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第一章

自分に甘くするのは良し悪し。

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しかし待てども王子様らしき人は来ない。
ご飯も美味しくて、お城の景色を堪能しながらのんびりしてたがちょっと焦り始めた。

こういったパーティーは身分の低い者から順番に帰らされるらしく、下級貴族が名残惜しそうにしながら帰っていく姿も見え始めてきた。

「王子様、来られないですわね。」

「もしかしたらホールから今日は出られないのかもしれませんわね。」

モブ達も諦めムードだ。

「王子様に会えなかったのは残念ですが、でも私はみなさんとこうやってお城で過ごせて楽しかったですわ。」

「セレナ様……」

セレナ様、本当に良い子すぎる。
私の勘違いでこの子が主人公だったのではないか。


2層に住んでいる私達も帰る時間となり、みんなと別れてお兄様を探しにホールに向かおうとしていたら、噴水の近くの茂みから少年が飛び出してきてぶつかってきた。

「痛ぁ……」

「すまない、急いでいて……大丈夫かい?」

そう言いながら手を差しのべてくれた少年は、周りに花が咲くレベルのイケメン。
ってか金髪の碧眼、この人はもしや例の王子様では!?

「あ、はい、大丈夫です。」

「君は………」

「ジュリア=アルファーノと申します。」

「アルファーノ伯爵家だね、そのドレスのお詫びは必ずしよう。付き添えなくて申し訳ない。」

そう言い残すと王子様(仮)は走り去って行ってしまった。

「って、ドレスのお詫び……?」

あー、うわー、ドレスを見ると転けた場所が悪かったのか泥まみれの裾が破れてしまっている。
これはお姉様の嫌味どころじゃすまされない。
第一こんな格好で馬車にすら向かうと笑い者にされかねない。

どうにか泥だけでも落とせないかと噴水の水でドレスを洗っていると、声をかけられた。

「ジュリア?どうしたのそのドレス!?まさか誰かに襲われたのですか?」

「セレナ様、あー、これはその……盛大に転けてしまって……」

「怪我はない?取り敢えずこのままでは帰れないでしょうから、誰か呼びましょう。」

テキパキとセレナ様が近くの侍女に指示を出し、そのままセレナ様の屋敷で着替えさせてくれた。

「今日はもう遅いから。このまま私の屋敷に泊まっていきなさい。アルファーノ伯爵には伝令を出しておくわ。」

「何から何までありがとうございます。」

「良いのよ、お友達ですもの。」

笑顔が可愛いセレナ様、あ、でもこれだけは聞いとかないと。

「セレナ様、今日はあの後、王子様とお会いになれましたか?」

「それがね、残念ながら一目も見れなかったのよ。」

あれ、おかしいな。この生誕祭で会うと思ってたんだけど……まぁ幼馴染みだから来年もまだチャンスはあるだろうし、今日ではなかったのかな。


まだまだ私は甘く考えていて、いつもより豪華なセレナ様のお屋敷でのんびり過ごさせてもらった。
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