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第六十三話前編 事件
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生徒会室に向かう途中に大きい声が聞こえました。
近づくとハンナが令嬢に詰め寄られていました。
「ハンナ、どうしてなのよ!?」
「お姉様、申しわけありません」
「役立たずが!!」
令嬢の右手が振り上げられたので慌てて、ハンナを庇い右手を掴む。
パチンと頬に止めた右手ではなく左手を振り下ろされ、中々の反応速度に感心している場合ではありませんでしたわ。
平手打ちをされるのは久しぶりですわね。
「貴方、なんなのよ!!邪魔よ」
睨みつける令嬢は人の頬を叩いてなんて態度でしょうか。そんなに痛みはありませんが、淑女として許されませんわ。
「令嬢の行動ではありません。落ち着いてください」
「生意気よ。どきなさい」
興奮している令嬢の前にハンナを出せません。
「彼女に手を出すことは許しません」
「貴方に指図される筋合いはないわ」
睨みつける令嬢に生徒会証を見せます。
「私は学園でのふさわしくない行いを咎める権利を与えられています」
「私は咎められることはしてない。不愉快よ」
自衛以外の暴力行為は許されてません。睨みつけられますが、穏やかな表情で応対します。
私も非常に不愉快ですが貴族ですから睨んだりしません。
「誰に対しても暴力行為は禁止します」
「ビアード様、私は大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
「ほら?妹は何も不満はないわ」
妹?この高慢な方がハンナのお姉様ですか!?
優しいハンナが許しても見過ごせません。姉妹でも暴力は許されませんわ。
「ご本人が許しても淑女の行為として許されません。貴族としてふさわしくない行動を咎めるのは私の務めです」
「生まれに恵まれただけで、偉そうに」
甲高いお声で叫び睨まれてますが、私は伯爵令嬢よりも偉いですよ。
「何事?」
「リオ様!!」
令嬢が歩いて近づくリオをうっとりと見つめています。
「レティシア、頬」
「申しわけありません。妹が・・」
態度が豹変しました。
瞳を潤ませリオを見て甘えた声を出していますが、頬を叩いたの貴方ですよ!!
「淑女の行為ではないな。学園内にも身分はある」
リオの窘める声に弁明します。
「マール様、私はハンナ様に叩かれてません」
「私がお咎めしたのが気に入らないんですね」
意味がわかりません。もちろんハンナを叩いたことは気に入りませんよ。
「どんな理由があろうとも人に手をあげてはいけません」
「怖いわ。うちが逆らえないからって」
弱者のフリをしても言い逃れなどさせませんわ。
「それが貴族だ」
生徒会の笛の音が聞こえました。
リオにうっとりしている令嬢は、リオが言い聞かせたほうが適任でしょう。
私の言葉は一切聞いていただけないところは、誰かにそっくりですわ。
「マール様、ここをお願いします。失礼します」
リオの返答は聞かずに笛の音の聞こえた場所に駆けつけると生徒会の先輩がレオ様を拘束し、フィルが血まみれで倒れてました。
「フィル!?」
フィルに駆け寄り血がべっとりついた服をたくしあげると斬り傷。
剣ですかね。傷に手を当てて魔力で探ると臓器に届いてませんわ。
止血して傷を洗い組織を魔力で紡いで傷を塞ぐ。治癒魔法は体力を削るので最後に体力回復の魔法をかけます。
フィルは眠ったままですが顔色は良く呼吸も規則正しく魔力の乱れもない。傷が浅く失った血もそこまで多くなかったのが幸いです。顔をあげると生徒達が集まっていました。
「申し開きを聞こうか?」
クロード殿下の声が聞こえ後悔してませんが無断で魔法を使ったので頭を下げました。
「殿下、申しわけありません」
「レオに聞いている。王族とはいえ許される行為ではない」
寒気がするほど冷たい声に顔を上げると、クロード殿下は冷たい顔で無表情のレオ様を見ています。
なんでレオ様が疑われてますの。
「自覚が足りない」
冷たい声で吐き捨てたクロード殿下に向き直ります。
「クロード殿下、無礼をお許しください。レオ様は安易に人を傷つける方ではありません」
「レティシアはレオの事など知らないだろう」
バカにしたような皮肉を帯びた言い方に、信じていただけないのはよくわかりました。
もともと私は殿下にあまり信頼されてないですが、それでも引くわけにはいけません。
「視察でご一緒しました。私はレオ様が優しい方だと知っております」
「優しい?」
「はい」
「この状況で言えるのか?」
血まみれだったフィルと拘束されているレオ様。ここでレオ様とフィルが友達と言っても信じてもらえません。まず私は状況がよくわかりません。
「レオ様、事情を教えてください」
無表情の瞳に力のないレオ様の顔を見つめます。
「私は信じてます」
じっとレオ様を見つめ続けるしばらくすると口を開きました。
「倒れている彼を見つけ、近寄ったらこのありさまだ」
事情も聞かずに拘束したなんてありえません。真顔の先輩を睨みつけます。
「レオ様を放してください。不敬です。クロード殿下、レオ様は無関係です」
「信用できない」
なんてことでしょう。
不仲とはいえ、弟が人を殺すと思っているのでしょうか。
証拠もなく疑うなんてありえません。
先輩ではなく、冷たい顔のクロード殿下を静かに見つめ息を吸います。王族への不敬を働きますがそんなものより大事なものがありますわ。
「咎は受けます。恐れながら殿下、証拠もなく判断するのは早計です。聡明な殿下の判断をお願い申し上げます」
クロード殿下の冷たい瞳に見つめられます。
「この件はお任せください。レオ様の身は私にお預けいただけませんか」
「レオに肩入れするのか」
クロード殿下の冷たい言葉に怖気づくつもりはありません。クロード殿下の前に跪きます。
「私は王家にお仕えしております。王子殿下が不当な罪をきせられるなど、見過ごせません。聡明なクロード殿下ならご理解いただけると信じております」
「レオを逃がしたりしないかい?」
「もしレオ様が罪を犯して、逃げたなら責任をとり首を差し出しましょう」
「それはビアード公爵家として咎を受けると?」
私の一存でビアード公爵家を巻き込むわけにはいきません。冷たい視線で圧をかけてきます。どう答えるべきか
「ビアード公爵家の名にかけてレオ殿下をお預かりします。逃がすことなどありません。」
エイベルの声が聞こえました。
「ビアード公爵嫡男としての判断か」
「はい」
「この件は、リオ、やるか?」
「殿下の命であれば」
私にお任せしていただけないんですね・・・。
「リオに一任する。エイベル、監視しておけ」
冷たい空気のクロード殿下が立ち去っていきました。
「レオ様を放してください」
拘束している先輩を睨み解放されたレオ様に近づきます。
「レオ様、お怪我はありませんか?」
凝視されてます。まさか怪我を…。拘束していた先輩を睨みつけます。
「レオ様を拘束」
レオ様に肩を叩かれました。
「いいよ。気にしなくて。兄上に目をつけられた。平気なのか?」
「正しいことをしただけです。私は後悔してません。愚行」
頭を強く叩かれました。
「不敬だ。言葉に気をつけろ」
家を巻き込んだことは素直に頭を下げます。
「エイベル、申しわけありませんでした。」
「殿下を挑発するのはやめろ。レオ様、この件がおさまるまでは学園で過ごしてください。転移魔法は控えてください」
「ビアード公爵家の立場が悪く」
この場に及んで、なんの心配をしてるんでしょうか。レオ様の暗い顔を睨みつけます。
「レオ様は自分のことを心配してください。正しいことをしてるのに、非難する方がいるならしっかり言い聞かせます。それにうちは武術の名門ビアード公爵家です。この程度で落ちぶれるなどありえません。私はレオ様を拘束した」
「レティシア、落ち着け。フィルを保健室まで運ぶか」
「フィルを刺した相手も許しません」
「頭を冷やせ。勝手に動き回るな。今のお前の振る舞いはビアード公爵令嬢として相応しいか?」
深呼吸します。冷静にならないといけまけん。怒りで淑女の仮面が取れましたわ。
エイベルがフィルを背負って保健室に向かいました。フィルが起きないと話を聞けません。もう遅いので、調べるのは明日にしましょう。ベッドで眠るフィルを見て暗い顔のレオ様の手を握って強引に保健室から連れ出すことにしました。
「レオ様、ご飯の用意をしましょう。エイベル、行きますよ」
「レティシア、待って。レオ様の話を聞きたい」
事情聴取の必要性もわかりますが、レオ様の顔がずっと暗いんです。
「マール様、よければエイベルのお部屋で話を聞いてください。お茶をご用意しますわ」
不服そうなエイベルは気にせず、レオ様の手を引いてエイベルの部屋にい行きました。
座っている3人にお茶を出して、私はスープとデザートを作りはじめました。メインはレオ様に作ってもらいます。
先ほどまで話されてたのに沈黙してるので、話は終わったんでしょう。
暗い顔のレオ様にエプロンを渡します。
「レオ様、お話が終わったなら手伝ってください」
「レティシア。」
「お兄様、気分が落ち込んだ時は料理がいいんですよ。兄妹喧嘩で落ち込む繊細さの欠片もないお兄様にはわかりませんが」
「お前が言うな」
「レオ様、メインは作ってないんです。私はレオ様のご飯が食べたいのでお願いします」
レオ様の顔を覗き込んでじっと見つめると苦笑されました。
エプロンを受け取りゆっくり立ち上がったのでもう大丈夫です。
「エイベル、私はフィルに差し入れをしてきます。すぐ戻ります。」
「勝手にしろ」
呆れた声のエイベルは気にせず保健室を訪ねました。エイベルの部屋に常備してあるお菓子からフィル好みのものも持ちました。
「俺も行く。」
差し入れを持ってリオと一緒に保健室を訪ねると、フィルが眠っているのでチーズのクッキーを顔に近づけると目が開きました。
「レティシア、チーズ」
フィルはチーズが好きなので寝ていても匂いで起きます。
チーズのクッキーを渡すと上機嫌で食べ始めました。聞くまでもなく元気な様子にほっと息がこぼれました。
「俺はなんで保健室にいるんだ?」
「エイベルが運びました」
「珍しいな。いつもなら放っておくのに」
「さすがに倒れたフィルを放置しませんわ」
「倒れた?昼寝してただけだけど?」
「はい?どうしてわざわざあんな場所で寝たんですか?お気に入りの木陰があるのに」
「呼び出されたんだよ。ただ待ってたら眠気に襲われて、起きたらここにいた」
刺されたのに眠ってたんですか!?能天気なフィルに頭を抱えたくなりました。
「鈍すぎます。貴方、刺されましたのよ!!なんで」
「は?刺された?」
「はい。血まみれでしたわ。洗浄魔法をかけなければよかったですわ。私の心配を返してください」
「悪かったな」
軽い。フィルの気持ちのこもっていない謝罪に頬を思いっきり引っ張りました。
「騎士を目指すなら反省なさい」
「レティシア、マール様がいるなら事情があるんだろう。俺で遊ぶのはあとだ。心配かけて悪かった。大丈夫だから安心しろ。次は遅れをとらない」
仕方がないので頬から手を放してフィルの首に手を回して抱きつきます。
「次があれば沈めます」
「レティシア様のお心のままに」
ふざけているのに、宥めるように私の背中を優しく叩くフィルに力が抜けて肩に顔を預けます。
「事情を聞きたいんだけど、そろそろいいか?レティシア、そろそろ戻れ。後は任されるよ」
リオがいるのを忘れてました。フィルから離れて、物言いたげなリオの顔を見ます。
貴重な時間を無駄にしたのは悪いと思っていますよ・・。
「お手伝いします」
「ならレオ様を任せるよ」
「かしこまりました」
私はエイベルの部屋に戻りました。今回の指揮はリオなので余計なことをするわけにはいきません。
レオ様にフィルは心配ないと話すと安心した顔で微笑まれました。先ほどよりも瞳に光が戻りましたが、まだまだ顔は暗いです。
「レオ様、解決したらクロード殿下と先輩に謝罪させますのでご安心を」
「レティシア、いい加減にしろ。」
エイベルの眉間に皺を寄せて咎める顔を睨みつけます。
「王族といえ間違いは正すべきです。謝罪しないでうやむやにしたら、許しません」
「レオ様にもうちにも迷惑がかかるから、よく考えて行動しろ。当分は一人で出歩くなよ。犯人の目的がわからない。ただうちが、解決に動いていると知れば狙われる可能性もある。俺が調べるからレオ様についてろ。」
殿下達の謝罪の件より事件の早期解決ですよね。情報収集位なら許されるでしょう。
「私は情報収集はエイベルよりも得意です」
「レオ様の御身も危険かもしれない。侍従を貸すから放課後は俺の部屋で大人しくしてろ。クロード殿下もうちが見張っているとわかれば冷静になるだろう。レオ様、当分はご不便をかけますがご協力をお願いします。うちの使用人を一人、お傍においてもらえませんか?」
「任せるよ」
「レオ様への不敬は許しません。私がしっかりお守りするのでお任せください」
「レオ様、申しわけありませんが、このバカお願いします。放課後は俺の部屋を自由に使ってください。必要な物があれば遠慮なく」
食事をすませてエイベル達に送ってもらい寮に帰りました。
生徒会の仕事はエイベルの部屋でやることにしました。後輩達の様子を見に行くことはステラとベリーに頼んであります。早く解決することを祈るばかりです。ただ納得いきません。どうして誰も怒ってないんですか!?レオ様はもっとクロード殿下達に怒るべきです!!
絶対に謝罪させますし、犯人も許しません。
近づくとハンナが令嬢に詰め寄られていました。
「ハンナ、どうしてなのよ!?」
「お姉様、申しわけありません」
「役立たずが!!」
令嬢の右手が振り上げられたので慌てて、ハンナを庇い右手を掴む。
パチンと頬に止めた右手ではなく左手を振り下ろされ、中々の反応速度に感心している場合ではありませんでしたわ。
平手打ちをされるのは久しぶりですわね。
「貴方、なんなのよ!!邪魔よ」
睨みつける令嬢は人の頬を叩いてなんて態度でしょうか。そんなに痛みはありませんが、淑女として許されませんわ。
「令嬢の行動ではありません。落ち着いてください」
「生意気よ。どきなさい」
興奮している令嬢の前にハンナを出せません。
「彼女に手を出すことは許しません」
「貴方に指図される筋合いはないわ」
睨みつける令嬢に生徒会証を見せます。
「私は学園でのふさわしくない行いを咎める権利を与えられています」
「私は咎められることはしてない。不愉快よ」
自衛以外の暴力行為は許されてません。睨みつけられますが、穏やかな表情で応対します。
私も非常に不愉快ですが貴族ですから睨んだりしません。
「誰に対しても暴力行為は禁止します」
「ビアード様、私は大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
「ほら?妹は何も不満はないわ」
妹?この高慢な方がハンナのお姉様ですか!?
優しいハンナが許しても見過ごせません。姉妹でも暴力は許されませんわ。
「ご本人が許しても淑女の行為として許されません。貴族としてふさわしくない行動を咎めるのは私の務めです」
「生まれに恵まれただけで、偉そうに」
甲高いお声で叫び睨まれてますが、私は伯爵令嬢よりも偉いですよ。
「何事?」
「リオ様!!」
令嬢が歩いて近づくリオをうっとりと見つめています。
「レティシア、頬」
「申しわけありません。妹が・・」
態度が豹変しました。
瞳を潤ませリオを見て甘えた声を出していますが、頬を叩いたの貴方ですよ!!
「淑女の行為ではないな。学園内にも身分はある」
リオの窘める声に弁明します。
「マール様、私はハンナ様に叩かれてません」
「私がお咎めしたのが気に入らないんですね」
意味がわかりません。もちろんハンナを叩いたことは気に入りませんよ。
「どんな理由があろうとも人に手をあげてはいけません」
「怖いわ。うちが逆らえないからって」
弱者のフリをしても言い逃れなどさせませんわ。
「それが貴族だ」
生徒会の笛の音が聞こえました。
リオにうっとりしている令嬢は、リオが言い聞かせたほうが適任でしょう。
私の言葉は一切聞いていただけないところは、誰かにそっくりですわ。
「マール様、ここをお願いします。失礼します」
リオの返答は聞かずに笛の音の聞こえた場所に駆けつけると生徒会の先輩がレオ様を拘束し、フィルが血まみれで倒れてました。
「フィル!?」
フィルに駆け寄り血がべっとりついた服をたくしあげると斬り傷。
剣ですかね。傷に手を当てて魔力で探ると臓器に届いてませんわ。
止血して傷を洗い組織を魔力で紡いで傷を塞ぐ。治癒魔法は体力を削るので最後に体力回復の魔法をかけます。
フィルは眠ったままですが顔色は良く呼吸も規則正しく魔力の乱れもない。傷が浅く失った血もそこまで多くなかったのが幸いです。顔をあげると生徒達が集まっていました。
「申し開きを聞こうか?」
クロード殿下の声が聞こえ後悔してませんが無断で魔法を使ったので頭を下げました。
「殿下、申しわけありません」
「レオに聞いている。王族とはいえ許される行為ではない」
寒気がするほど冷たい声に顔を上げると、クロード殿下は冷たい顔で無表情のレオ様を見ています。
なんでレオ様が疑われてますの。
「自覚が足りない」
冷たい声で吐き捨てたクロード殿下に向き直ります。
「クロード殿下、無礼をお許しください。レオ様は安易に人を傷つける方ではありません」
「レティシアはレオの事など知らないだろう」
バカにしたような皮肉を帯びた言い方に、信じていただけないのはよくわかりました。
もともと私は殿下にあまり信頼されてないですが、それでも引くわけにはいけません。
「視察でご一緒しました。私はレオ様が優しい方だと知っております」
「優しい?」
「はい」
「この状況で言えるのか?」
血まみれだったフィルと拘束されているレオ様。ここでレオ様とフィルが友達と言っても信じてもらえません。まず私は状況がよくわかりません。
「レオ様、事情を教えてください」
無表情の瞳に力のないレオ様の顔を見つめます。
「私は信じてます」
じっとレオ様を見つめ続けるしばらくすると口を開きました。
「倒れている彼を見つけ、近寄ったらこのありさまだ」
事情も聞かずに拘束したなんてありえません。真顔の先輩を睨みつけます。
「レオ様を放してください。不敬です。クロード殿下、レオ様は無関係です」
「信用できない」
なんてことでしょう。
不仲とはいえ、弟が人を殺すと思っているのでしょうか。
証拠もなく疑うなんてありえません。
先輩ではなく、冷たい顔のクロード殿下を静かに見つめ息を吸います。王族への不敬を働きますがそんなものより大事なものがありますわ。
「咎は受けます。恐れながら殿下、証拠もなく判断するのは早計です。聡明な殿下の判断をお願い申し上げます」
クロード殿下の冷たい瞳に見つめられます。
「この件はお任せください。レオ様の身は私にお預けいただけませんか」
「レオに肩入れするのか」
クロード殿下の冷たい言葉に怖気づくつもりはありません。クロード殿下の前に跪きます。
「私は王家にお仕えしております。王子殿下が不当な罪をきせられるなど、見過ごせません。聡明なクロード殿下ならご理解いただけると信じております」
「レオを逃がしたりしないかい?」
「もしレオ様が罪を犯して、逃げたなら責任をとり首を差し出しましょう」
「それはビアード公爵家として咎を受けると?」
私の一存でビアード公爵家を巻き込むわけにはいきません。冷たい視線で圧をかけてきます。どう答えるべきか
「ビアード公爵家の名にかけてレオ殿下をお預かりします。逃がすことなどありません。」
エイベルの声が聞こえました。
「ビアード公爵嫡男としての判断か」
「はい」
「この件は、リオ、やるか?」
「殿下の命であれば」
私にお任せしていただけないんですね・・・。
「リオに一任する。エイベル、監視しておけ」
冷たい空気のクロード殿下が立ち去っていきました。
「レオ様を放してください」
拘束している先輩を睨み解放されたレオ様に近づきます。
「レオ様、お怪我はありませんか?」
凝視されてます。まさか怪我を…。拘束していた先輩を睨みつけます。
「レオ様を拘束」
レオ様に肩を叩かれました。
「いいよ。気にしなくて。兄上に目をつけられた。平気なのか?」
「正しいことをしただけです。私は後悔してません。愚行」
頭を強く叩かれました。
「不敬だ。言葉に気をつけろ」
家を巻き込んだことは素直に頭を下げます。
「エイベル、申しわけありませんでした。」
「殿下を挑発するのはやめろ。レオ様、この件がおさまるまでは学園で過ごしてください。転移魔法は控えてください」
「ビアード公爵家の立場が悪く」
この場に及んで、なんの心配をしてるんでしょうか。レオ様の暗い顔を睨みつけます。
「レオ様は自分のことを心配してください。正しいことをしてるのに、非難する方がいるならしっかり言い聞かせます。それにうちは武術の名門ビアード公爵家です。この程度で落ちぶれるなどありえません。私はレオ様を拘束した」
「レティシア、落ち着け。フィルを保健室まで運ぶか」
「フィルを刺した相手も許しません」
「頭を冷やせ。勝手に動き回るな。今のお前の振る舞いはビアード公爵令嬢として相応しいか?」
深呼吸します。冷静にならないといけまけん。怒りで淑女の仮面が取れましたわ。
エイベルがフィルを背負って保健室に向かいました。フィルが起きないと話を聞けません。もう遅いので、調べるのは明日にしましょう。ベッドで眠るフィルを見て暗い顔のレオ様の手を握って強引に保健室から連れ出すことにしました。
「レオ様、ご飯の用意をしましょう。エイベル、行きますよ」
「レティシア、待って。レオ様の話を聞きたい」
事情聴取の必要性もわかりますが、レオ様の顔がずっと暗いんです。
「マール様、よければエイベルのお部屋で話を聞いてください。お茶をご用意しますわ」
不服そうなエイベルは気にせず、レオ様の手を引いてエイベルの部屋にい行きました。
座っている3人にお茶を出して、私はスープとデザートを作りはじめました。メインはレオ様に作ってもらいます。
先ほどまで話されてたのに沈黙してるので、話は終わったんでしょう。
暗い顔のレオ様にエプロンを渡します。
「レオ様、お話が終わったなら手伝ってください」
「レティシア。」
「お兄様、気分が落ち込んだ時は料理がいいんですよ。兄妹喧嘩で落ち込む繊細さの欠片もないお兄様にはわかりませんが」
「お前が言うな」
「レオ様、メインは作ってないんです。私はレオ様のご飯が食べたいのでお願いします」
レオ様の顔を覗き込んでじっと見つめると苦笑されました。
エプロンを受け取りゆっくり立ち上がったのでもう大丈夫です。
「エイベル、私はフィルに差し入れをしてきます。すぐ戻ります。」
「勝手にしろ」
呆れた声のエイベルは気にせず保健室を訪ねました。エイベルの部屋に常備してあるお菓子からフィル好みのものも持ちました。
「俺も行く。」
差し入れを持ってリオと一緒に保健室を訪ねると、フィルが眠っているのでチーズのクッキーを顔に近づけると目が開きました。
「レティシア、チーズ」
フィルはチーズが好きなので寝ていても匂いで起きます。
チーズのクッキーを渡すと上機嫌で食べ始めました。聞くまでもなく元気な様子にほっと息がこぼれました。
「俺はなんで保健室にいるんだ?」
「エイベルが運びました」
「珍しいな。いつもなら放っておくのに」
「さすがに倒れたフィルを放置しませんわ」
「倒れた?昼寝してただけだけど?」
「はい?どうしてわざわざあんな場所で寝たんですか?お気に入りの木陰があるのに」
「呼び出されたんだよ。ただ待ってたら眠気に襲われて、起きたらここにいた」
刺されたのに眠ってたんですか!?能天気なフィルに頭を抱えたくなりました。
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「は?刺された?」
「はい。血まみれでしたわ。洗浄魔法をかけなければよかったですわ。私の心配を返してください」
「悪かったな」
軽い。フィルの気持ちのこもっていない謝罪に頬を思いっきり引っ張りました。
「騎士を目指すなら反省なさい」
「レティシア、マール様がいるなら事情があるんだろう。俺で遊ぶのはあとだ。心配かけて悪かった。大丈夫だから安心しろ。次は遅れをとらない」
仕方がないので頬から手を放してフィルの首に手を回して抱きつきます。
「次があれば沈めます」
「レティシア様のお心のままに」
ふざけているのに、宥めるように私の背中を優しく叩くフィルに力が抜けて肩に顔を預けます。
「事情を聞きたいんだけど、そろそろいいか?レティシア、そろそろ戻れ。後は任されるよ」
リオがいるのを忘れてました。フィルから離れて、物言いたげなリオの顔を見ます。
貴重な時間を無駄にしたのは悪いと思っていますよ・・。
「お手伝いします」
「ならレオ様を任せるよ」
「かしこまりました」
私はエイベルの部屋に戻りました。今回の指揮はリオなので余計なことをするわけにはいきません。
レオ様にフィルは心配ないと話すと安心した顔で微笑まれました。先ほどよりも瞳に光が戻りましたが、まだまだ顔は暗いです。
「レオ様、解決したらクロード殿下と先輩に謝罪させますのでご安心を」
「レティシア、いい加減にしろ。」
エイベルの眉間に皺を寄せて咎める顔を睨みつけます。
「王族といえ間違いは正すべきです。謝罪しないでうやむやにしたら、許しません」
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