追憶令嬢のやり直し

夕鈴

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第八十二話 休養日

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休養日にビアード公爵邸に帰ってきました。
海の皇国の件は反省しました。やはりエイベルだけだと心配です。
それなので私が消えてもいいように準備を始めることにしました。未来のビアード公爵を支えるための準備を。
ベッドの下に毎朝一つづつ作り始めた本気で作った純度の高い水の魔石を隠します。目くらましの結界で覆い魔力の高いものしか気づきません。掃除に入る侍女達の魔力では見つかることもありません。

「お嬢様、準備ができました」

マナに呼ばれドレス合わせの部屋に移動します。身長や体形に変化が出るので、月に一度の恒例行事です。
目の前に用意された5着のドレスに首を傾げました。
2着ほど見覚えのないドレスがあります。ドレスを注文する際はいつも素材を用意し仕立ててもらっています。全く見覚えのない紺の花が飾られたドレスを着つけられました。

「依頼していないんですが・・」
「リオ様より承りました。お嬢様に贈ってほしいと」

初耳です。一言も言われてません。
いつも同席しているビアード公爵夫人が楽しそうに笑ってます。今世のお母様はなぜかリオが気に入っているんですよね。

「婚約式はどれにするの?」

リオから贈られたドレスは2種類でした。水色の生地に銀色と紺色のレースが贅沢に飾られているドレスとバタークリームのような生地に紺の花が上品に飾られているドレス。後者は蜂蜜をかけたら非常に美味しそうなケーキに見えそうな色をしています。見覚えのない生地ですが、国外のものでしょうか?
ビアードとマールの婚約披露なら他国からも招待客がくるでしょうか。そうすると、国外からの文化を取り入れたもののほうが相応しく、贈られたのはどちらかで参加してほしいということでしょうか。

「こちらの見慣れない生地のものにします。国外からの招待客のことも踏まえ贈られたんですよね…。返礼はどうしましょうか」
「ドレスを見て何も思わない?」
「どちらも素晴らしい素材を使われてます。このレース編みは初めてみました。どちらで仕入れたか聞いてみたいですね。これからのデザインの幅が広がりますわ。さすがマール公爵家です」
「そう……」

ビアード公爵夫人が瞳を伏せて長いため息をつき、周囲からも気の毒な視線を向けられるのはどうしてでしょうか。ローナとマナだけはいつもの笑顔を浮かべていますわ。

「お嬢様、綺麗!!」

ナギが目を輝かせてます。

「ありがとうございます」

多少の手直しをしてもらい、ドレス合わせが終わりました。婚約披露は学園の学年最後の短期休みに行う予定です。マール公爵とビアード公爵の日程が会う日がその日しかありませんでした。
婿入りなので、ビアード公爵邸で行われます。私としては内輪ですませたかったんですが、そういうわけにはいきませんでした。マール公爵家から送られてきた招待客が多すぎました。マール公爵家とはいえ三男なのでそこまで大きくならないと油断してました。分厚い招待客リストを頭にいれないといけません。
当初は小規模に行う予定でしたのにビアード公爵夫人がマール公爵家に、対抗して招待客を増やしたので余計に大げさなことになりました。嫡男であるエイベルの婚約披露ではないので、そこまで大きくしなくていいのに…。対抗しないでください!!と言っても聞いてもらえませんでした。おかげで武門貴族もたくさん出席されます。頭が痛くなってきました。

エイベルの部屋に入るとレオ様がいました。
転移魔法で飛んできたんでしょうか?

「レオ様、どうされました?」
「レティシア!?エイベルに許可はある」

珍しく焦っているレオ様に笑ってしまいました。生前のクロード殿下も自由に転移魔法で飛び回っていたので御身さえ大事にしていただけるなら何も言いませんわ。うちなら安全ですし。

「人を呼んだりしませんよ。お時間はあるんですか?」
「すぐに戻る。邪魔した」
「はい。お気をつけて」


レオ様は袋を持って消えていきました。殿下達は転移魔法を使って自由自在で羨ましいです。転移魔法を使えるのはフラン王家の直系のみ。血族魔法はルーンにもあります。ビアードはどんな魔法かは風の属性を持たない私は知りません。膨大な魔力を必要として、絶大な効果があるものが多く絶対に他国に知られないための切り札。いつまでも平和な世が続くかもわかりませんし、常に刃は研ぎ澄まして備えるのが大きな魔力を持つ家に生まれた者の務めですわ。
私はエイベルに頼まれた本を持って自室に戻りました。
自室に戻り日記を書きます。今更ですがロキとナギの年齢がわかりません。
平民は10歳で魔力を調べます。ロキは小柄なので10歳に見えなくもないです。ウォントならわかるでしようか…。


ウォントに護衛を頼んでビアードの森を目指し、防音の結界で覆います。

「ウォント、辛くなければ教えていただきたいんですけど、ローナが失踪した時期はわかりますか?」
「11年前です」
「ありがとうございます。それだけで十分です」

ウォントはローナとナギと時々一緒に過ごしています。

「レティシア様、ありがとうございます」

ウォントに頭を下げられました。

「ローナ達が笑っているのは貴方のおかげです」
「ビアード領民の保護は私の務めです。ですが保護できなくなることもあります。その時は恩など感じなくていいのでローナ達を連れて逃げてください」
「レティシア様?」
「覚えておいてください。私は自分の義務を果たしているだけです。王家とビアード公爵家を第一に考える狡猾な貴族ですわ。信用しないでくださいませ」

ウォントが驚いた顔をしていますが、事実です。守りたいものがあるなら信用しすぎてはいけませんわ。

「わかりました。いざとなればローナ達のことだけ考えます」

頷くウォントに笑いかけます。
海の皇国の件は落ち着いたと聞きましたが何があるかわかりません。私は王家に求められれば逆らうことはできません。ですが貴族ではないウォントはそこまで縛られる必要はありません。ビアードのためなら私は非情な判断をするかもしれません。きっと私はこっそり逃亡を手助けするくらいしかできません。
ウォントは今の生活に一言も不満は言いません。ビアード領で平穏に暮らして欲しいですが、安心しきってはいけませんよ。大事なものを守るのは難しいこと。そして国や利のためなら手段を選ばない王族や貴族を信用してはいけませんよ。ウォントには大変なことでも必要なことです。生前のリオも私も平穏でしたが警戒は怠らずに生きていました。警戒していても散々巻き込まれましたが…。

「領主一族としてウォント達の幸せを願いますわ。そろそろ戻りましょうか。ナギが寂しがってるかもしれません」

結界を解いて立ち上がると気配がします。水の刃を放つと魔鳥でした。
ビアードの森には魔物が集まるように誘いの罠を仕掛けてあります。この森は領民は立ち入り禁止。定期的に騎士が巡回して魔物を退治していますが、領民を危険にさらす要因は出来るだけ排除したいので立ち入り禁止です。森以外には魔物が現れることはありませんがもしももあるので、魔物を見つけたら逃げてビアードに知らせるように教えてあります。
この後は騎士達の訓練に顔を出しましょう。
学園に戻る前にロキの魔力測定の手配を整えないといけません。たぶん今、10歳なんですね…。
魔封じについても調べたいし、やりたいことはたくさんあるのに中々時間が足りません。授業中にこっそり準備しようかな…。でも見つかったら殿下に……。
とりあえず今は回復薬の材料をたくさん採集してから帰りましょう。一つずつ終わらせていけばきっと大丈夫ですわ!!いつも貴重な本を取り寄せてくれたリオが恋しい。マール公爵と取引すれば手に入りますかね……。
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