242 / 286
兄の呟き1-3
しおりを挟む
リオは目が覚めると発狂し、食事も取れないので拘束し魔法で眠らせルーン公爵の魔石を吸わせて生命維持をしていた。
母上は叔母上の反抗期を知っていたためリオにも反抗期が来たと思い込んでいたため叔父上の診断に驚いていた。レティシアが関わると物騒な思考の持ち主になるリオに慣れていたため多くのものが気付かなかった。叔父上に感謝している。リオの教育に頭を悩ませずにすむのはありがたい。
言葉が通じない自分に執着心の強い令嬢の諦めると言う言葉を信じて怪しい物を口に入れた危機管理ができていないリオのバカに自業自得と良い薬になるかしらと冷たく眺めているエレン。
レイヤは俺よりも拘束の魔法が苦手なので俺達の仕事を引き受け出掛けている。リオのことは兄上達が適任だから自分に出来ることを引き受けると動き回る出来た弟だ。
魔力の強いリオを取り押さえられるのは母上と俺と父上だけ。俺達が拘束している間にエレンが眠りの魔法を。俺とエレンがリオの部屋で仕事をしながら付き添うのが一番多い。
リオの世話に嫌気がさしたエレンが治癒魔法の得意なレティシアを呼んで任せるのはどうかという案は父上が許さなかった。
発狂したリオを見せるのはトラウマになり、これ以上マールがレティシアを傷つけるのは許されないと。
リオも見られたくないだろうと言うレイヤの言葉にエレンはその場では静かに頷いた。
二人っきりになりエレンがリオに魔石を吸収させながらため息をつく。
「レティシアがリオ達を見る目は冷たかったわ。公爵子息として醜態を曝したリオの発狂する姿を見ても何も感じないでしょうに」
「怒っているかの?」
「いいえ。リオの気持ちに一切興味がなく恋人が何人いようとも何も思わない。ただ淑女として相応しく振舞ってほしいとリオのファンに言葉を掛けていたわ。レイヤ様も義父様も令嬢に夢を見てるわね」
叔父上が頻繁に訪問し、薬が抜けて発狂がおさまったリオは正気を失った。
誰が話しかけても殴っても虚空を見つめているだけ。食事も取らず、叔父上の魔石で生命維持をして魔法をかけて睡眠をとらせる毎日。
マールとルーンで薬を調べていても過剰投与された未知の薬は解析できずに解毒薬もできていない。憶測で依存性があることしかわからず怪しい魔導士は捕まらない。
レイヤと母上が途方に暮れている。
「義父様、レティシアに頼みましょう。リオの酷い言葉なんて気にしませんよ。自分に嫌がらせをした令嬢を友人にするレティシアです。彼女は更生させる天才です」
「事情を説明できない」
「話せばいいではありませんか。惚れ薬を飲んでおかしくなったっと。公言するようなおめでたい頭の持ち主ではありません。どんなに探りをいれても儀式も王家の事件のことも何も教えてくれませんでした。リオはすぐに話してくれたのに」
エレンが物足りなそうに話すのはアリア様の事件の話。
精霊の審議が行われた。精霊の審議は王族の罪への再調査を願うためのもの。公式に王族が罰を受けた記録はなくても、廃人になったアリア様に記憶晒しが使われたことは明白だった。
箝口令は敷かれても噂を集めれば予想は簡単。一時的に閉鎖された王宮。王宮閉鎖は王族の御身の為。閉鎖が解除されるとすぐに王宮に行ったリオ。
レティシアの王宮魔導士と神官と研究者へのスカウトの嵐にリオが対応していたのを見れば儀式をしたのが誰かなんてバカでもわかる。そしてレティシア以外のことでは自主的に動かないリオがアリア様を調べていたから余計に確証が持てた。
リオに聞くとあっさりアリア様の命令で陛下暗殺未遂の冤罪によりサラ様とレオ殿下が処刑されそうになりレティシアが止めたと話した。
レティシアは公務でしたと笑うだけ。情報を持っていると揺さぶりをかけても効果がなく、とぼけるレティシアにエレンが悔しがっていた。レティシアに負けたと悔しがる姿は愉快で美味しい酒が飲めた。エレンにとって初めての敗北らしく、さらにレティシアを気に入っている。
「不誠実でないことを伝えないとリオの初恋は終わりですよ。レティシアが気にしなくても、ビアードや他の貴族は許さない。レティシアがリオを援護しない限り、いずれ婚約破棄されます。苦しんでやっと薬が体から抜けたのにリオが現実を知れば本当の意味で壊れるかもしれません」
エレンはレティシアをマールに欲しがり必死に取り込もうと父上達を説得している。淑やかなエレンが野心家だとは父上達は知らず、外面に騙されている。
伯爵令嬢の記憶からリオとレティシアの様子を見たエレンは完全なリオの一方通行にため息をついていた。
諜報員からの報告書もレティシアの意思で婚約の継続はありえないと物語っている。
堂々と恋人を大事にするリオを一度も諫めることもせず関わらないことを選んだレティシア。リオとの仲を自慢されても一切動じない。問題を起こさなくなったリオのファンの動きを見た瞬間から一切の興味を失い、リオが学園にいないことも気づいていない。友達枠にさえ入っていないリオは婚約者の肩書がなければ他人扱いだろう。
エレンのリオを心配するフリをした渾身の説得で、父上達はレティシアを頼ることにした。リオに言葉が届く可能性が高いのが誰かなんて口に出さずとも思い浮かべる人物は一緒だろう。
どんな時も俺の予想を超えるのがレティシアだった。
レティシアはシオン嬢を連れて訪問した。
母上がリオがレティシアが一番好きという言葉を聞いて珍しく困惑した顔をしても曖昧に頷きながら、シオン嬢と一緒に面会を了承してくれた。シオン嬢は押収した薬草を笑顔で分けて欲しいと言うので母上が渡していた。シオン嬢なら何かわかるかもしれない。
しばらくすると部屋から出てきたのはレティシアだけ。
真っ赤な目で笑みを浮かべて母上と面会している。
「もう大丈夫だと思います。セリアが診察しています。もし婚約破棄を望まれるなら、ビアードが全て責任をおいます。どうか私達のことは気にせず、マール公爵家とリオ様の最善を選んでください。また私のことは話さないでください。失礼します」
笑顔で礼をして立ち去るレティシアを部屋から出てきたシオン嬢が追いかけるのを母上が呼び止めた。
「シオン様、このたびは」
「礼はいりません。貴重な薬草もいただきましたので。失礼します」
相手の都合を考えないのがシオン嬢だ。大金を積まれても懇願されても興味がなければ頷かない。
レティシアのためなら動いてくれるのか。
顔を見に行くとリオは正気に戻っていたがレティシアの記憶を失っていた。
しばらく家で様子を見たがレティシアの記憶がないこと以外はいつもと変わらない。
さり気なく手を抜くやる気のない昔のリオに戻ったけど。
****
リオの記憶喪失の原因は叔父上が調べてもわからなかった。
母上が試しにレティシアを呼び出しリオと面会させた。
面会している二人の様子をエレンと眺めていた。
静かにお茶を飲んでいるレティシアを気まずそうな顔で見るリオ。
「ごめん。覚えてないんだ」
「気にしないでください」
微笑んでいるレティシアの言葉に驚いているリオはどんな答えを期待していたんだろうか。リオの第一声はバカなんだろうか。
「俺と君は」
「生徒会の先輩と後輩です。それ以上も以下もありません」
言い淀むリオに微笑みながら静かに答えるレティシア。知人には数えられているのか。
「婚約者って」
「事情がありました。ただその件も片付きました。責任はすべてビアードが引き受けます。いつでも破棄の申し出があれば話してくださいませ」
レティシアのことが気になるのに素直に言えないリオ。レティシアの笑顔で容赦のない言葉に固まっている。
「君はいいの?」
「マール様にお任せします」
しぼりだした言葉。いつもの聞き上手の影もなくリオの欲しい言葉を口に出さないのはわざとだろうか。
「そうか」
「私は失礼しますね。ご馳走様でした。お大事になさってください」
社交の笑みを浮かべているレティシアとバカ正直な弟。立ち上がったレティシアに縋るような顔をしているのは無自覚だろうか。
「リオの初恋は報われたわ。でもリオが動かないと終わるわ。今のリオはビアードにとって価値はないもの」
「リオは明らかにレティシアのことを気にしてるよな」
「ええ。記憶がないって正直に言うとは……。恋愛音痴よね。他の事はそつなくこなすのに。そろそろ限界だと思うわ。リオが復学してすぐに婚約破棄の打診があるかしら。せっかくだから送ってあげて」
リオの部屋の扉の前に迎えに行き、出てきたレティシアに笑いかける。
「レティシア、少しだけ付き合ってくれないか?」
珍しく目を丸くして驚いているレティシアに手を差し出す。微笑んでゆっくりと手を重ねた。
「リオは迷惑か?」
「カナト様?」
カナ兄様からカナト様に戻ったのはもう婚約破棄されると予想してるんだろうか。綺麗な笑みを浮かべて首を傾げる仕草の意図はわからない。
「リオは付き纏っていただろう?」
「否定はしません。ですが共に過ごす時間は苦ではありませんでした」
「辛くないか?」
「私は健やかに過ごしていただけるだけで満足してます。きっとリオ様は自分を責めるので私のことは話さないでくださいませ」
「そうか。世話をかけて悪いな」
笑みを崩さす恨み言も言わなかった。馬車まで送るといつもの綺麗な礼をして乗り込んだ。
リオはレティシアのことを語らせれば止まらなかった。
呆れるほど優しく、いつも人のことばかりで、自分のことに無頓着。
冷たくされ、自分を忘れた婚約者。よく思いやれるよな。もしエレンの言うようにレティシアがリオへ好意があるなら余計に今のような行動はできない。感情的に責めるか、必死に婚約を継続させるように振舞うだろう。
リオに聞かれても自分のことを詳しく話さないのは思い出さなくていいって本気で思っているんだよな。あんなに振り回されたら文句の一つも言いたいだろうに。
「兄上、彼女は」
「馬車まで送っただけだ」
「そうですか」
部屋から出てきたリオの顔は浮かない。俺が送る姿を見ていたのか。気になるなら追いかければいいのに。
それ以上はリオがレティシアのことを聞いてくることはなかった。
レティシアの記憶はないが体は問題ないので父上が学園に復帰させる準備を始めた。
母上は叔母上の反抗期を知っていたためリオにも反抗期が来たと思い込んでいたため叔父上の診断に驚いていた。レティシアが関わると物騒な思考の持ち主になるリオに慣れていたため多くのものが気付かなかった。叔父上に感謝している。リオの教育に頭を悩ませずにすむのはありがたい。
言葉が通じない自分に執着心の強い令嬢の諦めると言う言葉を信じて怪しい物を口に入れた危機管理ができていないリオのバカに自業自得と良い薬になるかしらと冷たく眺めているエレン。
レイヤは俺よりも拘束の魔法が苦手なので俺達の仕事を引き受け出掛けている。リオのことは兄上達が適任だから自分に出来ることを引き受けると動き回る出来た弟だ。
魔力の強いリオを取り押さえられるのは母上と俺と父上だけ。俺達が拘束している間にエレンが眠りの魔法を。俺とエレンがリオの部屋で仕事をしながら付き添うのが一番多い。
リオの世話に嫌気がさしたエレンが治癒魔法の得意なレティシアを呼んで任せるのはどうかという案は父上が許さなかった。
発狂したリオを見せるのはトラウマになり、これ以上マールがレティシアを傷つけるのは許されないと。
リオも見られたくないだろうと言うレイヤの言葉にエレンはその場では静かに頷いた。
二人っきりになりエレンがリオに魔石を吸収させながらため息をつく。
「レティシアがリオ達を見る目は冷たかったわ。公爵子息として醜態を曝したリオの発狂する姿を見ても何も感じないでしょうに」
「怒っているかの?」
「いいえ。リオの気持ちに一切興味がなく恋人が何人いようとも何も思わない。ただ淑女として相応しく振舞ってほしいとリオのファンに言葉を掛けていたわ。レイヤ様も義父様も令嬢に夢を見てるわね」
叔父上が頻繁に訪問し、薬が抜けて発狂がおさまったリオは正気を失った。
誰が話しかけても殴っても虚空を見つめているだけ。食事も取らず、叔父上の魔石で生命維持をして魔法をかけて睡眠をとらせる毎日。
マールとルーンで薬を調べていても過剰投与された未知の薬は解析できずに解毒薬もできていない。憶測で依存性があることしかわからず怪しい魔導士は捕まらない。
レイヤと母上が途方に暮れている。
「義父様、レティシアに頼みましょう。リオの酷い言葉なんて気にしませんよ。自分に嫌がらせをした令嬢を友人にするレティシアです。彼女は更生させる天才です」
「事情を説明できない」
「話せばいいではありませんか。惚れ薬を飲んでおかしくなったっと。公言するようなおめでたい頭の持ち主ではありません。どんなに探りをいれても儀式も王家の事件のことも何も教えてくれませんでした。リオはすぐに話してくれたのに」
エレンが物足りなそうに話すのはアリア様の事件の話。
精霊の審議が行われた。精霊の審議は王族の罪への再調査を願うためのもの。公式に王族が罰を受けた記録はなくても、廃人になったアリア様に記憶晒しが使われたことは明白だった。
箝口令は敷かれても噂を集めれば予想は簡単。一時的に閉鎖された王宮。王宮閉鎖は王族の御身の為。閉鎖が解除されるとすぐに王宮に行ったリオ。
レティシアの王宮魔導士と神官と研究者へのスカウトの嵐にリオが対応していたのを見れば儀式をしたのが誰かなんてバカでもわかる。そしてレティシア以外のことでは自主的に動かないリオがアリア様を調べていたから余計に確証が持てた。
リオに聞くとあっさりアリア様の命令で陛下暗殺未遂の冤罪によりサラ様とレオ殿下が処刑されそうになりレティシアが止めたと話した。
レティシアは公務でしたと笑うだけ。情報を持っていると揺さぶりをかけても効果がなく、とぼけるレティシアにエレンが悔しがっていた。レティシアに負けたと悔しがる姿は愉快で美味しい酒が飲めた。エレンにとって初めての敗北らしく、さらにレティシアを気に入っている。
「不誠実でないことを伝えないとリオの初恋は終わりですよ。レティシアが気にしなくても、ビアードや他の貴族は許さない。レティシアがリオを援護しない限り、いずれ婚約破棄されます。苦しんでやっと薬が体から抜けたのにリオが現実を知れば本当の意味で壊れるかもしれません」
エレンはレティシアをマールに欲しがり必死に取り込もうと父上達を説得している。淑やかなエレンが野心家だとは父上達は知らず、外面に騙されている。
伯爵令嬢の記憶からリオとレティシアの様子を見たエレンは完全なリオの一方通行にため息をついていた。
諜報員からの報告書もレティシアの意思で婚約の継続はありえないと物語っている。
堂々と恋人を大事にするリオを一度も諫めることもせず関わらないことを選んだレティシア。リオとの仲を自慢されても一切動じない。問題を起こさなくなったリオのファンの動きを見た瞬間から一切の興味を失い、リオが学園にいないことも気づいていない。友達枠にさえ入っていないリオは婚約者の肩書がなければ他人扱いだろう。
エレンのリオを心配するフリをした渾身の説得で、父上達はレティシアを頼ることにした。リオに言葉が届く可能性が高いのが誰かなんて口に出さずとも思い浮かべる人物は一緒だろう。
どんな時も俺の予想を超えるのがレティシアだった。
レティシアはシオン嬢を連れて訪問した。
母上がリオがレティシアが一番好きという言葉を聞いて珍しく困惑した顔をしても曖昧に頷きながら、シオン嬢と一緒に面会を了承してくれた。シオン嬢は押収した薬草を笑顔で分けて欲しいと言うので母上が渡していた。シオン嬢なら何かわかるかもしれない。
しばらくすると部屋から出てきたのはレティシアだけ。
真っ赤な目で笑みを浮かべて母上と面会している。
「もう大丈夫だと思います。セリアが診察しています。もし婚約破棄を望まれるなら、ビアードが全て責任をおいます。どうか私達のことは気にせず、マール公爵家とリオ様の最善を選んでください。また私のことは話さないでください。失礼します」
笑顔で礼をして立ち去るレティシアを部屋から出てきたシオン嬢が追いかけるのを母上が呼び止めた。
「シオン様、このたびは」
「礼はいりません。貴重な薬草もいただきましたので。失礼します」
相手の都合を考えないのがシオン嬢だ。大金を積まれても懇願されても興味がなければ頷かない。
レティシアのためなら動いてくれるのか。
顔を見に行くとリオは正気に戻っていたがレティシアの記憶を失っていた。
しばらく家で様子を見たがレティシアの記憶がないこと以外はいつもと変わらない。
さり気なく手を抜くやる気のない昔のリオに戻ったけど。
****
リオの記憶喪失の原因は叔父上が調べてもわからなかった。
母上が試しにレティシアを呼び出しリオと面会させた。
面会している二人の様子をエレンと眺めていた。
静かにお茶を飲んでいるレティシアを気まずそうな顔で見るリオ。
「ごめん。覚えてないんだ」
「気にしないでください」
微笑んでいるレティシアの言葉に驚いているリオはどんな答えを期待していたんだろうか。リオの第一声はバカなんだろうか。
「俺と君は」
「生徒会の先輩と後輩です。それ以上も以下もありません」
言い淀むリオに微笑みながら静かに答えるレティシア。知人には数えられているのか。
「婚約者って」
「事情がありました。ただその件も片付きました。責任はすべてビアードが引き受けます。いつでも破棄の申し出があれば話してくださいませ」
レティシアのことが気になるのに素直に言えないリオ。レティシアの笑顔で容赦のない言葉に固まっている。
「君はいいの?」
「マール様にお任せします」
しぼりだした言葉。いつもの聞き上手の影もなくリオの欲しい言葉を口に出さないのはわざとだろうか。
「そうか」
「私は失礼しますね。ご馳走様でした。お大事になさってください」
社交の笑みを浮かべているレティシアとバカ正直な弟。立ち上がったレティシアに縋るような顔をしているのは無自覚だろうか。
「リオの初恋は報われたわ。でもリオが動かないと終わるわ。今のリオはビアードにとって価値はないもの」
「リオは明らかにレティシアのことを気にしてるよな」
「ええ。記憶がないって正直に言うとは……。恋愛音痴よね。他の事はそつなくこなすのに。そろそろ限界だと思うわ。リオが復学してすぐに婚約破棄の打診があるかしら。せっかくだから送ってあげて」
リオの部屋の扉の前に迎えに行き、出てきたレティシアに笑いかける。
「レティシア、少しだけ付き合ってくれないか?」
珍しく目を丸くして驚いているレティシアに手を差し出す。微笑んでゆっくりと手を重ねた。
「リオは迷惑か?」
「カナト様?」
カナ兄様からカナト様に戻ったのはもう婚約破棄されると予想してるんだろうか。綺麗な笑みを浮かべて首を傾げる仕草の意図はわからない。
「リオは付き纏っていただろう?」
「否定はしません。ですが共に過ごす時間は苦ではありませんでした」
「辛くないか?」
「私は健やかに過ごしていただけるだけで満足してます。きっとリオ様は自分を責めるので私のことは話さないでくださいませ」
「そうか。世話をかけて悪いな」
笑みを崩さす恨み言も言わなかった。馬車まで送るといつもの綺麗な礼をして乗り込んだ。
リオはレティシアのことを語らせれば止まらなかった。
呆れるほど優しく、いつも人のことばかりで、自分のことに無頓着。
冷たくされ、自分を忘れた婚約者。よく思いやれるよな。もしエレンの言うようにレティシアがリオへ好意があるなら余計に今のような行動はできない。感情的に責めるか、必死に婚約を継続させるように振舞うだろう。
リオに聞かれても自分のことを詳しく話さないのは思い出さなくていいって本気で思っているんだよな。あんなに振り回されたら文句の一つも言いたいだろうに。
「兄上、彼女は」
「馬車まで送っただけだ」
「そうですか」
部屋から出てきたリオの顔は浮かない。俺が送る姿を見ていたのか。気になるなら追いかければいいのに。
それ以上はリオがレティシアのことを聞いてくることはなかった。
レティシアの記憶はないが体は問題ないので父上が学園に復帰させる準備を始めた。
6
あなたにおすすめの小説
ざまぁはハッピーエンドのエンディング後に
ララ
恋愛
私は由緒正しい公爵家に生まれたシルビア。
幼い頃に結ばれた婚約により時期王妃になることが確定している。
だからこそ王妃教育も精一杯受け、王妃にふさわしい振る舞いと能力を身につけた。
特に婚約者である王太子は少し?いやかなり頭が足りないのだ。
余計に私が頑張らなければならない。
王妃となり国を支える。
そんな確定した未来であったはずなのにある日突然破られた。
学園にピンク色の髪を持つ少女が現れたからだ。
なんとその子は自身をヒロイン?だとか言って婚約者のいるしかも王族である王太子に馴れ馴れしく接してきた。
何度かそれを諌めるも聞く耳を持たず挙句の果てには私がいじめてくるだなんだ言って王太子に泣きついた。
なんと王太子は彼女の言葉を全て鵜呑みにして私を悪女に仕立て上げ国外追放をいい渡す。
はぁ〜、一体誰の悪知恵なんだか?
まぁいいわ。
国外追放喜んでお受けいたします。
けれどどうかお忘れにならないでくださいな?
全ての責はあなたにあると言うことを。
後悔しても知りませんわよ。
そう言い残して私は毅然とした態度で、内心ルンルンとこの国を去る。
ふふっ、これからが楽しみだわ。
悪役令嬢の逆襲
すけさん
恋愛
断罪される1年前に前世の記憶が甦る!
前世は三十代の子持ちのおばちゃんだった。
素行は悪かった悪役令嬢は、急におばちゃんチックな思想が芽生え恋に友情に新たな一面を見せ始めた事で、断罪を回避するべく奮闘する!
私と義弟の安全は確保出来たので、ゆっくり恋人を探そうと思います
織り子
恋愛
18歳で処刑された大公家の令嬢、セレノア・グレイス。
目を覚ますと――あの日の6年前に戻っていた。
まだ無邪気な弟ルシアン、笑う両親。
再び訪れる“反逆の運命”を知るのは、彼女だけ。
――大公家に産まれた時点で、自由な恋愛は諦めていた。だが、本当は他の令嬢達の話を聞くたびにうらやましかった。人生1度きり。もう少し花のある人生を送りたかった。一度でいいから、恋愛をしてみたい。
限られた6年の中で、セレノアは動き出す。
愛する家族を守るため、未来を変えるために。
そして本当の願い(恋愛)を叶えるために。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
愛する人は、貴方だけ
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。
天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。
公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。
平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。
やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。
しつこい公爵が、わたしを逃がしてくれない
千堂みくま
恋愛
細々と仕事をして生きてきた薬師のノアは、経済的に追い詰められて仕方なく危険な仕事に手を出してしまう。それは因縁の幼なじみ、若き公爵ジオルドに惚れ薬を盛る仕事だった。
失敗して捕らえられたノアに、公爵は「俺の人生を狂わせた女」などと言い、変身魔術がかけられたチョーカーを付けて妙に可愛がる。
ジオルドの指示で王子の友人になったノアは、薬師として成長しようと決意。
公爵から逃げたいノアと、自覚のない思いに悩む公爵の話。
※毎午前中に数話更新します。
彼女が高級娼婦と呼ばれる理由~元悪役令嬢の戦慄の日々~
プラネットプラント
恋愛
婚約者である王子の恋人をいじめたと婚約破棄され、実家から縁を切られたライラは娼館で暮らすことになる。だが、訪れる人々のせいでライラは怯えていた。
※完結済。
良くある事でしょう。
r_1373
恋愛
テンプレートの様に良くある悪役令嬢に生まれ変っていた。
若い頃に死んだ記憶があれば早々に次の道を探したのか流行りのざまぁをしたのかもしれない。
けれど酸いも甘いも苦いも経験して産まれ変わっていた私に出来る事は・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる