした。それから早朝にロベルト先生や研究生と一緒に鍛錬し放課後は生徒会で過ごす日々が始まった。
***
毎日ロベルト先生の指導のもと早朝の訓練に参加している。
俺は叔母上のように自由自在に空を飛びまわれない。
風使いは魔法で作る風ではなく、自然の風を味方につけろとターナー伯爵である叔父上に教わった。
魔法で空に上がると、ありえない場所にありえない人物を見つけた。
妄想だろうか・・・。見間違いと思うことにして下から向かってくる攻撃から避けることに専念する。
「リオ、集中できないようだな。降りてこい」
空から降りるとロベルト先生に睨まれている。
「すみません」
「どうせ、ビアードを見つけたんだろう」
「え?」
「ビアードはよく木の上で寝ている。あいつに見られているくらいで集中が乱れるならビアード公爵には勝てない」
「精進します」
妄想でも見間違いでもなかった。
レティシアが木の上にいるのは研究生には珍しい話しではないらしい。
令嬢が木登りはまずいが、誰も口に出さない。
ここにいるのは武門貴族の生徒ばかり。武門貴族は家門に関係なくレティシアを好意的に見ていて、俺がレティシアを好きなことも知っているから、嫌な態度をとる奴もいるけど気にしない。
訓練を終えて、制服に着替えてレティシアを見つけた木に急ぐ。
木を見上げているとレティシアが落ちているので慌てて風魔法で包みこむ。
地面にゆっくりと降ろしたレティシアは不思議そうな顔で頭をさげた。
「おはようございます」
「大丈夫か?」
顔をあげた彼女が上品な笑顔を浮かべた。
「飛び降りたので。ご心配おかけしました」
「危ないだろう」
「このくらいの高さなら華麗に着地できますわ。マール様も散歩ですか?」
「見えたから」
「はい?」
不思議そうな顔をするレティシアの手を取り歩き出す。
二人でゆっくり過ごしたいけど教室まで距離があるので、このままだと遅刻する。
手を繋いでも振り払われないことに口元が緩む。なぜかお菓子を渡されたのでありがたく受け取った。レティシアにもらえる物はなんでも嬉しいから。
早朝の訓練でレティシアを探すのは習慣になった。
時々、木の上で猫と戯れているレティシアは可愛いく、顔が緩んでしまい集中しないといけないのに乱れてしまう。まだまだ強くなるには道は遠い。
ただレティシアの姿を他の奴らに見られるのは不服だから、風使いの生徒は空から落とす。
レティシアは高い木の上に座っているので、ある程度飛ばないと見えない位置にいる。あの高さから飛び降りるのはやめてほしい。
注意したくてもいつも訓練が終わる前にいなくなってしまう。
ビアードに相談するとレティシアが木の上で眠っていることも飛び降りることも野生児だから仕方がないと言っている。
やはりビアード兄妹の感覚はズレている気がする・・。
ビアードを頼りにしているレティシアはやはり駄目なんじゃないか・・・?
22
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
ざまぁはハッピーエンドのエンディング後に
ララ
恋愛
私は由緒正しい公爵家に生まれたシルビア。
幼い頃に結ばれた婚約により時期王妃になることが確定している。
だからこそ王妃教育も精一杯受け、王妃にふさわしい振る舞いと能力を身につけた。
特に婚約者である王太子は少し?いやかなり頭が足りないのだ。
余計に私が頑張らなければならない。
王妃となり国を支える。
そんな確定した未来であったはずなのにある日突然破られた。
学園にピンク色の髪を持つ少女が現れたからだ。
なんとその子は自身をヒロイン?だとか言って婚約者のいるしかも王族である王太子に馴れ馴れしく接してきた。
何度かそれを諌めるも聞く耳を持たず挙句の果てには私がいじめてくるだなんだ言って王太子に泣きついた。
なんと王太子は彼女の言葉を全て鵜呑みにして私を悪女に仕立て上げ国外追放をいい渡す。
はぁ〜、一体誰の悪知恵なんだか?
まぁいいわ。
国外追放喜んでお受けいたします。
けれどどうかお忘れにならないでくださいな?
全ての責はあなたにあると言うことを。
後悔しても知りませんわよ。
そう言い残して私は毅然とした態度で、内心ルンルンとこの国を去る。
ふふっ、これからが楽しみだわ。
しつこい公爵が、わたしを逃がしてくれない
千堂みくま
恋愛
細々と仕事をして生きてきた薬師のノアは、経済的に追い詰められて仕方なく危険な仕事に手を出してしまう。それは因縁の幼なじみ、若き公爵ジオルドに惚れ薬を盛る仕事だった。
失敗して捕らえられたノアに、公爵は「俺の人生を狂わせた女」などと言い、変身魔術がかけられたチョーカーを付けて妙に可愛がる。
ジオルドの指示で王子の友人になったノアは、薬師として成長しようと決意。
公爵から逃げたいノアと、自覚のない思いに悩む公爵の話。
※毎午前中に数話更新します。
悪役令嬢の逆襲
すけさん
恋愛
断罪される1年前に前世の記憶が甦る!
前世は三十代の子持ちのおばちゃんだった。
素行は悪かった悪役令嬢は、急におばちゃんチックな思想が芽生え恋に友情に新たな一面を見せ始めた事で、断罪を回避するべく奮闘する!
愛する人は、貴方だけ
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。
天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。
公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。
平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。
やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。
最初からここに私の居場所はなかった
kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。
死なないために努力しても認められなかった。
死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。
死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯
だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう?
だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。
二度目は、自分らしく生きると決めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。
私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~
これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m
これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)
彼女が高級娼婦と呼ばれる理由~元悪役令嬢の戦慄の日々~
プラネットプラント
恋愛
婚約者である王子の恋人をいじめたと婚約破棄され、実家から縁を切られたライラは娼館で暮らすことになる。だが、訪れる人々のせいでライラは怯えていた。
※完結済。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる