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閑話 伯爵令嬢の夜会 ラピス視点
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ごきげんよう。クラウン伯爵家次女のラピスです。
クラウン伯爵家はビアード公爵家の分家。王族のためにあるビアードの領主一族を第一にお仕えするために名前を変えた一族です。兄はいずれ近衛騎士団入りするエイベル様に仕えるために近衛騎士団に所属し励んでおります。数か月前にレティシア様の怒りに触れてビアード公爵家の地獄の訓練を受けました。ボロボロになりましたが自業自得です。どんな時もレティシア様の教えに従うのが私達の務めです。私達が剣を捧げるのは王族ではなくレティシア様です。大人の事情なんて知りません。近衛騎士として処分はありませんでしたが、ビアード家門内で降格され減俸されても誰も同情しませんでした。
幼い頃よりビアード公爵家に仕えるように躾けられていた私はよく兄の訓練に付いてきていました。ビアードは領主一族に危害を加えないなら訓練の見学は自由です。お揃いのローブを着て、村を襲う魔物を瞬殺するビアード兄妹は格好良くビアード公爵家に仕えられる自分の人生に感謝を捧げました。
「社交デビューは緊張しますがご安心してください。年長者の務めを私は果たすと約束しますわ」
3歳しか変わらないのに、誰よりも美しく微笑むお顔はビアードの至宝。私の友人のネリアが転んでジュースをひっくり返してもすぐに駆けつけて笑顔で事を収めてくれました。私達の社交デビューではレティシア様は優しくお祝いの言葉を掛けてくださり、王族への挨拶が終わった後には美しい笑顔で私を褒めてくれました。私はビアードの至宝を守りお役に立つためにレティシア様を見守って武術を始めました。
私達はレティシア様を尊敬し、誰よりも素晴らしい令嬢と知っています。ですがレティシア様に醜い言葉をかける不届き者もいます。
同じ爵位でも文官貴族は武門貴族を見下しています。
武門貴族と文官貴族が仲が悪いのは社交界の常識です。
武門伯爵家の私は姉が文官一族の侯爵子息に見初められ婚約するとは思いませんでした。
姉の婚約披露のために侯爵家のパーティーに参加しています。本当は参加したくありませんでしたが、身内なので逃げられません。
夜会の心得の復習はしっかりしてきました。
夜会に行くときは予備のドレスを必ず持参するという武門貴族令嬢の頂点に立つレティシア様の心得に従い準備はバッチリです。
レティシア様主催の招待状のいらないお茶会は必ず参加しています。
「武門の令嬢がこんなところに」
「挨拶もできないのかしら?」
「これだから武門貴族は。身の程を」
広い会場なのにわざわざ目の前に立ち止まり嫌味な口調で話しているのはクラスメイトの伯爵令嬢達。感じが悪く陰険で私は大嫌いです。
「おめでとうございます」
一度聞いたら忘れない上品なお声に振り向くとレティシア様がいらっしゃいました。紺色のドレスに包まれ上品に微笑む姿はいつ見てもお美しい。
気高く美しく何一つ欠点のない至高の方についていけるなんて私は武門貴族に生まれたことを感謝しています。嫌味なクラスメイトの言葉よりもレティシア様が優先です。
レティシア様にお会いできるなら参加して良かったです。お忙しいレティシア様が参加してくださるなんて。初めて感じのわるい義兄様に感謝しました。
「ありがとうございます」
クスクスと下品な笑い声が聞こえました。レティシア様との時間を邪魔しないでください。
「武門貴族は礼儀もわきまえられないのかしら」
首を傾げて微笑むレティシア様も可愛らしいです。
「下位のものから話しかけられないことはご存知ないのかしら。申し遅れました。ビアード公爵家レティシア・ビアードと申します」
「深窓のまがいものなのに口だけは達者ですね」
なんと!?レティシア様への無礼は許しません。
視界に入れたくありませんが、レティシア様から視線を外してクラスメイトに向き直ります。お美しいレティシア様を見た後だと醜い姿がさらに際立ちます。
「行きましょうか。ご挨拶もできないご令嬢とはお話はできないので、ご両親とお話しましょう。祝いの場に水を差すようなことはしてはいけません」
「何よ、バカにして」
「淑女としてふさわしい行動をお願いします。失礼します。ラピス様、行きますよ」
綺麗な笑みを浮かべたレティシア様に誘われれば選択肢は一つだけ。どんな時でもレティシア様に従います。
「相手にしないことが一番ですわ。いつも笑顔で凛としていればいいのです。どんな時にも気丈に凛として振舞うのは私達の得意なことでしょう?」
悪戯っぽく笑うお顔は初めて拝見しましたが可愛らしく、先程の令嬢達の嫌な態度は頭から消えました。レティシア様は頻繁に夜会に足を運ばれると聞いてますがよくあることなんでしょうか?
「どんな夜会も慣れですわ。頑張ってくださいませ」
肩を叩かれて美しく微笑まれ喧噪の中に消えていきました。レティシア様に直接お声を掛けられ、触れていただけるなんて…。このドレスは家宝にしましょう。励ましのお言葉を頂いたのでふがいない姿は見せられないので、負けないように気合いをいれました。
レティシア様の真似をして話しかけられれば笑顔でお話します。
レティシア様はたくさんの方と笑顔で話しています。目が合って微笑んでくれたのはきっと見間違えではありません。社交デビューで困った時はレティシア様が助けてくださるのは私達にとっての常識ですから。
嫌味にも負けずレティシア様の教えを思い出します。
まずは一番大事な家格を確認です。自分より上位の貴族は頭に入れる。わからなければ、紋章とドレスと取り巻きの様子を見ればいいと教わりました。高位な方は必ず紋章やモチーフを身に着けているそうです。レティシア様のドレスにもビアードの紋章が刺繍されていました。
「武官と文官一族がうまくいくはずないのに」
目の前の令嬢はドレスが質素で取り巻きもいないので私より家格は低いです。
「それは俺達のこと?」
レティシア様がリオ様に手を引かれ、淡い紫色のドレスにお召し替えされた姿も美しい。
「リオ様、祝いの場ですよ。足を運ばれなくても良ろしかったのに」
「頼まれた夜会には顔を出してきたよ。せっかくエスコートできるのに。俺を呼びたくなかった理由はわかるけど。マール公爵もルーン公爵も武門貴族から迎え入れた。俺もその一人だけどな」
「挑発しないでください」
「良縁には恵まれないだろうな。公爵令嬢にワインをかけるような令嬢を誰も選ばない。自分達に向けられる視線に気づいた方がいいよ。最近は文官一族でも武門貴族が人気だけどな。あぶれてもレティシアに良縁をねだるなよ」
ワインをレティシア様にかけたんですか!?
「いい加減にしてください。ですからリオ様との夜会は嫌でしたの。祝いの場にふさわしく」
「帰る?」
「お一人で。私の可愛い後輩の成長を見守る楽しみを壊さないでくださいませ」
リオ様とレティシア様の笑顔の応酬はいつ見ても目の保養になります。
リオ様が美しい銀髪に口づけ、ほのかに頬を染めて拒否するレティシア様の愛らしさは格別です。リオ様は色んな噂がありましたが、最近はレティシア様だけを大事にされています。レティシア様の婚約者でありながら他の令嬢にうつつを抜かした時は斬りたくなりましたが、心を入れ替えレティシア様を至高とするなら私達は一応は受け入れますわ。レティシア様の代わりにリオ様が参加されたお茶会でレティシア様の魅力を延々と語る姿に嘘はありませんでした。ですがレティシア様の隣に相応しいかは別問題です。
「主役を差し置いて目立つなよ」
「おめでとう。あまりにも無礼だから。これでも加減しているよ。愛しい婚約者の願いで」
「殿下の覚えもめでたい二人に足を運んでもらえるとは」
「レティシア様、いかがでした?」
「満点です。私も鼻が高いですわ」
「これからも教えてください」
レティシア様に小さく拍手をされ微笑みかけられる嬉しそうに笑うお姉様。以前よりもレティシア様と親しくなってます。
「お姉様、どういうことですか!?」
「レティシア様に社交を教えてもらったの。私達の中では一番長けているのはレティシア様でしょう?」
「誘って欲しかった・・・」
「嫌よ。貴方がいると邪魔するでしょう」
「お二人共御立派ですよ。初めての大きい夜会に参加したとは思えません。令嬢達の挑発に乗らなかったのもすばらしいですわ。リオ様、見習ってください」
「そのドレスも美しいけど、着替える前のドレスで踊りたかった」
「洗えば落ちますよ。何度洗っても色落ちしない物を選んでます。装飾品も取り外しできます。何も心配いりません」
「俺は一度も染みの心配はしていないから。俺がいたら着替えずに、まず汚させなかったよ」
「お祝いの席に水を差すのはやめましょう。嫌な流行ですわね。私はドレスはたくさん持っていますが下位の令嬢達は違いますわ。ドレスは貴重ですもの」
頬に手を当てて憂い顔をするレティシア様の手をリオ様がとり、口づけを落としニヤリと笑われました。
「シアを飲物で汚したやつは俺が瓶ごとかけてやるのに」
「ビアードの名を背負ってそのようなことしたら許しません。休養日に帰りませんわ。朝も時間を作りません」
「やらないからそれはやめて。ただでさえ会えないのに」
リオ様の笑顔が抜け落ちて、必死な顔でレティシア様に懇願しています。レティシア様の嫌がることをするリオ様はやはり相応しくないですわ。
「武門貴族が文官貴族に劣るなんて誰が言うんだろうな。クロード殿下のエスコートを受けるのはレティシアだけだろう?体さえ弱くなければ王妃だったろうに」
うん?
義兄様はレティシア様に敬称をつけず、親しそうな雰囲気を持ってます。
「アリア様が療養中ですから。レオ様の親戚のセリアは社交に出ません。従兄弟のリオの婚約者の私に回ってくる理由はよくわかりませんが最低基準としての見せしめです。私程度の令嬢はたくさんいますのでどうかと思いますが」
「レティシア以上はいないから」
「そうおっしゃるのはリオだけです。将来有望な令嬢達もたくさんいます。私は殿下が選んだ方を、殿下の前にエイベルでしたわ。お母様にせめて初恋くらいは学生時代にって」
「無理だろ」
「リオの言う通りビアード様は無理だ」
「あのシスコンなんとかなんないかな」
「勘違いですよ。妹の頭をすぐ叩くんですよ。わかりやすく優しくなっていただきたい。シスコンはステラのお兄様達です」
「レティシアもブラコンだよな」
「心外ですわ。お兄様は大好きですが健全な兄妹関係ですわ」
「兄妹じゃなかったらリオとどっちを選んだ?」
「エイベルです」
「シア!?」
「わかりにくくてもあの不器用な優しさと魔力はたまりません。嫌がってもお願いするといつも叶えてくてます。それに夜会に行っても挑発しません。意地悪もしません。令嬢にワインをかけません。魔法で偶然を装って」
「期待されると応えたくなるよな。シアに見つからないように」
リオ様が指をパチンと鳴らすとグラスが割れた音がしました。
数人の令嬢のドレスが汚れています。
「貴族なら嫌がらせはわからないようにやらないと」
「最低です」
レティシア様がリオ様を睨んで、手を振り払い汚れたドレスを着る令嬢達に近づいていきました。
「お姉様、替えのドレスを持参しなさいって」
「ドレスを汚されるのはよくあること。何があっても万全の姿勢で迎えられるように準備をしておくのが大事よ」
「放っておけばいいのに」
不機嫌そうにリオ様が眺めています。
レティシア様が令嬢達を連れ出しました。しばらくすると上品なドレスに着替えた令嬢達が再び姿を現しました。
「レティシアを罵ったくせに、よく救いの手を取れるよな。恥を知ってほしいよな。次があればお先真っ暗だろうが・・・」
「過剰なことをすると嫌われるよ」
「見つからないようにするよ。シアは忘れっぽいから彼女達の動向は調べないよ。領民と同派閥以外は庇護しない。線引きがはっきりしてる。シアが大事にするものが害するなら俺が影で潰すけど」
「ビアード牛耳るなよ」
「俺はシアの願いを叶えるだけだ。シアと二人で平穏に過ごすために手段は選ばない」
「お姉様、リオ様達はお友達ですか?」
「そうよ。レティシア様の従兄のビクト様を通して仲良くなられたの。ビクト様が文官貴族に嫁いでも苦労しないようにレティシア様が指導してくださると言うから婚約を了承したわ。私はビアードで魔導士をしならが暮らしたかったのに」
「レティシアと一緒に愚かな貴族を見返すんだろう?武も文も関係なく互いが手を取り高め合えるような貴族が増えるように」
「はい。私達の至宝の願いですから」
「俺の妻になるのにレティシアが一番か?」
「当然です。あの至高の存在を前にすれば王族さえも雑草に見えます」
私もレティシア様のお役に立てるように頑張らないといけません。
レティシア様のドレスを着る令嬢が羨ましいと呟いたら後日ドレスが贈られてきました。
私の将来に期待しているというお手紙に感動しました。
レティシア様の纏う上品なドレスはビアード領でしか手に入りません。価格はお安いのですが人気があり入手困難です。
レティシア様の上品なドレスを着ると良縁を呼ぶと囁かれています。
私は社交は苦手ですが頑張ることにしました。レティシア様に贈られたドレスで参加すると、たくさんの方に話しかけられダンスに誘われました。
レティシア様という共通の話題もあり苦手意識が吹き飛びました。
夜会でお会いすると誇らしげに私を見てくれるレティシア様のお顔もたまりません。
私もレティシア様の願いを叶えるために頑張ります。
クラスメイトの嫌味な令嬢達にレティシア様を紹介してほしいと頼まれましたがお断りしました。お茶会の日取りも教えませんよ。私達はレティシア様にまがいものと言う方々は許しません。脳筋一族と囁かれる私達は一度受けた屈辱は忘れませんから。
クラウン伯爵家はビアード公爵家の分家。王族のためにあるビアードの領主一族を第一にお仕えするために名前を変えた一族です。兄はいずれ近衛騎士団入りするエイベル様に仕えるために近衛騎士団に所属し励んでおります。数か月前にレティシア様の怒りに触れてビアード公爵家の地獄の訓練を受けました。ボロボロになりましたが自業自得です。どんな時もレティシア様の教えに従うのが私達の務めです。私達が剣を捧げるのは王族ではなくレティシア様です。大人の事情なんて知りません。近衛騎士として処分はありませんでしたが、ビアード家門内で降格され減俸されても誰も同情しませんでした。
幼い頃よりビアード公爵家に仕えるように躾けられていた私はよく兄の訓練に付いてきていました。ビアードは領主一族に危害を加えないなら訓練の見学は自由です。お揃いのローブを着て、村を襲う魔物を瞬殺するビアード兄妹は格好良くビアード公爵家に仕えられる自分の人生に感謝を捧げました。
「社交デビューは緊張しますがご安心してください。年長者の務めを私は果たすと約束しますわ」
3歳しか変わらないのに、誰よりも美しく微笑むお顔はビアードの至宝。私の友人のネリアが転んでジュースをひっくり返してもすぐに駆けつけて笑顔で事を収めてくれました。私達の社交デビューではレティシア様は優しくお祝いの言葉を掛けてくださり、王族への挨拶が終わった後には美しい笑顔で私を褒めてくれました。私はビアードの至宝を守りお役に立つためにレティシア様を見守って武術を始めました。
私達はレティシア様を尊敬し、誰よりも素晴らしい令嬢と知っています。ですがレティシア様に醜い言葉をかける不届き者もいます。
同じ爵位でも文官貴族は武門貴族を見下しています。
武門貴族と文官貴族が仲が悪いのは社交界の常識です。
武門伯爵家の私は姉が文官一族の侯爵子息に見初められ婚約するとは思いませんでした。
姉の婚約披露のために侯爵家のパーティーに参加しています。本当は参加したくありませんでしたが、身内なので逃げられません。
夜会の心得の復習はしっかりしてきました。
夜会に行くときは予備のドレスを必ず持参するという武門貴族令嬢の頂点に立つレティシア様の心得に従い準備はバッチリです。
レティシア様主催の招待状のいらないお茶会は必ず参加しています。
「武門の令嬢がこんなところに」
「挨拶もできないのかしら?」
「これだから武門貴族は。身の程を」
広い会場なのにわざわざ目の前に立ち止まり嫌味な口調で話しているのはクラスメイトの伯爵令嬢達。感じが悪く陰険で私は大嫌いです。
「おめでとうございます」
一度聞いたら忘れない上品なお声に振り向くとレティシア様がいらっしゃいました。紺色のドレスに包まれ上品に微笑む姿はいつ見てもお美しい。
気高く美しく何一つ欠点のない至高の方についていけるなんて私は武門貴族に生まれたことを感謝しています。嫌味なクラスメイトの言葉よりもレティシア様が優先です。
レティシア様にお会いできるなら参加して良かったです。お忙しいレティシア様が参加してくださるなんて。初めて感じのわるい義兄様に感謝しました。
「ありがとうございます」
クスクスと下品な笑い声が聞こえました。レティシア様との時間を邪魔しないでください。
「武門貴族は礼儀もわきまえられないのかしら」
首を傾げて微笑むレティシア様も可愛らしいです。
「下位のものから話しかけられないことはご存知ないのかしら。申し遅れました。ビアード公爵家レティシア・ビアードと申します」
「深窓のまがいものなのに口だけは達者ですね」
なんと!?レティシア様への無礼は許しません。
視界に入れたくありませんが、レティシア様から視線を外してクラスメイトに向き直ります。お美しいレティシア様を見た後だと醜い姿がさらに際立ちます。
「行きましょうか。ご挨拶もできないご令嬢とはお話はできないので、ご両親とお話しましょう。祝いの場に水を差すようなことはしてはいけません」
「何よ、バカにして」
「淑女としてふさわしい行動をお願いします。失礼します。ラピス様、行きますよ」
綺麗な笑みを浮かべたレティシア様に誘われれば選択肢は一つだけ。どんな時でもレティシア様に従います。
「相手にしないことが一番ですわ。いつも笑顔で凛としていればいいのです。どんな時にも気丈に凛として振舞うのは私達の得意なことでしょう?」
悪戯っぽく笑うお顔は初めて拝見しましたが可愛らしく、先程の令嬢達の嫌な態度は頭から消えました。レティシア様は頻繁に夜会に足を運ばれると聞いてますがよくあることなんでしょうか?
「どんな夜会も慣れですわ。頑張ってくださいませ」
肩を叩かれて美しく微笑まれ喧噪の中に消えていきました。レティシア様に直接お声を掛けられ、触れていただけるなんて…。このドレスは家宝にしましょう。励ましのお言葉を頂いたのでふがいない姿は見せられないので、負けないように気合いをいれました。
レティシア様の真似をして話しかけられれば笑顔でお話します。
レティシア様はたくさんの方と笑顔で話しています。目が合って微笑んでくれたのはきっと見間違えではありません。社交デビューで困った時はレティシア様が助けてくださるのは私達にとっての常識ですから。
嫌味にも負けずレティシア様の教えを思い出します。
まずは一番大事な家格を確認です。自分より上位の貴族は頭に入れる。わからなければ、紋章とドレスと取り巻きの様子を見ればいいと教わりました。高位な方は必ず紋章やモチーフを身に着けているそうです。レティシア様のドレスにもビアードの紋章が刺繍されていました。
「武官と文官一族がうまくいくはずないのに」
目の前の令嬢はドレスが質素で取り巻きもいないので私より家格は低いです。
「それは俺達のこと?」
レティシア様がリオ様に手を引かれ、淡い紫色のドレスにお召し替えされた姿も美しい。
「リオ様、祝いの場ですよ。足を運ばれなくても良ろしかったのに」
「頼まれた夜会には顔を出してきたよ。せっかくエスコートできるのに。俺を呼びたくなかった理由はわかるけど。マール公爵もルーン公爵も武門貴族から迎え入れた。俺もその一人だけどな」
「挑発しないでください」
「良縁には恵まれないだろうな。公爵令嬢にワインをかけるような令嬢を誰も選ばない。自分達に向けられる視線に気づいた方がいいよ。最近は文官一族でも武門貴族が人気だけどな。あぶれてもレティシアに良縁をねだるなよ」
ワインをレティシア様にかけたんですか!?
「いい加減にしてください。ですからリオ様との夜会は嫌でしたの。祝いの場にふさわしく」
「帰る?」
「お一人で。私の可愛い後輩の成長を見守る楽しみを壊さないでくださいませ」
リオ様とレティシア様の笑顔の応酬はいつ見ても目の保養になります。
リオ様が美しい銀髪に口づけ、ほのかに頬を染めて拒否するレティシア様の愛らしさは格別です。リオ様は色んな噂がありましたが、最近はレティシア様だけを大事にされています。レティシア様の婚約者でありながら他の令嬢にうつつを抜かした時は斬りたくなりましたが、心を入れ替えレティシア様を至高とするなら私達は一応は受け入れますわ。レティシア様の代わりにリオ様が参加されたお茶会でレティシア様の魅力を延々と語る姿に嘘はありませんでした。ですがレティシア様の隣に相応しいかは別問題です。
「主役を差し置いて目立つなよ」
「おめでとう。あまりにも無礼だから。これでも加減しているよ。愛しい婚約者の願いで」
「殿下の覚えもめでたい二人に足を運んでもらえるとは」
「レティシア様、いかがでした?」
「満点です。私も鼻が高いですわ」
「これからも教えてください」
レティシア様に小さく拍手をされ微笑みかけられる嬉しそうに笑うお姉様。以前よりもレティシア様と親しくなってます。
「お姉様、どういうことですか!?」
「レティシア様に社交を教えてもらったの。私達の中では一番長けているのはレティシア様でしょう?」
「誘って欲しかった・・・」
「嫌よ。貴方がいると邪魔するでしょう」
「お二人共御立派ですよ。初めての大きい夜会に参加したとは思えません。令嬢達の挑発に乗らなかったのもすばらしいですわ。リオ様、見習ってください」
「そのドレスも美しいけど、着替える前のドレスで踊りたかった」
「洗えば落ちますよ。何度洗っても色落ちしない物を選んでます。装飾品も取り外しできます。何も心配いりません」
「俺は一度も染みの心配はしていないから。俺がいたら着替えずに、まず汚させなかったよ」
「お祝いの席に水を差すのはやめましょう。嫌な流行ですわね。私はドレスはたくさん持っていますが下位の令嬢達は違いますわ。ドレスは貴重ですもの」
頬に手を当てて憂い顔をするレティシア様の手をリオ様がとり、口づけを落としニヤリと笑われました。
「シアを飲物で汚したやつは俺が瓶ごとかけてやるのに」
「ビアードの名を背負ってそのようなことしたら許しません。休養日に帰りませんわ。朝も時間を作りません」
「やらないからそれはやめて。ただでさえ会えないのに」
リオ様の笑顔が抜け落ちて、必死な顔でレティシア様に懇願しています。レティシア様の嫌がることをするリオ様はやはり相応しくないですわ。
「武門貴族が文官貴族に劣るなんて誰が言うんだろうな。クロード殿下のエスコートを受けるのはレティシアだけだろう?体さえ弱くなければ王妃だったろうに」
うん?
義兄様はレティシア様に敬称をつけず、親しそうな雰囲気を持ってます。
「アリア様が療養中ですから。レオ様の親戚のセリアは社交に出ません。従兄弟のリオの婚約者の私に回ってくる理由はよくわかりませんが最低基準としての見せしめです。私程度の令嬢はたくさんいますのでどうかと思いますが」
「レティシア以上はいないから」
「そうおっしゃるのはリオだけです。将来有望な令嬢達もたくさんいます。私は殿下が選んだ方を、殿下の前にエイベルでしたわ。お母様にせめて初恋くらいは学生時代にって」
「無理だろ」
「リオの言う通りビアード様は無理だ」
「あのシスコンなんとかなんないかな」
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「最低です」
レティシア様がリオ様を睨んで、手を振り払い汚れたドレスを着る令嬢達に近づいていきました。
「お姉様、替えのドレスを持参しなさいって」
「ドレスを汚されるのはよくあること。何があっても万全の姿勢で迎えられるように準備をしておくのが大事よ」
「放っておけばいいのに」
不機嫌そうにリオ様が眺めています。
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「レティシアを罵ったくせに、よく救いの手を取れるよな。恥を知ってほしいよな。次があればお先真っ暗だろうが・・・」
「過剰なことをすると嫌われるよ」
「見つからないようにするよ。シアは忘れっぽいから彼女達の動向は調べないよ。領民と同派閥以外は庇護しない。線引きがはっきりしてる。シアが大事にするものが害するなら俺が影で潰すけど」
「ビアード牛耳るなよ」
「俺はシアの願いを叶えるだけだ。シアと二人で平穏に過ごすために手段は選ばない」
「お姉様、リオ様達はお友達ですか?」
「そうよ。レティシア様の従兄のビクト様を通して仲良くなられたの。ビクト様が文官貴族に嫁いでも苦労しないようにレティシア様が指導してくださると言うから婚約を了承したわ。私はビアードで魔導士をしならが暮らしたかったのに」
「レティシアと一緒に愚かな貴族を見返すんだろう?武も文も関係なく互いが手を取り高め合えるような貴族が増えるように」
「はい。私達の至宝の願いですから」
「俺の妻になるのにレティシアが一番か?」
「当然です。あの至高の存在を前にすれば王族さえも雑草に見えます」
私もレティシア様のお役に立てるように頑張らないといけません。
レティシア様のドレスを着る令嬢が羨ましいと呟いたら後日ドレスが贈られてきました。
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レティシア様の纏う上品なドレスはビアード領でしか手に入りません。価格はお安いのですが人気があり入手困難です。
レティシア様の上品なドレスを着ると良縁を呼ぶと囁かれています。
私は社交は苦手ですが頑張ることにしました。レティシア様に贈られたドレスで参加すると、たくさんの方に話しかけられダンスに誘われました。
レティシア様という共通の話題もあり苦手意識が吹き飛びました。
夜会でお会いすると誇らしげに私を見てくれるレティシア様のお顔もたまりません。
私もレティシア様の願いを叶えるために頑張ります。
クラスメイトの嫌味な令嬢達にレティシア様を紹介してほしいと頼まれましたがお断りしました。お茶会の日取りも教えませんよ。私達はレティシア様にまがいものと言う方々は許しません。脳筋一族と囁かれる私達は一度受けた屈辱は忘れませんから。
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