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元夫の苦難26
休養日にレティシアがロダに会うためにビアード領に帰ると話を聞いた。
事前にビアード公爵夫人に了承を取り亡命させたメイ伯爵を連れてビアード公爵領に訪ねた。
ビアード公爵家では、レティシアがロダ達と優しい笑みを浮かべて一緒にいた。
俺の訪問に目を丸くしてうちの侍従という名目で文官として雇っているメイ伯爵を紹介すると目を潤ませて幸せそうに笑った。面倒だったけど亡命させて良かった。この笑顔を見れたらどんな努力も報われる。
動いたのは兄上だけど。
「ロキ、ナギ、あの方はおじい様と呼んでいいですよ。ご挨拶を」
「お初にお目にかかります。ロキです。」
「ナギです。よろしくお願いします。おじい様?」
メイ伯爵とロキ達のやり取りをレティシアは優しい顔で見ていたら一瞬だけ泣きそうな顔をして無理した笑みを浮かべた。
また余計なことを考えてるよな。たぶんメイ伯爵夫人のことだよな。
レティシアは人に優しすぎる。その優しさの少しでもいいから自身に向けてくれればいいのに・・。
「リオ様、勝手にお借りしてすみません。今日のご用件は?」
レティシアに上品な笑みを向けられた。
「婚約者のご機嫌伺い」
「ほぼ毎日お会いしてます」
「俺はもっと一緒にいたい。ビアード領を案内してよ」
了承してくれたのに驚きながらも笑みを浮かべた。多忙な彼女を独占できるとは思わなかったので嬉しい誤算だ。
手を繋いでビアードの森に向かった。結界で覆い繋いだ手を引いて抱きしめた。
不思議そうな顔で見上げるレティシアの頭をゆっくり撫でると力が抜けた。
レティシアの知らない情報を教えることにした。
メイ伯爵とロダから詳細は聞いている。二人はロキ達の恩人のレティシアを救った俺に恩を感じているのでどんな情報も教えてくれる。ロダ達は海の皇国を恨み、親愛の情は一切ない。特にメイ伯爵はローナの恩人のレティシアを皇帝に差し出し、ロキ達を利用し幸せな生活を壊そうとしたことを。メイ伯爵夫人はロダの持つローナの形見の指輪を介して盗聴して全部事情を知っていたらしい。ロダが海の皇国の物を全て処分しようとしたのを父上が引き取っていた。
「もともと夫婦仲が悪かったんだ。レティシアには申しわけないけど、伯爵はこの件に感謝してた。ロダのために海の皇国にいただけだったから。夫人は市井の生活は物足りなかった。愛人も作ってやりたい放題だったんだよ。だから何も責任を感じなくていい。派閥争いは足の引っ張り合い。もともと目障りな伯爵家は狙われていた」
「ロダ様にとってはおばあ様でローナには」
泣きそうな声を出しいる。気にしていたのはメイ伯爵夫人のことか。攫われたのに。加害者にまで情をかけなくていいのに。そのあたりは俺が手を回せばいいか。
「自分の愛する人と無理矢理引き離して、妃に差し出した母だよ。伯爵はローナを妃にする気はなかったのに。悲劇を作り上げた者を傍におきたい?それにまた利用したんだよ」
「わかりません」
「気にしないでいい。ロダ達は幸せそうだろう?レティシアが守りたかったものは守れたんだ。」
「ありがとうございます。大丈夫です。」
泣きそうな顔で笑うレティシアの頬に口づけを落とすと柔らかく笑った。愛しくてたまらない。優しすぎる彼女が笑っていられるように強くなろう。
腕から離れたレティシアが俺の手を握って歩き出した。自然に繋いでくれた手に口元が緩んで思わず手で顔を隠した。
結界の外では紫色の大きな蝶が倒れていた。レティシアに待っててほしいと頼まれたので待っていると解体が始まった。護衛騎士と二人で羽をもいで切り刻み袋に納めている。
手慣れている。ビアード領ではいつものことなんだろうか・・・・。討伐だけでなく解体も覚えたほうがいいんだろうか・・・。
戻ってきてレティシアに聞くと恐ろしい事実を知った。ビアード領では魔物の体を日用品として使用しているらしい。
レティシアの身に付ける上品なドレスも魔物の素材で作られているらしい。公爵令嬢らしく飾ってると笑いながら話すレティシアがズレているのはわかった。ドレスの素材は頻繁に贈ろう。魔物で作ったドレスを着てると知れたら醜聞に仕立て上げられる。
ビアードの魔物と素材の使い道は今度ゆっくり教えてもらうか。
気付くとパン屋にいた。
土産を持ってきたので丁度良かった。女将にレティシアの好きそうなパンを選んでもらって購入した。少女と話してるレティシアにきょとんとした顔で見られた。
「リオ様、選ばないと硬いパンばかりですよ」
「大丈夫。レティシアの好みは把握しているよ」
ビアード領の売り物が変わっているのは良く知っている。騎士中心の考えのため旅人やよそ者には慣れるまでは買い物に苦労する店が多い。丈夫さと腹持ちと保存が重視の商品が多いから。マール公爵領と違って娯楽が少ない。その分自然豊かで領民の絆が強いんだよな。
公園の椅子に座りパンに蜂蜜を挟んで渡すと目を丸くしたあと、とろけるような笑みを見せた。ルーンの蜂蜜が一番好きなのか。
レティシアに蜂蜜の瓶ごと渡すとほとんど子供にあげてしまって自分では食べないから食べる分だけ渡すことにした。
「もう一つ食べれる?」
「いえ、十分です」
食が細いよな。
駆け寄ってきた少年に手を引かれてレティシアが駆けて行ったので追いかけると巨大な蛙がいた。霧が漂い風の結界で覆われて蛙が消えた。
「お嬢様がいるから大丈夫だな」
「よかった。洗濯物が」
「運が良かったな」
話を聞いていると魔物が出るとまずはビアード兄妹を探し、見つからなかったら騎士を呼びに行くらしい。嘘だろう!?
困ったらすぐにビアード兄妹ってどういう常識だよ。こんなに騎士を抱えているのに頼るのはレティシア達なのかよ。ビアード領民の教育はしっかりしているって自信満々に言ったけど、間違ってないか?
騎士達で対処できない時に領主一族が出るんじゃないのか・・?
風の結界が消えると蛙が消えていた。レティシアの澄んだ魔力の気配がするから倒したのはレティシアか。マオと話している銀髪を見つけて、レティシアに近づく。
「これもいつものこと?」
「はい。領民の安全を守るのは領主一族の務めです」
ニッコリ笑うレティシアはやっぱりおかしい。そして感謝もなく去っていく領民達も。
レティシア達は物凄く慕われているけど、いいように使われてないか?
気付くとビアード公爵邸だった。
レティシアは用があるので、二人の時間はここまでだった。二人で出かける時はビアード領以外に行こう。ビアード領だとレティシアは遊べない。気付くと便利屋ばかりしてそうだ。
思い返すとレティシアとビアード領を歩いて邪魔が入らない日はなかった。
ビアードでこんなに動き回ってる。学園でも・・。
レティシアが頻繁に寝込むのって体が弱いんじゃなくて、過労・・・?
休養日もほぼ社交で一日埋まっている。
レティシアが体が弱いのは有名である。嘘だろう・・・。食も細く、力も弱く、筋肉も体力もそこまでない。やはり武門貴族は駄目だ。
これからはもう少し気をつけて見てよう・・。ありえない。
レティシアがいなくなったから訓練に参加するか。上着を脱いで混ざると笑顔で迎え入れてくれる。騎士に訓練をしてもらっていると周りの訓練している騎士達が片付け始めた。
「何かあるんですか?」
「ビアード領の恒例行事です。気にしないでください」
「良ければ見学させてください」
年に数回の領主一族が行う神聖な行事があるらしい。その時に一時的に魔物が増える危険があるのでその警戒に騎士達が領内を巡回するらしい。
しばらくすると戻ってきた騎士達が魔物や獣を抱えていた。
訓練場で捌いているので手伝うことにした。
料理人やロキや執事長が指示に回っている。ビアードでの心象は良くしたいので指示通りに動くか。
肉を切っているとローブ姿のレティシアが目を丸くしている。
「料理も覚えたから任せてよ」
「公爵家の」
「レティシアとレオ様もしてるから同じだよ。さすがにまだ指揮は取れないけど」
「指揮は料理人がします。覚えなくていいです。お茶の用意を」
「中途半端だから終わらすよ。レティシアは気にせず休んでいいよ」
苦笑したレティシアが離れて行った。
気付くと訓練場に料理が大量に並べられていた。今日は無礼講の晩餐会らしい。
しばらくすると上品なワンピースを着たレティシアが近づいて来た。
「リオ様、もし明日ご予定がなければメイ様と泊まっていきませんか?部屋と着替えは用意します」
「迷惑じゃないか?」
「いえ、お父様とお母様が是非と。ただ今日は無礼講な晩餐なため充分なおもてなしはできませんが」
「ありがたくお世話になるよ。それに婿入りするからビアードのことを知れる機会は大事にしたい」
「わかりました。先に湯あみされますか?」
「着替えを貸してもらえれば、魔法で」
「乾かすのはご自分でお願いしますね」
温かい水に包まれると体の疲労と汚れが消えていた。悪戯っぽく笑った顔が可愛かった。
「ありがとう」
風魔法で乾かし、レティシアと一緒に食事をしていると皿の上には野菜ばかりだった。
「苦手なのか?」
「なにかわからないお肉はちょっと。参加することに意義がありますので」
「蛇が嫌だから?」
レティシアの顔が青くなった。
「ごめん」
「内緒にしてください。違います。大丈夫ですよ。本当に・・・・」
遠い目をしたレティシアの口の中に兎の肉を入れるとゆっくりと噛んで飲み込んだ。
「兎だから。他に苦手なのある?」
首を横に振ったので、食卓に並ぶ肉をレティシアに食べさせた。4切れ目でもういらないと拒否された。
腹は満たされたので、レティシアと一緒に領民達の談笑に加わった。
レティシアが夫人達に連れて行かれたので騎士達の話に加わった。
ビアード公爵夫妻に挨拶したいけど、人が多くどこにいるかわからない。
酒が回っている騎士から離れて歩いていると木の下に座っているレティシアを見つけたので隣に座るとニコッと笑いかけられた。
「楽しいですか?」
「ああ」
「幸せですか?」
首を傾げて見つめる仕草が可愛い。
「幸せだよ」
腕を抱かれて肩に頭を乗せられた。
「リオ、ずっと一緒にいられたらいいのにね」
間違えてるけどいいか。
「ずっと傍にいるよ」
幸せそうに笑ったレティシアに甘い瞳に見つめられるけど、ここで理性に負けたら斬られる。ほんのり酒の匂いがした。酔ってるのかよ!?頬が赤く、目も潤んでいる。
手に持つグラスを取り上げて抱き寄せて寝かせよう。しばらくすると寝息が聞こえロキが毛布を持ちレティシアにかけた。
「ロキ、部屋に運んでもいいか?」
「お待ちください」
しばらくするとビアード公爵夫人が楽しそうな顔で現れた。
「レティ、眠ったのね」
「すみません。目を離したら酒を」
「気にしないで。この子弱いのよ。ただ振舞われると受け取るのよ。」
未成年に酒を飲ませても平気なんだろうか・・・。
「感心するわ。レティがエイベル以外で気絶以外で眠ったのはリオが初めてよ」
なんて答えればいいかわからない。気絶って・・。ビアード公爵夫人が隣に座った。
「感謝してるわ。気を利かせてくれて」
セント嬢の件か?あの変態はレティシアの目に触れさせたくない。
「エイベルは鈍いから」
「俺は自分の好きでやっていますから」
「旦那様に勝てるように頑張ってね。あんまりレティとリオが仲が良いと妬いて余計に厳しくなるけど。レティは私が預かるわ」
「俺が運びますよ」
「それは旦那様に勝ってからよ」
綺麗な笑みを浮かべたビアード公爵夫人がレティシアを軽々と抱き上げて離れていった。ビアード公爵夫人が力があることに驚いた。ビアード公爵夫人が味方についてくれることはありがたい。
しばらくするとロキに客室に案内された。
用意されているビアードの刺繍の付いた夜着のサイズがピッタリで驚いた。
ビアード公爵家に泊まれるようになるとは昔の俺が知ったら喜ぶよな。共に朝食をとれるのも夢みたいだ。
翌朝目覚め着替えてバルコニーに出るとレティシアが訓練をしていた。
剣を弾かれて、座り込み、また立ち上がって挑んでいる。
朝からよく頑張るよな。
俺も負けてられないか。せっかくなので混ざりに降りて行くとビアード公爵に会い挨拶すると、指導してもらえることになった。
剣も重く動きも速い。叔母上よりは剣筋は読みやすいけど敵わなかった。
まだまだ届かないけど叔母上よりは勝てそうな気がした。
ビアード公爵の攻略はターナー伯爵家に相談しよう。帰ったら叔父上達に文を送ろう。
事前にビアード公爵夫人に了承を取り亡命させたメイ伯爵を連れてビアード公爵領に訪ねた。
ビアード公爵家では、レティシアがロダ達と優しい笑みを浮かべて一緒にいた。
俺の訪問に目を丸くしてうちの侍従という名目で文官として雇っているメイ伯爵を紹介すると目を潤ませて幸せそうに笑った。面倒だったけど亡命させて良かった。この笑顔を見れたらどんな努力も報われる。
動いたのは兄上だけど。
「ロキ、ナギ、あの方はおじい様と呼んでいいですよ。ご挨拶を」
「お初にお目にかかります。ロキです。」
「ナギです。よろしくお願いします。おじい様?」
メイ伯爵とロキ達のやり取りをレティシアは優しい顔で見ていたら一瞬だけ泣きそうな顔をして無理した笑みを浮かべた。
また余計なことを考えてるよな。たぶんメイ伯爵夫人のことだよな。
レティシアは人に優しすぎる。その優しさの少しでもいいから自身に向けてくれればいいのに・・。
「リオ様、勝手にお借りしてすみません。今日のご用件は?」
レティシアに上品な笑みを向けられた。
「婚約者のご機嫌伺い」
「ほぼ毎日お会いしてます」
「俺はもっと一緒にいたい。ビアード領を案内してよ」
了承してくれたのに驚きながらも笑みを浮かべた。多忙な彼女を独占できるとは思わなかったので嬉しい誤算だ。
手を繋いでビアードの森に向かった。結界で覆い繋いだ手を引いて抱きしめた。
不思議そうな顔で見上げるレティシアの頭をゆっくり撫でると力が抜けた。
レティシアの知らない情報を教えることにした。
メイ伯爵とロダから詳細は聞いている。二人はロキ達の恩人のレティシアを救った俺に恩を感じているのでどんな情報も教えてくれる。ロダ達は海の皇国を恨み、親愛の情は一切ない。特にメイ伯爵はローナの恩人のレティシアを皇帝に差し出し、ロキ達を利用し幸せな生活を壊そうとしたことを。メイ伯爵夫人はロダの持つローナの形見の指輪を介して盗聴して全部事情を知っていたらしい。ロダが海の皇国の物を全て処分しようとしたのを父上が引き取っていた。
「もともと夫婦仲が悪かったんだ。レティシアには申しわけないけど、伯爵はこの件に感謝してた。ロダのために海の皇国にいただけだったから。夫人は市井の生活は物足りなかった。愛人も作ってやりたい放題だったんだよ。だから何も責任を感じなくていい。派閥争いは足の引っ張り合い。もともと目障りな伯爵家は狙われていた」
「ロダ様にとってはおばあ様でローナには」
泣きそうな声を出しいる。気にしていたのはメイ伯爵夫人のことか。攫われたのに。加害者にまで情をかけなくていいのに。そのあたりは俺が手を回せばいいか。
「自分の愛する人と無理矢理引き離して、妃に差し出した母だよ。伯爵はローナを妃にする気はなかったのに。悲劇を作り上げた者を傍におきたい?それにまた利用したんだよ」
「わかりません」
「気にしないでいい。ロダ達は幸せそうだろう?レティシアが守りたかったものは守れたんだ。」
「ありがとうございます。大丈夫です。」
泣きそうな顔で笑うレティシアの頬に口づけを落とすと柔らかく笑った。愛しくてたまらない。優しすぎる彼女が笑っていられるように強くなろう。
腕から離れたレティシアが俺の手を握って歩き出した。自然に繋いでくれた手に口元が緩んで思わず手で顔を隠した。
結界の外では紫色の大きな蝶が倒れていた。レティシアに待っててほしいと頼まれたので待っていると解体が始まった。護衛騎士と二人で羽をもいで切り刻み袋に納めている。
手慣れている。ビアード領ではいつものことなんだろうか・・・・。討伐だけでなく解体も覚えたほうがいいんだろうか・・・。
戻ってきてレティシアに聞くと恐ろしい事実を知った。ビアード領では魔物の体を日用品として使用しているらしい。
レティシアの身に付ける上品なドレスも魔物の素材で作られているらしい。公爵令嬢らしく飾ってると笑いながら話すレティシアがズレているのはわかった。ドレスの素材は頻繁に贈ろう。魔物で作ったドレスを着てると知れたら醜聞に仕立て上げられる。
ビアードの魔物と素材の使い道は今度ゆっくり教えてもらうか。
気付くとパン屋にいた。
土産を持ってきたので丁度良かった。女将にレティシアの好きそうなパンを選んでもらって購入した。少女と話してるレティシアにきょとんとした顔で見られた。
「リオ様、選ばないと硬いパンばかりですよ」
「大丈夫。レティシアの好みは把握しているよ」
ビアード領の売り物が変わっているのは良く知っている。騎士中心の考えのため旅人やよそ者には慣れるまでは買い物に苦労する店が多い。丈夫さと腹持ちと保存が重視の商品が多いから。マール公爵領と違って娯楽が少ない。その分自然豊かで領民の絆が強いんだよな。
公園の椅子に座りパンに蜂蜜を挟んで渡すと目を丸くしたあと、とろけるような笑みを見せた。ルーンの蜂蜜が一番好きなのか。
レティシアに蜂蜜の瓶ごと渡すとほとんど子供にあげてしまって自分では食べないから食べる分だけ渡すことにした。
「もう一つ食べれる?」
「いえ、十分です」
食が細いよな。
駆け寄ってきた少年に手を引かれてレティシアが駆けて行ったので追いかけると巨大な蛙がいた。霧が漂い風の結界で覆われて蛙が消えた。
「お嬢様がいるから大丈夫だな」
「よかった。洗濯物が」
「運が良かったな」
話を聞いていると魔物が出るとまずはビアード兄妹を探し、見つからなかったら騎士を呼びに行くらしい。嘘だろう!?
困ったらすぐにビアード兄妹ってどういう常識だよ。こんなに騎士を抱えているのに頼るのはレティシア達なのかよ。ビアード領民の教育はしっかりしているって自信満々に言ったけど、間違ってないか?
騎士達で対処できない時に領主一族が出るんじゃないのか・・?
風の結界が消えると蛙が消えていた。レティシアの澄んだ魔力の気配がするから倒したのはレティシアか。マオと話している銀髪を見つけて、レティシアに近づく。
「これもいつものこと?」
「はい。領民の安全を守るのは領主一族の務めです」
ニッコリ笑うレティシアはやっぱりおかしい。そして感謝もなく去っていく領民達も。
レティシア達は物凄く慕われているけど、いいように使われてないか?
気付くとビアード公爵邸だった。
レティシアは用があるので、二人の時間はここまでだった。二人で出かける時はビアード領以外に行こう。ビアード領だとレティシアは遊べない。気付くと便利屋ばかりしてそうだ。
思い返すとレティシアとビアード領を歩いて邪魔が入らない日はなかった。
ビアードでこんなに動き回ってる。学園でも・・。
レティシアが頻繁に寝込むのって体が弱いんじゃなくて、過労・・・?
休養日もほぼ社交で一日埋まっている。
レティシアが体が弱いのは有名である。嘘だろう・・・。食も細く、力も弱く、筋肉も体力もそこまでない。やはり武門貴族は駄目だ。
これからはもう少し気をつけて見てよう・・。ありえない。
レティシアがいなくなったから訓練に参加するか。上着を脱いで混ざると笑顔で迎え入れてくれる。騎士に訓練をしてもらっていると周りの訓練している騎士達が片付け始めた。
「何かあるんですか?」
「ビアード領の恒例行事です。気にしないでください」
「良ければ見学させてください」
年に数回の領主一族が行う神聖な行事があるらしい。その時に一時的に魔物が増える危険があるのでその警戒に騎士達が領内を巡回するらしい。
しばらくすると戻ってきた騎士達が魔物や獣を抱えていた。
訓練場で捌いているので手伝うことにした。
料理人やロキや執事長が指示に回っている。ビアードでの心象は良くしたいので指示通りに動くか。
肉を切っているとローブ姿のレティシアが目を丸くしている。
「料理も覚えたから任せてよ」
「公爵家の」
「レティシアとレオ様もしてるから同じだよ。さすがにまだ指揮は取れないけど」
「指揮は料理人がします。覚えなくていいです。お茶の用意を」
「中途半端だから終わらすよ。レティシアは気にせず休んでいいよ」
苦笑したレティシアが離れて行った。
気付くと訓練場に料理が大量に並べられていた。今日は無礼講の晩餐会らしい。
しばらくすると上品なワンピースを着たレティシアが近づいて来た。
「リオ様、もし明日ご予定がなければメイ様と泊まっていきませんか?部屋と着替えは用意します」
「迷惑じゃないか?」
「いえ、お父様とお母様が是非と。ただ今日は無礼講な晩餐なため充分なおもてなしはできませんが」
「ありがたくお世話になるよ。それに婿入りするからビアードのことを知れる機会は大事にしたい」
「わかりました。先に湯あみされますか?」
「着替えを貸してもらえれば、魔法で」
「乾かすのはご自分でお願いしますね」
温かい水に包まれると体の疲労と汚れが消えていた。悪戯っぽく笑った顔が可愛かった。
「ありがとう」
風魔法で乾かし、レティシアと一緒に食事をしていると皿の上には野菜ばかりだった。
「苦手なのか?」
「なにかわからないお肉はちょっと。参加することに意義がありますので」
「蛇が嫌だから?」
レティシアの顔が青くなった。
「ごめん」
「内緒にしてください。違います。大丈夫ですよ。本当に・・・・」
遠い目をしたレティシアの口の中に兎の肉を入れるとゆっくりと噛んで飲み込んだ。
「兎だから。他に苦手なのある?」
首を横に振ったので、食卓に並ぶ肉をレティシアに食べさせた。4切れ目でもういらないと拒否された。
腹は満たされたので、レティシアと一緒に領民達の談笑に加わった。
レティシアが夫人達に連れて行かれたので騎士達の話に加わった。
ビアード公爵夫妻に挨拶したいけど、人が多くどこにいるかわからない。
酒が回っている騎士から離れて歩いていると木の下に座っているレティシアを見つけたので隣に座るとニコッと笑いかけられた。
「楽しいですか?」
「ああ」
「幸せですか?」
首を傾げて見つめる仕草が可愛い。
「幸せだよ」
腕を抱かれて肩に頭を乗せられた。
「リオ、ずっと一緒にいられたらいいのにね」
間違えてるけどいいか。
「ずっと傍にいるよ」
幸せそうに笑ったレティシアに甘い瞳に見つめられるけど、ここで理性に負けたら斬られる。ほんのり酒の匂いがした。酔ってるのかよ!?頬が赤く、目も潤んでいる。
手に持つグラスを取り上げて抱き寄せて寝かせよう。しばらくすると寝息が聞こえロキが毛布を持ちレティシアにかけた。
「ロキ、部屋に運んでもいいか?」
「お待ちください」
しばらくするとビアード公爵夫人が楽しそうな顔で現れた。
「レティ、眠ったのね」
「すみません。目を離したら酒を」
「気にしないで。この子弱いのよ。ただ振舞われると受け取るのよ。」
未成年に酒を飲ませても平気なんだろうか・・・。
「感心するわ。レティがエイベル以外で気絶以外で眠ったのはリオが初めてよ」
なんて答えればいいかわからない。気絶って・・。ビアード公爵夫人が隣に座った。
「感謝してるわ。気を利かせてくれて」
セント嬢の件か?あの変態はレティシアの目に触れさせたくない。
「エイベルは鈍いから」
「俺は自分の好きでやっていますから」
「旦那様に勝てるように頑張ってね。あんまりレティとリオが仲が良いと妬いて余計に厳しくなるけど。レティは私が預かるわ」
「俺が運びますよ」
「それは旦那様に勝ってからよ」
綺麗な笑みを浮かべたビアード公爵夫人がレティシアを軽々と抱き上げて離れていった。ビアード公爵夫人が力があることに驚いた。ビアード公爵夫人が味方についてくれることはありがたい。
しばらくするとロキに客室に案内された。
用意されているビアードの刺繍の付いた夜着のサイズがピッタリで驚いた。
ビアード公爵家に泊まれるようになるとは昔の俺が知ったら喜ぶよな。共に朝食をとれるのも夢みたいだ。
翌朝目覚め着替えてバルコニーに出るとレティシアが訓練をしていた。
剣を弾かれて、座り込み、また立ち上がって挑んでいる。
朝からよく頑張るよな。
俺も負けてられないか。せっかくなので混ざりに降りて行くとビアード公爵に会い挨拶すると、指導してもらえることになった。
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