追憶令嬢のやり直し

夕鈴

文字の大きさ
108 / 362

元夫の苦難 11

母上にレティシアのことを相談すると苦笑している。

「うちで外交官をしている方が楽よ。武門貴族に文官一族の婿入りは大変よ。強さを生涯求め続ける家に本気で婿に行きたいの?」
「はい。レティシアを傍で支えたい。マールの夜会は一緒に帰ってきますよ。まぁ俺がいなくてもマールは問題ないでしょ」
「カナト達もしっかりしてるけど・・。婿入りは認めないって言ったらどうするの?」
「家を出てビアード家門に行きます。平民も大歓迎って言ってましたし、入団試験も受かる自信はあります」
「リオが思うよりもビアードに婿入りして生きるのは大変、いいえ。無駄よね。旦那様とそっくりだわ。ビアード公爵夫人はレティシアと恋の話がしたいのに公爵令嬢として自覚を持ってからは全く恋に興味を示さなくなったって嘆いていたわ。ビアードのことばかりで誇らしいけど寂しいみたいよ。お茶会の作法でも覚える?」

父上は嫡男なのにターナーに婿入りするから結婚してほしいと何度も母上に迫ったんだよな。
叔母上がいつまでも父上に押し掛けられても迷惑だから、観念してほしいと母上の背中を押したらしい。
レティシアに恋の話は想像がつかない。ビアード公爵夫人には気に入られたいし、試すような視線を向ける母上の言葉に頷く。

「ご指導お願いします。俺はビアード公爵夫人の話にいくらでも付き合える自信があります」
「必死ね」
「はい。卒業までに武術大会で優勝したいんですけど、力を貸してください」
「ローゼの訓練だけだと足りないからお父様に頼もうかしら。騎士になるなら訓練量も力も足りない。毎日基礎鍛錬と体力作りと長期休みはターナー伯爵家に行ってらっしゃい。来年は優勝できるといいわね」

すでに今年は諦めろと言われている。

「エイベル様とビアード公爵にはまだまだ遠い。重ねた時間の差は歴然」
「いずれ勝てるようになります」
「リオが本気なら将来の義娘も鍛えましょう」
「は?」
「孫が産まれたら優秀な外交官になるか騎士になるか楽しみね」

楽しそうに笑う母上にお茶会の作法を教わる。
ビアードに婿入りするなら強さは必須だから学園に戻り戦闘狂が揃うロベルト先生の研究室にいれてもらうことにした。それから早朝にロベルト先生や研究生と一緒に鍛錬し放課後は生徒会で過ごす日々が始まった。

***

毎日ロベルト先生の指導のもと早朝の訓練に参加している。
俺は叔母上のように自由自在に空を飛びまわれない。
風使いは魔法で作る風ではなく、自然の風を味方につけろとターナー伯爵である叔父上に教わった。
魔法で空に上がると、ありえない場所にありえない人物を見つけた。
妄想だろうか・・・。見間違いと思うことにして下から向かってくる攻撃から避けることに専念する。

「リオ、集中できないようだな。降りてこい」

空から降りるとロベルト先生に睨まれている。

「すみません」
「どうせ、ビアードを見つけたんだろう」
「え?」
「ビアードはよく木の上で寝ている。あいつに見られているくらいで集中が乱れるならビアード公爵には勝てない」
「精進します」

妄想でも見間違いでもなかった。
レティシアが木の上にいるのは研究生には珍しい話しではないらしい。
令嬢が木登りはまずいが、誰も口に出さない。
ここにいるのは武門貴族の生徒ばかり。武門貴族は家門に関係なくレティシアを好意的に見ていて、俺がレティシアを好きなことも知っているから、嫌な態度をとる奴もいるけど気にしない。
訓練を終えて、制服に着替えてレティシアを見つけた木に急ぐ。
木を見上げているとレティシアが落ちているので慌てて風魔法で包みこむ。
地面にゆっくりと降ろしたレティシアは不思議そうな顔で頭をさげた。

「おはようございます」
「大丈夫か?」

顔をあげた彼女が上品な笑顔を浮かべた。

「飛び降りたので。ご心配おかけしました」
「危ないだろう」
「このくらいの高さなら華麗に着地できますわ。マール様も散歩ですか?」
「見えたから」
「はい?」

不思議そうな顔をするレティシアの手を取り歩き出す。
二人でゆっくり過ごしたいけど教室まで距離があるので、このままだと遅刻する。
手を繋いでも振り払われないことに口元が緩む。なぜかお菓子を渡されたのでありがたく受け取った。レティシアにもらえる物はなんでも嬉しいから。
早朝の訓練でレティシアを探すのは習慣になった。
時々、木の上で猫と戯れているレティシアは可愛いく、顔が緩んでしまい集中しないといけないのに乱れてしまう。まだまだ強くなるには道は遠い。
ただレティシアの姿を他の奴らに見られるのは不服だから、風使いの生徒は空から落とす。
レティシアは高い木の上に座っているので、ある程度飛ばないと見えない位置にいる。あの高さから飛び降りるのはやめてほしい。
注意したくてもいつも訓練が終わる前にいなくなってしまう。
ビアードに相談するとレティシアが木の上で眠っていることも飛び降りることも野生児だから仕方がないと言っている。
やはりビアード兄妹の感覚はズレている気がする・・。
ビアードを頼りにしているレティシアはやはり駄目なんじゃないか・・・?
感想 0

あなたにおすすめの小説

本の通りに悪役をこなしてみようと思います

Blue
恋愛
ある朝。目覚めるとサイドテーブルの上に見知らぬ本が置かれていた。 本の通りに自分自身を演じなければ死ぬ、ですって? こんな怪しげな本、全く信用ならないけれど、やってやろうじゃないの。 悪役上等。 なのに、何だか様子がおかしいような?

【完結】シュゼットのはなし

ここ
恋愛
子猫(獣人)のシュゼットは王子を守るため、かわりに竜の呪いを受けた。 顔に大きな傷ができてしまう。 当然責任をとって妃のひとりになるはずだったのだが‥。

悪役令嬢と転生ヒロイン

みおな
恋愛
「こ、これは・・・!」  鏡の中の自分の顔に、言葉をなくした。 そこに映っていたのは、青紫色の髪に瞳をした、年齢でいえば十三歳ほどの少女。  乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』に出てくるヒロイン、そのものの姿だった。  乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』は、平民の娘であるヒロインが、攻略対象である王太子や宰相の息子たちと交流を深め、彼らと結ばれるのを目指すという極々ありがちな乙女ゲームである。  ありふれた乙女ゲームは、キャラ画に人気が高まり、続編として小説やアニメとなった。  その小説版では、ヒロインは伯爵家の令嬢となり、攻略対象たちには婚約者が現れた。  この時点で、すでに乙女ゲームの枠を超えていると、ファンの間で騒然となった。  改めて、鏡の中の姿を見る。 どう見ても、ヒロインの見た目だ。アニメでもゲームでも見たから間違いない。  問題は、そこではない。 着ているのがどう見ても平民の服ではなく、ドレスだということ。  これはもしかして、小説版に転生?  

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

ある日、私は事故で死んだ───はずなのに、目が覚めたら事故の日の朝なんですけど!?

ねーさん
恋愛
   アイリスは十六歳の誕生日の前の日に、姉ヴィクトリアと幼なじみジェイドと共に馬車で王宮に向かう途中、事故に遭い命を落とした───はずだったが、目覚めると何故か事故の日の朝に巻き戻っていた。  何度もその日を繰り返して、その度事故に遭って死んでしまうアイリス。  何度目の「今日」かもわからなくなった頃、目が覚めると、そこにはヴィクトリアの婚約者で第三王子ウォルターがいた。  「明日」が来たんだわ。私、十六歳になれたんだ…

あなたの妻にはなりません

風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から大好きだった婚約者のレイズ。 彼が伯爵位を継いだと同時に、わたしと彼は結婚した。 幸せな日々が始まるのだと思っていたのに、夫は仕事で戦場近くの街に行くことになった。 彼が旅立った数日後、わたしの元に届いたのは夫の訃報だった。 悲しみに暮れているわたしに近づいてきたのは、夫の親友のディール様。 彼は夫から自分の身に何かあった時にはわたしのことを頼むと言われていたのだと言う。 あっという間に日にちが過ぎ、ディール様から求婚される。 悩みに悩んだ末に、ディール様と婚約したわたしに、友人と街に出た時にすれ違った男が言った。 「あの男と結婚するのはやめなさい。彼は君の夫の殺害を依頼した男だ」

好感度0になるまで終われません。

チョコパイ
恋愛
土屋千鶴子(享年98歳) 子供や孫、ひ孫に囲まれての大往生。 愛され続けて4度目の転生。 そろそろ……愛されるのに疲れたのですが… 登場人物の好感度0にならない限り終わらない溺愛の日々。 5度目の転生先は娘が遊んでいた乙女ゲームの世界。 いつもと違う展開に今度こそ永久の眠りにつける。 そう信じ、好きなことを、好きなようにやりたい放題… 自覚なし愛され公女と執着一途皇太子のすれ違いラブロマンス。

毒状態の悪役令嬢は内緒の王太子に優しく治療(キス)されてます

娯遊戯空現
恋愛
ハイタッド公爵家の令嬢・セラフィン=ハイタッドは悪人だった……。 第二王子・アエルバートの婚約者の座を手に入れたセラフィンはゆくゆくは王妃となり国を牛耳るつもりでいた。しかし伯爵令嬢・ブレアナ=シュレイムの登場により、事態は一変する。 アエルバートがブレアナを気に入ってしまい、それに焦ったセラフィンが二人の仲を妨害した。 そんな折、セラフィンは自分が転生者であることとここが乙女ゲーム『治癒能力者(ヒーラー)の選ぶ未来』の世界であることを思い出す。 自分の行く末が破滅であることに気付くもすで事態は動き出した後で、婚約破棄&処刑を言い渡される。 処刑時に逃げようとしたセラフィンは命は助かったものの毒に冒されてしまった。 そこに謎の美形男性が現れ、いきなり唇を奪われて……。