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春待ち木陰

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05(終)

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 教室。ジョン・スミスとクラスメート達の会話。山上愛菜。担任教師。

「Why?」『どうして?』

「ん? どうした、ジョン」

『どうして皆、笑っているんだい? 彼女は何を言ったんだい?』

「ああ。山上が自分のばあちゃんの事を『おばあちゃま』とか言ってるから」

『ん?』

「ええと。なんて説明したら良いんだ」

「馬鹿丁寧な言葉遣いがウケるのよ」

「今更、お嬢様気取りでな」

『んん? 上品に振る舞って、自分の家族を丁寧に呼んだ事が面白いのかい? よく分からないな。何がそんなに可笑しいんだ? 彼女は家族を愛してるだけだろう?』

「あはは。ウケる。さすが外国人」

「止めてくれ。何か聞いてるこっちが恥ずかしくなるって」

「凄えな、ジョン。愛してるとか日本人は軽々しく言わねえから。普通は」

『そうか。その「普通」じゃないから彼女は笑われていたんだね。今の僕みたいに。そういう理由なら僕にも何となく分かるよ』

「お。分かる? マジで?」

「万国共通」

『日本人は不思議だね。伝える為に言葉があるのに言わない事が「普通」だなんて。伝えたくはならないのかい? 愛してるっていう大事な気持ちを』

「ひー、ひー。もう止めて。おもしろ過ぎるから」

『僕は好きだけどね。彼女の愛情表現。素晴らしいと思うよ』

「ラブとか言わないで。ネイティブな発音で。サブイボ出るって」

「あははははは」

『困ったな。そんなふうに笑われ続けたら止めちゃうかもしれないじゃないか。折角の彼女の素晴らしい愛情表現が無くなってしまうのは残念だよ。ああ。そうだ。日本人の皆がそうやって笑うなら「外国人」の僕が彼女に言ってあげるよ。幾らでも。君は素晴らしい。君の言葉は素敵だ。僕は君が大好きだよ』

   

「Aina. I love you」


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