追憶令嬢のやり直し

夕鈴

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第百四話 実験台

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長期休暇は終わってしまいました。
全然遊びにいけませんでした。
社交と王宮、時々視察であっという間に終わってしまいました。
箝口令がしかれたのに、私が儀式をしたことは有名になっていました。お茶会で話を聞かれるたびに笑顔でごまかしましたわ。

学園が始まってしばらくするとレオ様からもらった種は綺麗な花が咲きました。
葉っぱや茎も花と同じ色が付いています。
赤と黄色の一色しか色を持たない不思議な花ですが話したり動かないなら構いません。
ノックの音がしました。入室許可を待たずに入ってくるのは二人だけです。

「ごきげんよう。セリア」
「何を見てるの?」

セリアが花を見て驚いた顔をしました。

「これ、どうしたの!?」
「レオ様が種をくれました。」
「どうやって育てたの?」
「水を上げて、お日様に当てただけです」
「魔力を注いだり、特別なことはしてない?」
「綺麗な花を咲かせてくださいとお願いしたくらいです。どうか普通の植物であるようにと」
「私はうまく育たなかったのに」

悔しそうなセリアは色々余計なことをし過ぎたのではないでしょうか。
セリアは非常識なことしかしません。
もしくは…、

「セリアが怖かったんではありませんか?研究に夢中のギラギラしたお顔はちょっと」
「譲ってくれる?」
「レオ様からのいただきものなので」
「材料を提供するなら欲しい魔道具を低価格で作ってあげる」

セリアの魅力的な誘いに鉢を差し出しました。
レオ様ならきっと許してくれます。
ビアードとしてはありがたいです。

「どうぞ」

鉢を渡すと綺麗な笑顔を浮かべました。

「せっかくだからお茶しましょう。アップルパイを焼いたの」

生前のセリアの料理は美味しかったです。
セリアがいつの間にか用意していました。お皿の上に切り分けたアップルパイを1口食べて、私の目の前に置きました。
毒味してくれるんですか・・。
セリアは自分の分も食べているので、たぶん大丈夫でしょうか。

「どんな薬ですか?」
「仕込んでないわ。レティシアのおかげで貴重な物が色々手に入ったお礼よ」

国王陛下の容態を調べる時にちゃっかり色々入手したんでしょう。
お礼なら食べて大丈夫でしょう。
一口食べると懐かしい味に頬が緩む。
セリアは笑ってますが、これは無害な笑みなので大丈夫です。
せっかくなので懐かしい味を堪能しましょう。

「レティシアの能天気さが羨ましいわ」
「セリアにだけは言われたくないです。自由気ままなシオンのご令嬢には」
「私にも色々あるのよ。サラ様から聞いたけど治癒魔法を付加した魔石が作れるって本当?」

頷くとギラギラした目で見つめられたので、作って渡すとすぐに帰っていきました。
きっとやりたいことがあるのでしょう。
自由なセリアが羨ましい。

被験者としてしか見られていませんが、セリアの生き生きとした姿に笑ってしまいます。
今世でセリア特製のアップルパイを食べられるとは思いませんでした。
生前はよく一緒に食べてました。落ち込んだ時もこれを食べると心が軽くなります。
セリアはあまりかわりません。
せっかくなのでディーネにもアップルパイをあげることにしました。
美味しそうに食べている姿が可愛い。
ふわりと背中に重みを感じて顔をあげるとリオが抱きついていました。

「リオ様、気配もなく近づくのは」
「ごめん。少しだけ充電させて」

疲れた声に苦言を言うのはやめ、好きにさせることにしました。
今日はチョコのお菓子はありません。

「一人なら来てくれれば良かったのに」

不満そうな声で顔をあげたリオの口にセリアのアップルパイを入れました。

「不思議な味だな」

セリアのアップルパイはリンゴがたくさん使われていて美味しいです。
ただ他の材料は特殊なものが使われているので、独特の風味があるんです。リンゴと一緒に食べないと薬品感があります。
疲労回復、栄養満点って綺麗な笑みを浮かべて言っていました。

「美味しくないですか?」
「レティシアの手作り?」
「セリアです」

リオの顔が青くなりました。

「食べたのか!?」
「これは大丈夫です。何も仕込まれてません」
「その自信はどこから」
「勘です」

リオが気に入らないなら分けてあげるのはやめました。
美味しいのに。口に運ぶと懐かしい味に笑みがこぼれます。
生前のリオもセリアの作ったものには手をつけませんでした。
私の贈り物だけが嬉しいと言われた記憶が懐かしいです。王家で儀式を行ってから懐かしい記憶がよく浮かんできます。
幸せな記憶です。
最後は迎えに来てくれますか?リオ兄様。
浮遊感がして、顔を上げると抱き上げられて正面から力強い腕に包まれ、頭を撫でる手に間違えそうになり目を閉じます。

少しだけ甘えてもいいでしょうか。
幼い頃から傍にいた2人との記憶に浸ります。
セリアとリオはいつも二人の世界で話してました。
ただ特別な想いは全くないと言っていました。
昔から私が好きだったと言ってくれたリオ。
リオなんてどうでもいいと笑っていたセリア。
今世にも大事な人はたくさんいます。
でもいつまで一緒にいられるかはわかりません。
昔はずっと一緒にいられるとものと思ってました。明日が来ないなんて思いもしなかったんです。
変わらない世界で明日を迎えられるのは奇跡なんです。
でも私は気付きました。
明日がなくても、心の中の思い出だけは変わらない。それを頼りに生きていけばいいのです。

顎に手を当てられ、リオの顔が近づき触れるだけの優しい口づけをされました。
目の前のリオに向けられる熱の籠った瞳にうっとりしてしまいます。
この人は私が本当に好きなんでしょうか。
たくさんの言葉をもらいました。こんなに熱心に口説かれたのは初めてです。
一途にずっと、これからも傍にいると言う人。
再び口づけられて与えられる甘さにぼんやりとしてきました。
何度も口づけられて熱に溺れた顔のリオを見て不安がよぎりました。
セリア、本当に何も仕込んでませんよね!?
ソファに押し倒されて、確信しました。
アップルパイに仕込みましたね!!
私は毒に耐性があるから効かなかったんでしょう。

投げ飛ばそうか迷っていると扉が開きました。

「何してる!?」

エイベルがリオの肩を掴みました。
え!?
突き飛ばしました!!エイベルが怖い顔で睨んでます。

「エイベル、セリアの薬の所為です。事故ですから乱暴はやめてください」
「付き合いやめろよ」

エイベルの怒っている顔に、にっこり笑いかけます。
セリアと付き合うことはやめません。
嬉しい成果もありました。

「今後は材料を提供すれば格安で魔道具を作ってくださると取引しました。褒めてください。魔道具作りたい放題です。すでに幾つか欲しい物は考えてあるんです。エイベルは何が欲しいですか?」

「マールと二人になるときは誰か同席させろ」

セリアではなくリオですか!?
それも非常に面倒です。

「婚約者なので二人で過ごしても醜聞にはなりません。マナ達も多忙です。リオ様は神出鬼没なので、あらかじめ用意できません。居場所がわかると不思議なことを言いますし」
「追跡魔法でも仕込まれてないか?」
「ありえませんよ。授業と訓練以外は魔法の使用許可はありません。あげます」

エイベルに魔法陣を刺繍したハンカチを渡しました。

「糸の種類を変えました。気付きがあれば教えてください。エイベルも刺繍しますか?」
「しない」

不機嫌なエイベルには冗談さえも通じません。

「そうですか。どうしたんですか?」
「やるよ」

投げられたお菓子を受け取りました。

「部屋の前に置いてあった。俺は甘い物は嫌いだから」

エイベルへの贈り物はファンクラブを通すようにしてもらってます。
一度確認しないといけません。
エイベルが令嬢達に追いかけられて女嫌いになったら困ります。
クッキーを食べると、懐かしい味がしました。
食べていたら眠くなってきました。
不機嫌なエイベルは放って少しだけ仮眠を取りましょう。
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