追憶令嬢のやり直し

夕鈴

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第百三十一話 学園改革

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クロード様の望まれる教育水準は高いです。クロード様の考えに気付いた生徒も増え去年までは人が少なく静かだった図書室は生徒で溢れています。増員された先生達が放課後に授業に遅れている生徒へ特別指導をしています。休養日には卒業生達が訪問し得意分野を生かした授業をしています。学ぶ幅を広げることは大事なことです。私は先輩達のためになる授業を受けられないので後輩に頼んで映像魔石に記録してあるものを空いた時間に見ています。落とし合う暇がないほど学ぶことに集中するのは喜ばしいこと。ですが鞭だけでは人は伸びません。飴役を担ってくださる令嬢達に感謝してます。卒業生の美しい令嬢達が差し入れを用意して励ましの言葉をかけてくれます。令嬢達目当てで足を運ぶ生徒もいますが、学ぶ理由が不順でも構いませんわ。朝礼で笑みを浮かべたクロード様の励ましの言葉より効果があるのは複雑です。でも平民や下位貴族が実利や欲望に忠実になるのは仕方のないことですわ。
成績上位者には生徒会主催のお茶会にご招待と公言してからはさらにやる気が上がりましたわ。生徒会に頻繁に顔を出し今日も力を貸してくれる美しいご令嬢の二人に礼をします。

「エイミー様、ユーナ様、ありがとうございます」
「王族の意向に添うのは務めよ。授業がなくなって余裕があるのよ。お友達にも声を掛けておくわ。派閥は助け合いよ」

可愛らしい笑みで微笑むエイミー様は王国の歴史を美しい歌にのせて披露し、学生達の心を鷲掴みにしました。エイミー様なら名案が浮かぶでしょうか。

「ありがとうございます。エイミー様、殿方に初恋を経験させたいんですが、」
「恋は落ちるものよ。時がくればわかるものよ。レティシアには難しいかしら」

エイベルはエイミー様の可愛らしさもわかっていません。訓練に夢中で色んな意味で心配ですわ。二人にとってお礼になるかはわかりませんがおもてなしは用意しました。

「やはり時を待つしかありませんね。今日はレオ様が腕を振る舞ってくださるのでお時間があれば是非。ご令嬢受けする料理ではありませんが」
「栄養満点・疲労回復レシピでしょ?お母様から伺ったわ。ルーン公爵夫人のために考案の」
「はい。レオ様のレシピが素晴らしく、やはりシオン一族ですわ。こちらをどうぞ」

微笑む二人にレオ様と作った令嬢達が身を守るための魔石を渡します。作成者は伝えません。

「お守りです。平民の生徒に配布している魔石より強いものです。お忍びの時にお持ちください。それでは失礼します」

レオ様を慕う令嬢達の潰し合いが起こらないとは限りませんから。協力していただく方にはお礼に自衛の魔石を渡してます。私は誰の味方もしません。思惑があっても手を貸してくださるなら喜んで手を取ります。クロード様は在学中に基盤を作り、レオ様の代で定着させるために頑張ってますから。反発の声も囁かれますが物理ではなく言葉で語りかけます。王族の考えに従うのは当然ですが心が付いていけない気持ちもわかります。色んな価値観があるのは当然です。私はクロード様と長いお付き合いで目指しているものを受け入れていますが最初の人生の私なら戸惑ったのもわかります。
一番頭を抱えたいのは国王陛下が外交をクロード様に大量に回すので多忙です。最後の学園生活を充実させるために公務を減らしてくださることはないようですわ。クロード様に期待している陛下のお考えは理解できますが・・。疲労回復・栄養満点メニューはクロード様にこそ必要ですわ。ロキとレオ様と協力してさらなるレシピを考案しましょう。

エドワードが転んでいる令嬢に手を差し伸べてます。令嬢はエドワードに見惚れてますわ。社交用の爽やかな笑みでも充分魅力的ですわ。またファンが増えますわ。弱った時に助けてもらって恋に落ちる。一度、エイベルのファンクラブの統制を緩めますか?調子を崩して近衛騎士試験に落ちれば笑えませんわ。

「レティシア様!!私はハンカチを借りました。どうすれば」

転んでいたのはネリア・ロード伯爵令嬢。エドワードはすでにいません。ネリアは立ち上がり走り出すと私の前で止まりました。

「怪我はありませんか?」
「内緒って治してくれました」
「お礼のお手紙を。平等の学園ですからお礼に贈り物をしても」
「ありがとうございます!!探してきます」

走るのは淑女としてはいけませんが休養日ですし目を瞑りましょう。また転ばないといいんですが。ネリアは二年生ですが小柄で素直な性格のためさらに幼く見えます。物凄く行動力のあるご令嬢です。

「レティシア、これは」

登校するとエドワードの机は食べ物で溢れていました。手紙にはありがとうございましたと見覚えのある文字が。私の教育不足ですわ。きちんとお話しないといけませんわ。

「ハンカチのお礼ですわ。ロード伯爵領の名産品です。よろしければ調理したものを放課後に用意しますわ」
「任せるよ。変わった令嬢だね」
「手紙だけはお返しします」


エドワードの困惑した顔は久々に見ましわ。どれも美味しいですが生では食べられない物ばかりです。マナに回収させました。エドワードが好きにしていいと言うので放課後はロキとレオ様と一緒に調理しましょう。お昼休みにネリアに会いに行くと目を輝かせて満面の笑みを向けられました。

「レティシア様がお昼に誘ってくださるなんて!!ステラ様も!!」
「ネリア、落ち着いてくださいませ」
「私は胸がいっぱいです!!」
「座ってください」

立ち上がって手を組んでいたネリアがスッと椅子に座り物欲しそうに見てます。ここで褒めてはいけません。私はビアード公爵夫妻の命令で定期的に武門貴族令嬢の教育のためのお茶会を主催しています。ネリアは私の自由参加のお茶会の常連です。社交デビューもきちんとフォローしましたよ。壁の花になりながら、転んで手に持つグラスで会場を汚したので。王宮行事は逃げてましたが社交デビューの夜会だけはこっそりと参加しました。

「手紙を書くときは必ず自分の名前を書いてください。あれでは危険物として取り扱われても」

力強く頷くネリアに心配になってきました。マナからペンと紙を受け取り贈り物について綴ります。

「わからなかったら聞いてください」
「家宝にします」
「読んでくださいませ」
「毎日読みます!!」
「お願いしますね。食事をしましょうか」

嬉しそうに食事をしているネリアは可愛らしいのですが無性に心配です。

「レティシア様、ネリアは私が」
「私もお手伝いします」

ネリアのお友達に頼みましょう。武門貴族は高め合いが基本ですから。ネリアは変わっているところもありますが小動物のようで令嬢達にも可愛がられています。

「ありがとうございます。試験の難易度が上がりますが皆様なら問題ないと信じてます。ご褒美にビアードで無礼講のもてなしを用意するので頑張ってください」
「レティシア様、エイベル様の手合わせを」
「スミス公爵家と合同の武術大会は招待状不要ですわ。ビアードは訓練の見学も大歓迎です」
「応援に行きます!!レティシア様の参加される日を教えてくださいませ」
「詳細が決まればお伝えします。では午後の授業も励んでください」

力強く頷く後輩達に礼をしてステラを連れて教室に戻ります。午後は武術の授業です。ステラも強くなり手合わせで勝ちをあげるようになりました。隣で愛らしく微笑むステラの可愛さに癒されながら厄介事にため息をつきます。ティアラに癒されに行こうかな。イナリアは元気に育ってますがリオが物騒なことを呟くので心配です。

「シア!!」

嬉しそうな顔で近づいてくるリオに時間が欲しいと言われても中々作ってあげられません。ビアードのために頑張ってくださっているのは知っています。

「放課後行っていい?」
「賑やかな食事になりますが手伝ってくださいますか?」
「もちろん。二人には」
「明日の放課後でしたら」
「生徒会も手伝うよ」
「ありがとうございます。在学中に初恋を体験させたいですが上手くいきません」
「ビアード公爵夫人には違う恋の話を提供しておくよ。イナリアを抱いて上機嫌だから」
「お願いします」

繋がれる手を握り返して足を進めます。武術の授業でリオの指導を受けることになるとは思いませんでした。最近は連携を取る戦いの授業です。個人戦では負けてしまいますがチーム戦では無敗です。一番強いフィルと組んでるので当然ですわね。フィルがステラの指導をしている姿をぼんやり眺めていると腕を引かれて驚くと大樹の裏に連れ込まれました。触れるだけの口づけをしたニヤリと笑っているリオを睨みます。

「誰にも見えない」
「授業中に不謹慎です」

昔、ここで口づけをしたリオが言っていたことを思い出しました。周囲に人の視線はありません。背伸びをしてリオの頬に口づけます。赤く染まった頬に笑みを浮かべてリアナに教わった角度に首を傾げて見つめると銀の瞳に熱が籠り身の危険を感じました。逃げようとすると逞しい腕にがっしりと腰を抱かれて、貪るような乱暴な口づけにうっとりしそうになるのを堪えて思いっきり足を踏みます。

「ごめん」
「わかっているなら構いません。成人してます。きちんとわきまえてください」

頬が赤く染まっているのは気付かないフリをして反省した顔のリオの手を繋いで授業に戻ります。手合わせの終わったステラに手を振ります。私もフィルに相手をしてもらいましょう。周囲の生徒達があまり集中していないのは気になりますが、授業中なので私が諫める必要はありませんわ。私がフィルと剣を合せている近くでリオが数人の生徒を風で吹き飛ばしました。風使いとの戦い方のお勉強でしょう。私も彼らに負けないように頑張りましょう。

「牽制に必死だな」
「ビアードに婿入りするなら強さに貪欲であってほしいですわ」
「ふさわしくないなら俺が燃やそうか?塵も残さずに」
「私が沈めるのでご安心ください。ステラを泣かしたらフィルも沈めます」
「沈められるか?」
「私の相棒は最高ですから」
「久々にやるか」
「ディーネ、沈めますよ」

挑発するフィルの誘いに乗って久しぶりに本気で魔法の手合わせをしました。ラマン様がいてもディーネとの連携は経験が違いますわ。フィルを沈めて笑みを浮かべると拍手が沸き起こったので礼をします。

「ビアード、見応えがあった」
「場所さえ選んでくれれば」
ロベルト先生の笑顔と裏腹にエメル先生は苦笑をしています。水浸しの木々、広大な草原は真っ黒焦げになっていました。

「癒しの雨を」

フィルの燃やした草原の草花の成長を願って広範囲の治癒魔法を使います。空から落ちる気持ちの良い雫に笑みがこぼれます。嬉しそうなディーネとは正反対の雨が嫌いなラマン様をフィルが宥めています。
いずれはエイベルに勝てるようになりたいですわ。いつの間にか授業は終わっていたので雨に濡れてもお説教しないリオに手を引かれてその場を後にしました。雨の音にかき消され私を抱きしめてブツブツ呟く言葉は聞き取れません。そっと口づけられ魔力を送られ体に巡る感覚に物足りなさを感じるのは秘密です。昔よりも私が一番好きな魔力と似ていますが違います。久々にエイベルに魔力をもらいにいきましょうか。
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