追憶令嬢のやり直し

夕鈴

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第九十二話 充電

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レオ様の初のお忍びデートの付き添いは疲れました。
リオが私で遊んだこともレオ様達の邪魔をしたことも許しません。
リオの相手をするのは面倒です。避けてもなぜか声をかけられます。
最近はリオのファンがさらに増えました。リオと一緒にいると令嬢達の視線が怖いのでできるだけ関わりたくありません。
久しぶりに遊びに行きたくなりました。

「フィル、次の休養日は予定ありますか?」
「特にないけど」
「遊んでください。午後に予定をあけます」
「平気なのか?」
「ビアードなら問題ありません。」
「狩り?」
「はい。思いっきり」

ニッコリ笑いかけたらフィルが頷きました。
フィルは昔からなんでも付き合ってくれます。
エイベルが学園に入学してからは遊び相手はフィルでした。
フィルはこっそり訓練に付き合ってくれます。
フィルと出会った頃はこの世界に馴染んでなかったので、過去のビアード嬢を全く知らないフィルの傍は心地よかったんです。エイベルに昔のことを持ち出されるのは困惑しましたし、私には風でどこまで飛ばされるか競争した記憶はありません。

リオの誘いは断りました。
いつも社交の予定のない日に誘われるのが不思議です。婚約者でも毎回お付き合いする必要はないので3回に1回は断ってもいいですよね。
休養日にお茶会をおえて、出かける準備をしました。ビアードで訓練しているフィルに声を掛け出発しました。

森に着いたのでフィルと一緒に狩りをしました。
せっかくフィルと一緒なので黒鳥を狩りました。
黒鳥は気配に敏感で俊敏です。また凶暴なので、気配を消して近づき一撃で仕留めないといけません。
黒鳥と目が合うと獲物として目をつけられ、ずっと追いかけられます。
黒鳥を見たら一目散に逃げるのがビアード領民の常識です。
ただフィルが一緒の時は別です。私が囮になって目をつけられた瞬間にフィルが気配を消して近づき首を落としました。獲物を見つけた瞬間だけ無防備になる特性があります。
黒鳥に気付かれずに近づけるのはフィルだけです。エイベルもマオもできません。
羽は貴重な素材になるので、レオ様のお土産にしましょう。鳥を捌いてフィルに焼いてもらいます。絶妙な火加減もたまりません。狩りはフィルと一緒が一番楽しいです。
全部は食べきれないので、残りは干し肉にします。フィルは干し肉も作れます。狩りや野営については私よりも詳しく万能です。
黒鳥は柔らかくて美味しいんです。中々食べられない貴重な食材です。
串焼きとスープにして楽しみます。森の中にいると人の視線がないので楽です。
学園に入学してから忙しいです。
食事もおえたので、ごろんと寝転がります。

「フィル、疲れました」
「お疲れ。門限前におこしてやるよ」
「フィルも寝るのに?」
「マオが起こしてくれるよ」

隣に寝転ぶフィルが明るい笑みを浮かべます。この顔を見ると力が抜けて笑ってしまいます。

「フィル、もし私が私じゃなくなっても傍にいて」
「突然別人になっても面倒みてやるよ」
「私が国やビアードの害悪になったらためらわずに殺して」
「ならないだろうけど。その時は気絶させて攫うかな」

冗談と捉えられてますね。

「カーソン家の当主が」
「兄上に子供がいる。国にもビアードにもいらないなら俺が面倒みてやるよ」

ビアード公爵令嬢でなくても面倒見てくれる…。
貴族としてはありえない言葉ですが、フィルなら雇ってくれそうです。

「フィルのお嫁さんが」
「俺の嫁は喜んでついてくるよ」

嫁!?フィルの顔を見ると動揺してません。


「誰ですか!?」
「ステラ。まだ公表はしない。グレイ伯爵家から話がきた」

この状況はステラに失礼です。

「知りませんでした。婚約者がいるなら私と二人はまずいです」
「問題ない。ステラは俺の婚約者になれば3人でずっと一緒にいられるって。レティシアと二人で出かけてもいいってさ。レティシアと一緒にいたいから婚約してほしいって頼まれた」

凄い理由です。受けるのも申し込むのもありえません。でも胸がくすぐったいです。

「ステラ・・・・」
「レティシアが婚姻したらだけどな。ステラは優秀だからうちとしてはありがたい。魔法に優れるレティシアの一番弟子で親友。ビアードとの強い縁は後ろ盾としてありがたい。」

ちゃんと家の利もあるそうです。

「二人で幸せにならないと許しません」
「残念ながら3人かな。ステラの幸せにはレティシアがいることが大前提だ。うちがビアードを裏切れば出て行きそうだけどな。」
「それは武門の妻としてどうなんでしょうか。可愛いステラをもらえるのは幸せでしょうが・・・」
「俺の友人は家と王家のために生きてるから付いていけば自ずと貴族の役目は果たせるよ。献身的な友人がつぶれそうなら支えてやるよ。耐えられないなら逃げようって言ったら失望するか?」
「フィルに失望するなどありえません。フィルとステラと三人で小さい家を借りて暮らすのも楽しそうですね。きっと平穏な生活が」
「追いかけてくる奴らがいるかな」

フィルの言葉に笑ってしまいます。またロキが追いかけてきたらどうしましょう。そういえば、


「最近、避けてもリオ様に見つかるんです。気配が上手に消せなくなってるんでしょうか・・。私、気配消すのが下手になってますか?」
「特に感じないけど。追跡魔法でも仕掛けられてたりしてないか」

フィルが大丈夫と言うなら問題ありません。気配を消すことに関してはフィルが一番ですから。

「まさか。ありえませんよ。お祝いはいつ伝えていいですか?」
「公表した時でいい。騒がしくなるから。余計な気は回すなよ。俺達は勝手にやる。」
「私は二人がいなくなるとお友達はレオ様とアロマしかいなくなります」
「友達が少ないな。俺達は3人で過ごせる時間が一番だから。」
「大人になっても共に過ごせるなんて夢みたいです」
「レティシアの願いは些細なのにいつも叶わないからその夢は俺とステラが叶えてやるよ」
「フィル、大好きですわ」
「俺も好きだよ。寝るか。」

隣で寝息が聞こえて笑ってしまいます。
フィルとステラが将来夫婦になるとは思いませんでした。でもフィルならきっとステラを幸せにしてくれます。誠実で女遊びもしません。
二人に幸せになって欲しいです。エイベルのお嫁さんはどんな方になるんでしょうか。
どこまで本気かはわかりません。隣の寝顔を見ながらぼんやりします。

***

起きたら暖かい風の結界の中にいました。
マオの結界とフィルの火のおかげです。
辺りは豪雨です。雨の気配なんてしなかったのに。この森はビアード公爵邸から離れています。

「マオ、雨が止みません。どうすれば一番怒られませんか?」
「雷がなければ結界で包んで進みますが・・・」
「雨が止んだら帰るか。ビアード公爵には俺が謝るよ」
「いえ、私が怒られますわ。」
「俺とマオがついていれば平気だろう。ローブの追跡魔法で安全確認できるし。せっかくだからのんびりしようよ。食べ物もあるし。念のためビアード公爵夫人への土産を用意するか。」

フィルが袋の中からお菓子と茶葉と鍋を出しました。用意周到ですよね。私は武器といつもの道具しかありません。

鍋の中に水を入れるとフィルがお湯を作ってくれます。火の魔法は万能ですよね。
お茶を飲んで、フィルと一緒にビアード公爵夫人へのお土産を作りました。
フィルと一緒に門限を破る時はいつもお土産を用意しています。そうするとあまり怒られません。

夜遅くに雨は晴れました。夜の移動は危険なので朝まで待つことにしました。見上げる星空の美しさはいつの世も変わりません。
生前の冒険者仲間のシオンが教えてくれた星を見つけました。リオがいなくても星の美しさを感じられます。優しい友人にも恵まれています。一人ではないから大丈夫です。
今日はのんびりできたので明日からまた頑張りましょう。
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