僕のスライムは世界最強~捕食チートで超成長しちゃいます~

空 水城

文字の大きさ
59 / 98
第5章 遠征試験編

第九十七話 「各々の目的」

しおりを挟む
 
 戦いが終わって間もなく。
 私たちはすぐにスタート地点まで戻って来られた。
 戦闘した場所がかなり近いので、少し覗けばその爪痕が窺える。
 そんなことを意に介す様子もなくスタート地点で作業をしている試験官たちに、さすがの私たちも一瞬唖然としてしまった。
 その中にはシャルムもいる。
 まあ、彼女たちにとって参加者同士のいざこざは想定内ということなのだろう。
 数多くいる試験官の中で、シャルムが一番最初に声を掛けてくれた。
 
 「ポイントの換算に戻ったのか?」
 
 「うん、ただいま」
 
 そう答えると、彼女は若干表情を柔らかくしてくれた。
 安心しているように見える。
 すると不意に後方から、リンドが声を上げた。
 
 「おい、試験官」
 
 「んっ? なんだ?」
 
 「どうせどっかで俺たちのこと見てたんだろ。さっさと救援隊を寄越してやれよ」
 
 彼は自分の後ろを一瞥しながら言う。
 試験中は参加者の様子を覗き見るという、申込書に書かれた条件を理解した上での発言だ。
 当然先ほどの戦いも、試験官たちに見られていただろう。
 シャルムはリンドの言葉に対し、軽く肩をすくめて返した。
 
 「無論、もう手配済みだ。心配する必要はない」
 
 「別に心配なんかしてねえっつーの」
 
 金髪の少年はウザがるように頭を掻く。
 心配していたんだろうなぁ。
 まあ、心優しい彼のことだ。自分が倒してしまった青年たちの安否は、気になって当たり前のこと。
 ツンツンした態度の裏に、また優しさの一部を見つけていると、再びリンドが声を上げた。
 
 「見たとこ、他の連中はまだ戻ってきてねえみてえだな」
 
 彼は周囲に視線を泳がせながら言う。
 確かに今のところ、私たち以外の参加者の姿はない。
 実際、ポイント換算に来るのにも、お昼を取りに戻ってくるのにも、時間的には早いから。
 リンドは、誰にともなく呟いたつもりだったのだろうが、シャルムがそれに答えた。
 
 「あぁ。スタート地点に戻ってきたのは君たちが初だ。まあ、戻ってくるには少々時間が早すぎるからな」
 
 「……」
 
 どこか居心地悪そうに、シャルムから目を逸らすリンド。
 彼のその様子を見て、赤髪のお姉さんは何かを悟ったようだった。
 ふふっと小さな笑い声を漏らし、リンドに対して初めてからかいの笑みを向ける。
 
 「強気な態度に似合わず、とても優しいんだな」
 
 「別に優しくなんかねえっつーの」
 
 「……?」
 
 いったいどういうことだろう?
 強気な態度に似合わず優しい?
 というか、今のやり取りだけで、リンドの優しさに気が付いた?
 私でも少し時間が掛かったというのに。
 シャルムはいったい何に気が付いたというのか、そう疑問に思っていると、不意に彼女は私に笑みを向けた。
 
 「良いパーティーメンバーを持ったな」
 
 「……さっきから、何言ってるの?」
 
 困惑した声を返すと、シャルムはさらに笑みを深めた。
 ホント、何が何だかさっぱりだ。
 首を傾げる私ではあったが、とりあえず今は試験参加者としてやることをしてしまう。
 ポイントの換算、飲み水の補給、お昼ご飯の調達。
 リンドと共に一通りのことを終わらせると、従魔を連れてスタート地点の一角で休憩をとった。
 手近な岩に腰掛けて、配給されたパンをかじりながら言い合う。
 
 「ポイント、まだ足りそうにないね」
 
 「あぁ」
 
 リンドはさほど興味がなさそうに答える。
 ポイントの換算は思ったよりもあっさりとしていた。
 試験用に取ってきたアイテムを、スタート地点の中心にある換算所へ持っていき、それを試験官のお姉さんが確認して終わりというものだ。
 最後に一言、「ご苦労」という言葉を掛けてはもらったが、たったそれだけ。
 あと何ポイント必要だとか、このアイテムは入手困難だから何ポイントだとか、詳しい内容は一切教えてもらえなかった。
 
 リンドはそれに対して不満な様子を見せなかったけれど、私は物凄く気になっている。
 他の参加者も同様の気持ちを抱くことだろう。
 一応、それらしい用紙に私たちの名前と取ってきたアイテムを記入していたから、記録はしていると思うけど。
 なんかあっさりとしているような。
 あっさりと言うより、淡白って言ったほうがいいかな?
 いまいち今回の試験内容に納得しかねていると、私の心中を察したようにリンドが言った。
 
 「具体的なポイントの数値を教えられねえってのが、この試験の厄介なとこだな」
 
 「うん。必死に取ったアイテムが、何ポイントかわからなかったら、すごく混乱する」
 
 「ま、どのアイテムが何ポイントか事前にわかっちまったら、全員高ポイントのアイテムを狙って取り合いになっちまうからな。入手難易度も各々で判断して、アイテムを取ってこいってことじゃねえか?」
 
 まあ、そういうことなんだろうけど。
 依然として私は納得しかねる。
 とても煩わしい。
 すると私たちの話し合いを聞いていたらしいシャルムが、こちらに歩み寄ってきた。
 何らかの資料を片手に目の前まで来ると、難しい顔をしている私に言う。
 
 「安心しろ。確かに少し複雑な試験内容だが、きっちり時間内に達成可能な合格ラインになっている。難易度で言えば、前回《フローラフォレスト》で行われた試験とほとんど変わりはない」
 
 「へ、へぇ……」
 
 驚いた声を上げると同時に、前回の試験というのを微かに思い出した。
 ルゥとクロリアも受けた冒険者試験。
 過去の冒険者試験の資料を見た時に、一番最初に確認した試験だ。
 内容は、森林エリア《フローラフォレスト》にて、『マッドウルフの魔石』と『フェイトの花』を持ち帰ってくるというもの。
 今回の試験と違い、試験官側から指定されたアイテムを取ってくるという、かなりありふれた内容になっている。
 制限時間は二時間と、こちらよりも限られてはいるが、難易度はむしろ優しい方だと思った。
 見えないゴールに向かって走るより、見えているゴールに向かって走る方が断然気が楽だから。
 
 でもまあ確かに、試験官側からアイテムを指定されないことにもメリットはある。
 野生モンスターの魔石は高ポイントとなってはいるが、必ず取らなければならないというわけではない。
 採取アイテムだけでもポイントにはなるのだ。
 そう考えると、戦いが得意ではないテイマーも、冒険者になれる可能性が出てくる。
 今回の試験内容は煩わしい反面、無理に野生モンスターと戦わなくても合格できるという、一長一短があるものになっているのだ。
 シャルムが言った、『難易度で言えばほとんど変わりはない』というのは、おそらくそういうことなんだろう。
 ようやくして僅かな納得をしていると、不意にリンドが疑問の声を上げた。
 
 「でもいいのかよ。こうも煩わしい試験内容だと、またさっきみてえな奴らが湧いてくんじゃねえのか?」
 
 「さっきの、というと、君たちを襲ったあの四人組のことを言っているのか?」
 
 「あぁ」
 
 聞き返してきたシャルムに頷くと、彼女は考え込むように腕を組んだ。
 
 「確かに今回の試験内容は少し特殊だ。眉を寄せる者も多いかもしれない。しかし冒険者試験というのは、毎回突然のものだ。同じように冒険者に送られてくる依頼クエストもな。だからこそ試験内容は、毎回当日発表となっていて、どんな事態にも対処できるように構えてもらっている」
 
 「その対処の仕方が、あいつらはまずかったんじゃねえかって言ってんだ」
 
 「無論、彼らがとった方法はとても褒められるようなものではない。だが、違反をしているというわけでもないのだ。冒険者試験のプログラムには、荒くれ者とのトラブルも当然のように含まれている。たとえその方法で彼らが合格したとしても、実力は充分示せているからな。まあ、今回は無念にも敗退してしまったが……」
 
 ふとシャルムがスタート地点の中心に目をやると、そこには先刻の青年たちの姿があった。
 何人かの試験官に囲まれ、その従魔たちによって安全地帯へと運ばれている。
 彼らはこれで敗退。今回の冒険者試験に落ちてしまったのだ。
 まだ制限時間は四時間弱残っているので、それまでに従魔と彼ら自身が回復すれば、復帰も叶うだろうけど。
 あの状態を見るに、難しそうである。
 けれど彼らにとってはこれでよかったのかも、なんて考えていると、再びシャルムに向けられてリンドの声が上がった。
 
 「今回落ちても、また次の試験に参加してくるはずだぜ。次こそ合格してやるって、ますます褒められねえような方法を使ってな」
 
 私も、そう思う。
 心中でそう声を合わせるが、しかしシャルムはかぶりを振った。
 
 「それでも彼らを拒むことはできない。他の参加者からの略奪を禁止するルールが設けられたとしても、参加そのものを禁止することはどうしたってできないのだ」
 
 だから次回の冒険者試験でも、彼らは参加可能になっている。
 そうと伝えると、リンドはつまらなそうに鼻を鳴らした。
 私は複雑な思いで、お昼ご飯のパンをちぎり、ロックに分け与える。
 
 他の参加者からの略奪を禁止しても、参加そのものは禁止できない。
 本来冒険者試験というのは、誰でも参加可能なもの。
 それがどんな悪党であっても、召喚の儀を受けてすらいない幼女の私でも。
 参加申込書の欄に名前を記入する度胸さえあれば、誰でも受けることができてしまうのだ。
 本番前に面接などを設ければ少し違ってくるのだろうが、毎回かなりの数の参加者たちが集う。
 いちいち面接なんてやっていては時間を食うだけだし、有望な新人を潰す可能性だって出てきてしまう。
 冒険者に必要なのは面接用の演技力ではなく、野生モンスターと戦ったりエリアを攻略するだけの力なのだ。
 その本質が揺るがない限りは、彼らのような参加者を拒むことはできるはずもない。
 心中で勝手にそう結論付けていると、三度リンドがシャルムに向けて声を上げた。
 そっぽを向きながら、食糧として受け取ったパンをかじり、相変わらずの呆れた顔で、呟くように言う。
 
 「でも、本当にいいのかよ」
 
 「……何がだ?」
 
 「あいつらたぶん、の連中だぜ」
 
 …………えっ?
 唐突に零された彼の言葉に、思わず私の心臓は跳ね上がった。
  
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。