追憶令嬢のやり直し

夕鈴

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第百三話 思い付き

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サラ様はビアード公爵夫人とお友達でした。
今まで知りませんでしたがうちにはサラ様のための部屋がありました。時々、うちに泊まられビアード公爵夫人がお世話しています。サラ様は研究に夢中になると生活が疎かになるそうです。時々、セリアも混ざり、いらない魔道具を押し付けられます。セリアは閃いたら利用価値のないものでも作ります。ただ作りたいから作るので、人の役に立つものよりも物騒な物や役に立たない物のほうが多いです。現在地が光る世界地図なんていりませんわ。
サラ様のお部屋には定期的に素材をお裾分けします。うちはシオン伯爵家よりも大きく部屋はたくさんあるので、サラ様達のいらない魔道具を引き取って保管しています。勝手に爆発したり暴れないかだけは確認をして。

ハンカチに魔法陣を刺繍をして魔力を流すと糸が切れてしまいます。
太い糸でも駄目でした。やはり無謀なんでしょうか。

「何してるの?座ったままでいいわ」
「お母様の命で刺繍の練習を。せっかくなので役に立つものをと魔法陣を刺繍したんですが、うまくいきません」

サラ様が糸を手に取り笑いました。

「一般的な糸は駄目よ。魔力に耐えられる糸を使わないと」

サラ様が袋の中から糸を取り出しました。

「あげるわ。気に入るなら取引も応じるわ。お礼よ」
「私は無限袋というすばらしいものをいただきました」
「大人の好意は甘えておくものよ」
「ありがとうございます」

礼をして帰るサラ様を見送りました。今日はお茶に来ただけなんですね。サラ様が訪問するとお母様は嬉しそうです。
サラ様からもらった糸で刺繍すると糸は切れずに魔法が発動しました。魔法陣入りのハンカチなら警戒されずに持ち歩けます。
武器は取り上げられてもハンカチは取り上げられません。
初めて成功したので、マオにあげました。
守りの魔法陣を仕込んで、ロキとロダ様に贈ろうかな。魔力を流すだけで発動したら便利ですよね。
糸はお小遣いで取寄せることにしました。お友達価格で多少はお安くしてもらいましたが、シオン伯爵領のものは希少性が高く高価な物ばかりです。まぁ天下のシオン一族の作品なので仕方ありませんね。
ビアード領に遊びに来たロダ様に渡すとロキとお揃いのハンカチを嬉しそうに受け取ってくれました。ロキとロダ様は二人でよく魔法の訓練をしています。
打ち解けた様子に笑みが零れます。
刺繍は苦手ですが魔法陣の刺繍は楽しいです。騎士の訓練を見ながら木陰で刺繍するのは有意義な時間です。フィルにも欲しいと言われたので、魔法陣の希望を聞いて刺繍しました。
魔法陣入りのハンカチは人気があります。ビアードの新商品として売り出せるでしょうか・・・。
でも有名になったら警戒されますかね。

***
夜会に参加するといつもリオに会うのは不思議です。声をかけられたので礼をします。

「リオ様、ごきげんよう」
「どうしていつも誘ってくれないんだよ」
「必要ありません。私はビアードとして動きますので、エスコートは不要ですわ。失礼します」

立ち去ろうとすると腰を抱かれました。

「そのビアードに俺も入れて。社交は得意だから」

強引なリオに負けてエスコートを受けました。
探し人を見つけたので、挨拶しました。

「レティシア、これ凄いよ。少量の魔力で結界が構築できる」
「少量ですか?やはり糸が凄いのでしょうか」
「酷い刺繍だけど、立派だった。今までのハンカチで一番だよ。お礼しようか?」

笑顔で酷い刺繍って酷いです。
今回は相談があったので刺繍入りのハンカチを贈りました。

「失礼ですわ。必死に練習してますのに。不要なものなのでお礼はいりません」
「いつでもありがたく受け取るよ。刺繍の腕は上がらないな」

からかわれていますが今は遊んでいる場合ではありません。

「今はシオンから取り寄せているんですが、魔力を付加しても切れない糸が欲しいです」
「わかったよ。調べてやる。企んでるのか?」

ニヤリと笑うので笑い返します。

「はい。騎士達にも人気が凄いんです。ただ他領からの取り寄せだと高価で」
「どうせならビアードで儲けたいものな」
「頼りにしてます。お願いします」

うちの傘下の伯爵子息でエイベルの友人です。大きい商会を抱える家なので、珍しいものの取り寄せは彼の家にお世話になっています。
リオが不機嫌になった気がするのは気の所為でしょうか。
気にせず役目を果たしましょう。

令嬢が近付き声を掛けられました。家格の低い令嬢が私達に声を掛けるのは無礼ですがまだ子供なので見逃しましょう。

「ビアード様、マール様をお借りしてもよろしいですか」
「どうぞ」
「貸し出されるつもりはないから用件があるならここで」
「踊ってください」
「婚約者がいるから踊らない」
「祖先は同じで親戚です。親戚なら踊れます」

凄い発想です。巻き込まれたくないので腰の手を解いて逃げたいのに逃げれません。

「レティシア、せっかくだから踊ろうか」
「はい?」

今日は踊るつもりはなかったんですが。
強引に連れ出されたので踊るしかありませんでした。リオはダンスが下手です。

「強引すぎます」
「俺は君しかエスコートしないと決めてるから」
「嘘はいけません」
「本気だよ」

無理があります。リオもやはりポンコツです。真顔のリオにたまには仕返ししましょうか。

「娘が産まれたらエスコートされないんですか?」
「え!?娘?」

赤面して動揺しているリオに笑みを堪えます。

「レティシアに似たら嫁に出さない自信がある」
「私の平凡なお顔なら嫁の貰い手に困ります?」
「平凡じゃないから。世界で一番美しく」
「リオ様、大丈夫ですか?」

訳のわからないことを言っているリオを休ませましょう。やはり頭がおかしいのでしょうか。
バルコニーに行くと抱きしめられました。

「避けるのやめてほしい」
「はい?」
「学園で俺が近くにいると逃げるだろう?」
「どうして・・・」
「俺はレティシアのことを常に考えてるから、気配でなんとなく。レティシアと過ごせる学園生活は今年だけなんだよ。立場上留年するわけには行かないし、」

意味がわかりませんがビアードに婿入りするなら留年されたら困ります。

「リオ様の傍にいると令嬢達が怖いんです」
「常に俺と一緒にいれば声を掛けられないだろう」
「ありえませんし、できません。私はまだノルマがあるので、失礼します。ゆっくり休んでいて下さい」
「俺も行くよ。手伝うよ」
「お気持ちだけ、いえ、リオ様別行動しましょう」

ポケットの中から紙を出します。

「この方々と親交を深めてきてください」

リオが紙を覗いて不思議そうな顔をしました。

「どれもビアードに必要ないだろう?」
「ルーン公爵家のためです。お母様がルーン公爵に無礼を働いたのでお詫びに繋ぎを」
「叔父上は気にしてないよ」
「普段からエイべルがお世話になっているのに、あんな無礼を・・。駄目なら自分でいきますわ。失礼します」

リオの腕を抜け出したくても逃げられません。睨むと嬉しそうに笑いました。

「一緒に行こうよ」


邪魔しないならいいかと頷きました。効率よく動くことはできませんがもともと一人で動くつもりだったので問題ありません。
時間はかかりましたが今日のノルマは達成できました。
リオは機嫌が悪くなったり良くなったりよくわかりません。私の婚約者は情緒不安定なようです。ビアードの未来が不安でたまりません。
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