追憶令嬢のやり直し

夕鈴

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第七十五話 婚約 

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学園内も段々と落ち着きを取り戻しました。
結界が新たに構築され、外部からの侵入者の心配はなくなりました。

「レティシア、時間をもらえないか?」

教室に訪ねてきたリオの言葉に頷くと驚いた顔をしました。

「ビアード公爵夫人に許可はもらった。明日の夜会の前に出かけないか?」

明日はマール公爵家の夜会に招待されました。
海の皇国の件でお世話になったのでお礼に行かないといけません。
マール公爵家の皆様も多忙なため帰国してからはリオ以外の方には直接お会いできませんでした。
昼間はビアード領に視察に行く予定でしたが、急ぎではないので後日にしましょう。

「わかりました。」
「いいのか!?」

レオ様の転移で来たときに時間を作ってほしいと言われましたし、頼んでいませんがお礼は必要でしょう。

「お約束ですから」
「ああ。覚えていたか。じゃあ、明日」

嬉しそうに去っていくリオを見送りました。

「レティシア、折れたのか?」

リオとの婚約は噂になっています。
学園で人気のリオ、しかも公爵家の婚約なので仕方がありません。貴族として交友関係の把握は必要ですから。
フィルに婚約した本当の理由は話せません。リオのビアードへの貢献の仕方は魅力的でした。
ビアードに利があるなら断る理由がありません。両親が認めたなら、従う以外に選択肢はありませんが。

「示してくださった利にときめきましたわ。まぁ色々事情がありますのよ」
「困ったら言えよ」
「ありがとう」

リオとの婚約が噂になっても、リオのファンから声が掛からないので、平穏に過ごせてます。
変な噂は直接聞かれないので気にしません。
対処しないといけない噂や誹謗中傷が多すぎて、リオのファン達のご機嫌伺いに行く余裕はありませんでした。
ビアード公爵家への誹謗中傷は許しません。
ずっと殿下の護衛に付いていたエイベルを責める方々はしっかりお相手しますわ。面倒なので個別ではなく、集団でまとめてお相手できればありがたいのですが、皆様そういうわけにはいきませんのよね。まぁ、賑やかな方は全て黙らせたので、当分は静かな日が続くでしょう。
無言を貫いたエイベルに文句は言いません。
社交はエイベルには全く期待していませんから。余計なことを言うよりも無言のほうがありがたいです。
ビアードへの無礼な言葉以外はどうでもいいです。リオとの恋の噂は全て聞き流します。
ビアードは褒められても、誹謗中傷を受けることは何もしてません。
学園に侵入されたのは、ビアードではなく学園に侵入されるような守りを敷いていた魔術塔を責めるべきです。
学園の守りの結界は王宮魔導士が施してますもの。
素直に攫われた私への批難は仕方ありません。応戦しなかった理由は話せないのでうまく流しました。

***

翌日、学園で待ち合わせをして、リオの用意した馬車に乗りマール公爵領に行きました。
蜂蜜菓子の食べられる店に案内されました。
久しぶりの蜂蜜に頬が緩んでしまいました。
ゆっくりするのは久々ですわ。最近は色んな意味で賑やかだったので。
手を引かれて薔薇が綺麗な公園に案内されました。散策をして、今は椅子に座って休憩してます。
隣に座ったリオは難しい顔をして花を見ています。
私も花を見ながらぼんやりと過ごすことにしました。暖かいから眠くなってきました。穏やかな時間はいつぶりでしょうか…。

「レティシア、婚約のことなんだけど・・・」

隣を見るとリオに気まずい顔で見つめられてます。
何度か彷徨うように視線を泳がし、口ごもってます。
ふと雨の気配を感じました。突然の雨はよくあることです。
移動したほうがいいでしょうが、この雰囲気では動けません。
時間もないので、しばらく待っても言葉にしないリオにビアードとしての答えを伝えることにしました。

「マール様のお好きにしてください」

息を呑む音が聞こえ、目を大きく開けて驚いた顔で見られてます。

「え?そう言われると破棄しないけど」

「どうぞ、お好きに」

肩に手を置かれて、真剣な顔で見つめられました。

「俺の妻になってくれるのか?」

マール公爵家は話し合ってないんでしょうか。
私は伝えないほうが良かった?マールの事情は知りませんわ。
伝えてしまいましたし、ビアードとしての答えは変わらないのでいいでしょう。

「両当主の同意のもとでしたら。お母様は婚約はそのままとおっしゃってましたが」
「幸せにするから」

勢いよく抱きしめられました。
このリオは抱きつき癖があるんでしょうか…。
背中に手を回すと、嬉しそうに笑う顔につられて笑みが零れます。
頬に手を添えられ、銀の瞳に見つめられ、ゆっくりと近づいてくる顔に目を閉じると唇が重なりました。
触れるだけの長い口づけの終わりに、目を開けると嬉しそうに笑っています。
これで良かったんでしょうか。
どうしても重なる影を排除できません。
腕の暖かさは同じで、体を預ける胸に錯覚しそうになります。

「シア」
「その呼び方やめてください」
「混同していいのに。」

リオはすぐに私を騙そうとします。
混乱することはやめてほしいです。

「余計に寂しくなるだけですわ。政略結婚に愛など不要です」
「政略って・・・。今はいいか。婚約披露いつするか・・・」

婚約披露…。忘れてましたわ。
生前はあまり覚えておりません。
リオとの時は内輪の小さいパーティ-ですませたような…。クロード殿下の時は全く記憶にありません。たくさんパーティーに出席したのでどの記憶かわかりません。
生前の腹黒ですが穏やかなクロード殿下が懐かしいですわ。
婚約披露には両家の当主が必要です。

「お父様がお忙しいので、当分は無理ですわ。全然お会いできません」
「俺がドレス贈ったら着てくれる?」
「ドレスならたくさんあります。それにいただく理由がありません」
「婚約者」

婚約者がドレスを贈るのは甲斐性の一つと言われています。
生前は二人からたくさん贈られましたわ。
ですが今世は昔ほど夜会に頻繁に参加してませんし、人目も引かないのでいりません。十分な数のドレスもあります。それに、

「私は目立ちたくありません。壁の花を目指したいのでお気持ちだけで」
「どんなものを着ても目立つけど・・・。これからは俺の隣にいるだけでいいよ。俺が代りに交渉してあげるよ」

目立つ?どういうことですか!?
公爵家だから視線を集めるということでしょうか?

「お気持ちだけで」

社交は私の役目ですからリオに任せるつもりはありません。
本格的に雨が降りそうなので帰ろうと思いましたがリオが服飾店に興味を持ったので紹介することになりました。
殿方の趣味には珍しいですが、私のリオも私を着飾らせるのが好きだったので、不思議に思うことはやめました。エイベルは全く興味がないので服はビアード公爵夫人が全て用意をしています、
リオとの婚約を了承してから、触れられることが増えました。
婚約者なので、断るのも変なので好きにしていただいています。戸惑う気持もありますが気にするのはやめました。リオは上機嫌なのか情緒不安定なのかよくわかりません。
リオと婚約したことでマールの夜会にも、参加しなくてはいけなくなりました。
自由な時間が減っていくことが悲しいです。
最近は授業以外で訓練する時間もありません。強くなりたいのに時間がないため全然うまくいきません。
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