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元夫の苦難16
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父上に呼び出されマール公爵邸に帰宅した。
「明後日から国外に行く。他言無用だ。ビアード公爵邸に海の皇国の皇子が亡命希望で滞在している。ビアード公爵夫妻が留守なためレティシアが賓客としてもてなしている。レティシアはビアード公爵夫妻の許しあれば亡命を受け入れると言ったんだが…」
最近学園にいない理由はそれか。
ビアードには私用で帰省していると言われたが理由までは話さなかった。あの皇子とずっと一緒にいるんだろうか…。
父上が黙り沈黙が続いた。
思考をまとめているんだろうか。父上の沈黙は珍しい。しばらくすると口を開いた。
「皇女が皇子を探しに国を荒らしにきたらどうするかって」
聞こえた言葉の意味がわからなかった。
「は?」
「ビアードの直感らしい。嫌な予感がするって。皇帝は皇子の死亡を発表したが皇子を探している者もいるようだ」
皇帝は皇子に利用価値がないと判断したのか。
あの冷酷な皇帝ならありえるか。無能はいらないから数多いる皇子が一人消えても気にしないか…。だが皇帝の判断に納得できない者もいるのか。
「穏やかではありませんね」
「最初は帰国の説得をしていたけど、皇子の母親への執着は強くて諦めていた。フラン王国民になるならフラン王国につくす覚悟があるか。皇女が国を害するなら自分達が殺すのを邪魔しないかって聞いたんだよ。王家やビアードに害をもたらす者は領民として受け入れられない。ただ領民になるなら守ると」
レティシアがそこまで覚悟を説いた?
レティシアなら無条件に快く受け入れそうだけど…。
「レティシアが?」
「ああ。しばらくしたら撤回したよ。悲痛な顔が覚悟を決めた顔に変わった」
父上も違和感があるようだ。
「何か言いました?」
「確か、「妹を斬ることを止めるなって言われても無理ですもの。私はとっさに兄を庇ってしまうと思います。ありえませんが兄が国賊になるなら首は私がもらいます。それに皇子様がローナと生きるために全てを捨てたのなら受け入れますわ。海の皇国民ではない私に皇子様を説得する権利はありません。何を捨てても傍にいたい唯一があるなら仕方ありません」って」
父上がレティシアの言葉遣いをするとは思わなかった。
なぜそこまで覚悟を決めているんだろうか。
そういえば前に生前の記憶があるって言ってたよな。
レティシアがここまで警戒するなんて初めてだよな…。あのルメラ嬢さえ危険と認識しなかったほど危機感が欠如しているのに。
「父上のレティシアのフリは気持ち悪いです。なにか一人で動きますかね…」
「考え込んでたから否定はできない。ローナの事情を知ってるのはリオだけだ。時々気にかけてやれって言う必要はないか」
笑われたが事情がわかれば放っておけない。
あんまり抱え込ませたくはない。レティシアの周りに危険人物も増やしたくない。
もし皇子を保護して隠したことを訴えられたら首を差し出してことを収めそうだよな。他人よりも自分を大事にしてほしい。
「父上、皇子をうちで引き取るとしたら許可されますか?」
「理由は?」
危険人物をレティシアの傍におきたくないとは言えない。
「皇女は皇子がローナに関心があることを知っています。レティシアの侍女ということも。訪問するならビアードでしょう。二人が一緒にいる様子を見たら、逆上して何をするかわかりません。外交問題等はビアードで対処できるかわかりません。それにうちに置けば有効な情報を引き出せるかもしれません亅
「ビアードは最終的に物理で解決するからな。皇子とローナを送り返すのが穏便なんだけど」
「海の皇国に求められたらそうすべきでしょう。今の段階では本人の意思を無視して送り返せません。俺はあのレティシアが警戒している皇子をビアードに置いておくのは危険だと思います」
「陛下にどう説明するか…」
「クロード殿下とレティシアが喧嘩しますかね……」
「は?」
「以前のコクーン伯爵家の事件の第一発見者がレオ様だったんです。クロード殿下がレオ様を被疑者にしたときに喧嘩してました」
「あのクロード殿下と喧嘩するだと……。王宮行事は緊張で寝込むのに、あの機嫌の悪い殿下と渡り合えるのか……」
父上が遠い目をした。
いまだに深窓のビアード公爵令嬢の名は消えない。
そして王宮行事にレティシアの姿はいつもない。
***
休養日にレティシアの様子を見に行き、話を聞くと嫌な予感があたっていた。
海の皇族のことをいずれ調べに行こうとしていたらしい。
すでに旅支度を始めているとは…。
皇族を調べるには皇宮に潜入しないといけない。レティシアならあっさり紛れこみそうだよな。皇族に見初められて帰ってこれなくなりそうだ。
皇子をうちで保護する案を出すとビアードは乗り気だったが、レティシアは気乗りしないようだ。しばらくするとビアード公爵の許可が出ればうちで保護する覚悟を決めたので気遣い不要と手紙が来た。
学園を休んでる間はずっと皇子と過ごすんだろうか。あんなに警戒していたのに大丈夫だろうか。休養日にレティシアに面会を求めると断りの文が届いた。
ウォントに様子を聞きにいくか。ビアード領を歩いていればレティシアも会えるかもしれないよな。
***
休養日にビアード領を訪問した。
最近はレティシアが頻繁に領内を視察に来ているらしい。
見慣れない護衛騎士を連れ歩いてるってまさか皇子と一緒なんだろうか…。
孤児院に顔を出すとレティシアと髪色を変えビアードの制服を着た皇子とロキとナギがいた。
ナギと皇子が遊んでいるのをロキとレティシアが眺めている。
久しぶりの愛らしい笑顔は可愛いが、完全に警戒心を解いたらしい。
皇子とも親しそうに話している。あんなに警戒していたのに何があったんだよ。俺の中で嫌な予感が全然消えない。
今は声を掛けても、相手にされないよなぁ。
せっかく来たからビアード家門に顔を出して一戦相手をしてもらうか。
「明後日から国外に行く。他言無用だ。ビアード公爵邸に海の皇国の皇子が亡命希望で滞在している。ビアード公爵夫妻が留守なためレティシアが賓客としてもてなしている。レティシアはビアード公爵夫妻の許しあれば亡命を受け入れると言ったんだが…」
最近学園にいない理由はそれか。
ビアードには私用で帰省していると言われたが理由までは話さなかった。あの皇子とずっと一緒にいるんだろうか…。
父上が黙り沈黙が続いた。
思考をまとめているんだろうか。父上の沈黙は珍しい。しばらくすると口を開いた。
「皇女が皇子を探しに国を荒らしにきたらどうするかって」
聞こえた言葉の意味がわからなかった。
「は?」
「ビアードの直感らしい。嫌な予感がするって。皇帝は皇子の死亡を発表したが皇子を探している者もいるようだ」
皇帝は皇子に利用価値がないと判断したのか。
あの冷酷な皇帝ならありえるか。無能はいらないから数多いる皇子が一人消えても気にしないか…。だが皇帝の判断に納得できない者もいるのか。
「穏やかではありませんね」
「最初は帰国の説得をしていたけど、皇子の母親への執着は強くて諦めていた。フラン王国民になるならフラン王国につくす覚悟があるか。皇女が国を害するなら自分達が殺すのを邪魔しないかって聞いたんだよ。王家やビアードに害をもたらす者は領民として受け入れられない。ただ領民になるなら守ると」
レティシアがそこまで覚悟を説いた?
レティシアなら無条件に快く受け入れそうだけど…。
「レティシアが?」
「ああ。しばらくしたら撤回したよ。悲痛な顔が覚悟を決めた顔に変わった」
父上も違和感があるようだ。
「何か言いました?」
「確か、「妹を斬ることを止めるなって言われても無理ですもの。私はとっさに兄を庇ってしまうと思います。ありえませんが兄が国賊になるなら首は私がもらいます。それに皇子様がローナと生きるために全てを捨てたのなら受け入れますわ。海の皇国民ではない私に皇子様を説得する権利はありません。何を捨てても傍にいたい唯一があるなら仕方ありません」って」
父上がレティシアの言葉遣いをするとは思わなかった。
なぜそこまで覚悟を決めているんだろうか。
そういえば前に生前の記憶があるって言ってたよな。
レティシアがここまで警戒するなんて初めてだよな…。あのルメラ嬢さえ危険と認識しなかったほど危機感が欠如しているのに。
「父上のレティシアのフリは気持ち悪いです。なにか一人で動きますかね…」
「考え込んでたから否定はできない。ローナの事情を知ってるのはリオだけだ。時々気にかけてやれって言う必要はないか」
笑われたが事情がわかれば放っておけない。
あんまり抱え込ませたくはない。レティシアの周りに危険人物も増やしたくない。
もし皇子を保護して隠したことを訴えられたら首を差し出してことを収めそうだよな。他人よりも自分を大事にしてほしい。
「父上、皇子をうちで引き取るとしたら許可されますか?」
「理由は?」
危険人物をレティシアの傍におきたくないとは言えない。
「皇女は皇子がローナに関心があることを知っています。レティシアの侍女ということも。訪問するならビアードでしょう。二人が一緒にいる様子を見たら、逆上して何をするかわかりません。外交問題等はビアードで対処できるかわかりません。それにうちに置けば有効な情報を引き出せるかもしれません亅
「ビアードは最終的に物理で解決するからな。皇子とローナを送り返すのが穏便なんだけど」
「海の皇国に求められたらそうすべきでしょう。今の段階では本人の意思を無視して送り返せません。俺はあのレティシアが警戒している皇子をビアードに置いておくのは危険だと思います」
「陛下にどう説明するか…」
「クロード殿下とレティシアが喧嘩しますかね……」
「は?」
「以前のコクーン伯爵家の事件の第一発見者がレオ様だったんです。クロード殿下がレオ様を被疑者にしたときに喧嘩してました」
「あのクロード殿下と喧嘩するだと……。王宮行事は緊張で寝込むのに、あの機嫌の悪い殿下と渡り合えるのか……」
父上が遠い目をした。
いまだに深窓のビアード公爵令嬢の名は消えない。
そして王宮行事にレティシアの姿はいつもない。
***
休養日にレティシアの様子を見に行き、話を聞くと嫌な予感があたっていた。
海の皇族のことをいずれ調べに行こうとしていたらしい。
すでに旅支度を始めているとは…。
皇族を調べるには皇宮に潜入しないといけない。レティシアならあっさり紛れこみそうだよな。皇族に見初められて帰ってこれなくなりそうだ。
皇子をうちで保護する案を出すとビアードは乗り気だったが、レティシアは気乗りしないようだ。しばらくするとビアード公爵の許可が出ればうちで保護する覚悟を決めたので気遣い不要と手紙が来た。
学園を休んでる間はずっと皇子と過ごすんだろうか。あんなに警戒していたのに大丈夫だろうか。休養日にレティシアに面会を求めると断りの文が届いた。
ウォントに様子を聞きにいくか。ビアード領を歩いていればレティシアも会えるかもしれないよな。
***
休養日にビアード領を訪問した。
最近はレティシアが頻繁に領内を視察に来ているらしい。
見慣れない護衛騎士を連れ歩いてるってまさか皇子と一緒なんだろうか…。
孤児院に顔を出すとレティシアと髪色を変えビアードの制服を着た皇子とロキとナギがいた。
ナギと皇子が遊んでいるのをロキとレティシアが眺めている。
久しぶりの愛らしい笑顔は可愛いが、完全に警戒心を解いたらしい。
皇子とも親しそうに話している。あんなに警戒していたのに何があったんだよ。俺の中で嫌な予感が全然消えない。
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