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壊された友情──恥辱の公開交尾
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「……なあ、ジル」
「なんですか?アルテュール」
「君は、今後私に何があっても……どのような無様を曝す事になっても、ついてきてくれるか?」
つと、執務中の手を止めて神妙な顔で言葉をかけてきた男に、
「何を今更」
呼びかけられた青年──しばしの間、男の前任として大元帥の地位にあった事もある戦友は、笑って答えた。
「私は貴方の影です。
貴方が貴方で居る限り、貴方の行くところ、どこまでもついて行きますとも。
貴方がこれから成す偉業を支える事にこそ、私の喜びがあるのですから」
「そうか……」
一切の迷いなく言い切った青年に、古の騎士王の再来とまで言われる金髪の美丈夫は心底安心したように、
「ああ……そうか。
ありがとう……ジル……」
何か眩しいものでも見るかのように目を細め、柔らかく微笑んだ。
尊敬してやまない男が見せる、どこか儚げな表情に、青年は思わずどきりとする。
「では、今度、少々やっかいな面倒事につきあってもらえるかな?」
「面倒事?」
「ああ、君も一緒に居てくれると、とても心強いし……とても、嬉しい」
一瞬──大元帥の言葉の語尾に、どこか普段とは違う「何か」を感じつつも、今は彼の腹心として仕える高潔な騎士は、友であり上官である男の頼みに応じたのだった。
「はい。もちろんご一緒しますとも。
私がお役にたつのであれば、なんなりと御命令を。アルテュール」
■■■
正直、このところのアルテュールはおかしい。
先日のやりとりを思い返し、大元帥アルテュール・ド・リッシュモンの懐刀たる騎士──ジル・ド・レイは思う。
さすがに軍で指揮を執っている際はそうでもないが、この間のように机仕事をしている時や会議中の時、心あらずというか、どこかここではない遠くを見ているような表情をしている事が度々ある。
そして、時折吐く、妙に艶めいた溜息。
友人に違和感を感じているのはまだ自分くらいのものだろう。ごく近くにいるからこそ分かる、微量の齟齬。歯に物が挟まったような落ち着かなさ。
また、もう一つ。最近とみに気になっているのは、気が付くと自分に注がれている彼からの視線だった。
それもどこか熱や何らかの期待を帯びているような……いや。彼に限って。まさかとは思うが。
一瞬脳裏を過ぎった考えを、頭を振って否定する。
今は大事な時だ。
何かあったのなら、自分が動いて不調和の素を絶たねば。
彼は国にとって大切な人間なのだから。
現・大元帥に負けず劣らず美貌と才能に恵まれた青年は、改めて決意する。
「しかし……一体こんな場所に何が……」
上官に指示された場所は、うらぶれた繁華街の終着点──客引き女達がさざめき合い、男達が一夜の快楽を求め集う娼館が立ち並ぶ界隈だった。
周囲が自分に寄せる好奇の視線にうんざりする──ああ、わかっていれば顔を隠してきたのに。
腰まで伸びる長い白髪に、一見美女と見紛うまだ幼さの残る中性的な美貌──こんな場所でなくても、自分の容姿がどれだけ目立つかは、重々把握していた。
「……ジル殿ですね?」
前触れもなくかけられた声に振り返ると、フードを深々と被った男が背後に立っていた。
「どうぞこちらに」
男が同行をうながす先に、あまり流行っていないらしい一軒の娼館がある。
「……大元帥閣下がお待ちです。
ええ……それはそれは、首を長くしてお待ちですよ」
口元に笑み。
何か嫌な笑い方だな、とジルは感じた。
「…………」
入り口は昏く、中は見えない。
そのありふれた小さな扉が、その時の青年には何故か、現世にぽっかりと空いた地獄への入り口のように思えた。
■■■
「あっ♡あっ♡じるッ♡♡じるッ♡♡
はぁっ、はーーッ……♡♡お゛っ、お゛ぉっ♡♡ひ……っ♡ひぃっ♡ひぃ゛いいッん♡♡」
「あ、あああ、アルテュール……っ、いやぁ、いやだぁあっ………!」
品の無い男達が薄笑いを浮かべる中──青年は最も敬愛していたはずの男に組み敷かれ、悲鳴を上げていた。
「あはは、無駄だよムダ。
アルテュールちゃん、一度キマっちゃうとちんぽのことしか考えられなくなっちゃうからね」
普段は一部の隙一つ見られない着衣は乱れ放題、汗じみた金髪は額に張り付き、凛々しく引き結ばれていたはずの口元は、情欲に蕩けきった笑みを浮かべ、薄く開いた唇からは、唾液と精液が入り混じったものが零れ落ちている。
群青色の瞳は熱く潤み、官能に支配された彼の視線は、決して目の前のジルを見てはいない。
「んん…!?
あっ!やめ………ぁ、駄目だ!アルテュールっ、もう無理っ…ぐっ…うっ…ぁあっ…!」
「あ、じる、のなかっ♡♡なかっ♡しゅご、しゅごいいっ♡♡……っくぁ、ああ゛あんっ♡んん゛っお゛っ♡♡
ひもひぃ゛ッ……♡ひもひいの゛ぉっ♡♡」
目の前の友の姿と自分がたった今置かれている状況の衝撃に、ろくな抵抗も出来ないまま身体を開かれていく青年と、ただ己が抱く昏い望みを肉悦に変えて打ちつける獣と化した男の声が重なり合い、粘膜が擦れる卑猥な音と共に、悲愴で滑稽なハーモニーを奏でる。
「良かったねー、アルテュールちゃん。お友達が来てくれて」
「ジルちゃんとずっとえっちしたかったんだもんね♡」
「俺達と一緒にしていても、ずっと名前呼んでたもんな」
「あんまり名前を呼ぶもんだから、俺達も気になっちゃって」
「そしたら、こんな美人が来てくれたとは驚きだぁ♪」
二人を取り囲んだ男達が口々に言う。
友の身に起こった悲劇を察して、ジルは気が遠くなりそうだった。
「き、貴様ら……アルテュールに何をした!」
「別に。最初はちょっとお薬をもったけど、そのあとアルテュールちゃんが俺達のちんぽ奴隷になったのは、本人の意志ですし」
「もうおしりでいかないと満足出来ないから、お仕事に支障が出ないように、毎日掘ってあげてるんだよね」
「な、なんてことを……うぐっ!」
ふいに、まだ雄の匂いがする唇に、青年の言葉が塞がれる。
歯列を割り、舌を絡め取られ、ジルが苦しげに呻く。
「じる……っ♡しゅきっ♡♡しゅきぃい♡」
「おお、愛の告白だあ♪」
「相手はドン引きしてるみたいだけど」
「まあ、素面じゃそうだろうね。男だし」
「イケメンなのにもったいないなぁ……
つうか、フランスの将軍の選考基準て顔も含まれてるわけ?二人揃ってなんかムカツクんですけど」
「はは、でもそんな美形もちんぽ銜えてハアハアしている変態じゃ台無しだよな」
呆然とする青年の唇を吸いながら、一心不乱に腰を動かし続けている麗しい性奴隷の姿に男達は嗤った。
変わり果てた友の様子に、ジルの目から知らず一筋の涙が零れた。
「でもさ、もう心配しなくてもいいよ」
「アンタもすぐにその気になるだろうからさ」
「ジルちゃんも一緒に楽しみましょー♡その方がアルテュールちゃんも嬉しいでしょ?」
「……い、ッぅぐ♡♡ふぅ゛うう♡ひっ♡♡もっ♡お゛ぉお♡♡でるっ♡♡でちゃ、ああ゛ぁ♡♡」
「もう聞いちゃいねえし。
……仕方がねえなぁ、ジルちゃん、ちょっとチクッとするけど我慢してね」
男が懐から針を取り出す。
薬物と一種の魔術的な呪いが込められた毒針を。
「うッ……あっ……よせっ……私まで変にな…ッ…るっ…んんっ…ぁっ」
「あ……っ♡♡じる♡じるっ♡♡」
「そろそろ俺達の相手もしてね、アルテュールちゃん」
ジルの中に己の一部を収めたままの官能に狂った美丈夫──リッシュモンの背後に男が近づき、そのまま猛ったものを彼の蕩けた秘所に突き入れる。
「ほらほら、これでまたアルテュールちゃんのも元気いっぱいだぁ♡」
「ん゛♡♡ぅ゛う、うぅう……♡♡んお゛ぉお♡♡♡
ちんぽぉっ♡♡おちんぽ、きたぁあ゛っ♡お゛ッ♡んお゛ッぉおお……♡♡♡」
「報酬はがっぽり貰ったし、おまけに可愛いちんぽ奴隷が二人も出来て、俺達とっても嬉しいよ♡」
「二人してもっとド変態に調教して、金払いの良さそうな聖職者の相手をさせて稼ぐのもいいかもね」
「あと普段コイツらに顎で使われている下っ端の傭兵の前に放りこんだら面白いかも」
「それも楽しそうだなぁ」
ともあれ。
男達の気紛れがどこに向かうにしろ。
欲望の生贄にされた二人の男達が辿る運命に希望が見えない事だけは確かであった。
■■■
「あ、あるひゅーるっ♡♡ある、あるぅっ♡
はー……ぁあっ♡んっんん゛っ♡♡」
白い絹糸のような長髪を振り乱して、美貌の騎士が甘い声で啼く。
「ゆるひれ……♡♡もっ♡ぐぽぐぽやらあぁ……♡♡いくっ、イくっ♡♡ッ」
「んー、ジルちゃん、今入れてるのは俺なんだけどなぁ」
ぷっくりと膨れた乳首をきゅっと摘まんでやると、首筋を仰け反らせ、一際高く騎士──ジルが嬌声をあげる。
「ひっ♡ひぃっ♡♡ひぃ゛いいッん♡♡あっ♡ああん゛っ♡♡」
「お、締まりが良くなった♡
若いっていいねえ。可愛いよお、ジルちゃん♡」
男に跨り、激しく腰を振る青年の下肢の中心で、中途半端に勃ち上がったものがぷらぷらとだらしなく彼の腰の動きに合わせて揺れている。
先程から精液を吐き出すこともなく、男達に突き動かされるままに、青年は達し続けていた。
「しっかし、こちらは既に後ろが開発済みだったとは驚きでした♡
しかも凄い名器だし♪」
「最初こそ強情だったけど、堕ち始めたらあっという間だったよね~
メスイキしまくりじゃん、コイツ」
「おッ♡おッ♡おッ♡♡ッぉおおぁああっ♡♡
も、もぉっ♡♡あたまっ♡馬鹿にぃ゛♡なるぅ゛う♡♡あ゛っ、あ゛──♡♡」
白髪の青年は身体をがくがくと振るわせ、またしても呆気なく果ててしまう。
理知的だった碧の瞳は虚ろで、唇からは常の彼であれば耳を塞ぎたくなるような下品な言葉しか出てこない。
「はは、もうとっくに馬鹿になっちゃってるでしょ、ジルちゃん。
アルテュールちゃんもがっかりだよ、ねえ」
もはや自らの快感を追う事しか頭にない青年の姿に苦笑しながら、もう一人の男が自分の男根に夢中で唇を吸い付かせている美丈夫に語りかける。
「ん……っ♡♡うう゛っ♡ふはぁ♡♡くっ……んんっ♡♡」
すぐに自らを犯す事になるであろう男のものにうっとりと舌を這わせながら、空いた片方の手で自らの熱くなった雄の証を慰めている肉欲の奴隷に、友を思いやる心など残されているはずもなく。
「アルテュールちゃんもジルちゃんにぱんぱんして欲しかったのにねぇ?」
「ふぅっ♡♡あぅ、うう゛んっ♡♡♡」
「ジルちゃんのちんぽ、まともに勃たないんだもん」
「あ、はぁ、う、うぅ゛う♡♡」
「しかも潔癖そうな顔して、実際は知らない誰かに使い古されたおさがりだったんだもんね。
酷い話だよねぇ?」
「んぁ……♡」
「でもアルテュールちゃんはジルちゃんのこと好きなんでしょ?泣かせるよね」
「んんっ♡♡」
「大丈夫だよ、俺達も二人を差別したり、引き離したりしないからさ。
……ほら、またハメハメしてきな♡」
散々に弄ばれ、ボロ屑のように床の上に転がされたまま、達した余韻に浸っている白髪の青年を男が指し示す。
──自分のせいで、巻き込まれた大切な友の姿を。
「あ……」
その時。
一瞬、正気を失ったはずの大元帥の群青の瞳に理性の光が灯り──
「ジル……」
思わず腕を差し伸べるが、
「す、すまな……あああっ…!」
「はい、お薬追加。
二人とも気を失うまで楽しんでおいで、ふふふ……」
──彼が流した涙は、罪の意識と悔悟の念と共に、儚くも暴力的な催淫剤の効果に散り、その理性は再び絶望の淵へと沈んでいくのであった。
■■■
「はぁ……♡はぁ……♡♡あるてゅーるっ♡♡」
「んっ♡♡じるっ♡」
「きもひぃい♡♡きもひっ♡♡あっ♡
そこぉ♡♡ずんずんってぇ♡♡ガン突きやべでぇえ♡♡……もっ♡きちゃ……ッ♡♡はぁ……♡♡はぁ♡んっ♡」
見目麗しい青年同士が、愛を囁き合い、寝台の上で激しく絡み合っている。
それは一見、どこか神話の一場面を思わせるような感動すら覚える場面であったろう……たくさんの下卑た男達の好奇の視線に曝されていなければ。
「さて……貴殿はどちらを買いますかな?」
「私は金髪の……リッシュモン伯の方を……もともと男に興味はありませんが、あの気取った男を好き放題に出来るとあれば話は別です」
「ほっほっほっ、では私は遠慮なくレイ男爵の方を……一度味わってみたかったのですよ。禁断の美酒というやつをね」
「貴方も詩人ですなぁ」
ひそひそと、それぞれの思惑を胸に高貴な客達が『商品』の品定めをしている。
その様子に男達がほくそ笑み、今夜だけでどれだけ稼げるのだろうと、心を躍らせている。
「こんな時代でも金はあるところにはあるんだねぇ……」
男の一人が皮肉げに言う。
「その金を軍備に回してやれば、あの二人が苦労することもなかったろうに」
「可哀想なもんだね……ま、当人達は今幸せそうだからいいんじゃないの?」
男の視線の先にあるもの──そんな自らが置かれた状況も同情を寄せられているのも知る事もなく、悲劇の下に結ばれた恋人達は、飽く事のない熱い抱擁を重ね、身体で愛を語り合う。
「ひう゛ぅう゛う……ッ♡♡じるっ♡ゆるひれっ♡♡イクっ♡またいぐゥうう゛うっ♡♡」
「んっ♡♡っお゛おっ♡あ゛っ♡♡
あるっ♡あるてっ、あるひゅーるのっ♡♡きたっ♡♡孕ませ汁きたあぁ゛っ♡♡」
高貴な騎士であったはずの彼等の口から飛び出すみっともない言葉の羅列に、客席がどっと沸く。
「俺達は金も入ったし、依頼人も改革が先延ばしになって喜んでたし、あの二人も満足そうだから、全て上手くいったんじゃねえの?
ホント、良い仕事したよね、俺達♡」
……舞台の上の男達が正気に戻った時、今度は口さがない噂話で溢れかえる宮廷の中で、いっそ死んだ方がマシだと思うような恥辱に塗れて過ごす事になるであろう、その生き地獄の日々を思い浮かべながら、それもまた一興だと男達は人の悪い笑みを浮かべたのであった。
「なんですか?アルテュール」
「君は、今後私に何があっても……どのような無様を曝す事になっても、ついてきてくれるか?」
つと、執務中の手を止めて神妙な顔で言葉をかけてきた男に、
「何を今更」
呼びかけられた青年──しばしの間、男の前任として大元帥の地位にあった事もある戦友は、笑って答えた。
「私は貴方の影です。
貴方が貴方で居る限り、貴方の行くところ、どこまでもついて行きますとも。
貴方がこれから成す偉業を支える事にこそ、私の喜びがあるのですから」
「そうか……」
一切の迷いなく言い切った青年に、古の騎士王の再来とまで言われる金髪の美丈夫は心底安心したように、
「ああ……そうか。
ありがとう……ジル……」
何か眩しいものでも見るかのように目を細め、柔らかく微笑んだ。
尊敬してやまない男が見せる、どこか儚げな表情に、青年は思わずどきりとする。
「では、今度、少々やっかいな面倒事につきあってもらえるかな?」
「面倒事?」
「ああ、君も一緒に居てくれると、とても心強いし……とても、嬉しい」
一瞬──大元帥の言葉の語尾に、どこか普段とは違う「何か」を感じつつも、今は彼の腹心として仕える高潔な騎士は、友であり上官である男の頼みに応じたのだった。
「はい。もちろんご一緒しますとも。
私がお役にたつのであれば、なんなりと御命令を。アルテュール」
■■■
正直、このところのアルテュールはおかしい。
先日のやりとりを思い返し、大元帥アルテュール・ド・リッシュモンの懐刀たる騎士──ジル・ド・レイは思う。
さすがに軍で指揮を執っている際はそうでもないが、この間のように机仕事をしている時や会議中の時、心あらずというか、どこかここではない遠くを見ているような表情をしている事が度々ある。
そして、時折吐く、妙に艶めいた溜息。
友人に違和感を感じているのはまだ自分くらいのものだろう。ごく近くにいるからこそ分かる、微量の齟齬。歯に物が挟まったような落ち着かなさ。
また、もう一つ。最近とみに気になっているのは、気が付くと自分に注がれている彼からの視線だった。
それもどこか熱や何らかの期待を帯びているような……いや。彼に限って。まさかとは思うが。
一瞬脳裏を過ぎった考えを、頭を振って否定する。
今は大事な時だ。
何かあったのなら、自分が動いて不調和の素を絶たねば。
彼は国にとって大切な人間なのだから。
現・大元帥に負けず劣らず美貌と才能に恵まれた青年は、改めて決意する。
「しかし……一体こんな場所に何が……」
上官に指示された場所は、うらぶれた繁華街の終着点──客引き女達がさざめき合い、男達が一夜の快楽を求め集う娼館が立ち並ぶ界隈だった。
周囲が自分に寄せる好奇の視線にうんざりする──ああ、わかっていれば顔を隠してきたのに。
腰まで伸びる長い白髪に、一見美女と見紛うまだ幼さの残る中性的な美貌──こんな場所でなくても、自分の容姿がどれだけ目立つかは、重々把握していた。
「……ジル殿ですね?」
前触れもなくかけられた声に振り返ると、フードを深々と被った男が背後に立っていた。
「どうぞこちらに」
男が同行をうながす先に、あまり流行っていないらしい一軒の娼館がある。
「……大元帥閣下がお待ちです。
ええ……それはそれは、首を長くしてお待ちですよ」
口元に笑み。
何か嫌な笑い方だな、とジルは感じた。
「…………」
入り口は昏く、中は見えない。
そのありふれた小さな扉が、その時の青年には何故か、現世にぽっかりと空いた地獄への入り口のように思えた。
■■■
「あっ♡あっ♡じるッ♡♡じるッ♡♡
はぁっ、はーーッ……♡♡お゛っ、お゛ぉっ♡♡ひ……っ♡ひぃっ♡ひぃ゛いいッん♡♡」
「あ、あああ、アルテュール……っ、いやぁ、いやだぁあっ………!」
品の無い男達が薄笑いを浮かべる中──青年は最も敬愛していたはずの男に組み敷かれ、悲鳴を上げていた。
「あはは、無駄だよムダ。
アルテュールちゃん、一度キマっちゃうとちんぽのことしか考えられなくなっちゃうからね」
普段は一部の隙一つ見られない着衣は乱れ放題、汗じみた金髪は額に張り付き、凛々しく引き結ばれていたはずの口元は、情欲に蕩けきった笑みを浮かべ、薄く開いた唇からは、唾液と精液が入り混じったものが零れ落ちている。
群青色の瞳は熱く潤み、官能に支配された彼の視線は、決して目の前のジルを見てはいない。
「んん…!?
あっ!やめ………ぁ、駄目だ!アルテュールっ、もう無理っ…ぐっ…うっ…ぁあっ…!」
「あ、じる、のなかっ♡♡なかっ♡しゅご、しゅごいいっ♡♡……っくぁ、ああ゛あんっ♡んん゛っお゛っ♡♡
ひもひぃ゛ッ……♡ひもひいの゛ぉっ♡♡」
目の前の友の姿と自分がたった今置かれている状況の衝撃に、ろくな抵抗も出来ないまま身体を開かれていく青年と、ただ己が抱く昏い望みを肉悦に変えて打ちつける獣と化した男の声が重なり合い、粘膜が擦れる卑猥な音と共に、悲愴で滑稽なハーモニーを奏でる。
「良かったねー、アルテュールちゃん。お友達が来てくれて」
「ジルちゃんとずっとえっちしたかったんだもんね♡」
「俺達と一緒にしていても、ずっと名前呼んでたもんな」
「あんまり名前を呼ぶもんだから、俺達も気になっちゃって」
「そしたら、こんな美人が来てくれたとは驚きだぁ♪」
二人を取り囲んだ男達が口々に言う。
友の身に起こった悲劇を察して、ジルは気が遠くなりそうだった。
「き、貴様ら……アルテュールに何をした!」
「別に。最初はちょっとお薬をもったけど、そのあとアルテュールちゃんが俺達のちんぽ奴隷になったのは、本人の意志ですし」
「もうおしりでいかないと満足出来ないから、お仕事に支障が出ないように、毎日掘ってあげてるんだよね」
「な、なんてことを……うぐっ!」
ふいに、まだ雄の匂いがする唇に、青年の言葉が塞がれる。
歯列を割り、舌を絡め取られ、ジルが苦しげに呻く。
「じる……っ♡しゅきっ♡♡しゅきぃい♡」
「おお、愛の告白だあ♪」
「相手はドン引きしてるみたいだけど」
「まあ、素面じゃそうだろうね。男だし」
「イケメンなのにもったいないなぁ……
つうか、フランスの将軍の選考基準て顔も含まれてるわけ?二人揃ってなんかムカツクんですけど」
「はは、でもそんな美形もちんぽ銜えてハアハアしている変態じゃ台無しだよな」
呆然とする青年の唇を吸いながら、一心不乱に腰を動かし続けている麗しい性奴隷の姿に男達は嗤った。
変わり果てた友の様子に、ジルの目から知らず一筋の涙が零れた。
「でもさ、もう心配しなくてもいいよ」
「アンタもすぐにその気になるだろうからさ」
「ジルちゃんも一緒に楽しみましょー♡その方がアルテュールちゃんも嬉しいでしょ?」
「……い、ッぅぐ♡♡ふぅ゛うう♡ひっ♡♡もっ♡お゛ぉお♡♡でるっ♡♡でちゃ、ああ゛ぁ♡♡」
「もう聞いちゃいねえし。
……仕方がねえなぁ、ジルちゃん、ちょっとチクッとするけど我慢してね」
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「うッ……あっ……よせっ……私まで変にな…ッ…るっ…んんっ…ぁっ」
「あ……っ♡♡じる♡じるっ♡♡」
「そろそろ俺達の相手もしてね、アルテュールちゃん」
ジルの中に己の一部を収めたままの官能に狂った美丈夫──リッシュモンの背後に男が近づき、そのまま猛ったものを彼の蕩けた秘所に突き入れる。
「ほらほら、これでまたアルテュールちゃんのも元気いっぱいだぁ♡」
「ん゛♡♡ぅ゛う、うぅう……♡♡んお゛ぉお♡♡♡
ちんぽぉっ♡♡おちんぽ、きたぁあ゛っ♡お゛ッ♡んお゛ッぉおお……♡♡♡」
「報酬はがっぽり貰ったし、おまけに可愛いちんぽ奴隷が二人も出来て、俺達とっても嬉しいよ♡」
「二人してもっとド変態に調教して、金払いの良さそうな聖職者の相手をさせて稼ぐのもいいかもね」
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「それも楽しそうだなぁ」
ともあれ。
男達の気紛れがどこに向かうにしろ。
欲望の生贄にされた二人の男達が辿る運命に希望が見えない事だけは確かであった。
■■■
「あ、あるひゅーるっ♡♡ある、あるぅっ♡
はー……ぁあっ♡んっんん゛っ♡♡」
白い絹糸のような長髪を振り乱して、美貌の騎士が甘い声で啼く。
「ゆるひれ……♡♡もっ♡ぐぽぐぽやらあぁ……♡♡いくっ、イくっ♡♡ッ」
「んー、ジルちゃん、今入れてるのは俺なんだけどなぁ」
ぷっくりと膨れた乳首をきゅっと摘まんでやると、首筋を仰け反らせ、一際高く騎士──ジルが嬌声をあげる。
「ひっ♡ひぃっ♡♡ひぃ゛いいッん♡♡あっ♡ああん゛っ♡♡」
「お、締まりが良くなった♡
若いっていいねえ。可愛いよお、ジルちゃん♡」
男に跨り、激しく腰を振る青年の下肢の中心で、中途半端に勃ち上がったものがぷらぷらとだらしなく彼の腰の動きに合わせて揺れている。
先程から精液を吐き出すこともなく、男達に突き動かされるままに、青年は達し続けていた。
「しっかし、こちらは既に後ろが開発済みだったとは驚きでした♡
しかも凄い名器だし♪」
「最初こそ強情だったけど、堕ち始めたらあっという間だったよね~
メスイキしまくりじゃん、コイツ」
「おッ♡おッ♡おッ♡♡ッぉおおぁああっ♡♡
も、もぉっ♡♡あたまっ♡馬鹿にぃ゛♡なるぅ゛う♡♡あ゛っ、あ゛──♡♡」
白髪の青年は身体をがくがくと振るわせ、またしても呆気なく果ててしまう。
理知的だった碧の瞳は虚ろで、唇からは常の彼であれば耳を塞ぎたくなるような下品な言葉しか出てこない。
「はは、もうとっくに馬鹿になっちゃってるでしょ、ジルちゃん。
アルテュールちゃんもがっかりだよ、ねえ」
もはや自らの快感を追う事しか頭にない青年の姿に苦笑しながら、もう一人の男が自分の男根に夢中で唇を吸い付かせている美丈夫に語りかける。
「ん……っ♡♡うう゛っ♡ふはぁ♡♡くっ……んんっ♡♡」
すぐに自らを犯す事になるであろう男のものにうっとりと舌を這わせながら、空いた片方の手で自らの熱くなった雄の証を慰めている肉欲の奴隷に、友を思いやる心など残されているはずもなく。
「アルテュールちゃんもジルちゃんにぱんぱんして欲しかったのにねぇ?」
「ふぅっ♡♡あぅ、うう゛んっ♡♡♡」
「ジルちゃんのちんぽ、まともに勃たないんだもん」
「あ、はぁ、う、うぅ゛う♡♡」
「しかも潔癖そうな顔して、実際は知らない誰かに使い古されたおさがりだったんだもんね。
酷い話だよねぇ?」
「んぁ……♡」
「でもアルテュールちゃんはジルちゃんのこと好きなんでしょ?泣かせるよね」
「んんっ♡♡」
「大丈夫だよ、俺達も二人を差別したり、引き離したりしないからさ。
……ほら、またハメハメしてきな♡」
散々に弄ばれ、ボロ屑のように床の上に転がされたまま、達した余韻に浸っている白髪の青年を男が指し示す。
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「あ……」
その時。
一瞬、正気を失ったはずの大元帥の群青の瞳に理性の光が灯り──
「ジル……」
思わず腕を差し伸べるが、
「す、すまな……あああっ…!」
「はい、お薬追加。
二人とも気を失うまで楽しんでおいで、ふふふ……」
──彼が流した涙は、罪の意識と悔悟の念と共に、儚くも暴力的な催淫剤の効果に散り、その理性は再び絶望の淵へと沈んでいくのであった。
■■■
「はぁ……♡はぁ……♡♡あるてゅーるっ♡♡」
「んっ♡♡じるっ♡」
「きもひぃい♡♡きもひっ♡♡あっ♡
そこぉ♡♡ずんずんってぇ♡♡ガン突きやべでぇえ♡♡……もっ♡きちゃ……ッ♡♡はぁ……♡♡はぁ♡んっ♡」
見目麗しい青年同士が、愛を囁き合い、寝台の上で激しく絡み合っている。
それは一見、どこか神話の一場面を思わせるような感動すら覚える場面であったろう……たくさんの下卑た男達の好奇の視線に曝されていなければ。
「さて……貴殿はどちらを買いますかな?」
「私は金髪の……リッシュモン伯の方を……もともと男に興味はありませんが、あの気取った男を好き放題に出来るとあれば話は別です」
「ほっほっほっ、では私は遠慮なくレイ男爵の方を……一度味わってみたかったのですよ。禁断の美酒というやつをね」
「貴方も詩人ですなぁ」
ひそひそと、それぞれの思惑を胸に高貴な客達が『商品』の品定めをしている。
その様子に男達がほくそ笑み、今夜だけでどれだけ稼げるのだろうと、心を躍らせている。
「こんな時代でも金はあるところにはあるんだねぇ……」
男の一人が皮肉げに言う。
「その金を軍備に回してやれば、あの二人が苦労することもなかったろうに」
「可哀想なもんだね……ま、当人達は今幸せそうだからいいんじゃないの?」
男の視線の先にあるもの──そんな自らが置かれた状況も同情を寄せられているのも知る事もなく、悲劇の下に結ばれた恋人達は、飽く事のない熱い抱擁を重ね、身体で愛を語り合う。
「ひう゛ぅう゛う……ッ♡♡じるっ♡ゆるひれっ♡♡イクっ♡またいぐゥうう゛うっ♡♡」
「んっ♡♡っお゛おっ♡あ゛っ♡♡
あるっ♡あるてっ、あるひゅーるのっ♡♡きたっ♡♡孕ませ汁きたあぁ゛っ♡♡」
高貴な騎士であったはずの彼等の口から飛び出すみっともない言葉の羅列に、客席がどっと沸く。
「俺達は金も入ったし、依頼人も改革が先延ばしになって喜んでたし、あの二人も満足そうだから、全て上手くいったんじゃねえの?
ホント、良い仕事したよね、俺達♡」
……舞台の上の男達が正気に戻った時、今度は口さがない噂話で溢れかえる宮廷の中で、いっそ死んだ方がマシだと思うような恥辱に塗れて過ごす事になるであろう、その生き地獄の日々を思い浮かべながら、それもまた一興だと男達は人の悪い笑みを浮かべたのであった。
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