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初めてのデート
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「小さい美術館ですが、魅力的な作品が飾られています。王宮美術館も素晴らしいですが、僕はここの作品を………」
エレオノーラはジャスティンのエスコートを受け、美術館を観覧していた。
王子の婚約者として視察するのは国立美術館のような大きな美術館ばかりだった。
生まれて初めての小さい美術館には、エレオノーラの見たことのない作品で溢れていた。有名な作品の模写は一つもなく、ジャスティンの解説を聞きながら作品の鑑賞を楽しんだ。
王子の婚約者として相応しい言葉しか選ぶことはなかったエレオノーラは私的な見解ばかりのジャスティンの解説に笑みをこぼした。
ショーケースに入ったガラスを材料にした一輪の薔薇の彫刻にエレオノーラは足を止めた。
「美しいですよね。中の薔薇が傷つかないように、作者は耐久性に優れたショーケースも作られました。このショーケースは外すことができず、中の薔薇に触れたことがあるのは作者だけ。作者不明の幻の作品です」
「ガラスを彫刻できる芸術家は発表されてませんよね?」
「ええ。誰も真似できない技術を力のないものが持てば、妬まれ、奪われてしまう。わかっていたから作者はどんな手段でも壊せないショーケースで囲ったのでしょう。美しいものに相応しくない者が触れることを許さないと…。エレオノーラ様のようですね。美しさはエレオノーラ様のほうが優れていらっしゃいますが」
ジャスティンの称賛をエレオノーラは微笑みながら流す。
賛辞を当たり障りなく流すのは、元王子の婚約者であり、公爵令嬢のエレオノーラには簡単なことである。
「楽しい時間が過ぎるのは早いですね。名残惜しいですが、そろそろ帰りましょう」
ジャスティンの手配で貸し切りの美術館での鑑賞を終えたエレオノーラは馬車に乗った。
エレオノーラの向かいに座るジャスティンがそっと箱を取り出し、中を開けた。
「こちらをエレオノーラ様に」
箱の中には大きなルビーが輝くネックレス。
男から高価なもの貢がれることに優越感を覚える貴族令嬢もいるが、慎ましい王子妃として教育を受けたエレオノーラは違う。
正当な理由もなく、品行保持に必要なもの以外を手に入れることを望まないエレオノーラは高値のネックレスを贈ろうとするジャスティンから差し出されたネックレスに手を伸ばさない。
「受け取れません」
「エレオノーラ様のことを想いながら、発掘し加工しました」
照れた顔をするジャスティンの言葉にエレオノーラは公爵子息らしくない内容を聞き取り、聞き間違えかと問う。
「発掘?加工?」
「エレオノーラ様への贈り物に僕以外の手垢がつくなど許せません。加工を終え、最後は手袋をしてきちんと磨いておりますので、手垢が一切ついておりますので、心配しないでください」
「手垢の心配などしていません」
「本当は僕がつけて差し上げたいのですが、まだその権利はありません。受け取っていただけないのであれば、ここで砕き、捨てるしかありません」
宝石を粉砕する道具を椅子の下の箱から取り出したジャスティンにエレオノーラは目を見開く。
馬車の中で宝石を砕く準備をしているジャスティンにエレオノーラは慌てて口を開いた。
「馬車に積んでありますの!?え?砕く!?ありがとうございます。ありがたくいただきますので、これで最後にしてくださいませ」
「エレオノーラ様に受け取っていただけるなんて光栄の極みです。ありがとうございます。うちは王国一種類豊富な鉱山を抱えておりますので、ご安心を」
ネックレスを受け取ったエレオノーラに嬉しそうに破顔するジャスティンを見て、エレオノーラは不吉な予感に襲われた。
「ルビーでなければいいというわけではありませんよ。贈り物はいりませんので」
「すでにエレオノーラ様のために制作中のものがあるのです。エレオノーラ様に受け取っていただけないなら、捨てるしかありませんね。美しいエレオノーラ様が身に着けるのに相応しくないなら当然ですよね」
エレオノーラに贈るか捨てるしか選択肢の無いジャスティンが納得したようにうなずいているので、エレオノーラは首をゆっくり横に振った。
「でしたら、それだけは買い取らせていただきます」
「かしこまりました。僕はお金はいらないので、エレオノーラ様の時間を売ってください」
「え?お金ではいけませんの?」
「お金は有り余ってますのでいりません。受け取っていただくだけで幸運の極みですので、もしくは」
ジャスティンが突拍子のないことを言うことをすでに学んだエレオノーラは言葉を遮った。
「わかりました。ではジャスティン様のためのお時間を作りますわ」
「プランは僕にお任せください」
子供のように嬉しそうに笑うジャスティンにエレオノーラは王宮で常に穏やかな態度の青年は人違いだったかと疑念を抱く。
突っ込んでも事態が悪化する不安に襲われたエレオノーラはジャスティンに付き合うことにした。
エレオノーラは毎日ジャスティンのプランで逢瀬を重ねた。
ジャスティンの選ぶ場所はエレオノーラにとって初めてばかりで、突拍子のない言動や行動力に驚かされても不快さはなく、有意義な時間だった。
逢瀬を重ねるごとにエレオノーラはジャスティンの目元のクマが濃くなっていることが気になってたまらなかった。
帰宅の馬車の中でエレオノーラはジャスティンに静かに告げた。
「ジャスティン様、お休みになってくださいませ。目元にクマがありますよ。私に会いに来られる時間を睡眠に使ってくださいませ」
「エレオノーラ様が僕のことを心配してくれるなんて!!感動で、さらに頑張れそうな気がします。こんなときは良質な宝石を発掘できる気がします」
やる気に満ちたジャスティンの表情にエレオノーラは首を横に振った。
「発掘!?気のせいですわ。お休みに、いえ、お気持ちは変わりませんのね。時間が空いた分だけ、他のことをされるなら、私の傍で休んでくださいませ」
「え?」
「明日は遠乗りではなく、ピクニックに行きませんか?馬ではなく、馬車で。よろしければ明るいお時間は私にくださる?」
「喜んで!!」
「ありがとうございます。準備は私にさせてくださいませ。明日、いつもの時間にうちでお待ちしてますわ」
エレオノーラは初めてジャスティンとの時間に要望を言った。
破顔するジャスティンに微笑みながら、目の前の男を休ませるための思考を巡らした。
エレオノーラはジャスティンのエスコートを受け、美術館を観覧していた。
王子の婚約者として視察するのは国立美術館のような大きな美術館ばかりだった。
生まれて初めての小さい美術館には、エレオノーラの見たことのない作品で溢れていた。有名な作品の模写は一つもなく、ジャスティンの解説を聞きながら作品の鑑賞を楽しんだ。
王子の婚約者として相応しい言葉しか選ぶことはなかったエレオノーラは私的な見解ばかりのジャスティンの解説に笑みをこぼした。
ショーケースに入ったガラスを材料にした一輪の薔薇の彫刻にエレオノーラは足を止めた。
「美しいですよね。中の薔薇が傷つかないように、作者は耐久性に優れたショーケースも作られました。このショーケースは外すことができず、中の薔薇に触れたことがあるのは作者だけ。作者不明の幻の作品です」
「ガラスを彫刻できる芸術家は発表されてませんよね?」
「ええ。誰も真似できない技術を力のないものが持てば、妬まれ、奪われてしまう。わかっていたから作者はどんな手段でも壊せないショーケースで囲ったのでしょう。美しいものに相応しくない者が触れることを許さないと…。エレオノーラ様のようですね。美しさはエレオノーラ様のほうが優れていらっしゃいますが」
ジャスティンの称賛をエレオノーラは微笑みながら流す。
賛辞を当たり障りなく流すのは、元王子の婚約者であり、公爵令嬢のエレオノーラには簡単なことである。
「楽しい時間が過ぎるのは早いですね。名残惜しいですが、そろそろ帰りましょう」
ジャスティンの手配で貸し切りの美術館での鑑賞を終えたエレオノーラは馬車に乗った。
エレオノーラの向かいに座るジャスティンがそっと箱を取り出し、中を開けた。
「こちらをエレオノーラ様に」
箱の中には大きなルビーが輝くネックレス。
男から高価なもの貢がれることに優越感を覚える貴族令嬢もいるが、慎ましい王子妃として教育を受けたエレオノーラは違う。
正当な理由もなく、品行保持に必要なもの以外を手に入れることを望まないエレオノーラは高値のネックレスを贈ろうとするジャスティンから差し出されたネックレスに手を伸ばさない。
「受け取れません」
「エレオノーラ様のことを想いながら、発掘し加工しました」
照れた顔をするジャスティンの言葉にエレオノーラは公爵子息らしくない内容を聞き取り、聞き間違えかと問う。
「発掘?加工?」
「エレオノーラ様への贈り物に僕以外の手垢がつくなど許せません。加工を終え、最後は手袋をしてきちんと磨いておりますので、手垢が一切ついておりますので、心配しないでください」
「手垢の心配などしていません」
「本当は僕がつけて差し上げたいのですが、まだその権利はありません。受け取っていただけないのであれば、ここで砕き、捨てるしかありません」
宝石を粉砕する道具を椅子の下の箱から取り出したジャスティンにエレオノーラは目を見開く。
馬車の中で宝石を砕く準備をしているジャスティンにエレオノーラは慌てて口を開いた。
「馬車に積んでありますの!?え?砕く!?ありがとうございます。ありがたくいただきますので、これで最後にしてくださいませ」
「エレオノーラ様に受け取っていただけるなんて光栄の極みです。ありがとうございます。うちは王国一種類豊富な鉱山を抱えておりますので、ご安心を」
ネックレスを受け取ったエレオノーラに嬉しそうに破顔するジャスティンを見て、エレオノーラは不吉な予感に襲われた。
「ルビーでなければいいというわけではありませんよ。贈り物はいりませんので」
「すでにエレオノーラ様のために制作中のものがあるのです。エレオノーラ様に受け取っていただけないなら、捨てるしかありませんね。美しいエレオノーラ様が身に着けるのに相応しくないなら当然ですよね」
エレオノーラに贈るか捨てるしか選択肢の無いジャスティンが納得したようにうなずいているので、エレオノーラは首をゆっくり横に振った。
「でしたら、それだけは買い取らせていただきます」
「かしこまりました。僕はお金はいらないので、エレオノーラ様の時間を売ってください」
「え?お金ではいけませんの?」
「お金は有り余ってますのでいりません。受け取っていただくだけで幸運の極みですので、もしくは」
ジャスティンが突拍子のないことを言うことをすでに学んだエレオノーラは言葉を遮った。
「わかりました。ではジャスティン様のためのお時間を作りますわ」
「プランは僕にお任せください」
子供のように嬉しそうに笑うジャスティンにエレオノーラは王宮で常に穏やかな態度の青年は人違いだったかと疑念を抱く。
突っ込んでも事態が悪化する不安に襲われたエレオノーラはジャスティンに付き合うことにした。
エレオノーラは毎日ジャスティンのプランで逢瀬を重ねた。
ジャスティンの選ぶ場所はエレオノーラにとって初めてばかりで、突拍子のない言動や行動力に驚かされても不快さはなく、有意義な時間だった。
逢瀬を重ねるごとにエレオノーラはジャスティンの目元のクマが濃くなっていることが気になってたまらなかった。
帰宅の馬車の中でエレオノーラはジャスティンに静かに告げた。
「ジャスティン様、お休みになってくださいませ。目元にクマがありますよ。私に会いに来られる時間を睡眠に使ってくださいませ」
「エレオノーラ様が僕のことを心配してくれるなんて!!感動で、さらに頑張れそうな気がします。こんなときは良質な宝石を発掘できる気がします」
やる気に満ちたジャスティンの表情にエレオノーラは首を横に振った。
「発掘!?気のせいですわ。お休みに、いえ、お気持ちは変わりませんのね。時間が空いた分だけ、他のことをされるなら、私の傍で休んでくださいませ」
「え?」
「明日は遠乗りではなく、ピクニックに行きませんか?馬ではなく、馬車で。よろしければ明るいお時間は私にくださる?」
「喜んで!!」
「ありがとうございます。準備は私にさせてくださいませ。明日、いつもの時間にうちでお待ちしてますわ」
エレオノーラは初めてジャスティンとの時間に要望を言った。
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