佐々木玲人と富田涼太の薄いお話。

春待ち木陰

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「……ああ」と涼太が不意に納得の声を上げた。

「玲人くんのおちんちんてさあ、ちっちゃいっていうか埋まっちゃってんだなー」

 涼太は「タケノコみてえ」と笑った。

「これ。根本のお肉を掘ったらさ、実はけっこうでっかいんじゃねえ? 玲人くんのおちんちんて」

「え?」と玲人は涼太の顔を見た。……嘘や嫌味や冗談でそんな事を言っているわけではなさそうだった。

「はじめて……」と気付けば玲人は声に出していた。

「あ?」と涼太に見られて玲人は口をつぐむ

 ……ペニスが大きいだなんて初めて言われた。自分でも小さい小さいと思っていたから。密かに男としての悩みでもあったのだ。弱気の元でもあったかもしれない。

 自身の男の象徴が実は大きかったのだと知った玲人は、単純なもので、

「……富田君。何で富田君は俺をいじめるんだ?」

 急に涼太に文句を言う事が出来てしまった。今なら言えた。

「俺が富田君に何をしたっていうんだ。俺が太ってるからか? 俺がデブで富田君に何か迷惑を掛けたかい?」

 饒舌じょうぜつまくし立てる。

「……――」

 きょとんとした後、涼太は呟いた。

「――……は?」

「いや。『は?』じゃなくて」

「なになになに。え? 俺が玲人くんの事を? え? イジメてねえじゃん?」

「する方はイジりとかのつもりかもしれないけど。されてる方は」

「イジってもねーし。は? なに? なに言ってんの?」

「富田君の方こそ『なに言ってんの?』だよ」

「――愛情表現じゃん!」

 涼太が叫んだ。珍しく涼太の顔は真っ赤に染まっていた。……そんな顔の富田涼太を玲人は初めて見てしまったかもしれなかった。

「……はあ?」と玲人は大きく口を開いた。

「玲人くんて、ぶよんぶよんしてモチモチしてて超キモチ良いじゃん。……スキなんだけど。ていうかスキじゃなきゃ触らねえし。玲人くんだって、俺に触られてキモチ良くなってたじゃん。喜んでたじゃん。エロい声出して、ゼッタイにキモチ良かったじゃん? アレでキモチ良くないとか嘘だし。分かるし」

 言い訳をするように涼太が言った。

「俺がキモチ良くて、玲人くんもキモチ良かったら『ういんういん』てヤツだろ?」

 涼太は更に「『ういんういん』てちょっとエロい響きしてね?」などとも抜かしていたがその発言は抜かスルーしたとしても、前文だけで十分、玲人は「…………」と呆気にとられてしまっていた。開いた口が塞がらない。

「なに? イヤだったわけ? もしかして。玲人くんはされんのがイヤなわけ?」

 急な強気を涼太が見せる。玲人には単なる逆ギレにしか見えていなかった。

「――わかったよッ」

 唇を尖らせながら涼太が言った。やっと解放されるのか、あわよくば今後は触られなくなるのかと玲人がほっと息を抜いたのも束の間、涼太は、

「じゃあ。今日は玲人くんがスル方な」

 珍妙な事を言い出した。……俺にこの手で触れと言うのか。玲人はいつか何処かで見掛けた誰かの「名台詞」みたいな事を思った。

 玲人が拒否するように両手を自身の胸元に寄せていると涼太は非常に素早い動きでもってズボンとパンツを脱ぎ捨てた。下半身を丸出しにする。

「はぇ――ッ!?」と玲人は驚きの声を大きく上げた。

 白いベッドを背にして向かい合う玲人と涼太。その二人共が同じ格好をしていた。上半身には制服を着込んだまま下半身を丸出しにしていた。……嫌なペアルックだ。

「富田く、なにしてん――」とまで言ったところで玲人は「――ひッ」と息を飲む。

 156センチと小柄な体格の富田涼太の股間にぶら下がっていたイチモツは、かなりの大きさをしていた。でッかかった。そして雄々しく屹立していた。……本当に? これは本物のチンコなのか? と疑いたくなってしまうくらいの大きさだった。

 全体的に大柄な上、ペニス全長の半分以上が贅肉に埋まっていたせいで実際よりも小さく見えてしまっていた玲人の例の反対で、富田涼太は身体が小さくて痩せぎすだから相対的にイチモツが大きく見えている――というわけでもなかった。……しっかりとデカい。

 ペニスがこれだけデカいとなると……ああ、富田涼太の普段からの態度の強引さにも何だか納得をしてしまえる。男にしか分からない感覚だろうか。男にとってペニスの大きさとは自信の源にもなってしまうのだ。異論は認める。例外もあるだろう。だが「小さい」事を気にして萎縮してしまっていた玲人が思うには、そうだった。

「……ごくり」と涼太のイチモツを見詰めたまま玲人は生唾を飲み込んだ。畏怖だろうか。目が離せない。

 玲人の露骨な視線に気が付いた――気が付かないわけはない――涼太が、

「あー……。なんか悪ぃなー。俺のちんちん、かわいくねえよなー」

 バツ悪そうに頭をかいた。玲人は何も言い返せなかった。

 そのイチモツに比べれば確かに、涼太からは「実はけっこうでっかい」などと言われてしまった玲人のペニスも結局は「赤ちゃん」みたいで「かわいい」かった。

 ……玲人の気持ちとペニスが同時にしぼむ。しょぼくれる。

「あん? 玲人くんのおちんちん、ちっちゃくなっちまったぞ?」

 涼太が無邪気に事実を述べる。玲人の気持ちとペニスは更に下を向いてしまう。

「おい。がんばれよ。元気出せー」

 言いながら涼太が玲人のペニスを握る。しっかりと握る。小さなその手にお似合いな小さなペニスを揉み込むみたいにニギニギと握って、少しでも大きく硬くしようとしてくれていた。玲人はされるがまま、

「はふッ……ふふんッ……」

 鼻から口から艶っぽい息を吹き出していた。

 玲人の頭は思考を拒否するようにぼんやりとしてしまっていた。熱がこもる。

「……はうんッ。あッ、あッ……」

 他の生徒達は皆、真面目に授業の真っ最中だった。玲人と涼太の二人の他には誰も居ない保健室内には玲人の切ない喘ぎ声だけが響き続けていた。しばらくの後、

「おーおーおー。やっとでっかくなったなー。硬くなった」

 玲人のペニスは再び勃起した。

 勃起した玲人のペニスを大事そうに掴んだまま涼太は、

「んじゃ、いくぞー」

 自身の体勢を変える。

「え? え? え?」

 戸惑う玲人に構わず、涼太は玲人の腰に跨る。玲人も涼太も下半身には何も穿いていなかった。

「え? ちょ、嘘だ――」

 真っ直ぐに上を向いた玲人のペニスの先端に涼太の尻穴が触れる。

「――ああぁッ!?」と玲人の声が裏返る。涼太も「んんッ」と声を漏らした。

 ゆっくりと玲人の下腹部に涼太の尻が乗る。ずずずず……と玲人のペニスが涼太の尻穴に入り込む。下腹部の厚い肉を涼太の尻が押し潰す。贅肉に隠されていた玲人のペニスがその大きさを取り戻すと同時に涼太の尻穴に埋没していく。佐々木玲人は、この瞬間――、

「入った……な。玲人くん。わかるか……?」

 ――童貞を喪失した。してしまった。


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