ジョブがまさかの【魔性の女】

くぅ

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異世界転移・アルフェナ王国編

1話

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私が右手を振る。姿見の中の女も左手を振る。
私が左の頬をつねる。姿見の女も右の頬をつねる。
私が足踏みをする。姿見の女も足踏みをする。
間違いなく、私と姿見の女はリンクしている。
つまり、私と姿見の女はイコールで結ばれて、いる…?

…いや、いやいやいや。落ち着け、落ち着け私。もしかしたらこの鏡に異世界御用達の魔法とやらがかかっているのかもしれない。ほら、鏡よ鏡~、みたいな?白雪姫的な?女性を喜ばせるサプライズ的なものが!かかっているだけかもしれない!

そんな一縷の望みをかけて、備え付けの桶に水を張りもう一度覗き込む。
するとそこには、やはり湿った髪が異常なほど色っぽい、それはもう色気ムンムンな美女がいた。
恐る恐る。もう一度、その美女に向かって手を振ってみる。やはり美女も同時に同じ方向に、同じように手を動かした。…これは、もう、ほぼほぼ決まりと見ていいだろう。

凛は最早、途方に暮れるしかなかった。美人を見ては自分の平凡さを呪ったことは…そりゃ少しはあるけれど。でも。こんな明らかに国一つは傾けてるでしょって感じの美女になりたい訳ではなかったのだ。
それと同時に納得もした。あー、あの視線の数々はこう言うことだったのかー、と。そりゃ見るし、メイドさんも頬を赤らめるわ、と。
だって自分が相手の立場だったら絶対同じようになるもの。ただ、今はその対象が自分なもので、違和感とか居心地の悪さしか感じないが。

そこまで思考を巡らせて、凛は急に無になった。
自分がやはりこの美女だということを改めて認識してしまったからである。
そしてそのまま凛は、無心で身体を洗い始めた。

今は何も、考えたくない…。


















それから無心で湯に浸かりながらぼーっとすること、30分ほどだろうか。いい加減のぼせた凛がのろのろと風呂から上がると、凛がそれまで着ていた安物の下着だとか、くたびれたスーツだとかはいつの間に消えていて、代わりとばかりに真っ白なタオルと黒のネグリジェが備えてあった。つまりはこれを使え、ということだろう。
今まで見たことが無いような高級感溢れるタオルとネグリジェに、凛の心はいくらか上昇した。

「う、わ…ふっかふか…」

恐る恐る、まずタオルを顔に当てれば、それは家のゴワゴワなタオルとは全く違う柔らかさで私をもてなしてくれる。次に身体、髪と拭き、ネグリジェに袖を通せば、シルクの滑らかな肌触りが私の身体を包んだ。
まるで、どこかのお姫様にでもなった気分だ。

そしてそのまま脱衣所を後にして部屋に戻ると、例の恋する乙女のメイドさんがやはり頬を染めながら私に対して一礼をした。

「改めまして。リン=ヤマウチ様のお世話を担当させていただきます、メアリーと申します。リン=ヤマウチ様がこの世界にいち早く馴染まれますよう、精一杯のお手伝いをさせていただければと思います」

そう言って、もう一度正面を向くメイドさん…メアリー。
だが、私にはとても、とても不思議で仕方がないことがある。

_____私、名乗ってないよね…?

やはり異世界というのは、初っ端からこういうことがあるもの、なのだろう…か…?
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