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第百十八話中編 小さい変化
国王陛下の生誕祭も無事に終わり、監禁もされていません。今世は4年生になれるのでしょうか。
レオ様とクロード殿下の仲も少しずつですが近づいている気がします。私の手を繋いで一緒に見守りしているリオはいつまで生徒会の仕事をするんでしょうか。もう一人の役員のユーナ様は引退しています。
「リオ様、いつまで生徒会の仕事を続けるんですか?」
「卒業するまで」
「変わってますね。最後の学生生活を満喫されればよろしいのに」
「俺はレティシアと過ごせるのが一番だから。もう少し俺との時間を作って欲しいんだけど」
抱き寄せようとする手を振り払います。不機嫌そうに見られても今は見回りです。リオの遊びに付き合う暇はありません。拗ねてるお顔が可愛いらしいと思うのは内緒です。最後まで殿下のお役に立ち後輩の面倒を見たいなんて先輩の鑑でしょう。正直に言ってくださったほうがありがたみがありますのに。
「卒業式のドレスは贈っていい?」
リオにドレスを贈っていいかよく聞かれます。そして聞かれるときはすでに注文されています。ドレス合わせで見覚えのない濃紺色のドレスがありました。
「ドレスの手配をする前に聞いてください。ドレス合わせのたびに見知らぬドレスがあるのは驚きます」
「似合いそうなものがあると贈りたくなる。それに婚約者に贈り物は甲斐性だろう?」
「求めてません」
「絶対似合うから。他の男に見せるのが惜しい。俺の傍を離れないで、その日はビアードじゃなくて俺のエスコート」
「リオ様が望まれるならお傍におりますよ。ですが私よりもお話したい方がいらっしゃるでしょうに」
上機嫌にはしゃぐ姿が子供のようで笑みがこぼれます。さすがに卒業祝いのパーティで主役の卒業生の婚約者を放置してエイベルの傍にいるわけにはいきません。卒業パーティーのエスコートは婚約者が務めるのが一番多いため皆様良縁探しに夢中です。親族と参加されることもありますが、この日に婚約者との思い出を夢見る令嬢も多く、まぁ色々事情があります。フィル達にエイベルはお願いしましょう。
「リオ様」
リオのファンの令嬢に呼び止められ足を止めました。
「私は生徒会室に戻ります」
立ち去ろうとしましたが繋がれた手が解けません。
卒業が近いのでファンの令嬢達は最後の思い出作りに必死です。卒業すればほとんど会うことはない家の令嬢達は特に。上位貴族が下位貴族と顔を合わせることはほとんどありません。唯一会う可能性がある社交デビューのパーティーで会っても下位の令嬢は声を掛けることも贈り物をすることも許されませんので。
「何か?」
頬を染めリオをうっとりと見つめる令嬢をリオは先ほどまでの上機嫌が嘘のように不機嫌な声を出して視線を向けました。フラン王国の公爵子息であり紳士としては許されない態度です。そしてビアード公爵家の婚約者としても。
「リオ様、ご令嬢への態度ではありません。失礼します」
リオの手を無理矢理解いて立ち去ります。私はお邪魔ですから。
「レティシア、誤解」
焦った声を出して付いてくるリオにため息を飲み込み向き直ります。
ここまでずっと傍にいるなら他に恋人がいないことはわかります。ファンのご令嬢を好いていないことも。それにもらった言葉も嘘ではない気がします。リオは私には嘘をつかないと言ったので信じてみようと思っています。
それにうっとりとリオを見つめる令嬢の恋する気持ちもわかります。折り合いをつけるためにお付き合いして差し上げるのも年長者として必要なことだと思います。貴族令嬢は当主の命令で嫁ぐ運命からは逃れられません。
「私はリオ様の言葉を信じてます」
じっと見つめると頬を染めて髪をかき乱してます。紳士としてあるまじき行為ですがまだ子供なので仕方ありませんわね。
「す、すぐ追いかけるから」
「会議にリオ様は出なくて平気ですよ」
「俺は残り少ない学園生活はレティシアと過ごすと決めてるから。帰りも送るから」
いつも変わらない言葉に小さく笑ってしまいました。
「わかりました。しっかりお相手してさしあげてくださいませ」
リオの機嫌が直った気がします。眼鏡があってもリオの機嫌はわかりやすいです。
私は二人に礼をし立ち去りました。
生徒会室に行き、レオ様と話しているといつの間にか役員が揃っていました。6年生はもう引退しているのでいなくても会議が始まります。卒業式の準備と来年度に向けての話し合いです。
また生徒会が忙しい季節がやってきましたわ。そしてビアード公爵令嬢としても当分は忙しい日が続くでしょう。
会議が終わったので私はカーチス様と打ち合わせをしています。
生徒会では卒業する役員のために小さいパーティ―を開きます。毎年3年生が任されるので今年は私とカーチス様が担当です。まだまだ日付はありますが、事前に用意だけは整えておきます。贈り物と軽食と飲物の手配ですが、できれば喜んでいただけるものにしたいです。リオとユーナ様にはお世話になりましたので特に。
「マール様はこんな会よりもビアードと過ごさせろって言わないか?」
面白い冗談に笑みが溢れます。リオは後輩思いですからきっとカーチスさまと過ごしたいと思います。自分の育て上げた後輩を見て誇らしい気持ちになるかもしれません。私はベリーやロキの成長が嬉しくてたまりませんもの。
「ありえませんよ。カーチス様の成長を見ていただき感動していただきましょう。私がカトリーヌ様にいただいたように餞の言葉をもらえるかもしれませんよ」
「本気?」
リオは素直になれない所がありますので機会を作ってあげましょう。マール公爵家の皆様は留守が多いため優しく末っ子のリオは気を使って言えないところがあります。素直に寂しいと言えない可愛らしいところがありますから。後輩との素敵な時間を贈れば忘れられない一時になるでしょう。カトリーヌ様の夢に耳を傾け過ごした夜は私にとっては良い思い出ですわ。
「生徒会のお見送りは大事な伝統ですから。ペンと花束を用意しましょうか。花はリオ様へはカーチス様が選んでくださいませ。私はユーナ様のものをご用意しますわ。せっかくなので両殿下の魔石をいただいてペンに埋め込みましょうか。両殿下と生徒会で共に過ごせたのは臣下としては嬉しいですよね。それと………」
カーチス様と詳細を決めました。作業分担もバッチリです。
気づくと生徒会室にいるのは私達だけでした。外は暗いのでそろそろ帰らないといけません。カーチス様と玄関に行くとリオがいませんでした。いつも帰りは送ってもらっていたので不思議です。
「ビアード、送るよ」
「大丈夫ですよ」
「暗いから」
カーチス様の言葉に甘えることにしました。カーチス様に寮まで送ってもらうのは初めてです。この暗さならカーチス様のファンに目をつけられることはないでしょう。カーチス様はいつも明るく楽しい話をしてくださりいつも笑ってしまいます。寮に帰ると生前のクラム様やニコル様との思い出が思い浮かび懐かしい気持ちになりました。部屋にはルーンの花の香りが漂い、リオからもらったオルゴールを開くと懐かしい曲に心がじんわりと温かくなりました。音楽の世界は偉大です。マナの淹れてくれたお茶を飲みながら、目の前に広がる優しい世界での生き方に思考を巡らせます。
レオ様とクロード殿下の仲も少しずつですが近づいている気がします。私の手を繋いで一緒に見守りしているリオはいつまで生徒会の仕事をするんでしょうか。もう一人の役員のユーナ様は引退しています。
「リオ様、いつまで生徒会の仕事を続けるんですか?」
「卒業するまで」
「変わってますね。最後の学生生活を満喫されればよろしいのに」
「俺はレティシアと過ごせるのが一番だから。もう少し俺との時間を作って欲しいんだけど」
抱き寄せようとする手を振り払います。不機嫌そうに見られても今は見回りです。リオの遊びに付き合う暇はありません。拗ねてるお顔が可愛いらしいと思うのは内緒です。最後まで殿下のお役に立ち後輩の面倒を見たいなんて先輩の鑑でしょう。正直に言ってくださったほうがありがたみがありますのに。
「卒業式のドレスは贈っていい?」
リオにドレスを贈っていいかよく聞かれます。そして聞かれるときはすでに注文されています。ドレス合わせで見覚えのない濃紺色のドレスがありました。
「ドレスの手配をする前に聞いてください。ドレス合わせのたびに見知らぬドレスがあるのは驚きます」
「似合いそうなものがあると贈りたくなる。それに婚約者に贈り物は甲斐性だろう?」
「求めてません」
「絶対似合うから。他の男に見せるのが惜しい。俺の傍を離れないで、その日はビアードじゃなくて俺のエスコート」
「リオ様が望まれるならお傍におりますよ。ですが私よりもお話したい方がいらっしゃるでしょうに」
上機嫌にはしゃぐ姿が子供のようで笑みがこぼれます。さすがに卒業祝いのパーティで主役の卒業生の婚約者を放置してエイベルの傍にいるわけにはいきません。卒業パーティーのエスコートは婚約者が務めるのが一番多いため皆様良縁探しに夢中です。親族と参加されることもありますが、この日に婚約者との思い出を夢見る令嬢も多く、まぁ色々事情があります。フィル達にエイベルはお願いしましょう。
「リオ様」
リオのファンの令嬢に呼び止められ足を止めました。
「私は生徒会室に戻ります」
立ち去ろうとしましたが繋がれた手が解けません。
卒業が近いのでファンの令嬢達は最後の思い出作りに必死です。卒業すればほとんど会うことはない家の令嬢達は特に。上位貴族が下位貴族と顔を合わせることはほとんどありません。唯一会う可能性がある社交デビューのパーティーで会っても下位の令嬢は声を掛けることも贈り物をすることも許されませんので。
「何か?」
頬を染めリオをうっとりと見つめる令嬢をリオは先ほどまでの上機嫌が嘘のように不機嫌な声を出して視線を向けました。フラン王国の公爵子息であり紳士としては許されない態度です。そしてビアード公爵家の婚約者としても。
「リオ様、ご令嬢への態度ではありません。失礼します」
リオの手を無理矢理解いて立ち去ります。私はお邪魔ですから。
「レティシア、誤解」
焦った声を出して付いてくるリオにため息を飲み込み向き直ります。
ここまでずっと傍にいるなら他に恋人がいないことはわかります。ファンのご令嬢を好いていないことも。それにもらった言葉も嘘ではない気がします。リオは私には嘘をつかないと言ったので信じてみようと思っています。
それにうっとりとリオを見つめる令嬢の恋する気持ちもわかります。折り合いをつけるためにお付き合いして差し上げるのも年長者として必要なことだと思います。貴族令嬢は当主の命令で嫁ぐ運命からは逃れられません。
「私はリオ様の言葉を信じてます」
じっと見つめると頬を染めて髪をかき乱してます。紳士としてあるまじき行為ですがまだ子供なので仕方ありませんわね。
「す、すぐ追いかけるから」
「会議にリオ様は出なくて平気ですよ」
「俺は残り少ない学園生活はレティシアと過ごすと決めてるから。帰りも送るから」
いつも変わらない言葉に小さく笑ってしまいました。
「わかりました。しっかりお相手してさしあげてくださいませ」
リオの機嫌が直った気がします。眼鏡があってもリオの機嫌はわかりやすいです。
私は二人に礼をし立ち去りました。
生徒会室に行き、レオ様と話しているといつの間にか役員が揃っていました。6年生はもう引退しているのでいなくても会議が始まります。卒業式の準備と来年度に向けての話し合いです。
また生徒会が忙しい季節がやってきましたわ。そしてビアード公爵令嬢としても当分は忙しい日が続くでしょう。
会議が終わったので私はカーチス様と打ち合わせをしています。
生徒会では卒業する役員のために小さいパーティ―を開きます。毎年3年生が任されるので今年は私とカーチス様が担当です。まだまだ日付はありますが、事前に用意だけは整えておきます。贈り物と軽食と飲物の手配ですが、できれば喜んでいただけるものにしたいです。リオとユーナ様にはお世話になりましたので特に。
「マール様はこんな会よりもビアードと過ごさせろって言わないか?」
面白い冗談に笑みが溢れます。リオは後輩思いですからきっとカーチスさまと過ごしたいと思います。自分の育て上げた後輩を見て誇らしい気持ちになるかもしれません。私はベリーやロキの成長が嬉しくてたまりませんもの。
「ありえませんよ。カーチス様の成長を見ていただき感動していただきましょう。私がカトリーヌ様にいただいたように餞の言葉をもらえるかもしれませんよ」
「本気?」
リオは素直になれない所がありますので機会を作ってあげましょう。マール公爵家の皆様は留守が多いため優しく末っ子のリオは気を使って言えないところがあります。素直に寂しいと言えない可愛らしいところがありますから。後輩との素敵な時間を贈れば忘れられない一時になるでしょう。カトリーヌ様の夢に耳を傾け過ごした夜は私にとっては良い思い出ですわ。
「生徒会のお見送りは大事な伝統ですから。ペンと花束を用意しましょうか。花はリオ様へはカーチス様が選んでくださいませ。私はユーナ様のものをご用意しますわ。せっかくなので両殿下の魔石をいただいてペンに埋め込みましょうか。両殿下と生徒会で共に過ごせたのは臣下としては嬉しいですよね。それと………」
カーチス様と詳細を決めました。作業分担もバッチリです。
気づくと生徒会室にいるのは私達だけでした。外は暗いのでそろそろ帰らないといけません。カーチス様と玄関に行くとリオがいませんでした。いつも帰りは送ってもらっていたので不思議です。
「ビアード、送るよ」
「大丈夫ですよ」
「暗いから」
カーチス様の言葉に甘えることにしました。カーチス様に寮まで送ってもらうのは初めてです。この暗さならカーチス様のファンに目をつけられることはないでしょう。カーチス様はいつも明るく楽しい話をしてくださりいつも笑ってしまいます。寮に帰ると生前のクラム様やニコル様との思い出が思い浮かび懐かしい気持ちになりました。部屋にはルーンの花の香りが漂い、リオからもらったオルゴールを開くと懐かしい曲に心がじんわりと温かくなりました。音楽の世界は偉大です。マナの淹れてくれたお茶を飲みながら、目の前に広がる優しい世界での生き方に思考を巡らせます。
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