追憶令嬢のやり直し

夕鈴

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第九十五話 招かざる客

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イーガン伯爵家は爵位剥奪と賠償金を。
クロード殿下は学園でのことなので慈悲の心で更生の道を示し姉のライラ様は修道院、妹のハンナは謹慎になりました。
リオが殿下を説得してくれたそうです。
最近はリオのファンが増えて近づきたくないんですが、3回に1回は誘いを受けることにしています。
王宮での殿下のお手伝いはリオが付き合ってくれるのでお礼に晩餐に招待しました。そのまま泊まって明日はうちの訓練に参加するそうです。リオと一緒に帰ると邸内がざわめいていました。

「どうしました?」

マオが私の前に出て、男性を取り押さえました。

「どうか、御慈悲を。お許しください」

「お嬢様、お帰りなさいませ。お目汚しをすみません。すぐに追い出します」

執事長に穏やかな顔で礼をされました。何か問題があるなら対処しないといけません。見慣れない方ですが移民でしょうか。

「事情を伺います。リオ様を先に客室に案内を。」
「レティシア、同席させて」
「お構いなく」
「ビアードのことを知りたいんだよ」

社交の笑みを浮かべるリオはしつこいので、断るのも面倒です。婿入りするならいいでしょうか・・。

「わかりました。マオ、離してさしあげて。」

「お嬢様、イーガン前伯爵です。取りなしてほしいと。お嬢様に近づいたら斬りますので」

執事長の言葉にため息を我慢します。イーガン前伯爵が立ち上がり礼をしました。

「このたびは娘が申しわけありません。どうかお許しを」

王家の決めた罰を覆せません。謝罪する相手も違います。謝罪するならクロード殿下とお茶会を妨害されそうだったエイミー様達ですわ。
どんな事情があっても王家の決断に異を唱える気もありませんが。

「どんなに謝罪されようとクロード殿下に危害を加えようとしたことは許されません。殿下は慈悲の心で許してくださいました。殿下のお心に恥じないように行動なさいませ。うちが取りなすことはありません」
「レティシア様への無礼な振舞いを」

私ですか?
今回の罪状に私は無関係なんですが・・。もしかして罪の理解ができてないんですか!?

「ビアードもマールも許す気はない。危害を加え、彼女の名誉を傷つけた。たとえレティシアが許しても俺達は許さない。彼女がかけられそうだった熱湯と劇薬を試すか?」

なんでリオが口を挟むんですか!?劇薬なんて飲んでないですよ。

「彼女は吐血した。治癒魔法が効かなければ命を落としていた。罪人を領に受け入れたりしない。子供の罪は親と家の罪だ。」
「そんな・・・」
「今後、レティシアや俺達の前に姿を現せば命はない。」

リオの雰囲気が冷たいです。私はそこまで大げさなことになってませんが、マオ、間違ってもその剣を抜かないでくださいよ。なんで剣に手をかけてるんでしょうか・・。執事長も短剣を探るのやめてください。空気が緊張してきました。

「横暴です。罪のない」
「貴族は好きにできるんだよ。それに罪状はいくらでもある。公爵家が理由なく平民を斬っても裁かれない。」
「御慈悲を。このままではうちの者は」
「罪がなければいくらでも働き口はある。商会がつぶれても困るものなどいない」

リオは事情に詳しいんですね。私はイーガン商会のことはよく知りません。これはどうやって収めればいいんでしょうか。

「娘は貴方を慕ってます」
「俺は何度も断った。愛人も持たない。殿下の妃になろうとして、駄目なら俺とは凄い自信だがな・・。ただそれがどうした?」

殿下が駄目で次はリオなんて凄いですわ。学園の令嬢達に知られたらいじめられます。残念ながらイーガン伯爵家なら妾ですが。イーガン様は王家のお茶会で見たことはないので候補にすら上がっていません。

「次女がお気に召さないなら長女を差し出しましょう。」
「いらない。不愉快だ。殺されたくないなら去れ」

差し出すってどういうことですか!?
リオの空気が冷たいです。帯剣してるので、ここで剣を抜かれても困ります。さっきから周りの空気も冷たいです。

「私は王家のお考えに従います。お帰りください」

何か言ってますが執事長が頷いたので大丈夫です。任せましょう。介入しません。
リオを連れて移動しましょう。ここで殺傷はやめてほしいです。リオの顔が怖いです。

「リオ様、移動しましょう」

手を引いて自室の椅子に座らせました。お菓子の箱からチョコを出します。
リオの口の中にチョコ入れます。ゆっくりと飲み込みました。これで冷たい空気は和らぐでしょうか。顔が赤いんですが、チョコからお酒の味はしませんでした。

「お茶を」

抱き寄せられました。

「ごめん」

突然の謝罪に戸惑います。ただ声は冷たくないので大丈夫でしょう。やはりチョコは凄いです。

「何がですか?」
「レオ様達と出かけた時に嫌なことをして」

忘れてました。大事なことなので警告しましょう。面倒なことも見世物もごめんです。

「次はありません。」
「それに・・・・・・。君が危害を加えられたのは」

顔を上げると見覚えのある弱った顔をしています。このリオは情緒不安定ですね。

「慣れてます。それにリオ様の所為ではありません。怪我もしてません。気にしないでください」

落ち込んでるんでしょうか。瞳が明るくなりません。心配性で手がかかりますわ。でもまだ子供ですから仕方ありません。リオに大人の余裕を見せつけるのは初めてですわ。なんだか楽しくなってきました。

「リオ様、私は強いですよ。慣れてますから気になりません。それにリオ様の所為ではありません。怪我もしてません。気にしないでください。」

「慣れてる?」

ポツリとこぼれた声に小さく笑ってしまいました。私は誹謗中傷はたくさん受けました。だてに三度もやり直しはしてませんわ。

「はい。高慢、可愛げのない女、血筋だけが取り柄の娘、人形、貴族の恥、ルーンの汚点、生き恥さらし、平凡、無力、」
「思い出さなくていいよ。そんな酷い言葉を」

リオが怒った顔になりました。本当に全く気にしてないんです。王妃教育のおかげですよ。低俗な言葉は聞き流せばいいんです。
でも二度目の人生は違う方法を知りました。大事な人の優しい言葉を思い浮かべると心が温かくなるんです。幸せな思い出で耳心地の悪い言葉が聞こえなくなります。

「まだまだたくさんありますよ。でもね、私の事を大事に想ってくれる人達がいたんです。何も持たない私を大事にして傍にいてくれる方が。私は皆が大好きでした。だから私の所為で皆が悪く言われることが嫌で苦しくてもそれ以外は何も感じなかったんです。今世は一番誹謗中傷を受けてません。公爵令嬢は誹謗中傷なんて気にしません。命を狙われるのもどこにいても変わりません。私に流れる血は高価なものですから。ですからリオ様は気にしなくていいんです。厄介な婚約者を持ってしまったことを後悔するな」
「しない。俺はレティシアの傍にいたい。絶対に許さないけど、傷つこうが病気になろうが顔がつぶれようが破棄したりしない。一生隣で生きる。国を捨てるなら絶対に追いかけるから」

言葉を遮られ物凄いことを言われました。顔がつぶれるのは痛そう・・・。リオの顔がいつもの顔に戻りました。吸い込まれるような瞳も強さを宿すところも好きでした。違うリオですけど。もう大丈夫ですね。

「変わってますわ。移動しましょうか。書庫にご案内しますか?」
「ここは?」

不思議そうに周りを見ています。気付いてなかったんですか。

「私の部屋ですが。風の本は置いてませんよ」
「読んでもいい?」

本棚に視線があります。
読まれたくないものもありますが大丈夫ですよね・・。こんなに本がありますし。

「はい」

「お嬢様、すみません」
「本読んでるから気にしないで」

心配ですが呼ばれたので離れることにしました。
孤児院の院長でした。学園の受験予定者の名簿を持ってきてくれたようです。人数に合せて勉強道具を支給しています。
ロキに試験の説明をしてませんでした。エドワード様と同学年とは知りませんでした。
ロキなら試験は簡単に合格しそうですが。魔道具の許可をとらないといけません。
クロード殿下になんて説明すれば・・・。ロキのことはお話してないんですが。頭が痛くなってきました。
必要な物の手配と孤児院長との面談は終えました。孤児院に教師を雇ってから進学率が上がりました。2組に入れる子が多いです。平民は3組が多いんですが。優秀な領民に頬が緩んでしまいます。
リオを置いてきたのを思い出して自室に戻りました。
魔封じの本を眺めていました。見られたくないものには手がついていないので安心しました。ただリオの読んでいる本の内容はよくわかりませんでした。時々、独特な文の書き方で理解できません。セリアに相談しようとも思いましたが代償が怖いのでやめました。
リオにはもっとわかりやすい魔封じの本を貸すことにしました。

「レティシア、どこかに行く予定があるの?」

夜遅くに出かけません。やはりリオはおかしいんでしょうか・・・。

「今日はもう外出予定はありませんよ。」
「そうか。出かける時は俺も誘って」
「今日は出かけませんよ。」
「ずっと傍にいるから。何があっても」

抱きしめられました。リオは情緒不安定みたいです。
私がいなくなってもエイベルをきちんと支えてくれるんでしょうか。見上げると口づけられました。
もう少しでいいのでリオとエイベルが仲良くなってくれるといいんですが・・。
ただどうすれば仲良くなれるかわかりません。私は人間関係は下手なので。
フィルに聞いたら教えてくれるでしょうか・・。
ビアードの未来が不安でたまりません。
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