追憶令嬢のやり直し

夕鈴

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第六十一話前編 厄介事  

私はベリーとステラとフィルと一緒に庭園で食事をしてます。事情がありロキはマナと一緒に食事をとらせています。
目の前でリオとエイベルがくだらない言い争いをしてるのは放っておきます。貴族としてどうかと思いますが、声を荒げてないので見逃しましょう。

「ビアード様、」

後輩の令嬢に声をかけられる理由はわかってます。

「構いませんわ。行ってきますわ」

ステラ達に見送られ令嬢に案内され足を進めます。
またルメラ様が令嬢と問題をおこしたんでしょうか。
最近はルメラ様と令嬢のトラブルが耐えません。ルメラ様は殿方の取り巻きが多く危険なので、令嬢達にルメラ様が言い争いなど淑女としてあるまじきことを起こしたら教えてほしいと頼んでいます。
上位貴族ばかりの2年1組には入りにくい令嬢もいるのでお昼休みは庭園に生徒会がなければ放課後は私の部屋にいると公言しています。アナ達とのお昼ご飯はお休みし、週に一度放課後に顔を見に行く約束をしています。アナ達の教室をリオが頻繁に訪れ勉強を教えているので私は行かなくてもいいかと思うんですが、会いに来てほしいと可愛くお願いされると断れません。リオのファンの令嬢には生徒会活動の一環とごまかしアナ達に危害を加えないように手を回しました。
今日はルメラ様が自身の婚約者と親しくしていることが許せなかった令嬢と言い争いをはじめたようです。
喧嘩をしている令嬢とルメラ様に間に入ります。

「ビアード様!!」
「落ち着いてください。この件は私に預からせてください」

笑顔で圧力をかけると不満そうな空気を抑えて令嬢は礼をして立ち去っていきました。平等の学園でも私より家格が低い令嬢が私の言葉に従い頷くのは当然ですわ。ですが令嬢の常識が通じないルメラ様は何度嗜めても変わりません。ルメラ様は婚約者のいる殿方に近づくのをやめてくれません。ただ私が嗜めることで令嬢達の不満が多少はおさまるので、ルメラ様にとって無意味でもやめるわけにはいきません。

「レティシア、来て!!」
「え?」

ルメラ様に強引に手を引かれて足を進めます。庭園を通り過ぎ、

「ルメラ様、授業に遅れるので」
「いいから、来て!!」

なんのご用かわかりませんが目指す場所に心当たりがあり嫌な予感がしました。
念話でディーネにエイベルを連れて来てくれるように頼みます。
やはり辿り着いた離れのサロンの中に入ると魔封じが施されてました。
ここは1度目の人生で監禁された時に呼び出された場所です。
私を監禁したレオ様の情緒教育はうまくいっているので監禁される心配はしてませんが。
ルメラ様は魔法が使えないので高度な魔封じの結界が用意できるとは思いませんが、私達以外の人の気配はありません。

「レティシア、邪魔しないで」

ジロリと睨みつけられてますが、なんのことでしょう。

「はい?」
「レティシアが悪いの!!レティシアが――!!時間がないの!!だから、」

声を荒げるルメラ様が短剣を鞘から抜いて、刃先を自身に向けてます。自害ですか!?
短剣を取り上げるために手を掴んでも、力が強くて解けません。なんで刃物を持ってるのかも聞かないといけませんが今は取り上げないと、

「なにしてますの!?危ないですわ」
「私はお姫様だから、」
「貴女はお姫様ではありません。ここはお母様のお話の世界ではありません。危ないことはやめてください。それから手を放して、刃物を素人が持つものではありませんわ」

淑女として許されませんが自害しようとするルメラ様と言い争いながら短剣を奪い合います。なんで、こんなに力強いんですか・・。瞳に力があるので錯乱している感じはありませんが、何を勘違いしてるんですか!!

「レティシア、邪魔しないで!!」
「手を放してください。危険ですよ。いい加減になさいませ。ここはお母様の夢の世界ではありません。お姫様だって死ぬんですよ。治癒魔法で直せない傷もありますのよ。」

魔法の気配がしました。私の魔法は念じても発動しません。魔封じの結界の術者なら中でも魔法が使えます。シュッと鈍い空気を切る音を避けるためルメラ様に足払いをかけて、頭を庇って押し倒します。不満の声を相手にしている余裕はありません。背中の上を風の刃が通りすぎましたわ。風魔法は厄介ですわ。ザクっとお腹に走る強い痛みとルメラ様の息を飲む音、空気を切り裂く風の音――。ルメラ様を抱き締め横に転がり、風の刃を避けるとさらにお腹に痛みが。

「!?」

お腹に痛みが走りますが気にしてる場合ではありません。こんな痛みは毒の耐性をつけるために飲んだ薬と比べればどうってことありませんわ。どんなに痛くても苦しくても顔に出さない。それこそフラン王国の公爵令嬢ですもの。

「危ないからじっとしていてください」

目を閉じて空気の切る音と魔法の気配に集中します。
広範囲の小さい刃が大量に襲いかかり、避けられないのでルメラ様に覆い被さり腕の中に抱きしめる。この程度なら致命傷にはなりません。背中に無数の風の刃が刻まれますが、ビアードの鋭い風と違い臓器にまでは届かず傷は浅い。
気配で風の刃を読みながらルメラ様を傷つけないように震える冷たい手を引いてサロンの外を目指す。怯えるルメラ様を気遣えるほど余裕はありません。ようやくサロンの扉から出ると魔法が使える感覚が戻り、結界で体を覆います。

「レティシア、血が」

か弱く、震える声のルメラ様の視線は私のお腹です。
短剣が刺さってますが致命傷ではありません。痛い理由がわかりました。この程度なら抜かなければ動けますし大丈夫。生前の淑女教育で毒耐性をつけるためのお茶会で飲んだ毒の苦しみと痛みと比べれば大したものではありませんわ。顔を歪めてしまいアリア様に咎められた記憶が懐かしい・・。毒よりもお母様やアリア様のほうが恐ろしいですもの。現実逃避している場合ではありませんわ。

「レティシア!!」

今世で一番聞き慣れた声に力が抜けました。あの風ならエイベルは負けませんし後は任せましょう。

「エイベル、魔導士が潜んでいます。ルメラ様をおねがいします」

「レティシア!!!」

悲鳴が聞こえましたが瞼の重みに耐えきれず目を閉じました。
エイベルがいるからもう大丈夫ですもの。お任せしますわ。



















「シア、お帰り」

耳に聴こえる愛しい声。体を包むのは恋しくてたまらなかった腕の温もり。

「リオ」

ずっと会いたかった記憶と同じリオがいました。頬に手を伸ばせば手が重なり、優しく口づけられます。抱きしめられる優しい腕に身を預けると涙が溢れ、優しく笑って涙を拭い口づけを落とすのは私のリオ。涙の止まった私を優しく抱きしめて離さないのも。
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